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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第190話 巨大船来航

 俺達は山林地帯に隠れて様子を見る事にした。装甲バスの窓を開け、外の音がよく聞こえるようにして聞き耳をたてている。するとヘリコプターが、近隣を飛び回っているような音が聞こえて来た。その音を聞いてヤマザキが言った。


「送電されないから確認しに来たんだろうな」


「でも発電所が無事だから、すぐには原因がわからないよね?」


「ああ。美桜の言うとおり、鉄塔を破壊したのは名案だったな」


 それに俺が言う。


「ミオの発案は間違っていなかったという事だ」


「そんなに大したことじゃないよ。でもこれで原因究明までの時間も稼げたし、恐らく朝が来ないと気が付かないと思う」


「陽が昇らないと、奴らは何も出来ないという事か」


 それにヤマザキが言った。


「すぐに復旧出来るだけの人員は居ないと推測するよ」


 そして俺達はどうするかを考える。もう一つの原子力発電所に向かう事も考えたが、爆破された場合かなり危険だという判断になった。だが、このままここに居ても状況が分からない。


 ミオとユミとユリナが床に地図を広げて、懐中電灯で照らしながら確認していた。


「距離をとりながらも見張れるところがあると良いが」


 するとミオが言った。


「海まではいかないけど、展望台がある公園があるみたい」


「どこだ」


「ここ」


「ここからどのくらいだろう?」


「たぶん、ここからニ十キロくらいかな。バスで行けば三十分かからないと思う」


 それを聞いたヤマザキが言った。


「ならヘリコプターを警戒しながら行くとしよう」


 皆が頷いた。少し風があるようで木葉がこすれる音が流れていった。辺りは真っ暗だがゾンビもおらず、ヘリコプターの飛翔音だけが鮮明に聞こえてくる。二時間ほど待っているとヘリコプターが飛び去って行き、それを聞いたミナミが言った。


「燃料切れだと思う」


「行くぞ! ヤマザキ!」


「ああ」


 俺達の装甲バスは、ミオ達が地図で発見した展望台へと向かった。森林地帯を抜けて、田んぼに挟まれた田舎道をひたすら東に走る。


「恐らくこのあたりだわ」


 バスの中から懐中電灯で外を照らし、皆が見ていると標識が出て来た。


「山崎さん。次のわき道を左に入ると駐車場だわ」


「わかった」


 バスが展望台に到着するまでのニ十分余り、ヘリコプターが飛ぶ事はなかった。ヤマザキがバスを駐車場に停め皆に言った。


「じゃあ、展望台に行って見よう」


 皆がバスを降りて暗闇の中を展望台へと向かう。柵の周りに集まって見るが、真っ暗なため皆には見渡せないようだ。


「向こうが海だ」


 俺が指をさすと皆がそちらを向いた。だが何も変化がなく、ただ暗い闇がそこにあるだけ。


「朝が来ないと分からんだろうな」


「ヤマザキ。皆で見張っていても意味が無い、交代で見張りを立てよう」


「わかった」


「バスで待機する組は、極力眠るようにしてくれ」


「「「「「はい!」」」」」


 俺達が見張り始めて一時間が過ぎた頃だった。南東の空に数機のヘリコプターが浮かび上がるのが見える。ヘリコプターは二機ずつに分かれて北と西に向かって飛んで行った。


「確認しに行ったようだ」


「みたいだ。だが暗闇の中で崩れた鉄塔を見つける事が出来んのかよ?」


 タケルの言葉にヤマザキが答える。


「恐らく発電所の方で、どこらへんで送電が止まったかは分かる仕組みになっているはずだ。電力会社の人間がどれだけ残っているかは知らんが、迂回出来る電線を探して復旧作業をするだろう」


「そりゃ、まともに機能してたらだよな」


「そのとおりだ。ファーマー社の人間に復旧作業がどれだけいるかはわからんし、研究所がどれだけ電気の供給が止まってて良いのかもわからん」


 俺が海の方角を見ていた時だった。何か遠くで赤く点滅しているのが見えた。


「ヤマザキ。あれは何だ?」


 ヤマザキが海を見て言った。


「船だと思う」


「船…」


「何かを回収しに来たんじゃないか?」


「最初の研究所を破壊したからか?」


「だろうな」


 敵の目的が全く分からなかった。ヤマザキが俺に聞いて来る。


「ヒカル。船の大きさは分かるか?」


「残念ながら真っ黒の船体らしい、周りとあまり区別がつかん」


 するとミナミが言った。


「ステルス的な奴だ」


 どうするべきか? だがファーマー社は随分警戒しているようだ。横須賀基地の時のように船を沈めに行ってもいいが、その後で基地が爆破されたり核弾頭を撃ち込まれたら俺でもどうなるか分からん。東京で見た爆発の規模で推測すると、破壊力は魔王ダンジョンの高層にいた魔人並みの力があった。二発くらいは耐えられても、三発目に魔力が切れてしまうかもしれん。流石に、エルヴィンやエリスの助け無くして切り抜けるのは難しいだろう。


「朝まで待ってみよう」


「わかった」


 俺達は展望台で朝が来るのを待つことにした。空が薄紫に色づいて来たころ、船も岸に近づいて来た。さらに周辺をヘリコプターが飛び交い護衛体制を強化しているようだ。


 それを見たヤマザキが言う。


「タンカーと護衛艦二隻だ」


「デカいな」


「ああ。本来は貿易に使われる船だな。石油を運んだりするものもあれば、農作物や自動車を運ぶ場合もある」


「横須賀で見た空母とは違う」


「どちらかと言うと民間で使うような船だからな。だが護衛艦のほうは砲塔もあるし恐らくはミサイルも撃つだろう」


「そうか」


 するとミナミが言った。


「もしかして敵の本拠地は海上なんじゃないかな?」


「何故そう思える」


「だって、今までの敵の拠点って全部、港がある施設ばかりだった。横須賀でも巨大な空母が居たんでしょ?」


「なるほど」


 するとタケルが言った。


「だとしたらよ。もしかしたらユミの出番かもな」


「どういうことだ?」


「ユミの趣味はダイビングなんだよ」


「それは役に立つのか?」


「船舶免許もってんだよ。クルーザーとかの」


 それを聞いたミナミとヤマザキが顔を合わせ、ミナミが言う。


「意外! そうなんだ?」


「ちょっと日焼けしてるし分かるかと思ったけど」


 船が陸地の陰に隠れて見えなくなった。恐らくは原子力発電所に接岸しているのだろう。それを見た俺達はバスに戻って話し合いをすることにしたのだった。

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