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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編

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第216話 信じられぬ事実

 ギリギリだった。俺とユリナが駆け回って回復させたおかげで、奇跡的に死者が一人も出ずにすんだ。俺達は無事だった者と怪我人を切り離し、俺とユリナとユンとリコが、怪我人を寝かせた場所にいる。ユリナがすぐにユンとリコに指示を出した。


「服を脱がせましょう。意識を失っているうちにヒカルが施術を行うわ」


「「わかった」」


 最初に裸になった者から、俺はゾンビ因子を取り除く施術に入った。リコを救った時のように、怪我人を放っておくとすぐにゾンビ因子は人を殺し、瞬く間にゾンビに変えてしまうのだ。とにかく早く施術を施さねば助けた意味が無い。


 集中して足から太もも、腰から腹、そして胸から頭にかけてゾンビ因子を取り除く。施術が終わるとその人は真っ白になり、ユリナ達がふき取っていく。次々にゾンビ因子を取り除き、生きている間に全ての怪我人の施術を終えた。


「まにあった」


「危なかったわね」


「新型じゃなくてよかった。あれならば無理だった」


「あんなものが入り込む前に、皆を助けたいわ」


「地道にやっていくしかあるまい」


 三人が頷く。俺はすぐにヤマザキ達の所に行って、捕らえた連中に声をかけた。


「死者はいない! 皆一命を取り留めた」


「うそ!」

「かなりヤバかったと思うが」

「どうなってんだ?」


 ざわざわとざわついて、一人が立ち上がって言った。


「にわかに信じがたい!」


「あんたは?」


「医者だ。もう手遅れの者もいたはずだが?」


「実際に見てもらうしかない」


 そう言って俺がヤマザキに目配せをすると、ヤマザキが銃を構えて言った。


「抵抗はするなよ。変な動きを見せれば大変な事になるぞ」


「ついてこい」


 皆は後ろ手に手を縛られているが、なんとか立ち上がり俺について来た。怪我人が寝かせられているところに到着すると、医者だと名乗った奴が言う。


「本当に生きているのか?」


 するとユリナが医者に言う。


「見てみなさいよ。医者ならすぐにわかるでしょ」


「あ、ああ」


 男が後ろ手に縛られながらも、怪我人たちが寝ている場所にしゃがみ込み様子を伺う。そして振り向いて言った。


「怪我が…治ってる」


 いっきにざわついて、敵味方関係なく寝ている人らのもとに跪いて確認していた。すると一人の男が言った。


「嘘だろ。どてっぱらに穴が開いてたんだぜ。なんで治ってるんだ?」


 それを聞いたユリナが言う。


「信じられないかもしれないけど。この人、人を治す能力があるのよ」


 ユリナが俺を指して言うと、医者が俺を見て言った。


「外科医なのか?」


 それにユリナが答えた。


「いいえ。看護師の私がはっきり言うけど、この人は医師免許を持っていないわ。と言うか器具も薬も使わずに治すの」


「馬鹿な! そんな事があるはずがない! 新興宗教でもあるまいし!」


「宗教じゃないわ。物理的に怪我を治す力があるのよ」


「みんな! こんな戯言を信じるんじゃないぞ! オペもせずに怪我が治るわけがない!」


 それを聞いたユリナが大きな声で言った。


「じゃあいいわ! この中にも怪我をした人がいるんじゃない?」


 シーンとする。だが少しして女の声が上がった。


「あの。階段から落ちて手首をついた時に、痛めてしまって」


 それを聞いた医者が言った。


「俺が見てやる! 縄を解いてくれ! 抵抗はせん!」


 それを聞いたユリナが俺を見る。俺はつかつかと医者に寄って縛っている紐を居合で斬った。はらりと落ちる紐を見て、男が不思議そうな顔をする。だがすぐに手首を痛めた女の所に行って、手首をまさぐり始める。


