表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/661

第185話 ファーマー研究所への侵入

 俺は認識阻害の魔法を発動しつつ、原子力発電所の敷地内に侵入する。南の火力発電所を壊滅させた為か、施設内にはけたたましくサイレンが鳴り響いていた。海側にいくつかの建物が建っているが不穏な空気が漂っており、そちら側の建屋には人間はほとんどいないようだ。


 研究所があるとすれば、人の気配がする奥になるだろう。上空をヘリコプターが飛び回り警戒しているので、見つからないように進んでいく。すると比較的新しい窓のない大きな建物を見つける。


 そこに近づいて建物の様子を探ろうとした時、人の声が聞こえて来た。どうやら白い服を着た男二人が、空のヘリコプターを見上げながら話をしているらしい。


「電力の供給が止まってどのくらいたった?」


「一時間はたっていないと思うが…」


「無停電電源装置だっていつまでもは持たないだろう」


「避難指示はまだなのか?」


「連絡はきていない」 


「凍土壁も融解し始める。あと研究所の実験データのバックアップを急がねばならないし、実験体の防護壁の電源が切れたらまずいぞ」


「北部の火力発電所から電源の供給は?」


「要請しているが、第一原発の電源供給が優先だといっていた。目処がつき次第電源の供給が開始されるはずだ」


「なんだってこんな事になっちまったんだ」


「わからんよ」


 外部を確認した男達が話し終え、ドアに近づき脇の機械に顔を近づけると機械が光り喋った。


「網膜認証いたしました。次に手をかざしてください」


 男の一人が壁に手を合わせる。


「指紋認証しました」


 するとドアが開き、男達が建物の中に入って行く。男達が入ってゆっくりドアが閉まり始めた為、俺は縮地で瞬間的に建物内に侵入し壁に張り付いた。そして前を歩く男二人を確認し、俺はそいつらについて行った。


 だが何か視線のような物を感じ、上を見上げると何かが男達を追うように動いている。


 監視か。


「刺突閃」

 

 動く機械を止め、俺は再び男達を追い始めた。男達が内部に進んでいくと再び顔を壁に近づけた。


「網膜認証いたしました。次に手をかざしてください」


 手を壁につけると扉が開く。どうやらそこはエレベーターになっているようで、男達二人はそれに乗り込んで降りて行ってしまった。天井付近にエレベーターを監視する機械を見つけたので、俺は再び刺突閃でそれを射抜いた。


「さて」


 俺はエレベーターに近づいて、剣技を繰り出す。


「真空裂斬」


 音もなくエレベーターの扉が切れて、こちら側に倒れて来たので俺はそれをそっと支えて壁にかける。下をのぞくと相当深い所までエレベーターは潜っているようだ。俺は無造作にそのエレベーターの暗闇に飛び込んだ。


 かなりの深さだが、俺は着地の音をさせないために壁に手をめり込ませて速度を落とす。音をたてずにそっとエレベーターの天井に降りた。


 エレベーター内に人の気配はしない。俺はすぐに天井を外してするりと中に降りる。扉を左右に押すと少しだけ隙間が空いたので、そのまま力任せに扉を開く。するとそこからコンクリートで作られた通路が続いていた。監視の機械を刺突閃で破壊し更に奥へと進んでいく。


 角からこっそり先を見ると、ガラス張りの堅牢なドアがあり既に男達は内部に入って行ったようだ。ガラスの向こうにたくさんの人間の気配がする。周りを見渡すがそこしか入り口は無さそうだ。


 入るか。


 すぐに日本刀を構えて斬った。直径一メートルほどにガラスに穴をあけて、その部分を手で押すと中にガラスが落ちた。ガラスはニ十センチほどの厚さがある。


 するりと体を潜らせると、内部にもあの監視の機械があったので刺突戦で止める。そして誰もいない通路を進んでいくと、その先の通路が分かれており奥で人が動いているのを感知する。角から覗いてみると、白い服を着た人間達がせわしなく動き回っていた。


「軍人じゃないな…」


 縮地で一番近い部屋の入り口にへばりついて、鍵を日本刀で斬り内部に侵入した。するとそこに五人の白い服を着た人間がいた。認識阻害の魔法をかけているので、まだ俺が侵入したことに気が付いていないようだ。


