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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編

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第227話 異世界の血

 俺達の装甲バスが、研究所施設敷地内の並木道を通り玄関に到着する。木々が芽吹き始め活力の湧いてくるような道だ。俺達がバスを降りると生存者達がこちらに手を振って来る。挨拶をしながら大学の研究施設に入って行くと、施設内の廊下が生存者でごった返していた。皆が献血の為に訪れており、かなりの血液が確保されてるらしい。そして俺が研究員に声をかける。


「情況はどうだ?」


「ああ。ヒカルさん! 血液もかなりの量を確保できてますし順調ですよ」


「それは良かった。足りない物があったら言ってくれ」


「それなら丁度よかった。皆さんに話があったのです」


 研究員に連れられて隣の部屋に移り、ノートパソコンの画面を見せられた。そこには人の名前と血液の種類及び数値データなどが記されていた。そして研究員が話を始める。


「皆さんの血液を研究させていただいて、一つ驚きの結果があるのです」


「なんだ?」


 ノートパソコンにはいろんなデータが記されているようだが、それを見せられても意味が分からない。ただの文字と数字の羅列から読み取れることは無かった。


「実はヒカルさんの血なんですが…。日本人には無い…、といいますか、もしかしたら世界にも珍しい血液かもしれないのです」


 それを聞いた皆が顔を見合わせる。もちろん俺はこの世界の人間ではないのだから、皆と同じ血液をしていた方がおかしいのかもしれない。だが俺が異世界人と言う事は、俺達十三人だけが知る事実であるため口を閉じる。目の前の研究員は物凄いものを見つけたという表情をしているが、俺達はむしろ微妙な反応を返してしまうのだった。そして研究員が言う。


「そして研究結果を見てわかったのですが、ヒカルさんは恐らくゾンビ因子に犯される事は無いという事です。きっとゾンビ因子が新しくなったところで、それに負ける事はないでしょう」


 それも皆が知っている事実だ。だがそこからは驚愕の内容だった。


「一つ言えるならヒカルさんは、輸血をすることも受ける事も出来ません」


「それはどう言う事だ?」


「…恐らくヒカルさんの血を輸血された人は死ぬと思います。血液検査をした結果、どの血液型も拒絶反応を示しました。くれぐれもヒカルさんの血を、輸血する事の無いように」


 全員がコクリと頷いた。今まで試したことは無かったが、もしかすると俺の血で誰かが死んでしまっていたかもしれない。それを聞いて俺は一人ホッと胸をなでおろすのだった。逆にヤマザキが聞いた。


「ヒカルにも輸血は出来ないと?」


「そうですね。あう型がないのです」


 皆が俺を見るが、俺は笑って返した。


「肉を食えば血は増える、そんなにやわな体はしてないぞ」


「まあ…そうか…」


「それよりも他の研究結果を知りたい」


 すると研究員が違う画面を表示した。


「こちらの右側がヒカルさんの施術を受けた人々の血液群、左側が施術を受ける前の血液のデータです」


「どうなっている?」


「まず施術を受けた人達の免疫力や細胞分裂が尋常じゃありません。一見すると免疫暴走を起こしそうですが、その可能性も極めて低い。特筆すべきは細胞が活性化して、おそらく十歳以上は若返っているような状態になります。細胞分裂が赤ん坊並なので、傷の回復力が尋常じゃなくなります」


「そんなことまで分かるのか?」


「検体が山ほどありますから。更にファーマー社のデータにもかなりの情報がありましたので、それを解析して分かった事もたくさんあります」


「凄いな」


 そして研究員が違うデータの方を拡大した。


「こちらが施術を受ける前の人のデータです。ゾンビ因子が遺伝子に入り込んだ状態ですね」


 俺達が見る限りは詳細が分からなかった。微妙な空気を読んだのか、研究員が追って説明を始める。


「まあ、ざっと見ると普通そのものです。普通の日本人の一般的な数値と言ったところでしょうか? 一見すればこれで体調が悪くなるとは思えない。体調を悪くして医療機関にかかったところで、恐らく精神的なものだとか自律神経失調だとか言われるでしょう。もしくはどこも悪くないと言われるかも」


「違うのか?」


「ファーマー社のデーターにも、たくさんの治験データーがありました。そこで特に気になった、大変興味深いデータがあったのです。ゾンビ因子が組み込まれた自分の遺伝子は、自らの免疫を無効化し更に自分の細胞を養分にしている可能性があります。自分の遺伝子が、自分の細胞を溶かしているのが見受けられました」


「と言う事は?」


「分かりやすく言いますと、自分で自分を食っているという事です。その上に人が死んでゾンビになっても、その活動を維持しようとするのです。外敵事象として、ゾンビは人の細胞を取り入れるために人を食おうとしているようです。死んでも遺伝子が活動し続けるのです」


