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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第189話 送電線を叩け

 俺達が一時間ほど暗闇の山中を進むと集落が見えて来た。そのまま集落を走っていると大きめの駐車場がある敷地を発見する。


「一度そこに入ろう」


 バスを敷地に入れて気配感知をするとゾンビの気配がある。次第に空が明るくなってきており、ヘリコプターを警戒した俺達はバスで動くのを止める事になった。


「ひとまずゾンビを始末する必要がある」


「わかった」


「ついでに食料を探そう」


 俺達はバスを降りて、近隣に潜むゾンビを潰して回った。皆でゾンビが狩れるようになったおかげで、こういう時の時間がかなり短縮されるようになる。皆が戻ってきたころには西の空に陽が昇りつつあった。


 皆が周辺の建物を調べた結果、ちらほらと食べられそうなものがあったらしい。その中でもタケルが朗報を持ってくる。


「おい! みんな! 米を発見したぜ!」


「マジ!」


「やった!」


 俺達がタケルについて行くと、大きな建物が見えて来る。それを見たヤマザキが言った。


「まあまあデカい農協があるんだな」


 俺達はその建屋に侵入し、それぞれが米袋を担いで出て来た。先ほどバスを停めた場所に戻り、皆で米をそこの建物に運び込む。どうやらそこは飲食店の跡地らしかった。


 ヤマザキが言う。


「茶屋ってだけあって、調理道具も充実している。まずはご飯を炊いて食うぞ」


「塩もあるよ!」


「なら握り飯だ」


 建物の中で火を起こし、鍋を用意してヤマザキが米を炊き始めた。焚きあがるまでの時間、俺達がその周りを囲んでいるとアオイやリコやユンがウトウトしてくる。


「疲れたなら眠れ。俺が見張る、みんなも休める時に休んでおけ」


「靴脱ぎたい。座敷に上がろう」


「葵ちゃんも横になると良いわ」


「うん」


 間もなくして何人かの寝息が聞こえて来た。バスの中では仮眠した程度だったので、皆も疲労が蓄積していたらしい。俺達は起こさぬよう静かな声で話し出した。


「で、ヒカルは何を見た?」


 ヤマザキが俺に聞いて来る。


「おかしな実験をしていた。変な化物も作っていたが、新たなゾンビを作るつもりでいるようだぞ」


「新たなゾンビ?」


「考えるゾンビだ。ゾンビでありながら知性を持つ奴を作っているってのは本当らしい」


「やはり発電所のやつらが言っていた通りなんだな。それは…出来ていたか?」


「いや、失敗していた。だがそのゾンビはすぐに人を襲わず、少し考えているようにも見えた」


「なんてこった…」


 そして俺はユリナに向かって言う。


「ユリナが言っている事は正しい。ファーマー社の連中は狂気の集団だ。人を人だと思っておらず、実験動物か何かのように扱っていたぞ」


「本当の事だったのね。人を救うのが使命の製薬会社がなんてことを」


「取って来たパソコンの情報を見れば何か分かるかもしれない」


 そう言って俺達は眠るマナを見つめる。マナでなければデータの復元が出来ないのだ。マナはどこかのパソコン専門店を見つける必要があると言っていた。


「それはもう少し先の話になりそうね」


「ああ」


 そしてヤマザキが首をかしげて言った。


「なんで、原発事故跡地でやる必要があったんだろうな」


 それにはミナミが答える。


「アニメの見過ぎって言われるかもしれないけど、放射性物質を利用してたりするんじゃない」


「なるほどな。手っ取り早く放射性物質が入手できるのはあそこだろうからな」


「そう言った事も、全てパソコンのデータにあるかもしれん」


「だがまさか原発を爆破するとはな。人間の住めない土地になるぞ」


 ヤマザキが憤慨しており、それにユリナが言った。


「はなから人間が生きる事を前提にしてないんじゃない?」


「だろうな…」


 そして俺は懸念点をもう一つ言う。


「改良ゾンビなんだが、あんなものが何体も世に放出されたら人間では太刀打ちできないぞ」


「そんなにか?」


「あの蜘蛛ゾンビより進化したのがいた」


「…ファーマー社は何をしようとしているのか?」


