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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第153話 ゾンビキマイラ

 俺は視界に捉えたヘリコプターが近づいて来るのを、姿勢を低く低く下げて待ちかまえる。だがヘリコプターは距離を置いて止まってしまった。こちらを監視しているのだろうか? それともあそこから攻撃をするつもりか? 最悪の場合は地上を縮地で移動しヘリコプターに飛び移っても良いが、失敗すれば建物ごと爆撃される可能性がある。


 ならば。


 俺は魔力を練り始めた。風魔法はあまり得意ではないが、俺の後方で爆発させ爆風でヘリコプターまで飛ぶ事にしたのだ。俺が風魔法を発動しようとしたその時だった。


 ヘリコプターの下部が開き始める。


「なんだ?」


 魔力を止めて、次の攻撃に備える事にした。この建物の前には広い荒れ地のような場所があり、その先にヘリコプターは止まったままだ。もしこちらに何かを飛ばして来たら、俺は即座にそれを斬るつもりだった。


 だがヘリコプターの中からするすると、赤黒い塊が二つほど吊り下げられ降りて来た。すぐに気配感知でその正体を探ると、どうやらそれはゾンビのようだった。それが地面につくかというところで、バシンと綱が切り放されヘリコプターは上空へ浮かんだ。


 嫌な予感がした俺は、一気に屋上から地面へと飛びおりる。すると後ろから声がかかった。


「ヒカル! あれなんだ?」


 五階と四階からタケルやヤマザキと、ここに居た避難民達が顔を出している。すると二階から顔をのぞかせていたミオが言う。


「あのヘリは攻撃してこないのかな?」


 確かに不気味だった。ヘリコプターは俺達を品定めするかのようにそこに佇んでいる。俺は皆に言った。


「危険だ! 頭を下げろ! あれはゾンビだ! だが何かおかしい! とにかく避難してくれ!」


「わかった!」

「あいよ!」

「任せて!」


 皆が避難民達を連れて建物の中に入って行く。あとは彼らに任せるしかない。俺の目の前に置かれた二体のゾンビは、何かで縛られているらしくもぞもぞと動くだけだった。


パシュッ! パシュッ!


 途端にゾンビ達をぐるぐる巻きにしていた縄が音をたてて外れる。するとヘリコプターは更に上空へと上がっていった。


 気配はゾンビだが…。


 すると、その二体の体から足が横に伸びてきた。人型のゾンビならここで立ち上がるだろうが、目の前のゾンビは体を地上すれすれにしながら、四本の足はまるで蜘蛛のように間接が逆に曲がっている。更に体の上部には二本の長い手が伸び、その両腕の間ににゅっと頭が二つ起き上がってきた。どうやら折りたたまれて、ヘリコプターに収納されていたようだ。


 そこで俺はようやく気配感知で感じた違和感を理解した。俺の気配感知では、二体では無く四体のゾンビが落とされたように感じたからだ。どうやらあれは、二体のゾンビを掛け合わせて作られたキマイラゾンビらしい。ロープが解かれて折りたたまれた体を広げると、その二体はまるでオオカミのように高速で突撃して来た。


 皆の元に行かれるのはまずい。俺も二体に向かって突撃する。すると上空のヘリコプターから銃声がしたのでバッと横に飛びのいた。どうやらヘリコプターと二体はセットで攻撃してくるらしい。


「金剛、絶対結界、筋力増強、知覚上昇、思考加速」


 念のため、俺は更に自分に身体強化魔法をかけた。恐らく外から見れば、薄っすらと光っているように見えるだろう。すると二体のうち一体が、俺に飛びかかって来た。


 すぐに斬り捨てても良いが、上空にいるヘリコプターが気になった。あれは恐らく攻撃だけが目的ではなく、俺を監視しているように感じたのだ。もしくは、この二体の情報を回収しようとしているのかもしれない。


「ならば」


 俺は手の内を晒す事やめた。襲い掛かって来る蜘蛛ゾンビに対し、反撃をしないまま待つ。するとそれは俺に覆いかぶさって来た。俺はそいつの胴体の下部に滑り込み、体にずぼりと手足を差し込んでぶら下がった。そいつは俺を振り払おうと、そこいらじゅうをかさかさと走り回る。


 もう一体がこっちに向かって来るのが見えた。


 しがみついている奴が、そいつにぶつかる寸前に俺は両手両足を引き抜いて離れた。俺から離れた二体の蜘蛛ゾンビはドスンとぶつかり、弾き飛ばされるように両側に飛んでいく。かなりの力があるのは分かったが、俺は一連の動きから確信した。


