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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第180話 体内で蠢く不気味な罠

 発電所でさらった二人を、近くにあった集合住宅の一室に運び込んだ。他の部屋にも廊下にもゾンビはいたが、廊下のゾンビだけを適当に片付けて入る。部屋はワンルームでベッドが一個だけ設置されており、俺は男二人を適当に床に放り投げた。


 その部屋の様子を見てマナとタケルが話している。


「ここ、たぶん会社で借りるマンスリーマンション的な所だわ」


「なんか随分そっけないもんな」


「電力会社の転勤族が住んでたところじゃない?」


「なるほどな」


 俺は気を失っている男の口を縛っている綱を切り、口に突っ込んでいた靴下を取り出した。そして蘇生させるために軽く回復魔法をかける。


「起きろ」


「うん…」


 男が薄っすらと目を開ける。ぼんやりとしながらも、ようやく目の前にいる俺達に気が付いたようだ。


「な、なんだ? あ、あれ? 私はなんで?」


「気が付いたか?」


「あ、あんたは誰だ?」


 そして男はようやく、自分の手足ががっちり縛られている事に気が付いた。


「お、おい! なんだよ! ほどいてくれ!」


「静かにしろ」


「ちょ、だ、誰か!」


 男が叫ぼうとしたので、俺はそばにあった埃だらけの枕を男の顔に押し付ける。


「む、むぐぐぐぐ」


「騒ぐな」


「むごごがが」


 枕を外すと男が言った。


「わかった! わかったから!」


 男は怯えるような表情で俺を見る。


「お前は日本人だな」


「そうだ」


「どうしてあんな所にいた?」


「私は警護していた。ゾンビが入り込まないように柵の周りを巡回していた」


「なぜ銃を持っていた?」


「支給されたんだ。ゾンビを倒すのに銃は必要だろ? 違うか?」


 俺の隣りからヤマザキが質問する。


「聞きたいのは、なぜ発電所なんかに居たんだという事だよ」


「それは…」

 

 男がすぐに答えようとしないので、俺が首を絞めつけて言う。


「言え。死にたいか?」


「会社に! 会社に連れて来られたんだよ! 本当だ!」


「会社と言うのはファーマー社か?」


 そう言ってヤマザキは男のジャンパーの胸のマークを指さした。


「そうだ。私はファーマージャパンの社員だ!」


「その、ファーマージャパン社の社員が何だって発電所なんかにいた?」


「あの、それは、その」


 立場が分かっていないようだ。俺は更に強い力で首を絞める。


「言え」


「わ、わかった。け、研究所の職員があそこで発電施設を動かしているんだ!」


「研究所の職員?」


 すると余計な事を言ったとばかりに、目を逸らして口をつぐんだ。


「研究所とは?」


「…知らない」


「知らない? 研究所に電源の供給をしているんだろう? この周辺にあるんだな?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ! あんたらこんな事をしたらまずいぞ? どこの街から流れ着いたか分からないが、俺達に手を出したらタダでは済まないぞ!」


「なんでだ? 普通のサラリーマンなんだろう? まるでヤクザのような言いようだな?」


 男は青い顔をして口をつぐむが、俺が首を絞めると慌てて話を始める。


「違う。我々は脱走も許されてないんだ。俺達がいなくなれば、そのうち俺達を探しに来る。あんたらこのままじゃ殺されるぞ!」


 それを聞いた俺は男に聞いた。


「何故、お前らの場所が分かる?」


「それは…」


 するとユリナが声を上げる。


「待ってヒカル…その人の体、何かおかしいわ」


 ユリナが言うので、俺はその男の体を調べる。すると普通の人間には無い物が潜んでいるようだった。それはゾンビ因子などでは無く、どうやら体内に何かがいるようだ。


 ミナミが言った。


「たぶん発信器が埋め込まれているんでしょ?」


 男は慌てたように言った。


「な、なんでそれを!」


「やっぱり」


 うっかり答えてしまった男は黙り込む。どうやら体内に追跡用の発信器が取り付けてあるらしい。


 俺は男を見て言う。


「取り外せるか?」


 とたんに男は真っ青になる。そして懇願するように俺に言った。


「や、やめてくれ!」


 俺が気配を感じた所に手を当てるとユリナが言った。


「う、動いてるわ。確かにヒカルの手から逃げた」


 俺も意識を集中させるが、どうやらその発信器とやらは体内の深くに潜り込んでしまった。そちらに手を伸ばすと、また他の場所に移動する。


「取り外せないらしいな」


 男が叫んだ。


「だから言ったろ! 発信器は取り出せない! 我々も逃げられないんだよ! な、悪いことは言わない! 我々を戻した方が良い! そして逃げろ!」


 男が懇願するように言うが、俺は男に聞いた。


「どのくらいで探しに来る?」


「はっ?」


「だから追跡者はどのくらいで来るんだ?」


「わからない、三十分か一時間か。我々が行方をくらましたと知れば、すぐにスキャンを始めて追って来るだろう」


「お前が死ねばどうなる?」


「う、それは…」


 俺は短刀を抜いて男の額に突き付けた。


「わ、わかった! 言う!」


「言え」


「我々の体から生体エネルギーを取れなくなれば、発信器は活動を止める。すると本部では死んだと判断して…」


 また口をつぐむので俺は眉間に少し短刀を刺した。


「わかった! やめてくれ! そうすれば追手は来ない! 死体を回収には来ない!」


「なるほど、殺せば追手は無しか」


「や、やめてくれ! 殺さないでくれ!」


「殺さない。殺せば追手は来ないのだろう?」


「そうだ…が、何を言っている?」


「だそうだ」


 俺が皆に振り向くと、俺がしようとしている事に皆が気づいていた。そしてタケルが俺に言った。


「どこにおびき寄せる?」


 それを聞いた男が言った。


「はあ? 我々をオトリにするのか?」


 だがミナミはそれを無視して言う。


「迎撃しやすいところが良いわね。銃撃が無効になるような…森が良いんじゃない?」


「決まりだな」


「や、やめろ! やめてくれ!」


 俺は再び男の口に靴下を突っ込んで、縄で口を塞ぐようにグルグルに巻く。


「むぐぐぐぐぐ」


「行くぞ」


 いつ追手が来るか分からない為、俺達は迅速にその建物を出た。南東六百メートルあたりに田んぼがあり、その奥に森林地帯が見える。森に入れば月の灯りも届かず真っ暗闇だが、身体が強化されている皆には見えているだろう。俺達は森の深部まで来て、男達二人を木にグルグル巻きにしその場を離れた。


 皆は静かに木の上に登り、追手が来るのを待つのだった。

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