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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第202話 新たなる異変

 マナとオオモリがデーターを収集している間も、俺は地上に意識を集中させていた。恐らく海で航行不能になった戦艦に戦力を集中させているため、まだ研究所の方には軍隊が集まってきている様子は無い。


 他にいる研究員達の動きもないところをみると、俺達がここに居る事に気が付いていないのだろう。


 足を切った研究員は真っ青になり、今にもこと切れそうだった。仲間が死にそうだと言うのに、他の奴が冷静に聞いて来る。


「あんたら良く侵入して来れたな。地上には軍隊がいて、この研究所も厳重なシステムで守られているってのに」


「お前らに話す事は何もない。俺達が聞くまで口を開くな」


「わかったよ…」


 そして俺の方から質問をした。


「なら聞いてやろう。なぜこんなところに研究所を作った?」


「……」


「言え」


 俺が日本刀を突き付ける。


「放射性物質だよ。本来放射性物質なんて、民間ではそうそう入手できない。だがここではふんだんに手に入る」


「何に使う?」


「生体変化さ」


「生体変化?」


「世界にある従来の生物を、作り変える為のエネルギーにしている」


 男が話し始めると、女の研究員が止めた。


「話してはダメよ! 企業秘密だわ」


「脅されたんだ仕方ないさ」


「そんなの通るわけないじゃない!」

 

 女が騒ぐので俺は女の腕に日本刀を突き立てた。

 

 女は自分に何が起きたのか分からなかったらしく一瞬黙る。だが激痛が自分の体の異常を知らせたのだろう。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」


 すると目の前の男が叫ぶ。


「や、やめてくれ!」


 俺は騒ぐ女の口に猿轡を噛ませた。そして話していた研究員に続きを話すように促す。


「続けろ」


「わ、わかった。とにかくここは好都合だった。ファーマー社が放射線の防壁を作る事で日本政府と合意し、放射線漏れがないようにすることで権利を得た。一般市民は近寄らないし、報道関係もシャットアウト出来た」


「それで?」


「俺達はここに研究所を作り、日本の研究員は全てここに集められた。もちろんアメリカやドイツやイギリスからも派遣されているがな」


「誰も疑問に思わんのか?」


 すると男は少し間を開けて言う。


「実際はゾンビパンデミックを起こしたことで、自分の会社が恐ろしくもなったさ。だがその後で、俺達ファーマー社日本支部の研究員は優遇された。皆が皆一億円の臨時賞与をもらったんだよ。さらに薬まで投与してもらったんだ」


「薬? なんのだ?」


「我々はゾンビ感染と発症しない薬を投与され続けている」


「ゾンビ感染しない薬?」


「定期接種を切らせばどうなるか分からんが、定期接種する事でゾンビ発症を押さえるんだ。もちろんゾンビになった後では効き目はなく手遅れになるがな」


「その薬はどこで手に入る?」


「それは…」


「答えろ」


「恐らく保健センターの保管庫に保存されているはずだ」


「保健センターとは?」


「この館内の病院みたいなところだよ」


 どうやらこいつらは自分らだけ、ゾンビにならないような薬品を手に入れていたらしい。そのうえで一般市民の体を使い、ゾンビ因子の研究をし続けたのだ。


 ドン!


 その話を聞いていたタケルが銃で床を叩き、こちらを向いて言う。


「金をもらって自分達はゾンビにならないだぁ? ふざけてんのか?」


 すると研究員が言う。


「俺達にだって家族は居る。どうせ抗ったって変えられないなら、金をもらって良い暮らしした方がましだろ?」


「もし、おまえの家族がゾンビ実験に使われたらどうすんだ?」


「…実際になっていないものは分かりようがない」


「人の痛みが分かんねえのかよ! おまえら、クズ中のクズだな!」


「なら、あんたらは俺達に死ねって言うのか?」


「はあ? 一般市民は生きるか死ぬかの選択も出来ないまま死んだんだ。ふざけるのもたいがいにしろよ」


「ふっ。まあ、見たところ、お前は低学歴っぽいからな。馬鹿にゃ優先権なんか回ってこないのさ」


 ガツッ!