 話をしていると、米の鍋蓋がぽっぽと湯気を漏らし俺達の視線が鍋に向かう。するとタケルが言った。


「ていうか、第一原発でも研究してるって言ってたよな」


「そうだ」


「どうする? 次に襲撃するにしても警戒されるぞ」


 それに俺が答えた。


「だが直接原子力発電所に行かなくても、その研究を止める手立てはある」


「どういうことだ?」


「あと二カ所に火力発電所があるらしい。そこを止めれば研究施設は止まる…」


 しかしあの原発の研究所の危険性を思い浮かべ、俺は皆に言った。


「だが俺が思うに、皆を危険に晒してまで止める必要があるだろうか?」


「やるしかねえんじゃねえの? だって恐ろしい化物を作ってんだろ?」


「確かにそうだが危険すぎる」


 俺とタケルの話を聞いていたミオが言う。


「もしかすると、発電所を破壊しなくてもやれることはありそうよ」


「どういうことだ?」


「送電線を壊滅状態にすればいいんじゃない?」


 それを聞いたヤマザキとユリナが手をうった。


「なるほどな。送電の復旧まで時間がかかれば、原発の放射線が蔓延して人間が活動できなくなる」


「名案だわ」


「ならば次の標的は、鉄塔と電線と言う事だな?」


「ええ」


 次の目標が決まった時、シューシュー言っていた鍋の湯気が収まって来た。ヤマザキがふたを開けてしゃもじで中をかき混ぜて言う。


「もう食えるぞ。皆を起こそう」


「ああ」


 それから皆を起こし、俺達は塩むすびを食いながらこれからの予定を話し始めるのだった。火力発電所の場所を突き止め、何カ所かにあるだろう送電線を切る。危険を伴うが、原子力発電所や火力発電所を襲うよりは安全と言う事を説明した。


 それを聞いたミオが言う。


「このあたりの地図を手に入れたい。福島だけの地図なんかがあれば、より場所を特定しやすいわ」


「よし。飯を食い終わったら皆は一旦休め。夕方になったら活動再開だ」


「「「「「「「はい」」」」」」」


 塩むすびとペットボトルの水を飲んで休み、皆が横になり始める。


 夕方まで何事もなく皆は目覚めた。俺達は周辺の地図を探しに集落を探す事にする。あちこちを探し回り、ようやく福島県の地図を入手する事が出来た。


 ミオが言う。


「第一原発の北に二カ所の発電所があるみたいね」


「一つは山中で、もう一つは海岸沿いか」


「その間にある鉄塔を破壊しまくるしかないわ」


 再び日が沈み俺達が動き出す時間がやって来る。地図にバツをつけて、そこを目印に俺達のバスは出発した。数時間ほど走ると、俺達が想定した通りの山中に電線が走る鉄塔を見つける。懐中電灯で照らすと、渓谷の向こう側に何カ所も連なっていた。


 それを見つけてリコが言う。


「じゃあ壊しに行きましょう」


 だが俺がその言葉を制した。


「いや山中は危険だ。ここからやる」


「上の電線を切るの?」


 だがタケルがリコに言う。


「まあ、凛子さん。俺らも分かんねえけどよ、こういう時はヒカルに任せるしかねえ」


「わかったわ」

 

 俺が道路のガードレールのギリギリに立って、山中の何カ所かに立っている鉄塔を見た。そして腰だめに剣を構える。


 後ろでリコが言う。


「まさか…」


 次の瞬間、俺は剣技を繰り出した。


「陽炎円斬」


 大気が揺らめくようになり空間がずれる、すると遠い山肌に立つ鉄塔が落ちた。そして俺は奥の鉄塔とその更に奥の鉄塔を斬る。バチバチと火花を散らして山を崩れ落ちていく鉄塔。


 俺がバスに戻ると皆が拍手をした。


「何でもありだな」


「このくらいの事が出来なければ、魔王ダンジョンなど攻略できなかったからな」


「めっちゃ安全だったわ」


「皆を危険にさらすわけにはいかない。次の場所に向かおう」


 それからしばらくして、海岸沿いの田んぼの中を走る電線を見つけた。俺は再び道路のこちら側に立って、田んぼの奥深くにある電線に向かって日本刀を構える。


「陽炎円斬」


 田んぼの向こう側で等間隔に並ぶ鉄塔が、次々に火花を散らして崩れ落ちて行く。それを確認した俺はバスに戻って皆に行った。


「終わった。再び山中に潜ろう」


「わかった」


 送電線を破壊した俺達は、再び山中へと姿を消すのだった。

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