第239話 放射線防護服とガイガーカウンター
東京から一定の距離を置いた地域を走り回り、太陽光発電所を復活させようとしたが、どこも機器が死んでおり電気は点かなかった。ミナミが言うにはそれも核爆発の影響だと言う。その為ゾンビを止めるプログラムを稼働させることはできず、東京の隣県には未だゾンビが蠢いていた。
その結果、携帯電話通信を使っての生存者を呼び寄せる事が出来ず、東京周辺地域のセーフティーゾーン確保を断念せざるをえない状態となる。
「恐らく太陽光発電所を復活させたとしても、電気は通らないだろうな」
「そうなのか?」
「電線系統がダメだろう」
するとユリナが悔しそうに言った。
「ファーマー社の思惑通りね。東京周辺の食料も安全とは言えないし、ゾンビがうようよしていたら誰も近づかないわ」
「そこまで想定していたという事だろうか?」
「でしょうね」
「だが、これで東京に何かがある可能性が高まった」
「つくば山から見えた、あの光は何だったのかしらね?」
「まあそれもこれから調べるしかない」
ヤマザキの提案で必要物を入手する為に、俺達は東京を迂回しつつ離れた都市に向かっていた。
ヤマザキが入手しようと言ったのは、高性能放射線測定器だ。東京に侵入するにあたり、念のため手に入れた方が良いという事になったのだ。そして俺達は埼玉県の熊谷市に到着し、ホームセンターに向かった。
到着した俺達はゾンビを討伐しつつ、ホームセンターを物色する。すると店の奥からリコが言う。
「見つけた!」
俺達がそこに行くと、様々な機器が並んでいた。
「放射線測定器…っていっても、どれがいいんだろう?」
リコが聞くとタケルが答えた。
「そりゃ一番高いのに決まってるだろ」
「じゃあ、これね。二十万円もするわ」
それはガラスケースの中に入っており、タケルが自家製モーニングスターで割った。その商品の下に箱が詰みあがっており、全部で三個ほどある。それを見てユミが言う。
「その隣の十五万円のやつも持って行こう」
「そうね」
結局、俺達は高そうな機械を全て持ち出した。放射線測定器を積み込むと今度はユリナが言った。
「次は消防署ね」
「ああ」
同じ都市にあった消防署へ到着したが、やはりゾンビがうろついている。それらを処理しつつ内部に入って行くと、真っ赤な車が数台停まっていた。
「ミオ、この車はずいぶん目立つな」
するとミオが言う。
「これは消防車よ。火事の時に火を消すの」
「そう言う車か」
「そう。あのホースで水を撒くのよ」
俺達はそこを通り過ぎて、施設の内部に進んでいった。事務所や待機室のような場所を通り過ぎ、何かしらの服が吊るしてある部屋を見つける。そこに入ってミナミが言った。
「これは普通の防火服の部屋だわ」
「それが目的じゃないのか?」
「違う」
普通に服がかかっているようだが、そこから皆が物色し始める。すると奥の部屋の、鍵がついたロッカーの表面を読んでユリナが言った。
「これだわ、ほとんど使う事が無かったのね。鍵がかけてある」
タケルが鍵を破壊してロッカーの扉を開けると、そこには金色に輝く服がぶら下がっていた。それを持ち上げて俺が聞いた。
「なんだこれは?」
「放射線防護服よ。放射線が高い地域の消火作業をするときに着るの」
「金ピカじゃないか、随分目立つ服だ。それにこっちは何だ?」
「それはフードよ。その黒い窓のような所に顔が来るの」
俺がじっと見ていると、ユミがタケルに言った。
「ヒカルが、分からないみたいよ。武が着てみなさいよ」
「そうだな」
タケルが皆に手伝われながら、その装備を全て着ていく。すると全身が完全に金色になり、顔の部分の半透明の膜の中からタケルが笑った。それを見たアオイが言った。
「宇宙人みたい」
ユミも頷きながら言う。
「宇宙人っぽいし、派手な宇宙服っぽい?」
「金って! ウケる! あーしも着てみたい!」
「これで放射線を防げるのよね」
「でしょ?」
タケルがそれを着て動いてみるが、どうやらあまり機敏に動けないようだ。
「動きづらいし、視界が悪いぞ」
「でも、東京がどうなっているか分からない以上、準備はしておくべきだわ」
「まあ、そうか」
俺達はロッカーをひとつひとつ開けて、そこにあった放射線防護服を全て持ち出すのだった。これなら突発的にゾンビに噛まれても防げるだろうが、戦闘になった場合にかなり不利だ。しかし皆が心配する放射線を防ぐには、これが必要らしい。
そして俺達の装甲バスは東京方面に向かって走り出した。俺達の装甲バスが進むにつれて、都市に被害が出ているのが分かる。そこでミナミが言った。
「やはり使用されたのは中性子爆弾だと思う。水爆ならばこの前までいた水戸や前橋あたりまで被害は及んでいたと思うわ。それよりも被害の広がり方が小さいのを見ると、使われたのは間違いなく中性子爆弾だと思う」
それを聞いたユリナが言った。
「ガイガーカウンター(放射線測定器)を使って見ましょう」
皆が放射線測定器を持って、スイッチを入れる。それを見たユリナが言った。
「どうかな? まだ安全っぽいけど、そろそろ放射線防護服を着た方がいいんじゃない?」
「だね。よくわからないもんね…目に見えないし」
そう言って皆が放射線防護服を着だす。俺が着ないで見ていると、タケルが俺に言って来た。
「ヒカルは着ないのか?」
「問題ない。これぐらいならば影響はない、もう少し奥まで行ってから自分の体と相談してみるさ」
「わかった」
そして皆は金ピカの服に包まれた。運転席に座ったヤマザキが言う。
「視界が悪いな」
「だが念のため着ておいた方が良いんだろう?」
「そうだな」
皆が金ぴかの防護服を着て、装甲バスは更に東京に向かって進んでいくのだった。しばらくしてミオが言う。
「結構暑いわ」
それにユリナが答える。
「我慢よ」
しばらく進んでから、再び放射線測定器のスイッチを入れた。それを見てユリナが言う。
「まだ安全圏みたい」
そこで俺が皆に言った。
「一度水分補給をするべきだと思う。放射線が強くなれば服は脱げなくなるのだろう?」
「そうね。みんな! 水を!」
皆がフードを脱いで、ペットボトルの水を飲み始める。そしてユリナが皆に飴を渡した。
「一応塩飴を舐めましょう。これを着続けるのは暑いかもしれない」
皆が塩飴を舐めた。そこで俺が言う。
「東京に入ったら、俺とユリナが皆の体の状態を逐一確認した方が良いな」
「わかったわ。前の体と違うとはいえ、放射線がどのような影響を与えるか分からないからね」
「ああ」
水分補給を終えた俺達の装甲バスは、川越市に進入していくのだった。




