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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編

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第242話 親友の命

 意識を刈り取った男の胸ぐらをつかみ片手でぶら下げ立ち上がると、そこにミオが走り込んで来た。


「ヒカル! ヒカルゥ!!!」


「どうした!」


「早く来てぇ!」


 ミオの後ろにはヤマザキも走ってついてきており、二人とも必死な形相で真っ青な顔をしている。すると奥のエスカレーターあたりから叫び声が聞こえてきた。


「いやぁぁぁ!」


 咄嗟に俺はその男をホームに投げ捨てる。


「こいつを縛っておけ」


 俺はミオとヤマザキに男を預け、縮地で皆のもとに現れた。皆が集まってしゃがみこみ、ユリナが何とかしようとして患部に手あてて押さえている。だがその手元からは、次から次へと血があふれ出していた。


「どいてくれ」


 ミナミやツバサがようやく俺に気が付いて、左右にどいた。そしてユミが叫んでいる。


「死んじゃいやだあぁぁぁ! 武ぅ!」


 ユリナも必死にタケルの首元を抑えて叫ぶ。


「戻ってきて! 武! 戻って!」


 タケルの首元から、血が流れだし口からも血があふれている。ユリナが俺に言った。


「頸動脈を撃たれた! 弾は貫通してるけど…首元から胸に抜けているわ! 息をしていない!」


 流石はユリナだ。この状況でも慌てずに能力を使って、タケルの状態を把握してくれていた。そしてタケルを見れば、心臓を弾丸が通過し停止している。タケルは死んでしまったのだ。


 だが間に合ってよかった。


「ユリナ! よくやった、お前が血を止めて患部を突き止めてくれていたおかげだ!」


「えっ?」


 全員が泣きながら俺を見た。


「まっていろタケル!」


 俺はすぐにタケルの傷口に手を当て、首から心臓そして背中にむけての臓器の傷をヒールで防いだ。


 そして、今の俺には蘇生魔法があった。ゾンビ因子除去を何千人も繰り返した賜物である。俺は一気にタケルの破損した臓器を元に戻し、心臓が動くように細胞を活性化させる。するとタケルの指がピクリと動き、俺はそれを見ながら徐々に魔力を注ぎ込んだ。


 次の瞬間、タケルの口から声が漏れる。


「ううう…」


「よし!」


 ゆっくりとタケルが目を開け、目の前にある俺の顔を見て言った。


「すまねえ。ヒカル、面倒かけちまった。死んだかと思ったぜ」


 確かにタケルは死んでいた。俺が蘇生魔法を習得していなければ、救う事は出来なかっただろう。するとユミが、がばっとタケルにしがみついた。


「ばかばかばか! あんた! 死んでたのよ! ヒカルが戻したの!」


「そ、そうなのか?」


「そうよ! ばかぁ!」


 ユミがタケルの胸に顔をうずめると、タケルはユミをしっかりと抱きしめる。だが恐らくあまり力は入らないだろう。


「血が抜けているから力は入らんはずだ。まあ食って治癒魔法をかければすぐに良くなる」


 するとユミがガバッと顔を上げて、俺にしがみついて来た。


「ありがとう! ヒカル! ありがとう!」


「ユミ。タケルはこれぐらいで死ぬ男じゃない、コイツは悪運が強いんだ」


 タケルが俺に手を差し伸べて来る。俺がそれを握ると、なんとか上半身を起こして言った。


「また助けられちまったなヒカル。おまえは何回、俺の命の恩人になれば気がすむんだよ」


「何度でも助けるさ」


「恩を返しきれねえだろ?」


「そんなものいらん」


 するとタケルが電車側を見て言った。


「犯人はどうしたんだ?」


「捕らえた」


 するとユミがザッっと立ち上がり、脱兎のごとくミオとヤマザキがいる方向へと駆けていく。そしてヤマザキ達に縛られた男に対し、ユミは思いっきり蹴りをいれた。それがモロに腹に入ったおかげで、男は目を覚ましてしまう。


「ぐぼぉ!」


「死ね! 死ね!」


 がつがつとユミに蹴られているが、そいつは縛られながらも足を向けてそれを防いでいる。ユミの蹴りが体に届くことなく全てさばかれていた。体の使い方を見てもプロだとわかる。すぐに俺がユミの所に行って、ユミを取り押さえた。


「放してよヒカル! コイツなんか死ねばいいんだわ!」


「まて。情報を聞かねばならん」


「でも!」


 その前にミオが立ちはだかってユミに言った。


「気持ちは分かる! でもヒカルの言う通り! こいつから情報を聞かないと!」


 ユミが我に返ったように蹴るのをやめて、呆然と男を見つめる。男は体を丸めて身を守っていたが、蹴るのをやめたユミを見て言った。


「おいおい、ねーちゃん。人の所に侵入して来たら撃たれても文句は言えねえだろ。お前らが何者か分かんねえし、もしアイツらだったら先にやらないと俺が死ぬ。こんな放射能だらけの東京に突然現れたら、殺されたっておかしくはねえだろ? 俺は生きるためにやったんだぜ」