 室内には東京のオフィスにあったようなパソコンが置かれ、あちこちに資料がある。


 俺が無造作に一人の後に近づくと、ようやく俺の存在に気が付いたようだ。その黒い肌をした男が言う。


「は? 誰?」


 俺が黙っていると、もう一人の白衣の女が言った。


「スーツだし、管理職じゃないの?」


 まあいい。俺はそれに合わせる事にした。


「そうだ」


 だが黒い肌の男が言う。


「社員証を持っていないようだが?」


「ああ。必要ない」


 俺の答えに室内の人間が動きを止め、緊張したような顔つきになる。一人の白い肌の男が動きだしたので、俺はそいつに言った


「動くな」


 すると男はぴたりと止まる。


「いいか? 指先一つ動かしたら一瞬で全員殺す」


 皆が手を上げて動かない意思表示をした。


「ここに居るのはファーマー社の人間だな?」


 皆が答えないので俺はもう一度聞く。


「ファーマー社の人間で間違いないな?」


「ああ」


「ここは立ち入り禁止の区域だ。なぜこんなところに研究施設がある?」


「いや…それは」


 すると最初の女が言った。


「…まさか…公安? 日本の公安なんて滅びたんじゃないの?」


「お前達が滅ぼした」


 俺が言うと皆が凍り付いた。その隙に奥の痩せた男がダッ! とテーブルの上の何かに飛びついたので、次の瞬間女を除き全員の頭を刺突閃で貫いた。そのままドサドサと全員が倒れ込む。


「動いたら全員殺すと言ったはずだ」


 女はガタガタ震え出し、両手を上げたまま小便を漏らした。俺は女の側に寄ってもう一度聞いた。


「お前達はここで何をしている」


「あ、あう。あ、あの…」


 立っているのがやっとらしく、ガクガクと震えている。だが俺はもう一度聞いた。


「ここで何をしていると聞いている」


「わ、私は…」


 ブルブルブルと震えて声が出せなくなった。俺は拳でドン! と机をたたくと机がへこんだ。


「言え」


「私は薬品のサンプルを…検体に与える仕事を…」


「検体とはなんだ?」


「薬が効くかどうかの実験を…」


「具体的にはどう効くんだ?」


「人が…死から解放されるように」


「ゾンビになる薬か?」


「ち、ちがう! それは結果で、本来は死なない人類を作るはずなの!」


「これだけゾンビを増やしても、まだそんなことをやるのか?」


「し、仕方のないコトだったのよ! だけどこれは未来の為! ここに居るみんなはゾンビみたいな出来損ないを作らない為にやってるの!」


 なるほどやはりそう言う事か。


「東京で知的なゾンビを確認したからか?」


「なぜそれを?」


「お前の目の前にいる」


「うそ! あなたは成功例!?」


 女は途端に目を輝かせて俺を見た。そして女が俺に手を伸ばそうとしてくる。


「動いたら殺すと言ったはずだ」


「あ…」


 手を上げたまま止まるが好奇心の眼差しは俺を見つめたままだ。


「ここが本部か?」


「ちがう、ここは日本支部。だけど東京で成功例を見つけたから急遽ここで研究が始まったの」


「ファーマー社の研究を止めさせるにはどうすればいい」


「何を言っているの? 知的なゾンビが作れたら人間は死から解放されるのよ! 研究はやめないわ! もう一度人間の世界を取り戻すのよ!」


 だめだ。コイツは完全に毒されている。こんな状況だと言うのに、言っていい事と悪いことが分かっていない。


「どうあっても続けるつもりか?」


「いや、それは、その…」


「研究を止めれば命は助けてやる」


「わ、わかったやめる! 私はもうやめる!」


「本当か?」


「約束する」


 俺は振り向いてそのまま部屋の入り口に向かい、通路に出ようとした時だった。女がバンッ! と机のボタンを叩いた。


「何をしている?」


「あなたはこの部屋から出られないわ。じきに警備が来る! 研究対象を逃がすわけにいかない」


 俺はその女を見ながら入り口のドアを開く。


「開くぞ」


「嘘?」


 そして俺は女に言った。


「動いたら殺すと言ったはずだ」


 俺は刺突戦で女の眉間を貫いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