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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第一章 違う世界

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第22話 虐殺されていた仲間

 俺が盗賊を気配感知で探ると、どうやら侵入者の存在に気がついたらしい事が分かる。連中は全員が集まり塊になって移動しているようだ。恐らく仲間の死体を見つけて、新たな敵がいる事を察知したのだろう。しかもさっきよりだいぶ動きが悪いので、かなり警戒していることが分かる。


 俺は助けた女に聞いた。


「他の仲間はどこに?」


「多分みんなはカフェにいたと思う。でもアイツらが来て散り散りに逃げたはず、だからバラバラになったかも」


「すまん。言葉が良く分からない、カフェ? チリジリ?」


「えっ、日本語が分からないの?」


「コトバあまり分からん」


「そう…、じゃあ誘導するわ」


「まて。ゆっくり進め、音を立てると敵に見つかる」


 俺がそう言うと女はコクリと頷いた。真っすぐに通路を歩いて行くと、向こうの曲がり角から数人が歩いて来るのが分かった。俺は盗賊をやり過ごすために、女を引っ張って静かに部屋の中へと入る。


「なっ!」


 女が声を出そうとするので手を当てて黙らせる。そっと部屋に息を殺して忍んでいると、気配は俺達に気づかず部屋の前を通過して行った。その気配が遠ざかるまで待って、女を連れてその部屋を出た。そして真っすぐに階段のあった場所まで進む。すると女が俺に言う。


「下りるわ」


「分かった」


 女の指示通り下の階に降り、さっきは行かなかった方向へと向かった。そちらには人の気配は無いようだが…。進めば進むほど血の臭いが強くなってくる。

 

「まて、恐らくは良い結果にならない」


「どう言う事?」


「血の臭いがする」


 さっきミオが言っていた言葉で伝える。


「血の臭い?」


「そうだ」


「そんな…」


「どうする? 他の奴らの所に行った方がいいんじゃないか?」


 すると女が俯いたまま固まってしまった。そして少し考え俺の顔をしっかりと見つめる。


「カフェに行くわ、見ないと納得できない」


 どうやら行くと言っているらしい、何か考えるところがあるのかもしれない。


「ならば、気を落ち着かせろ」


「わ、分かった…」


 まあ俺が言っても気休めにしかならないだろう。それが証拠に女の心拍数は上がりきっていて、息遣いも荒く感じる。そして通路の先にある一つの扉を開いた瞬間、より強い血臭が俺達を襲ってきた。女が冷静に俺に言って来る。


「ここがカフェよ」


 こいつらはカイチューデントーを照らさないと、はっきりと見えない為に気づいていないのだ。ここには大量の死体が転がっている。すると女が灯りをつけようとした。


「まて!」


 俺はスッとその懐中電灯を奪い取った。


「なに?」


「人が死んでるんだ」


「そんな…いったい誰が…」


「誰? 一人じゃない」


「でも確かめなくちゃ!」


 女は既に正気な感じがしない。恐らく極度の緊張と恐怖が支配しているのだろう。


「やめておけ」


 すると女は俺の手からカイチューデントーを奪い取って、その広い室内を照らしてしまうのだった。俺は叫ばれると思い女の口を塞ぐ動作に移っていたが、俺の想像は外れ女は叫びもせずに気を失った。 俺は女を抱きとめ床に落ちたカイチューデントーを拾いあげて、突起のような部分を押した。


「消えた」


 どうやらこれの操作は簡単らしい。


「しかし…酷いありさまだな」


 今の状況を見たらどう殺されたかが分かる。ここにいた人たちは無抵抗で座ったまま殺されてしまったのだ。老人も男も女も子供まで皆殺しされていた。しかも一部の女は服に乱れがあり、恐らくは男の慰み者にされてから死んだようだ。やはり盗賊のやる事など所詮そんなもんだ。