「けくっ」


 タケルを馬鹿にされ、俺は思わず研究員の顔を蹴り飛ばしてしまった。力の加減を間違ってしまい気絶してしまう。それを見た他の研究員が言った。


「人でなし! 人を殺す事を何とも思わないのか!」

「テロリスト!」


「貴様らが言うか」


 そしてマナが言った。


「パソコン内のデーターは確保したわ。後はサーバールームに行って出来るだけ情報を取りたい」


 腕を刺した女を起こし、猿轡を外して聞いた。


「サーバールームはどこだ?」


「あ、教えてあげるから! わ、私を助けて!」


「場所を教えてくれたらな」


「もちろん教えるわ!」


 その話を聞いてオオモリが言った。


「出来れば、僕の作業もサーバールームが良いっすね」


「行こう」


 俺が女の足の綱を切ると、タケルが来て女を起こした。


「外に人は?」


「いないみたいよ」


「タケル達は先に部屋を出ていてくれ」


「わかった」


 俺以外が部屋を出て行った。


「さて」


 俺は振り向いて転がっている奴らに言った。


「俺達が去ったら軍を呼ぶつもりだろう?」


「いや! 何もしない!」

「そうだ! 君らが来た事は誰にも言わん!」

「た、助けて」


 だが俺はもう聞く耳を持っていない。そこにいた研究員を手早く黙らせて、部屋を出るのだった。 


 女がふらつきながらもサーバールームへ向かう道を進んだ。そして顔を壁に近づけ手のひらをつけて扉を開ける。ガラスの向こうに入ると、数人の研究員が一斉にこちらを向いた。


「刺突閃」


 そこにいた研究員を倒すと、それを見た研究員の女が顔を引きつらせて言う。


「いま、な、何をしたの? 銃じゃないわよね?」


「黙れ」


 女が黙る。どんと背中を押すとさらに通路の奥に進んでいった。


「ここがサーバールームよ」


「開けろ」


「権限がないわ。私は一介の研究員だから」


「わかった」


 俺が扉を切ると女は驚愕の表情を浮かべる。


「いったい…どうなっているの?」


「先に入れ」


 女を先に入れ皆が続けて入る。そこに点滅する機械が大量に置いてあった。


「ちゃんと連れて来てくれたみたいね」


 マナが言うと研究員の女はコクリと頷いた。


「そうですね。すぐに取り掛かりましょう!」


 マナとオオモリが作業をし始める。研究員の女が力なく座り込んだ。


 だが作業をして間もなく、地上の様子に変化が出て来た。どうやら研究所周辺に軍隊が集結しつつあるらしい。俺が上を見ながら言う。


「どうやら、気づかれようだ」


 タケルが俺に聞いた。


「どうする?」


 俺は研究員の女の前にしゃがみ込んだ。


「知的ゾンビは完成しているのか?」


「いえ、残念ながら完成には至らないわ」


 そんな会話をしていた時だった。ビービービービーと警報が鳴り始める。それを聞いたマナがオオモリに言う。


「急いで」


「もう少し」


 するとサーバールームの入り口の方から、研究員達が騒ぐ声が聞こえて来る。


「間もなく軍が突入してくるかもしれん」


「ちょっと待ってください!」


 突然ツバサが叫ぶ。


「な、何か入って来た!」


 グルルルルルルル!


 サーバールームの入り口から、異形の何かが入って来た。それを見た研究員の女が叫ぶ。


「試験体だわ!」


 それは俺も見たことのない人間型の何かだった。次の瞬間俺は剣技で試験体を細切れに斬る。


「嘘…今、なにしたの? 試験体が突然崩れ落ちた!」


 だが俺はそれに答えず言った。


「とうとう始まった」


「どうして研究棟に試験体がいるのよ!」


「第二研究所でも同じだった。侵入者を探知すると解き放たれるらしい」


「嘘…そんな…」


「今ごろ気が付いたか? お前達は捨て駒なんだ」


「嫌よ…そんなはずないわ。私はファーマー社の研究員なのよ?」


 女が呆然としている。恐らく館内には蜘蛛ゾンビやキマイラゾンビが解き放たれているだろう。そしてようやくオオモリが言う。


「リンクしました! 敵のネットワークを傍受出来ます!」


「動けるか?」


「6Gスマホにもリンクさせたのでいけます!」


「マナは?」


「データが大きすぎて全部は無理。だけど知的ゾンビ関連と6G関連や軍の組織図などは取れてる。まだ本拠地のデーターが見つからない」


「まだ軍のやつらは入ってきていない、急げ!」


「もう少し待って」


 すると一人の研究員がサーバールームに入って来て言う。


「おい! 試験体が解き放たれてるぞ! 早く逃げろ!」


 そう言ったが、研究員は俺達が侵入者だと気が付いて逃げようとする。そこにあの蜘蛛ゾンビがやってきて、男の頭をぱくりと食いちぎってしまった。


「乱波斬!」


 蜘蛛ゾンビを細切れにすると、女の研究員が言った。


「なに? あなた…バケモノ…」


 するとタケルが苦笑して言う。


「どっちがだよ」


 ようやくマナが言った。


「見つけたわ! やはり海上にあるみたい!」


「よし! 脱出しよう!」


 俺が女の研究員を連れていこうとした時、突如体に異変が起こり始める。


「うぐっ! うがあぁぁぁぁ! ああああああ! ぐがああああ!」


「なんだ?」


 俺達は女から離れた。女の研究員がばたりと倒れ込み、体があらぬ方向に曲がり始めたのだった。

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