第191話 青春のCB400FOUR
敵の拠点が海上にあるかもしれないと分かったところで、小さな船では最悪撃沈されるか拿捕されるのがオチだ。だが予想では、海上拠点が本拠地である可能性が高い。どうにか近づく術があれば、俺が拠点ごと潰す事が出来るだろう。
「まずは情報だろうね」
マナがハードディスクとSSDを持って言う。
「何かつかめればいいが」
「いずれにせよ、電気店を探さないと」
「そうなると、小さな町には無いんじゃないか?」
そしてミオが地図を広げ皆が地図に集まる。そしてマナが言った。
「量販店でもパソコン修理の部門があったりするわ」
「だとここから近いのは南相馬市か」
「ここからならニ十分くらいで行くわ」
「そろそろバスの燃料も必要だぜ」
しかし時おり上空をヘリコプターが飛ぶため、バスで動くのは危険だった。一度どこかに潜伏して待った方が良いだろう。
「まずはあの船がどうするのか確認したいところだが」
「まだ出航していないみたいだけど」
入港してからしばらく経つが、タンカーは未だに第一原子力発電所に止まっている。するとツバサが何かを思いついたように言った。
「もしかして、タンカーで電源供給してない?」
それを聞いたヤマザキや皆がハッとした。
「それだ…恐らく電源復旧させるまで、船を停留させて電源を供給するつもりだ」
「ちっ! 用意周到なこったな」
だがそれを聞いた俺は言った。
「それならそれで、原子力発電所をすぐに爆破するという事が無いという事だ」
「なるほどな。ヒカルの言うとおりだ」
「その前に情報を探る必要がある」
「じゃあ、皆で電気屋を探しに行かんと」
だがこれだけヘリコプターが飛ぶ中を、バスで移動するのは危険だった。そこで俺はタケルに言う。
「バイク店ていうのは田舎には無いのか?」
「いや。あると思うぜ」
「ならまずはバイクを回収しよう」
「わかった」
それを聞いたミオが言う。
「なら浪江町内にあるんじゃない?」
俺とタケルが地図を見て頷いた。
「皆はバスで待機してくれ。くれぐれも動くな、夜になる前に動けばすぐに見つかるぞ」
「わかった」
「じゃあいって来るぜ」
俺達は皆の元を離れて、すぐに街中に潜伏した。だが奥に行けば行くほどそのおかしさに気が付く。
「タケル、ゾンビがいないと思わないか?」
するとタケルが答えた。
「ここは原子力発電所の事故で人が避難した地域なんだよ。人が住んでいないからゾンビもほとんどいねえって事さ」
「そう言う事か。ファーマー社は人が近づかないところで、研究をしているというわけだ」
「もしかしたら、ゾンビの世界になる前からだったのかもしれねえな」
「倒壊している家屋があるぞ」
「復興途中でゾンビの世界になっちまったんだ。ここじゃ動物もいねえだろう」
「バイクはあるだろうか?」
「さてな」
俺達が方々を探すが、バイク店はあれど肝心のバイクが無かった。それでもしらみつぶしに探していくと、ようやくバイクの置いてある店を見つける。
「看板もねえ」
俺達がガラスの外から見ると、確かにバイクが置いてあるようだ。だが、のぞいてすぐにタケルが言う。
「スクーターしかないぜ」
「スクーター?」
「排気量五十CCしかねえ、非力な奴だ。二人で乗れるかもしれねえけど、スピードは出せない。いざという時に逃げられない」
「他をあたってみよう」
「ああ」
俺達が倒壊した家屋やビルの間を抜けて行くと、これまた古びたバイク屋が出て来た。
「期待は出来ねえけどよ」
「みてみよう」
「シャッターが下りてんな」
「斬る」
