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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編

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第229話 強き人々

 福島第一原発跡地。過去に津波に見舞われ事故を起こした場所で、ゾンビの世界以前は人が入れない土地だった。


 またそこは、俺達がかつてファーマー社の軍隊と戦った場所。ゾンビ開発研究所があったファーマー社の開発拠点だった。しかし今では、そこに陸地が無く道路の前まで海がきている。


 海を眺めながらミナミが言った。


「せっかく放射線の除去が出来たって言うのに、周辺に人間が住んでいないなんてね」


 それにツバサが答える。


「本当に。ヒカルがゾンビ基地ごと原子炉を異次元に放り込んでくれたおかげで、美しくて安全な海が蘇ったのよね。既にファーマー社もいないし本当にもったいないわ」


 ヤマザキも残念そうにつぶやいた。


「周辺には太陽光発電所も多いし、良い場所なんだがね。長くファーマー社が居座った事で、このあたりの生存者はゾンビ研究所の餌食となってしまったのだろう」


「だな。片っ端から実験材料にしやがったんだな…」


 ファーマー社のやった鬼畜の所業に苦渋の表情を浮かべる中で、ミオが地図を見ながら言った。


「とにかく、いわき市まで行こうよ。そこにファーマー社が居なかったとしたら、町が無事な可能性があるし生存者だっているはず。終わった事と簡単に割り切れないけど、希望を繋いでいくしかないわ」


「そうだな、やる事は同じだ。皆! 行くぞ!」


 俺の掛け声で皆が装甲バスに乗り込んだ。


 ファーマー社は証拠隠滅の為に、相馬市と南相馬市を壊していったのだ。生存者達の生きる場所がなければ意味が無いと判断し、俺達は更に南へと流れて来た。


 いわき市には多くの太陽光発電施設があり、俺達はまずそれらを全て稼働させた。電気を通電させた後で、複数の電話局舎を復活させオオモリのプログラムを発動させる。そして人を集めるための施設を探そうとした時だった。


 突如として、道路の上に大型のバスが飛び出して来たのだった。俺達の装甲バスが急ブレーキで止まり、攻撃に備えて構えた時だった。ユリナが大声で言う。


「ファーマー社じゃないんじゃない?」


 その バスの後ろから数名の男達が現れる。だが銃を持っているので皆が警戒を強めた。


 そこでアオイが皆に言う。


「たぶん一般人だと思う」


「ああ。問題は食料を要求してくるのか、攻撃の意思があるかだな。俺が降りて聞いて来る、ヤマザキドアを開けてくれ」


「わかった」


 後ろのドアが開いたので俺はそこから外に出る。バスの前面に向かって歩いて行くと、男達は俺に気が付いて話しかけて来た。


「あんたら、どっから来たんだ?」


「最近まで仙台に居た」


「なんでこんなとこまで来たんだ?」


「通り道だった。俺達はゾンビを無力化する方法を知っていて、その作業をしてきたところだ」


 すると男達は顔を合わせて話し始める。今度は違う男が聞いて来た。


「てことは、あんたら政府の人間だべが?」


「民間だ。俺達は自分達の意思でそれをやっている」


「なんだって? 民間でそんな凄いごどしてんのが?」


「そうだ。そしてこちらからも聞きたい。その銃は人間を撃つための物か?」


「時と場合によるんだ。もちろんゾンビを殺るどきに使うやづだけども、あんたら知ってっか?」


「なにをだ?」


「原発の跡地でよ、いかがわしい事やってるつー噂だよ」


 なるほど。この人らはそれを警戒しているらしい。


「ならば情報を知っている。俺達は、そのいかがわしい奴らからすれば敵だ」


「マジか! なにが知ってるつーんだな!」


「そうだ。えっと、そこのふっくらした人がリーダーか?」


「そうだ」


 刈り上げられた短い髪型のぽっちゃり体系の男が言う。一瞬荒々しいのかと思ったら、話してみると優しそうだった。そこで俺は譲歩案を出す。


「俺達は食料も持っている。必要なら分ける事も出来る」


 俺が言うと、ふっくらした男は首を振った。


「いや。あんたらも生きなきゃいけないだろう? 君らの生きる分は君らの物だ」


 俺達から食料を強奪するつもりは無さそうだ。


「ならばもう一つ情報をやろう」


「なんだ?」


「いわき市、都市部のゾンビで地表に出ている者は無力化してある。町を見にいってもらえば分かる」


「それはなんでだ?」


「俺達が開発したゾンビを止める機械をつかったんだ」


 男達が顔を見合わせて話し合っている。すると短髪のふっくらした男が言う。


「よかったら俺達の拠点に来てくれないか? そして話を聞かせてくれ」


「わかった。そこで情報を共有しよう」


 俺達は、そのバスについて行くことにした。バスが少し小高い丘に登っていくと道にバリケードが作られていた。数人の人が見張りに立っていて、男が声をかけるとバリケードを動かしてくれた。