 と言う事は、明らかに前世の死霊術で生み出されるゾンビとは別物だ。死霊を操ってゾンビになっているわけでは無く、物理的にゾンビになるように改変されているのだ。自分を食うのに飽き足らず、死んだ後もゾンビになって人を食おうとする。全く胸糞悪い事だ。


 それを聞いたユリナが言う。


「ゾンビ因子に浸食された遺伝子は、人が死亡して活動を止めても動き続ける?」


「そう言う事です」


「そうなってしまった遺伝子は人間の物とは違う?」


「はい、その通りです。ゾンビ因子に書き換えられた遺伝子は全くの別物です。言って見れば、牛や馬、犬や猫と言った種類のように、人じゃなくゾンビと言う生物になります」


 それを聞いたユリナや仲間達がため息をつく。それを嬉々として研究しているこの人は、俺達とは精神構造が少し違うのかもしれない。たぶん研究が生きがいなのだろう。だがこの人がファーマー社のデータを読み解いてくれたおかげで、俺達はだいぶ確信にせまる事ができたのだ。


「まったく…ファーマー社は本当に酷いものを作り出したわね。遺伝子を変えて人間じゃなくしてしまうなんて」


「本当だわ。それで沢山の人が死んだのよ。許せないわ」


「いったい何のつもりだったのか…」


 そして研究員がオオモリを見て言った。


「大森さんが作ったゾンビコントロール電波。あれをファーマー社が開発途中だったという事は、遺伝子を変えた人間を自分達で操る予定だったのでしょうね。だがこの遺伝子は失敗で、人間が死に始め全てゾンビに変わってしまったという事だと思います。恐らくは事故だったのでしょう」


 俺達が行きついた答えと同じものだった。やはり研究者が読み取ると詳しい所まで知る事が出来る。


「なんで、ゾンビに浸食された遺伝子は電波で操れるんでしょうね?」


「恐らくはナノテクノロジーかなにかでしょう。ファーマー社のデータでも解明できていないようですので、それを半分紐解いた大森さんはすごいですよ」


「僕も仲間達を助けようと必死でしたから」


 そしてユリナが研究員に聞いた。


「それで本題なんだけど、ゾンビ因子を薬物で抑え込むことは出来そう?」


「不可能では無いかもしれません。これがウイルス説で研究を進めていたら不可能だったでしょうね。でもこれは薬学と生物学と機械工学の産物のようですので、その分野の専門家が集まれば可能ですよ」


 研究員は随分、核心にたどり着いているようだった。


 するとオオモリが言う。


「後は生物学の専門家かあ。日本を探せばいるのかもしれませんけどね。あなたくらいの研究者は他にもいますか?」


 それを聞いた研究員が言った。


「もちろんいますよ。僕も知識としてはまだまだで、私を教えてくださった博士は死んでしまいました。日本を探せばもっと凄い人はいるかもしれませんし、僕もひとまず現状分かっている情報だけで進めてみますよ。むしろヒカルさんの施術を受けた人達の血液が豊富にあるというのは強い。もしかすると血清なんかが作れるかもしれませんし」


「引き続きお願いする」


「わかりました」


 研究所での話を終えて俺達は休憩室に移る。そこには献血を終えた人達が休憩しており、俺達が入って行くと皆が挨拶をしてくる。それだけ俺の施術で体調不良が治った事が嬉しかったらしい。


 俺達がテーブルを囲んで座ると、研究員の一人がペットボトルを数本持って来てくれた。紙のコップに水を注いで俺達は一息つく。


 タケルが面白くなさそうに言う。


「自分で自分を食うなんてよ。生きているうちにゾンビの練習してるようなもんじゃねえか」


「まったくね。そんな体に作り変えられていたなんてね、今になって見ればぞっとするわ」


 そしてオオモリが言う。


「というか、現状の情報でどこまでできるのかですよ。僕らは更に南に向かって、セーフティーゾーンを作っていかなければならない。研究員だってここだけに限らず他にもいるでしょうし、出来るだけ多くの頭脳を見つけ出す事が重要ですよ」


 それを聞いたヤマザキが頷いた。


「そうだな。ここだけで完結する話じゃない。あとマナが言っていた、外洋ケーブルの地域に行って外国の情報を調べた方が良いだろう」


 マナが答える。


「どっちに行く? 神奈川? 沖縄?」


「まずは神奈川だろうな。だが核爆弾の影響で壊れてるかもしれん」


「沖縄に行くなら船が必要よ」


「九州の港にあるかもしれん」


 それから地図を広げ、俺達がこれから向かうであろうルートを選定していった。この地でもまだやる事はあるが、ゾンビ因子に浸食された遺伝子が自分を食うという情報は重い。じっくり時間をかける事も難しく、俺達は出発のタイミングを考察するのだった。

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