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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第196話 聴力

 装甲バスは何事も無くAI研究センターに到着する。俺が玄関口に立って 防犯カメラに手を振ると自動ドアが開き全員が中に入った。すぐに入り口の内線が鳴ったのでマナがボタンを押す。

 

 するとオオモリの声が聞こえた。


「そんなに大勢いたんですね!」


「そうよ」


「開けます!」


 内扉が開き入って行くと、皆が動かないゾンビを怖がった。一応マナが皆に説明をする。


「怖いよね。でも動かないんだって」


 リコがそれに答えた。


「でも今にも襲いかかって来そうで怖いわ」


「言えてる」


 無事に管理室に到着し、中からオオモリが鍵を開けた。


「連れて来たぞ」


「ど、どうぞ」


 みんながぞろぞろと入ると、オオモリが目頭を押さえて俯き声を出して泣き出す。


「う、ううう」


「どうした?」


「僕はもう独りぼっちだと思ってたから、人に会えて本当にうれしいんですよ」


 するとヤマザキが微笑んで言った。


「我々も大森さんのような人が、生き残ってくれていてうれしいよ」


「ありがとうございます!」


 そして皆が周りの機械を眺めはじめる。それを見た大森が言った。


「一応機器には触らないで下さいね。電波が切れると外のゾンビが動いちゃうから」


 するとユリナが並ぶスマホを見て言った。


「本当にスマホでゾンビを制御してるんだ」


「はい。今の所は止めておくだけですけどね。とにかく適当にその辺に座ってください」


 オオモリに言われ、皆がリュックを下ろして床に座った。


「ふう」


「すみません。食料とか飲み物の在庫があまりなくて」


 ヤマザキが答えた。


「多少確保しているから、むしろ我々が提供するさ」


「ほんとですか!」


「ああ」


 一通りの挨拶が終わったので、俺は早速本題に入った。


「オオモリ、それじゃあ開発とやらを進めようか?」


「はい。ヒカルさんが読み解いた情報をいろいろと教えてください」


「わかった」


 俺がファーマー社のパソコンから読み取った情報を話しながら、オオモリが白い盤に何かを書き記していく。時おり止まり質問をされながら、俺が読み取った情報を教え続けた。更に文字を書き足して腕組みをしている。


「百二十八パターンでしたっけ?」


「そうだ」


「わかりました」


 そして今度は数式のような物を書き出したと思ったら、突然パソコンをいじり始める。


「オオモリ、他に聞きたいことはあるか?」


 と俺が声をかけても、オオモリは画面にかじりついて集中しているようだ。仕方がないので皆を休ませ、俺がオオモリの側に座った。するとオオモリは、あー! とか うー! とか言い出す。


「どうした?」


「あの、コーラ無いですか?」


「飲んでしまった」


「そうなんだ…」


 そう言って頭を掻きだした。集中できなくなっているらしい。そこにユリナがやって来て言う。


「まずは何か食べます?」


「えっと、せんべいとかスナックありますかね?」


「あるわ」


 そう言ってユリナがガサゴソとリュックから取り出す。俺がオオモリに言う。


「コーラを取って来てやる。まっていろ」


「えっ? いいんですか?」


「コーラなら、いくらでもあるぞ」


 そう言って俺は一人リュックを背負い研究施設を後にした。夜の暗闇の中をバイクで走っていると、赤い自動販売機が見えて来る。タケルが言うには赤い自動販売機にコーラが入っているのだ。それに山の中にある販売機ほど破損していない。


