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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第151話 決起

 それから三十分ほど山中を進んでいくと、川を渡る鉄橋が見えて来た。俺達がそこで立ち止まり、鉄橋を渡るかどうかを話し合っていた時、アオイが切実な声で言う。


「降ろして!」


「ん? ああ」


 タケルがアオイを背中から下ろすと、アオイは切実なまなざしで俺に言って来る。


「ヒカルお兄ちゃん!」


「どうしたんだ?」


「あの人達を助けられないかな?」


「あの人達か…すまない。説得しようとしたんだが、聞く耳を持ってくれなかった」


「でも、あの人達が間違いだったと気づいた時には死んじゃうんでしょ?」


 するとそれを聞いたユリナがアオイに言い聞かせる。


「葵ちゃん。私達と一緒に行ったからと言って、彼らが生き伸びれる保証はないのよ。それに軍隊はこちらに来ないかもしれない、あの人達にはあの人達の考えがあるの」


「でも…」


 ツバサもユリナが言った事を肯定するように言う。


「そうね。確かにヒカルがいれば私達と居た方が安全かもしれない。でも、大人数で動けばさらに危険は高まる。その結果彼らが死んでしまうことだってあるし、私達が危険にあう可能性もあるわ」


「でも…」


 ヤマザキが静かにアオイに尋ねた。


「葵ちゃんはどうしてそう思ったんだい?」


「わたしたち、お父さんもお母さんも、ヒカルお兄ちゃんたちの言う事を聞いて東京に行っていれば死ななかった。襲撃を受けた時に、わたしたちは初めて自分達の間違いに気が付いたの」


「…そうか」


「だから、今はあの人達も自分達が正しいと思っているけど、実際に危険な思いをしたら気が付くと思うの」


 アオイの話を聞いて皆が黙った。確かに結果からすれば、俺達と一緒に行動した方がアオイの両親も生き延びられただろう。だが俺がアオイに言う。


「それは、結果がそうなっただけだ。俺達は運がよかっただけかもしれないんだ」


 アオイは首を大きく振った。


「違う。一緒に行動して来て思ったんだ。ヒカルお兄ちゃんと居た方が生き延びられると思う」


 皆が静かになった。誰も次の言葉を出せないでいる。東京に行くという提案を聞か無かったために、アオイの両親が死んだのは事実だ。そして俺の能力によって生き延びてこれた事実はある。


 すると今度はユンが言う。


「あーしもね、葵ちゃんの言っている事がわかるわぁ。あーしが山崎さん達と別れた時、生き残るのは絶対こっちだと思ってた。死地の空港に行く山崎さん達は助からないと思っていたし。だけど結果はこれ」


 俺がそれに答える。


「結果そうなっただけだ。それに俺達が東京に居すわったら今ごろは丸焦げだ」


「だけど、生きてる。ヒカルが逃げようって言ったんでしょ?」


「そうだ」


「それに…、ちょっと気になったんだけど、ヒカルだけじゃなくみんな不思議な能力もってない?」


 それにはユリナが答えた。


「ヒカルがゾンビ因子を取り除いた時、二度と寄せ付けないようにって魔法で組み替えてくれたたんだって。私達はヒカル寄りの遺伝子になってるらしい」


「それをさっきヒカルはあーしにもやったよね? 分かるんだ。自分の体が弱りまくってたから、ヒカルの施術の後にめちゃくちゃ体が強くなった感覚」


 するとタケルがおどけて言った。


「ホントだな! 口調まで元気になって、前の感じに戻ってるぜ」


「あ? そうだった?」


「ああ。元気になってる」


「だしょ!」


 確かにユンはめちゃくちゃ元気になった。それに、以前に比べれば全員の生存率は上がっている。ギルドカードがないから分からないが、皆のステータスは格段に上がっているはずだ。


 それを聞いたヤマザキがポツリと言う。


「こんなゾンビの世界で、俺達だけ生き残ったところで…か…」


 そしてミオも笑って言った。


「だね。ヤクザですら無事な人間を集めて、日本人を存続させようとしてたんだもんね」


 タケルが皆に向かって言う。


「だけど、死ぬかも知れねえぞ。その覚悟はあんのか?」


 それを聞いて皆が静かになった。だがタケルが続けて言う。


「まあ一つ言っておくとな、俺は既にその覚悟は出来てる。ヒカルに助けられたこの命、多分人を助けるためにあるのかも知れねえ。ヒカルだって無関係の俺達を助けてくれたんだ。今度は俺がそれを誰かに返す番かもな、なんか人を見捨てて進んだら自分の生きてる意味が分からなくなりそうだ」


 それを聞いたユミが笑う。


「なんだ。タケルでもたまにはいい事言うんだ。私なんかジーンと来ちゃったよ。やるっきゃないのかもね」


 今度はミナミが、肩に下げた日本刀をもち上げて言う。


「軍隊相手に剣を振るってみたいわ」


「そりゃやめとけ。いくらなんでも殺されちまう」


「って言う気持ちよ。気持ち!」


 そしてマナがツバサとユリナに向かって聞いた。


「翼も友理奈も本当は助けたいんでしょ」


「それはそうだけど…」

「みんなを危険にさらしちゃうんじゃないかと思って」


「もうみんな決心ついてるみたいよ」


 すると皆の視線が俺に集まった。俺の言葉を待っているようだ。


 どうするか…。俺は皆を失いたくない、ここまで一緒にいるうちに俺は皆を家族のように思っていた。だが皆の言う事も分かる。この世界を正常化するにしても、全く人間がいなくなってしまっては意味が無い。

 

 俺は自分の本音を言う。


「俺は…皆を失いたくない」


 それを聞いたタケルが答えた。


「そりゃ、ここにいるみんながそう思ってるさ。だけど、なんつーかな。こんな世界だからこそ、自分らの生きている証みたいなもんが欲しいみたいな? 誰かを犠牲にして生き延びるんじゃなくてよ。出来る限りの事はやってみるみたいな? 無理な時は逃げりゃいいさ。どうしようもねえもん」


 ミオが俺の手を握って言う。


「ヒカルのおかげでここまで生きてこれた。ヒカルがいなかったら、どうせみんな死んでたわ。一度死んだ命なら、世界の為に立ち上がってみてもいいんじゃない?」

 

 皆が俺を見る。


「みんな…」


 臆病だったヤマザキが言った。


「ヒカル! やってやろうじゃないか!」


「そうだよ!」


「行こう!」


 皆の心が一つになっている。それを見て俺は、前世の魔王ダンジョンへ挑もうとした時のパーティーを思い出す。レイン、エルヴィン、エリスの顔がそこにあった。


「よし! 行くぞ! そして一人も欠ける事無く生き延びるぞ!」


「「「「「「「「「オー!」」」」」」」」」」


 俺達は来た道を戻り、先ほどの集落へと進み始めた。どうなるかは分からない、だが皆のこの気持ちを無駄にするわけにはいかなかった。タケルが言った生きる意味という言葉が、俺の心に深く刺さった。前世では世界を滅ぼしかけたが、この世界を救う為にまずは目の前の命を拾う事に全力を尽くすとしよう。

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