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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第173話 成長

 俺達は那須高原の別荘地を巡り、しらみつぶしにゾンビを討伐しまくった。パーティーメンバーを入れ替えながら、攻守のバランスを整えいろいろと試してみる。時おり野生動物に遭遇する事はあったが、トラやライオンには今のところ遭遇していない。むしろウシの方がはるかに出会う確率が高かった。


 どうやらこの地には、あちこちに牧場があるらしくウシが多く生き残っている。その為に肉には事欠かないが、ユリナが他の食べ物を補給しないと健康に悪いと言う。俺は問題があるように思えず、質問をしてみる事にした。


「俺がダンジョン攻略をしていた時などは、携帯した食料が無くなると魔獣の肉を食っていた。その時は体に不調をきたす事は無かったんだがな。そして今のところ、誰も体調不良を訴えてはいないようだが?」


「そう言われるとそうかも、いまの私達にも体調の悪い人はいないね。でも肉しか食べないのは良くはないわ、そろそろ食糧調達に動いた方が良いと思う」


「わかった、ならばそうしよう」


 今度はタケルが言った。


「ヒカル。あとバスの燃料もそろそろだぜ」


「わかった。ならば今日は実際に物資調達しながらパーティー訓練の成果を見よう。どこに行ったらいいかな?」


 それにはヤマザキが答える。


「行くのは決定だがな、東京とは違ってそう簡単に良い物資があるとは思えんぞ。特に食料となれば荒らされてどうにもならんかもしれん」


「まあ、そうよね」


 女達が地図を見ながら話し始めた。俺は話し合いが終わるのをじっと眺めて待つ。なかなか答えが決まらないようで、しばらく待っているとタケルがボソリと言った。


「適当に動いて見りゃいいんじゃねえか? 実際に見てみねえと分からねえしよ」


「それもそうね。とりあえず回ってみるしかないかも」


 皆でバスに乗り込み、まずはガソリンスタンドに向かう事にした。すぐそばのガソリンスタンドに来て施設を見て回るが、ヤマザキが残念そうに言った。


「手動の設備がないな」


「ダメか」


「ここは発電機が無いと無理だろう」


 それを聞いたタケルが言う。


「インターの近くにデカいガススタがあったぜ。新しそうだったからあそこなら間違いない」


 地図を見ながらミオが言う。


「ここからは真っすぐよ。十分くらいで行くわ」


「行こう」


 俺達のバスは高原に来た時の道を下っていく。十分もすると広い駐車場のガソリンスタンドが見えて来た。車道から駐車場に入った途端にミオが言う。


「コンビニの中に二体いるわ」


「わかるのか?」


「ええ」


 ミオが気づいた距離から換算すると、ミオの気配感知の距離は約三十から四十メートルと言ったところだ。ノロマなゾンビなら十分に安全マージンを稼いで倒す事が出来る。七十メートルまで広がれば、蜘蛛ゾンビに対しても有効に使えるだろう。


 ミオの話を聞いたミナミとタケルが準備をし、タケルが言った。


「じゃ、山崎さんドアを開けてくれ」


「わかった」


 ヤマザキがドアを開けると、ミナミとタケルとマナがコンビニに行った。するとコンビニ内部のゾンビがガラス越しにマナに向かって歩き出した。度重なるゾンビの討伐訓練で、マナのレベルも上がったのだ。そのおかげでマナが近づくとゾンビは勝手に寄って来る。


「きたきた。愛菜のゾンビホイホイはめっちゃ楽だよな」


「やめてよ武。その言い方」


「じゃあ、ゾンビトラップ?」


「それも嫌」


 そんな軽口を叩きながら、コンビニに近づいて入り口で待ちかまえる。軽口をたたいているようだが、三人は全く油断をしていなかった。気を張り詰めてゾンビが出てくるのを待っている。


 出て来た二体のゾンビをタケルとミナミが鮮やかに処理した。


 するとバスの中のユリナが言う。


「回収に行くわ。翼と由美は一緒に来て」


「「はーい」」

 

 三人が降りる時には、タケルとミナミとマナは既にガソリンスタンドの方に足を向けていた。ミオもすぐにバスから飛び出しガソリンスタンド組の後を追う。阿吽の呼吸で役割分担が出来ているようだ。


 するとヤマザキがバスを動かしてコンビニにぴったりと付けた。ユリナ達が中から物資を運び出してくると、ユンとリコとアオイが座席に置いていた段ボールに丁寧に並べていく。ユリナ達は選びこみながら、生活に必要なものを次々に運び出してくる。