 あれは魔王ダンジョン一階層のキマイラの下位に当たる能力だろう。強い魔獣をかけ合わせた異世界キマイラと違い、ただのゾンビを掛け合わせて強化した出来損ないだ。


「シュッ」


 軽く息吹を吐いて、俺はもう一体の蜘蛛ゾンビの下に滑り込む。だが学習能力があるらしく、俺が手足を突っ込む前に、そいつは垂直に飛びあがったのだった。そこにもう一体の蜘蛛ゾンビが飛びかかって来る。俺がそれを避けると、上空のヘリコプターから銃弾が降り注いで来た。それをゴロゴロと転がりながら避ける。


 すでにかなりの情報を敵に渡してしまっただろう。だが焦る必要はない。俺は地面をはいずり回って来る蜘蛛ゾンビに向かって走る。俺に手を伸ばしてきたのをすり抜けて蜘蛛ゾンビの上を走った。するとそこにもう一体の蜘蛛ゾンビが飛びかかって来る。


 今だ!


 俺はもう一体の蜘蛛ゾンビの腹にしがみつく。するとそいつはそのまま地面に降りて、俺を振り払おうとあちこちを走り回り始めた。


 だが俺は既に計算していた。蜘蛛ゾンビが俺を振り払おうとする動作を読み切り、ヘリコプターの真下に来るように仕向けていたのだ。俺は日本刀を抜き去り、体の下に風魔法を爆発させる。上に乗った蜘蛛ゾンビの腹を刺突閃で突き破り、そのまま百五十メートル上空のヘリコプターの腹を突き破ってプロペラを破壊しヘリコプターの上部に飛び出ると、そのまま振り返り剣技を繰り出す。


「冥王斬四閃」


 縦横斜めに冥王斬を四回飛ばした。ヘリコプターは崩壊しそのまま下に落ちて行く。俺はエンジン部分の場所を確認し、それを掴むと背中に風魔法を爆発させた。そのまま地上の蜘蛛ゾンビぶつかり、ヘリコプターは爆発してしまう。その爆発で一体の蜘蛛ゾンビが破裂した。


 ぎいぃしゃぁぁぁ!


 変な鳴き声をあげながら爆散する。そこに、俺が穴をあけた蜘蛛ゾンビが飛びかかって来たので剣を構えた。


「風裂斬四閃」


 バッと蜘蛛ゾンビが飛び散った。落ちて来た二つの頭を更に二つに両断する。さっき破壊した一匹の頭がずるずるとこちらに向かって来ようとしたので、俺はそこに行って頭を踏み潰す。


「皆は!」


 俺が建物の方に走ると、既に建屋内に人の気配は無くなっていた。その建物をつっきって裏手に出ると、前方の別の建物に人の気配があった。俺が急いで走り込むと、ヤマザキとタケルが皆を庇うようにして身構えていた。


「ヒカル! 無事か?」


「どうということはない。それよりもみんなはどうだ?」


「俺達は大丈夫だが、救出した人らに死にそうな人がいる」


「治癒しよう」


 するとユリナが俺に叫んだ。


「まずはこの人から!」


 ユリナが指さす所に行くと、足と腕がちぎれ飛んでいる人がいた。傷口を塞ぐ回復魔法をかけて血を止め、すぐに体全体に蘇生魔法をかけた。残念ながら俺の今の蘇生魔法では、手足が速攻で生えてくる事はない。


「次!」


 ユリナに言われそっちに移ると、この人も手が無くなっており顎に穴が開いている。次に移れば、腹に穴をあけて腸が出ている人がいた。同じように回復魔法をかけて蘇生魔法をかける。ユリナが次々に重傷者を教えてくれ、俺は言われるままに回復魔法をかけていった。


 ひととおり全員を回復した時、一人の女が言った。


「ごめんなさい! あなた達を信じていれば!」


 最初に会話をしたグループに居た女だった。とにかく俺が言う。


「今はいい! とにかく逃げるんだ! 動けるものは怪我をした者を運ぶんだ!」


「「「「「はい!」」」」」


 すると避難民が言う。


「この近くに、鬼怒川の河川敷があります! そこに森林地帯が!」


 確かにここから山の上の森林地帯までは距離がある。その間に敵が来たら、次はもっと死人が出るかもしれない。


「そこに行こう」


 俺達がその人について細い小道に入って行く。ゾンビを警戒するがその周辺にゾンビはいなかった。土手が見えて来てそこには木々が生い茂っていた。俺達はそこに下り雑木林に身を隠すのだった。

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