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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第175話 日本人の武器屋

 俺が食糧を大量回収して鉄工所に持ち帰ると、ユリナが食べて良いものと悪いものに振り分けてくれた。他の皆は工場でどんな物を作るかの話し合いをしており、一番最初に作る事が決まったのはマナの盾らしい。そこで問題になっているのが重量で、タケルとヤマザキが検討していた。


「やっぱトタン板くらい薄いのじゃないとだめだろうな?」


「そうだな。武器はある程度重くても威力が増すからいいが、盾くらい大きくなると鉄板じゃ重くて持ち上げられなくなる」


「トタン板ならホームセンターにあったぜ。ゾンビもトタンは噛めないだろうし良いんじゃねえか」


「なら、それも回収してくるしかあるまい」


「だな」


 そしてリコが言う。


「鉄板切狭があるからどうにかなるわ」


 タケルとヤマザキが話しているのは、マナや女達が鉄板を持っては戦えないという事だ。確かに動き回るには重すぎるのは致命的だ。それが決まり、ヤマザキが次の提案をする。


「バスはスカートをつけた方が良い。大量のゾンビがいると下に巻き込んでしまう、その都度ヒカルにバスを持ち上げてもらうのはしんどい」


「あとは鉄格子だよな」


 リコがそれを聞いて頷いた。


「それならここにあるもので作れそう」


 今度はミナミが提案した。


「非力でも使える武器なんだけど、ダンベルと鎖を溶接してつけると良さそう。一キロから三キロくらいのダンベルならみんなでも振り回せそうだし」


 それにリコが答えていく。


「なるほどね。ブンブン振り回してあてる感じの物なら大体想像がつく、鉄の鎖もいるわね」


「あと、槍もあると良いと思うわ」


「どんな?」


「強度的に言うと鉄パイプの先に、鉄の刃物をつけるか尖った物をつける感じがいいかな」


「それなら何とかなりそう」


「あとは、鎧? だけど重量が問題よね?」


「さっき武君が言っていたトタンで作る事が出来るけど、全身となると重いわよ」


「それで動けるのはヒカルと武くらいのもんね」


 それを聞いてタケルが言った。


「俺は普通に鉄板で小手と脛あてが欲しい、後は拳にまくような鉄のグローブ」


「わかったわ、武君の装備はここにあるもので作れそう。だけど丈夫な皮と皮ベルトが必要だわ」


「それもホームセンターだな」


 するとリコが言う。


「あと数台の発電機があればありがたいわ」


「わかった」


 それを聞きながらツバサがノートにメモを取っていく。あらかた皆の必要な物が見えてきたため、俺はヤマザキとツバサ、ユミとユンを連れてホームセンターに向かった。バスは改造するために工場の中に入れており、俺達はこの建物に置いてあったトラックを引っ張り出した。ヤマザキとユンが運転席に乗り、俺とツバサとユミが荷台に乗る。


 先ほど来たホームセンターでメモに書いてある物資を次々と回収し、トラックの荷台に詰め込んでいく。工場に帰ってすぐに発電機を稼働させると、リコが工場内にあった工具を発電機につなげて動かし始める。するとリコが嬉しそうに言った。


「動く! これで鉄も切れるし、だいぶ楽になるわ。みんなも手伝ってくれると嬉しいかな」


「「「「「「はーい」」」」」」


 女達はリコに対しての確執がすっかり消えていた。むしろ早く溶け込めるように気を使っているようにも見える。


 そして既にリコがノートに設計図を書いており、それを元に皆に指示を出しつつ鉄板を加工し始める。しばらくここを拠点にする事が決まるとタケルが言った。


「んじゃよ。引っ越し祝いに牛食いたい」


 するとユミが呆れて言う。


「引っ越し祝いってなによ。牛が食べたいだけでしょ」


「ゲン担ぎだよ」


「はいはい」


 タケルが俺をジッと見た。


「分かったよ。牛をとって来る、運転はヤマザキが頼む」


「よし。みんな、ここを任せたぞ」


 俺とヤマザキはウシをとりにトラックに乗って再び出発する。山に登り、俺は動物の気配がする方にヤマザキを誘導した。ヤマザキと二人になるのは珍しく、俺はリコの事を話す。