「レントゲンを撮らねば分からんが、赤黒く腫れている。捻挫か、折れているかもしれん」


 そこにユリナが行って、女の手を取ってじっと見つめる。すると確信を持った声で言った。


「ヒビが入っているわ」


「なぜ骨に異常があると分かる。レントゲンも撮らないのに」


「分かるとしか言いようがないわ」


「インチキだ。皆だまされるな!」


 俺は医者を無視して、女の手を取り回復魔法をかけた。腕が薄っすらと輝いた後に光が引いて行く。すると女が叫んだ。


「うそ! 全く痛くない! さっきまではちょっと動かすだけで痛かったのに!」


 だが、それを聞いた医者がまた叫ぶ。


「まやかしだ。この状況で気が動転しているだけだ!」


 そう言って医者は、女の手を取ってじっと見つめる。


「あれ? 腫れがひいているし熱も無い」


 ユリナが言った。


「だから治せるって言ったでしょ?」


「馬鹿な!」


 すると他の奴が言った。


「お、俺は逃げる時に腕を引っかけた!」


 俺がそいつのもとに行くと、腕から血が滲んでいた。裂けるように切れたようで、傷は結構深かった。すぐに回復魔法で傷を消してやる。傷が塞がると男が言った。


「うそだろ。痛くないぞ…」


 それで周りが一気にざわつき始めた。だが今はこんなことをしている場合ではなく、すぐに治癒した者を暖かくして休ませる必要がある。俺はその言葉を遮って叫んだ。


「これから縄を解くが抵抗はするなよ! 俺達は物資を必要とはしていないが、話し合いで分配する事で解決するはずだ! 仲間を救いたいなら言う事を聞いてくれ!」


 皆が静かに聞いていた。抵抗する意思がないのか特に暴れる様子はない。


「ここに居る怪我人をすぐに休ませる必要がある!」


 するとミオが言った。


「寝具売り場があったわ! そこに布団や毛布があった! 皆で連れて行きましょう!」


「もしまだやり足りないなら俺が相手になるが、次は容赦しない。その覚悟があるならば、かかってこい! だが味方を救いたい気持ちがあるなら協力しろ!」


 しばらく沈黙していた男がポツリと言い出した。


「わかった。縄を解いてくれ、抵抗はしない」


 俺は、そう言った奴の縄を居合で斬った。


「あれ? 縄がほどけた」


「手伝え」


「わかった!」


「お、おれも!」

「私もやるわ!」

「早くしましょう!」


 俺は次々に縄を解いてやる。彼らは怪我人に肩を貸しつつ、寝具売り場に向かって進みだした。売り場にあった布団を敷いて、怪我人を寝かせ毛布と掛布団をかけていく。そこにユミとツバサがある物をカートに乗せて持って来た。


「売り場にあったジュースよ」


 それを聞いたユリナが指示を出す。


「糖分のありそうなものを与えましょう。とにかく水分補給から!」


 開放した連中が怪我人に飲み物を飲ませ始めた。引き続きカートを引いてアオイとミオがやって来た。カートには箱が乗っていて、その箱を空けて中からペットボトルを取り出す。


「みんなも水分補給したほうがいいわ」


 そうして仲間達が、開放した連中に飲み物を配って行った。それを見ていた医者がポツリと言う。


「す、すまなかった。本気で救おうとしてくれていたんだな」


 ユリナが答える。


「そうよ。せっかく生き残った人間同士殺し合っても意味が無いわ。だから皆も話を聞いて欲しいの」


 それにマナが言った。


「介抱しながら聞いて欲しい。にわかに信じられないかもしれないけど、無駄な争いはいらないわ!」


 そしてヤマザキが口を開く。


「私は千葉県のある都市で市役所に勤めていた人間だ。私達はつい最近まで東京にいたんだが、東京は核兵器の攻撃にあって消滅した」


 ざわざわとし始めるので、ユリナが皆に言う。


「介抱の手は止めないで!」


 引き続いて怪我人にジュースを飲ませ始め、ヤマザキは話を進めた。


「はっきり言おう! このゾンビの世界は人災なんだ!」


「なんだって!」

「どう言う事?」

「ウイルスなのに?」


 再びざわつくが、ヤマザキはそのまま続けた。


「ウイルスではない。これは生体兵器なんだ」


「生体兵器?」


「そうだ。軍事利用する為の兵器だ」


「なにいってんだ?」

「そんな馬鹿な」

「なんでそんなことが分かる?」

「それってデマでしょ?」


「違う! 我々はこの目で実験施設を見た! そこを襲撃して情報を回収して来た!」


 だが人々が信じる事は無かった。するとそこにタケルがやって来て言う。


「隣のホームセンターで発電機を回収して来たぜ!」


 そこにミナミとオオモリがテレビモニターを持ってくる。そしてマナがリュックサックからノートパソコンを取り出した。


「百聞は一見にしかずだわ」


 そう言って発電機にテレビモニターを繋ぎ、マナがパソコンを繋いだ。電源を入れると画面がついて、そこにパソコンの画面が映し出される。


「データはコピーだけど本物よ」


 そしてマナが動画データの一つを開いた。皆が画面を食い入るように見つめ、そこに映し出されるファーマー社の非道な実験に驚愕し始める。次々に動画のデータが映し出されるにつれて、ある者は嘔吐し、ある者は目を背けて頭を抱えてしまうのだった。

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