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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第197話 ゾンビプログラム

 第一原子力発電所を数日監視していたら、更に軍艦や大型の船舶が入港して来た。そしてさらに遠方から何台もの車両の音が聞こえて来て、ヘリコプターが飛ぶ頻度も多くなってくる。恐らく前の研究所で見たものより、更に重要なものが隠されていると結論付けられた。


 一方、AI研究所のオオモリの方はコーラとスナックだけを口にしながら、三日も寝ずにプログラムをし続けている。動くのはトイレに行く時だけで、それ以外はずっとパソコンとにらめっこだ。ヤマザキが炊いたご飯も口にせず俺達ともあまり話さなかった。


 そこで俺達は今後の行動を決めるべく、何度も話し合いを重ねていた。二つの意見で決めかねており、大多数はここが重要な岐路だと言う。俺としては安全を期すために更に逃げる事を考えたが、みんなは原子力発電所の研究とAI研究所が未来を握っていると言った。ここを離れててしまえば、活路は見いだせないんじゃないかと言う意見だ。


 そしてヤマザキが言った。


「恐らくここで核は使わないと思うがな、前の研究所でも使わなかった」


「どうしてそう思う?」


「あれだけの軍を集結するという事は、それだけに守りたいものがあるという事だ」


「確かにな。だが軍が集結しているという事は、じきにこのあたりも危険になる。食料調達も厳しくなるだろう」


「それはヒカルの言うとおりだろう。だがこれ以上逃げ場はないように思うんだ」


「北はどうだ?」


「北上すれば仙台があるが、そこそこの大都市だ。下手をすればそこにもファーマー社は居る」


「なるほど」


 今回ばかりは皆の意見が割れた。俺が言う逃げるという意見に賛成したのは後で合流したユンとリコだけで、他の皆はこれ以上の逃亡に意味が無いと判断している。


 パチパチとパソコンを弾くオオモリを皆がチラリと見た。オオモリは俺達の事を一切気にせずに、プログラムに没頭したままだ。


 そしてユリナが言った。


「大森さんは何をプログラムしているのかしら?」


「わからん。ハッキリ言わないからな」


「いつまで待てばいいかしら?」


「それもわからん」


 第一原子力発電所に大軍が集まりつつある、その目と鼻の先で俺達は決断を迫られている。そしてファーマー社の新たな研究は、完全な害悪だけではないと言う意見もあった。たしかに軍事利用すべく、異形の試験体を作ったり一般人を殺している事は許せない。だがもし知的なゾンビが作れたならば、この世界を変える可能性がある。


 ただし、それにはミナミが警鐘を鳴らす。


「確かに知的なゾンビは良いと思うけど、全てがファーマー社に利用されたら最悪だわ。ゾンビの世界を復興させるなら、出来上がった知的ゾンビを奪えないのかしら。そもそもそんな個体が出来るのかって話もあるけど」


 それにはユリナも同調する。


「本当にそれに尽きる。全てファーマー社の思うままになったらそれこそ、日本人は滅ぼされるんじゃない?」


 確かにそうだ。この世界を正常化させるために動いているなら、もっと友好的な立場で研究を進めるはずだ。日本人を奴隷のように、体内に何かを仕込んでまで言う事を聞かせているのはおかしい。


 そしてヤマザキが言う。


「もしかすると、日本は完全にモルモットにされてるんじゃないか? ゾンビは海を越えて拡大しないから、島国の日本は実験場に丁度いいのでは? テレビのニュースでは海外でも暴動は起きたなんて言っていたが、それを実際に見た日本人はいない」


 ユリナが頷いた。


「最終的に他の国では、ファーマー社との取引を拒否していたわね」


 タケルが言う。


「だからこそのこの地じゃねえかな? ファーマー社があえて選んだ地だ」


「と、言う事はタケルはここが決戦の地であると思っているのか?」


「そうとも考えられるんじゃねえの? もしかしたら…いや…」


「なんだ?」


「原子力発電所の事故だって災害だったのかなって」


「故意にやったと?」


「まあ分かんねえけどよ」


 とはいえ、今ここでどう攻めるべきか? ここに居るファーマー社を壊滅させても、次々に軍隊が来る可能性があるんじゃないか? 


