第219話 解放サイト
次々に都市を訪れた俺達は、その滞在期間中に太陽光発電や風力発電を稼働させていった。都市ごとの電波塔を復活させ、6Gのシステムでゾンビの動きを止めては生存者を集めていく。都市にも大小があり、太陽光及び風力発電だけで足りないところは発電機を使用した。
どこでも同じように市民の抵抗にあい、どこでも生きるための争いが起きていた。やはり人達は生存することに必死ではあるものの、未来への夢も希望も失って殺伐と生きている。俺達は生きる道標を見失った彼らに、未来を見せて生きるすべを教えた。
そして更に俺に変化が訪れる。かなりの人数のゾンビ因子除去施術を行ってきた結果、回復魔法と蘇生魔法のレベルがかなり上昇したのである。冬が過ぎて花の香りが漂い始めるころには、既に数万人規模のゾンビ因子を除去していた。今ではゾーンヒール並みの範囲でゾンビ因子の処置が出来る。
俺達は米沢から日本海側を北上し青森を経由して、太平洋側を南下していた。仙台という町にたどり着いた時、オオモリからある事を告げられる。
「ヒカルさん。実は愛菜さんと共同で開発したものがあるんです」
「なんだ?」
「ちょっと見てください」
装甲バスの中で皆を集めオオモリはパソコンをひらいた。そこには俺達が作業をしている動画が映し出されている。
「まあ、分かりやすく言えば動画配信のプラットホームですよ」
そう言われても俺はちんぷんかんぷんだった。だが他の皆は理解しているように頷いている。俺がオオモリに尋ねる。
「それが何か役に立つのか?」
「ええ。仙台は東北でも大きな都市ですし、それなりの設備があると思うんです。そこにサーバーを設置して撮影した動画をアップして流します。電波が届くところにいる人には、スマホの電源を確保できれば動画が見れるようにします」
それを聞いたユンが聞いて来た。
「でも、そのサイトを知らないと分からないんじゃ? ティックトックとかユーチューブなら分かるけど、どうやって見つけばいいんだし?」
「そう思いますよね? でも違うんです。ゾンビの世界の前に、皆はこれをスマホで聞いたことありますよね?」
そう言ってオオモリはスマートフォンを出した。ボタンを押すと突如、ビュービュービュー! と高らかに音をたてはじめる。
それを聞いたユミが言った。
「緊急警報だ。ミサイルとかでもなったよね?」
「それです。スマホの電源を入れたらこれが鳴るようにします。そこで僕らが作った動画のプラットフォームとサイトが見れるようになります」
するとミナミが感心したように言った。
「なるほどね。それだと全員に無条件で来るもんね! でもそんな事出来るんだ?」
「出来ます。それをコツコツと作ってきましたから、この都市の一番大きな局舎にサーバーを置いてそこから飛ばします」
「すっご」
よくわからなかったので、俺は手を上げて聞いた。
「分かりやすく頼む」
「はい。スマホは日本人なら大抵持ってるんです。もしかしたら捨てちゃった人もいるかもしれないですけど、それでも情報を取るために持ち続けている人は多かった。その集団に一台でもあれば、可能性は高まるんです。我々がやったゾンビ停止やゾンビ因子の情報、そしてそれを打開するために動いている人間がいる事を知らしめます。ファーマー社のやった悪事も丸ごとです」
なるほどよくわかった。俺達が街を歩き回らなくても、相手から来るように仕向けるという事だ。そうする事で、俺達の目の届かなかったところにいる人達を救う事が出来る。
マナが言う。
「今まで助けて来た都市を安全地帯として情報を流せば、人々はそこを目指して行くはず。これで生存者の救出は加速するわ。つくづく大森君は天才よ」
「凄いなオオモリ」
「ヒカルさんが言ってましたよね? 得意分野が伸びるって。それを信じて邁進したらこうなりました」
「良い事だ。自分を信じる事が一番大切だからな」
「はい」
「ならばすぐにこの都市を奪還。そしてその装置を備え付けよう」
俺達の装甲バスは仙台の都市内に突入していく。東京ほどではないが、同等なほどにゾンビが徘徊している。各局舎を制圧する前に、都市内の掃除をしようと言う事になったのだ。仙台に突入していくと、あちこちにゾンビがおり装甲バスに気が付いて近づいて来た。ヤマザキが更に気が付かれるようにクラクションを鳴らす。
俺はすぐさま降りて、飛空円斬で見える範囲のゾンビを全て片付ける。
「次だ」
俺達の装甲バスは、ゾンビの死骸を押しのけながら次の地点へと移る。ヤマザキがクラクションを鳴らし、その音に気が付いて大量のゾンビがこちらに向かって来る。そして俺は同じ処理を繰り返した。日本刀をふるう延長線上のゾンビが倒れていく。
それから一時間ほどで、繁華街の跡地のゾンビはだいぶ綺麗になった。
そして俺達は目的の施設を探し出し、装甲バスを入り口につけて潜入する。俺以外のみんなもゾンビの討伐はスムーズに出来るようになり、すばやく目的の部屋を見つけるのだった。そしてオオモリが俺に告げる。
「少し時間がかかります」
「わかった」
オオモリとマナが作業に入り、俺達はその入り口で待つことにする。一時間もすると二人が出て来て作業が終わった事を伝えて来た。
「どうだ?」
「電気は来てます。局舎を動かすので精一杯の電力ですが、それでも電波の届くところにいれば見れるはずです」
確認の為、俺達が他の部屋に入るとゾンビは立ち尽くしていた。俺達はそのまま装甲バスに戻り、オオモリは皆に配っていたスマートフォンの電源をつけるように言った。
ビュービュービュー!
バスの中には警報音が鳴り響くのだった。