「しかし、リコもようやく馴染めたようで良かった。皆も気を使ってくれているのかな?」


「流石にいきなり信用しろって言うのは無理な話だ。半ば強制的に信じてもらった感じだし、そりゃ気の一つも使うだろう」


「リコにあんな特技があったとは」


「親父さんの手伝いをしたりしていたらしい」


「面白いものだ。前の世界にも武器屋と言うのがあってな、ああやって注文に沿って武器を作るんだよ。まるでリコは武器屋みたいだ」


「それは確かに面白い。それぞれに自分の得意分野があって、ヒカルが施術する事によってそれが明確に浮き彫りになるようだよな」


「なあ、ヤマザキ」


「なんだ?」


「この先どれほどの人を救えるだろうか」


「どうだろうな…ゾンビ化がウイルスか感染によるものが主であればよかったんだが、すでにほとんどの人間がゾンビ因子を取り込んでしまっている状態だからな。放っておけば全滅するだろうし、俺達がどれだけやれるかにかかっているだろう」


「そうか、そうだな」


「ああ」


「人が生き残ってそうな地域ってあるかな?」


 するとヤマザキが少し考えるように腕組みをした。しばらく考えて言う。


「恐らくは人の往来が少ない地域で、かつ人口の少ない田舎ならばその可能性は高いんじゃないか」


「往来が少ない地域?」


「日本で言えば、北海道や東北とか四国とか島根や鳥取あたりか」


 なるほど、だがそこに軍隊の手が伸びていないとも言い切れない。


「ウシだ」


 道路沿いの林を走るウシを見つけた俺は、動いているトラックから飛び降りてすぐに狩った。そして止まっているトラックまで速攻で戻る。ヤマザキが慌てた表情で俺に言う。


「降りるとき降りるって言ってくれ。びっくりしちまった」


「すまん。逃げられたら面倒だったからな」


 ヤマザキが満面の笑みを浮かべて言う。


「じゃあ、戻って引っ越し祝いするかね」


「そうしよう」


 俺とヤマザキはウシをトラックの荷台に乗せて、工場に向かって戻るのだった。


「おー! 牛が来た!」


 タケルが急いで俺達の所に来て、ウシをおろして持って行ってしまった。俺達が工場の中に入ると、ヤマザキが笑って言う。


「おいおい、七輪をこんなに持って来てたのか?」


「あれ? 気が付かなかった? ホームセンターにいっぱいあったんだぜ!」


「肉、食う気マンマンだな」


「当然だろ!」


 ヤマザキがみんなに声をかけると、作業を中断して俺達のもとに集まって来る。女達があっというまにウシを解体し、部位ごとに分けて内臓は捨てていく。いつの間にか俺がウシを処理しなくても出来るようになっていた。これまで何度もやっているうちに慣れてしまったのだ。最初は残酷で食べるのに抵抗があるなんて言ってたはずだが、もうその面影はない。おいしそうだよね! とか言いながら笑って牛をさばくようになった。


 そしてユリナが言う。


「ヒカルが回収して来た食料の中に、地元産の焼肉のたれがあったんだよね。添加物もほとんど無くて、シンプルだけど美味しそうなのよ」


「そいつは楽しみだ」


 いつの間にか火おこしされ、肉の焼けるいい匂いがしてきた。工場は広くて屋根も高いためか、煙が充満しないのが良い。俺達は鉄工所でのバーベキューを楽しんだ。俺はなぜか皆で肉を焼いて食う事に物凄く楽しさを感じており、皆で食べる飯がこれほど楽しくて美味いとは思わなかった。


 するとユリナが俺を見て笑う。


「ヒカル。何笑ってるの?」


「俺は笑っていたか?」


「うん。笑顔を浮かべていたから」


「楽しいんだよ」


「あら? バーベキューが病みつきになった?」


「そうらしいな。ずっとこんな事をしていられたらいいのにと思う」


「…だよね。私も、ここに居るみんなと一緒にずっとこうしていたい」


「だな」


 守らねばならない。俺はここにいる全員を家族のように思っている。あの軍隊とはいずれどこかで会うだろうが、その時は全力で排除すればいい。この貴重な時間の邪魔をする者は全て排除する。


 前世では世界を救うために戦ったが、この世界では俺の幸せと仲間の幸せの為に戦おう。楽しく肉を焼く仲間達を見て、俺は俺が戦う真の目的を知るのだった。

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