俺が日本刀でシャッターを斬り落とすと、ガラスのドアが出て来た。タケルがモーニングスターでガラスを割り、手を入れて鍵を開ける。
「ぐっちゃぐちゃに荒れてんな」
「どうしてだ?」
「地震だよ。そのまま避難して帰って来てねえんだ」
「そう言う事か」
「自転車をどかしていこう」
「わかった」
俺達は店内に入り、自転車や重なったスクーターを外に出して行く。しばらく作業をしていたらタケルが大声を出した。
「マジか!」
「どうした?」
「すげえのあったぜ」
そして二人でがれきを取り除いていくと、下から赤いバイクが出て来た。
「ヨンフォアじゃねえか!」
「凄いのか?」
「いや。パワーとかは今まで乗った奴と比べ物にならないほど無い。けど売ったらめっちゃ高い旧車だ。こんな田舎に眠ってるなんてな」
「鍵を探そう」
「ああ」
それから俺達は店内を片付けまくった。すると台の下の金庫から鍵がいっぱい出て来た。
「合わせてみようぜ」
鍵を合わせていくうちに、ようやく合うのを見つけた。だが鍵を回すもエンジンがスムーズにかからなかった。
「押しがけしてみる」
「わかった」
バイクを道路に出してタケルが押していく。もう左手も手の平まであるので、バイクを押す事ぐらいは余裕で出来た。
ブオン!
「かかった!」
「凄いなタケル」
「どっかの車からガス盗んで入れよう」
「わかった」
タケルはバイク屋にあったパイプを持ち、周辺の車を探す。住宅の駐車場の車を見つけて、給油口を破壊し口でパイプを吸ってバイクに入れ始める。
「エンジンきれねえように、適当にフカしててくれ」
「ああ」
俺はスロットルを軽く回し、バイクのタンクが満タンになるのを待った。
「なんかやんちゃだった頃を思い出しちまう」
「タケルの青春だものな」
「はは。まあ聞こえはいいけどよ、大人達にいっぱい迷惑かけた」
「若い頃は迷惑はかけるもんだ。俺なんか世界中に迷惑をかけるところだった」
「壮大すぎんぜ」
「俺もタケルみたいな楽しい青春が良かったよ」
「今からでも遅くねえって」
二人で笑いながらガソリンを満タンにして、また二人でバイクにまたがる。田舎の道は視界も良く、家も大して建っていない。
「いいぜ」
「行こう」
「ああ」
久しぶりに俺はタケルを背に乗せて、バイクを走らせる事が出来た。田舎の道をバイクで飛ばすのは最高に気持ちが良かった。俺の気持ちもだんだん高揚してくる。
「タケル! これはこれでいい感じだぞ!」
「いいだろ? 旧車には旧車の良さがあんだよ! 海沿いなんか飛ばしたら最高に気持ちいいぜ」
「なんとなくわかる気がする」
「異世界から来たのがヒカルで良かったよ! バイクに興味の無い奴だったら俺とは話が合わなかったと思う」
「こんな鉄の馬は前世に無かったからな」
「しかもよ。今は、バイクに乗ってるヒカルがヒカルらしく見えて来たぜ」
「おかしなものだな。俺はこの世界の人間じゃないのに、でも間違いなく最高だ」
「ひゃっほー!」
タケルが言うので俺も真似てみた。
「ひゃっはー!」
「どうだ? 気分いいだろう?」
「そうだな」
俺達は笑いながらバイクに乗っている。そしてすぐに皆の待つ場所に戻って来た。
「動きは?」
俺が聞くとユリナが答えた。
「ないわ」
「すぐに出発する。マナの準備はどうだ?」
「行けるわ」
「行こう」
ヤマザキが声をかけて来た。
「くれぐれも気を付けてくれよ」
「わかった」
そしてミオが言う。
「地図を持って行って。ここからなら県道120号を通るのが良いと思うわ」
マナが答える。
「ありがとうミオ。こっからだと南相馬市はニ十分くらいね」
「だと思う」
俺はマナを後ろに乗せて出発するのだった。