 俺が自動販売機の表板に手を当てて引きはがすと飲料水は手付かずだった。俺はありったけのコーラと飲み物をリュックサックに詰め込んでいく。


「よし」


 すぐに研究所に戻って玄関で手を振るが自動ドアが開かない。仕方がないので前に侵入した二階のガラスに周る。二階から侵入し一階に降りて管理室をノックした。


「はーい」


 中からミオが開けてくれた。


「玄関で合図したんだが」


「彼、パソコンとにらめっこしたままだから。次は開け方を聞いておくわ」


 俺がオオモリの所に行って、コーラを渡してやる。


「わ! マジでコーラじゃないですか!」


 突然反応して、ペットボトルの蓋を外しごくごくと飲み始める。あっという間に半分ぐらい飲んで口を放した。


「ぷっっはぁ! げふっ!」


 飲んで思いっきりげっぷをしたオオモリが言う。


「わかった!」


 パチパチとパソコンを打ち始めた。オオモリは全く寝る気配がなく、朝になってもまだパソコンを打っていた。


 俺は皆に言う。


「これから偵察に出る。船がどうなったか気になる」


 すると、ツバサが手を上げた。


「私も行くわ」


「わかった」


「みんなはここに居てくれ」


「「「「「了解」」」」」


 二人が研究所を出ると、空は曇っていて今にも雨が降りそうだった。


「雨が来そうだ。ツバサは残るか?」


「ううん大丈夫。厚着してるし」


「そうか」


「あとね。私の能力を確認したいの」


「ツバサの能力?」


「うん」


 俺達はバイクに乗って出発した。すると案の定ポツリポツリと雨が降り出し、ザーッと雨が落ちる音がしてくる。


「やはり降って来た」


「本当ね」


 雨音の中をバイクで走っているうちに、俺の耳にヘリコプターの音が聞こえて来た。俺がそれをツバサに伝えようとした時だった。後ろのツバサが俺の肩をトントンと叩いた。


「なんだ?」


「ヘリコプターの音がする」


 どうやらこの雨音とバイクの音が混ざった環境で、ヘリコプターの音を聞き分けられたようだ。ひとまず発見される危険性を回避する為、バイクごと建物の屋根の下に入った。しばらくするとヘリコプターが通り過ぎていき、発電所の方に向かって音が聞こえなくなった。


「あの状況で聞こえるのか?」


「うん、多分私は耳が発達しているみたい」


「それは武器だぞ。敵より早く気づく事が出来る」


「役立つかな?」


「もちろんだ」


 そして俺達は再びバイクを走らせ海辺に到着した。海にせり出した場所に行って、バイクを降り海岸沿いの先まで進む。ツバサが双眼鏡を取り出し第一原子力発電所の方角を見た。


「船尾が見えてるわ」


「まだいるようだな。電源の復旧が進んでいないのかもしれん」


「一日二日じゃむりかも。あれだけ派手に壊したらそりゃむりよね」


「だがこれで、奴らが容易に研究所を放棄しないことが分かった」


「そうね」


「しばらくは俺達もAI研究所を動く事は出来ない。どのくらいでオオモリが結果を出すか分からんが、それまでは監視を続けるとしよう」


「わかったわ」


 しばらく監視をしていると雨が上がって来た。通り雨だったようで、次第に太陽が顔を出し始める。するとツバサが言った。


「またヘリが飛ぶわ」


「基地からだな」


「雨が上がったから偵察に出るんじゃない?」


「ひとまず隠れよう」


 俺達が近くの建物に入るとツバサが言った。


「ここは魚市場だわ」


「魚を売る所か?」


「たしか、原子力発電所の事故があってから、しばらくはやってなかったんだけど復帰したらしかったの。それが…こんなゾンビの世界になってしまって」


「一難去ってまた一難か…」


「しかもこれが人災だとわかったら、悔やんでも悔やみきれないわよね」


「そうだな」


 またツバサが聞き耳を立てるように、耳に手を当てた。


「どうやらヘリは行ったようだわ」


「ああ」


「また桟橋に行くの?」


「しばらくは監視を続けてみよう」


 俺とツバサは再び海の先にある桟橋に向かった。立つと目立つため寝そべって監視を続ける事にする。


「少し寒くなってきたわね」


「雨でぬれたからな」


 ツバサの唇の色が悪くなってきたので、俺はツバサに覆いかぶさるようにした。


「えっ?」


「少しは温かいか?」


「…うん…」


 二人は重なり合ったまま原子力発電所を監視した。それからしばらくヘリコプターの音がすれば市場に隠れ、音が消えれば桟橋で監視するのを続けた。


「変化はないな」


「そうみたい」


「帰ろう」


「うん」


 俺がバイクにまたがり、ツバサは後ろに乗って俺の胴に腕を回して来た。


「寒いか?」


「うん」


「もう少しくっついていろ」


「わかった」


 ツバサの腕の力が強くなる。俺達が乗るバイクは再びAI研究所へと戻るのだった。

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