 俺は女を抱いたままミオ達の元へと戻る。敵はどうやら俺の気配を察知してはいないらしく、まだ上の階であちこち探し回っているようだ。


「よし!」


 気配探知で探るとミオ達は俺が隠れるように指示した場所にいた。俺は気配遮断と隠形でそのまま部屋に入るが皆は気づいていないようだ。


「待たせた」


「きゃぁ!」

「いつのまに!」

「ちょっとぉ!」


 三人が驚いて目をひん剥いて俺を見ている。


「南ちゃん!」


 ミオは俺が抱いている女に気づいて駆け寄って来た。


「大丈夫だ。気を失っているだけだ」


「本当に? 怪我は無いの?」


「問題ない」


 俺の言葉に三人がホッと安堵のため息をついた。するとユリナがきょろきょろと俺の後を見ている。どうやら他に連れてきた人がいないか見ているようだ。


「すまん。残念ながらこの子だけ助けて戻って来た。まだ盗賊はあそこの建物内にいる」


「えっ。他の人は居なかったの?」


「居なかった。各層の気配を探ったが、恐らくあそこにいるのは盗賊だけだ」


 するとツバサが聞いて来る。


「居なかった? て事はどこかに逃げたのかしら?」


「恐らく全滅だ」


「えっ!」

「うそ!」

「‥‥‥」


 三人は真っ青な顔で俺の言葉を聞いた。どうやら真実が受け入れられないでいるようだ。


「死体を探ったが、穴だらけになって死んでいた」


 するとツバサが大きな声を出す。


「適当な事言ってんじゃないわよ! 皆が殺されたって言うの?」


「気配は無かった。そしてあちこちに死体が転がっていたんだ。この気絶している女も見ている」


「そんな…」


 まただ…もたもたと会話をし始めた。すぐに受け入れて即断即決が必要な状況だというのに。こいつらの中に冒険者が一人でもいたら、こんな風にはならなかっただろう。


「選択肢は二つだ。侵入者の殲滅かここからの脱出かだ」


 するとミオが聞いて来る。


「もう一度」


「盗賊をコロスか、ココを出るか」


 するとツバサがもう一度聞いて来た。


「本当に生きている人は居ないの?」


「他に逃げていなければな」


「生きてたら見捨ててはいけない」


「なら盗賊はミナゴロシだ」


 するとミオが俺の腕を掴んで言う。


「ヒカル! 相手は銃を持っていたんでしょ?」


「ジュウは持っていたな」


「なら一旦逃げた方がいいわ!」


 するとツバサがミオに言う。


「ダメよ! もし生きてるなら助けなきゃ」


 やはり堂々巡りだ。ここは一旦俺が強制的に決めるしかないだろう。


「一度外に出る。まだゾンビは上がって来ては居ないし、トレーラーの奴らも心配だ。アイツらが中に入ってきた時に、盗賊と鉢合わせする可能性もある」


 それでもツバサは俺の言葉に抗う。


「出るって事?」


「急ぐぞ!」


 俺は有無を言わさず、気絶しているミナミを抱いて部屋を出ようと入り口に向かった。するとツバサも渋々ついて来て、ミオとユリナも怪我人を連れてその部屋を出た。


「来た道を戻るぞ」


「わかった」


 そしてゆっくり元の道を戻り、俺達が侵入して来た場所までたどり着いた。侵入して来た割れた扉を過ぎて下を見ると、まだゾンビがウロウロとしているようだった。


「ちょっと待ってろ」


 俺はそこから真っすぐ地面に飛びおりて、ジュウを二つ握りしめゾンビ達の頭を勝ち割っていく。これは包丁よりはだいぶ丈夫に作られているようで、簡単には壊れそうにない。綺麗に片づけた俺がトレーラーの上に飛び乗って言う。


「飛び降りろ!」


 するとミオが慌てて言った。


「ここは…高いわ!」


「俺が受け止める! まず気絶している女を下ろせ!」


 するとミオとユリナが、ミナミを持って俺に向かって降ろした。俺がそっと受け止めてトレーラーの上に寝かせる。


「次! 怪我人を降ろせ!」


 するとふらふらになりながらも、怪我人は自分で飛びおりて来た。


 それも受け止めてミナミの隣りに寝かせた。

 

「来い!」


 そして次々と降りて来て皆がトレーラーの上に集まった。


「明るくなってきてるね…」


 ミオが言う。どうやら夜が明けるようだ。空が薄っすらと明るみを帯びて来た。


「そのようだ。ヤマザキ達のトレーラーは止まっているぞ! ゾンビに群がられているようだ」


「助けなきゃ!」


「お前達はこのトレーラーに乗るんだ!」


「ヒカルはどうするの?」


「これでゾンビを殴り倒してくる!」


「殴る? 撃つんじゃなくて?」


 またウダウダと話を始められるといけない。俺はミオ達を置いて、トレーラーに群がっているゾンビ達に突撃を始めるのだった。

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