「いずれにせよ、ぼやぼやはしてられない訳か…」


 そんな時、ターン! とパソコンのキーを打つ音が鳴り響いた。俺達がオオモリを見る。


「出来た! かも…」


「なにがだ?」


「プログラムですよ」


「それはなんだ?」


「えっと。もし出来てなかったら恥ずかしいので、いったん実装してうまくいってから教えてもいいですか?」


「わかった」


 オオモリはパソコンを壁の所にある大きな機械につなぐ。それからマナに言った。


「愛菜さんはサーバーの知識があるんですよね?」


「ええ」


「これRAID6で組まれてるんすけど、そのうちの一部にインストールしたいんすよ。今のシステムが止まらないようにしたいんですけど」


「止まるとどうなるの?」


「外のゾンビが暴走するか、固定が解かれるっす」


「ならゾンビを、倒せばいいんじゃない?」


「そしたら試験が出来なくなります」


「なるほど。わかったわ」


 オオモリがマナを敷居の裏のサーバールームに連れていく。そこに入ったマナが驚いた。


「凄い台数ね」


「ウチの心臓部っす」


 マナがサーバーに取り付けた画面とキーボードを弾いて、オオモリに言う。


「いいわ。インストールして」


「はい」


 オオモリがパソコンのボタンを押し、しばらく待っているとインストールが終わったようだ。そしてマナに言う。


「再起動お願いします」


「はい」


 マナが作業をしてオオモリに告げる。


「終わったわ」


「さてと…」


 オオモリが指をポキポキと鳴らし言った。


「行きまーす!」


 カチ!


 そしてその瞬間、外のゾンビの様子が変わった。マナがオオモリに聞く。


「どうなったの?」


「見にいきましょう」


 部屋の皆もざわついていた。


「部屋の外で凄く足音がするの」

「ゾンビが動いているようだぞ?」


 オオモリは頭を掻きながら焦った顔で言う。


「失敗してないはず」


 俺が先頭に立って言った。


「俺が見てみる。一斉にゾンビが雪崩れ込んでくるかもしれないので皆奥へ下がれ」


「「「「「はい」」」」」


 俺がドアノブに手をかけてドアを思いっきり開くと、そこに面白い光景が現れるのだった。なんとゾンビが一定方向に歩いていく。俺がここに居るにも関わらず、見向きもせずに前のゾンビについて行くのだ。


「ちょっと待ってろ」


 俺が外に出て細かく確認すると、なんとゾンビは通路をぐるぐると回っていたのである。一定の速度と一定の距離を保ちながら規則的に歩いている。俺が部屋に戻ってそれを皆に伝えた。


 すると大森が言う。


「成功っす!」


「どう言う事?」


「ゾンビを動かせています! コマンド通りに! 自動運転みたいなもので、前のゾンビについて行ってるんですよ」


 俺が皆に言った。


「念のため武器を持って外に出てくれ。皆で確認しよう」


 皆が装備をして廊下に出ると、その光景に目を丸くした。なにせ、ゾンビがぞろぞろと一定の行進を続けているのだ。


「ここに人間がいるのに襲わないんだ…」


「はい! 全部コマンド通りにコントロール出来てるっす。後はコマンドのバリエーションを増やして、最終的にマニュアル操作できるところまでいきたいです!」


 オオモリが目の下のクマをものともせずイキイキと話す。するとタケルがオオモリに肩を組んで言った。


「おまえ! すげえな! 天才じゃねえか!」


「はは、それほどでも…ははは…」


 すると、糸の切れた操り人形のようにオオモリが倒れかけた。タケルが支えて声をかける。


「おいおい」


「ぐー! ぐー!」


「寝てやがる!」


「それはそうよ。三日三晩仮眠もとってないんだから」


 タケルがオオモリをヨイショっと担いだ。


「偉業を達成したんだし、寝かしといてやるか」


 それを見て俺が言う。


「コーラの大ボトルを回収して来てやろう」


「それが良い」


 俺達の前を一心不乱に進むゾンビを見て、俺達は可能性を見出す事が出来たのだった。そして俺は皆に告げる。


「皆の言う通りかもしれん。ここが俺達の未来を決めるポイントだ」


 俺の言葉に皆が顔に笑顔を浮かべた。そして俺が言う。


「で、コイツが寝ている間にゾンビ因子を取り除いてしまおう!」


「それがいい。変に抵抗されなくていいわ」


 俺達は管理室に戻り、オオモリの服を全部脱がせ始めるのだった。

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