 中に入った時、ミオが大きな声で言った。


「ここ! ハワイアンズだよ!」


「ハワイアンズ?」


「アミューズメント施設で温泉とかプールとかある所!」


「そうなのか?」


 俺達が中に進むともう一か所にバリケードが設けてあり、それも開かれて奥に進んだ。すると中の敷地には人がたくさんおり、せわしなく仕事をしているようだった。それを見たヤマザキが言う。


「どうやらここを生活圏にしているようだな。畑なんかも作っているぞ」


 そう言われてそちらを見ると、人々がせっせと畑を耕している。前のバスが停まったので、俺達もバスを降りて男達について行く。施設内の人は遠目で俺達を見ているが、特に何かをしてくるわけでもなかった。


「入ってくれ」


 俺達が通された先は、宿泊施設のエントランスのような場所だった。そこでふっくらした短髪の男が言って来る。


「情報を見せて欲しい!」


 ヤマザキとマナが準備をして、ノートパソコンをひらき保存している情報を見せた。大人が二十人ほどパソコンの前に集まって小さい画面を凝視している。


「ゾンビが止まってる」

「これが、今の仙台の状況か?」

「石巻あたりの動画もあるぞ!」

「盛岡も助かったんだ!」

「山形も秋田でもか! 凄いぞ!」


 復活させた地域の人々が働く動画を見て、感動に打ち震えていた。そこで俺達は、今のいわき市の中心地も同じようにゾンビを止めてあると伝える。


「それじゃあ、食料を探しに行けるのか?」


「問題なく探せる。後は生存者を探す事も出来るはずだ」


「すごい! すごいな! あんたら凄いよ!」

「本当だ! 本当に日本を救うつもりなんだな」

「俺達は、俺達は生き延びで正解だったんだ!」


 しばらく動画を見ていると、施術を行って真っ白になった人間が映し出される。それを見たひとりが言った。


「これは何かの薬品か?」


 するとマナが暗い顔をして言う。


「それは…こっちの情報を見てもらうしかないわ」


 そしてファーマー社のデータや、ファーマー社がやって来た非道の数々を暴露していった。動画を見るあたりになると、皆が真っ青になって吐き気をもようしている人もいる。どこでも同じ反応だが、知ってもらわねばならない事だった。


 ふっくらしたリーダーが言った。


「こいつらか…原発を占領して変な事をやっていたヤツラって」


「そうだ」


「どういう事なんだ…ファーマー社って言えば世界的な企業だろ?」


「だな。そいつらが日本人を大量にゾンビにしたんだ」


 だがここに居る人達は察しがついていたようだった。話を聞けば研究所から逃亡してきた人に接触した人や、家族がさらわれた人がいるらしく、実際に被害にあってきた被害者だったのだ。


 リーダーが俺達に言う。


「今も、この悪魔達はいるのか?」


 だがそれに俺が答える。


「いや。研究所と原子力発電所は壊滅させた。今は完全な海と化し既に跡形もなくなっている。相馬市からずっと南下して来たが、ファーマー社の影も形も無かった」


「うそ…」

「マジかよ?」

「原発が消えた?」


「見てもらえばわかる。だがこれだけ生存者がいるのも凄いな、他では散り散りになって生きていた」


「そりゃ、パパさんのおかげだべ」


 皆がふっくらした男を見た。その人は恥ずかしそうに顔の前で手を振っている。


「いやいや。自分なんてそんな大したことしてねえ」


「いんや。いち早く原発跡地の悪さを見抜いて皆を導いて来た。俺達の英雄だ」


「そうだそうだ」


「たまたまだ。皆が努力して来たから生き延びれたんだ」


 どうやらここに居る人達は結束が固いようだ。そこで俺は皆に声をかける。


「悪いが、皆をこの建物に集めてもらう事は出来るか?」


「もちろんだ」


 パパと呼ばれる人が号令をかけると、周りが動いて次々に人がホテルの中に入って来た。溢れるばかりにいっぱいになったところで、俺は魔力を貯めこみゾンビ因子除去魔法を発動させるのだった。

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