 男の言うとおりだった。不用意に侵入してしまったのは俺の落ち度、俺のせいでタケルを死ぬ目に合わせてしまったのだ。


「この!」


 ユミがまた男を蹴飛ばそうとしたので、俺がグイっと引っ張って言う。


「ユミまて。残念ながらこの男の言う事には一理ある。隠れ家に正体不明の者が侵入して来たら、俺達でもどうするか分からない。俺が不用意に進入したのがいけなかった。責められるなら俺の方だ」


「ヒカルは悪くない!」


「いや。俺にも責任があるんだ」


 そんなやり取りを見ていた男が俺をジッと見つめる。しばらく遠くを見るような目つきをしていたが、何かを思い出したようにポツリと言う。


「おまえ…」


 どうやら昔、路上で俺達を攻撃した事を思い出したらしい。あの時、俺はコイツの気配を掴んでそちらを睨んだ、だからこそ俺の顔をしっかり覚えていたのだろう。だが俺は初めてコイツの顔を拝む。


 そしてしゃがみ込んで男の目線に下りた。


「で、おまえは何者だ?」


「……」


 男は沈黙した。どうやら答える気は無いらしい。そこで俺は男に言った。


「会うのは二度目だな」


「なっ!」


 男が驚愕の表情を浮かべて俺を見た。自分は俺に見られていないと思っているのだろうが、俺が気配を見間違う訳もない。


「もう一度聞くが、おまえは何者だ?」


 シュッと日本刀を首元に突き付けて聞いた。


「ふっ、おもしろいやつだ。日本刀で戦う奴がいるなんてな。お前、あのとき俺の銃を弾いたな。スナイパーライフルの弾丸を剣で弾くなんざ、どこぞのスーパーマンだ?」


 答えないので、俺は殺気を向けて日本刀を首に突き入れる。だがそのギリギリで男が叫んだ。


「わぁーったよ! 分かった! 負けだ! 殺すな!」


 俺はシュッと日本刀を引いて鞘に納めた。皆もこちらまで来ており、男の周りを取り囲む。


「ヒカル、なんでこの人を生かすの?」


 ミナミが言うが俺が首を振って答える。


「情報を聞かねばならん。それに、今はこいつを生かしておいた方が良い」


「だって、武を殺したんだよ!」


 すると後ろからタケルが顔を出して言った。


「おいおい! 勝手に俺を殺すなよ」


 それを見て男が目を見開いた。


「なに!? 確かに致命傷だった。即死だったはずだぞ!」


「残念だったな。そこの勇者が言うにはおりゃ悪運が強いんだってよ」


「いや…完璧なヘッドショットだったはずだ!」


 めちゃくちゃ驚いている。さっきまでは余裕だった男が若干の動揺をしていた。


「ああ、咄嗟に避けた。だけどお前の弾丸は間違いなく命中したぜ、ここにな」


 タケルが首元をさして言った。


「なんで銃で撃たれて平気なんだ? おまえらいったいなんなんだよ? バケモノ集団か? 世界ビックリ人間かよ?」


「ま、そんなところだ」


 すると少し沈黙して男が言った。


「おまえ俺が憎くないのか? なんでそんなに余裕なんだ?」


「いや。うちの彼女がボコってくれたからな、スッとしたよ」


 すると男はユミをチラリと見て、苦笑いしながらタケルに言った。


「そうか…いい女だな」


「だろ?」


 俺がもう一度男に尋ねる。


「それで、お前の名前は?」


「九鬼だ。しがない傭兵だよ」


 クキ? 確かどこかで聞いた事がある。


「幕張の拠点で、その名を聞いた」


「おまえ…」


 ようやくこいつも俺の正体に気が付いたようだ。


「まあ聞かせてやろう。俺の名は、ルヒカルだ」


「ヒカルっつーのか」


 どうやら小さいルは、この世界の人間の耳には入らないようだ。


「そうだ。ヒカルだ」


「バケモンにしちゃ、普通の名前なんだな」


 男が言うと、隣りにいたミオが男の頭を握りこぶしでなぐった。


「痛てっ!」


「バケモンじゃない。ヒカルは普通の人」


「わぁーったよ! ボコボコ殴りやがって!」


 どうやら皆がコイツを殺さないうちに、次の行動を決める必要がありそうだ。


「とにかく聞かせてもらおう。お前がここで何をしているのかを」


「わかった。話すからボコるのをやめろ」


「そうしよう」


 男は観念したかのように話を始めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仲間にできたら、ものすごく頼りになるはずだけど……
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