 コンビニの中でツバサがユリナに何かを聞いている。


「ユリナ! これは?」


「それはいらない。ゾンビ因子になり得る添加物が入ってる」


「了解」


 そう。ユリナもレベルアップして、なんとゾンビ因子の見分けが出来るようになってきたのだ。ゾンビ因子に関連するものは朧気に分かるらしい。コンビニ組があらかた物資を運び出し、そのままバスに乗り込むとヤマザキがスタンドにバスを向ける。


 俺の気配感知にあった、ガソリンスタンドのゾンビの気配は全て消えた。ミナミ達がゾンビを処理したらしい。するとガソリンスタンドの建物の中で、タケル達四人がいろいろと物色していた。


「オイルとかは使えるから持って行こう」


「「「はい」」」


「武! どうだ? 給油は出来そうか?」


「ああ山崎さん。手動でいけるぜ」


「よかった」


 給油口を開けノズルを突っ込むと、タケルが手動でハンドルを回し給油をする。


 完璧な動きだった。それぞれの役割を分かっており、無駄なくゾンビが集まらないうちにテキパキと処理をしていく。東京ほどのゾンビがいるような町で無ければ、俺が居なくても十分にやっていけるレベルに達していた。


 そしてヤマザキが言う。


「山の上のガススタでも給油できるように、どこかで発電機を入手しよう」


「了解」


 バスの給油をやっている間に、女達が赤いポリタンクをもってくる。そしてユミがタケルに言った。


「灯油はいける?」


「ああ問題ねえと思うぜ。新しいガススタだからな、災害時の為に手動で出来るようになってる。携行缶もあるから軽油も詰めてこう、発電機に必要になる」


「じゃあ五缶くらい詰めて持っていこう。夜に皆で毛布をかぶるのも良いけど、ストーブも手に入れた方がいいわ」


「了解だ」


「じゃあ早々に戻ろう」


「途中にホームセンターあったもんね」


「ああ、あった」


 既にホームセンターを確認していた。優先順位を決めて、真っすぐにガソリンスタンドに来たらしい。


 ホームセンターに到着しても、皆は冷静に自分のすべきことを始める。ホームセンターは広さがある為、ミオが先頭を歩いてゾンビをキャッチする事にしたらしい。中に入ってすぐにミオがゾンビの存在を知らせ、マナが呼び寄せた先に来たものからミナミとタケルが一撃で仕留めていく。


 完全に機能しているパーティーを見て俺は安心していた。今度は全員で物資の回収を始める。また保存の効く食べ物も見つけて、ユリナに確認しながらバスに詰め込んでいった。タケルが発電機を運び出しバスに積み込む。


 するとミナミが俺に聞いて来た。


「日本刀の手入れをしないといけないわ。ヒカルのはどうかしら?」


 俺は日本刀をミナミに見せる。


「あら? ヒカルのは全然傷んでない」


「魔力を通していないからな」


「私のはこんな感じよ」


 見ればゾンビの脂がこびりついており、刀こぼれもしているようだ。まあ新人冒険者にありがちな、武器頼りに武器をふるったせいだ。


「手入れしないと斬れなくなるな。ここで手入れの品は手に入るのか?」


「もちろん。問題ないわ」


 流石ミナミ。武器の手入れ方法も知っているらしい。そして俺達は必要物資を入手し、ホームセンターを後にした。そしてユリナが言った。


「で、食糧よね。コンビニとホームセンターにあったものは、乾いたものばっかりだった。それも残りかすのような物ばかり」


「やはり東京とは違うな」


「仕方ないわ。まずは薬局を探しましょう。ゾンビ因子の無いサプリメントで補給するしかないわ」


「了解」


 ホームセンターの駐車場を出て、左に曲がり進んでいくとユミがいち早く見つけた。


「薬局ある!」


 それを聞いてミオがミナミ達に言った。


「私が先行するわ。フォローお願い」


「「「了解」」」


 頼もしい返事を聞きながら、ヤマザキが運転するバスは薬局の駐車場に入って行くのだった。


 俺は皆に言った。


「見違えたよ。那須高原に来る前までとは完全に違う、俺が居なくてもここまで出来るようになったんだな」


 するとタケルが笑いながら言った。


「おっ! ヒカルの免許皆伝か? だがよ、まだまだだぜ。俺達の力じゃ東京みてえにいっぱい居るところは無理だ」


「場所によるとは思うがな」


「ああ、だけど新宿や渋谷みてえに居たら、流石に俺達だけでは無理だろ?」


「まあ、それはそうだが」


「だったらまだまだ精進しないといけねえな。軍隊とやり合うにゃ、まだまだ学ばなきゃならねえ事がある。それまでは頼むぜ先生」


「わかっている」


「じゃ! 行くよ!」


 バスのドアが開き皆がバスを降りて、薬局に侵入していくのだった。

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