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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第150話 避難民の説得

 男女合わせた十数人が金網の向こうに立ち、銃を構えるでもなく俺に話しかけて来た。皆が怪しむような眼差しで俺を見るものの、いきなり撃って来る気配は無さそうだ。先頭に立つ中年男が言う。


「あんた、どっから来たんだ?」


 後の壁に仲間達が隠れているが、今は彼らの存在を伝えないようにしておく。危険は少しでも回避したほうが良い。


「東京だ」


「と、東京? ゾンビだらけの死の町だと聞くが、あんたそんなところから来たのか?」


「そうだ」


「見たところ日本人じゃないようだが」


「だが、東京から来た」


 すると中のやつらがひそひそと話し出す。聞こえないように話しているようだが、俺には完全に筒抜けだった。俺をどうするか? 追い返した方が良いんじゃないかと話をしている。そのグループの代表者が言った。


「東京からここまで一人で来たのか?」


 この場合どう答えるのが正解か迷う。だが俺はあえて曖昧に答える。


「仲間はいた」


 すると、また俺に聞こえないように話を始めた。そして結論が出たらしい。


「すまんな。助けを求めて来たんだろうが、うちにはもう人を受け入れるだけの余力がない。悪いんだがここから立ち去ってくれるか」


 なるほど、俺が食い物をたかりに来たと思っているらしい。ならば本当の目的を伝えてみる事にする。


「別に受け入れてもらおうという話じゃないんだ。ここはもしかしたら危険になるかもしれないと思ってな。こんな都市部に居ない方が良いと伝えたかったんだ」


「どう言う事だ?」


「東京が焼かれたのを知っているか?」


「何の事だ?」


「東京に核弾頭という物が落とされた」


「なんだって?」


 相手は再び俺に聞こえないように話を始める。次に奥の女が言った。


「なんでそんなことが分かるの? もし核弾頭が落とされたなら、あなたはなんで生きているの?」


「間一髪のところで逃げたからだ。離れた所で、核弾頭が炸裂した後の大きなきのこ雲を見た」


 途端にざわつき始める。嘘か誠かの真偽を図っているらしい。また代表らしき男が言う。


「その核弾頭がここにも落とされると?」


「そうは言っていない。ただ、それをやった奴らが日光市まで来ているかもしれん」


 すると別の若い男が言った。


「そんな事を言って、ここを開けさせて襲うつもりじゃないのか? その袋、日本刀だろ?」


「そうだ」


「だがこっちにはこれがある」


 カチャっと銃を俺に向ける。俺は何も感じずに銃を見た。


「猟銃だが、人くらいは簡単に死ぬぜ」


 すると代表者が若い男に言った。


「よさないか。別にこの人は攻撃しようとしてはいないじゃないか」


「いや、人は見かけによらないしよ。このくらいやらないと危ないだろ」


 二人がそんな問答を続けていると、今度は俺の後ろから声が発せられた。その事で目の前に立つ十数人が動揺して身構える。


「まってくれ! 俺達は別に争いをしにきたわけじゃない!」


 痺れを切らしてヤマザキが声を発する。


「なんだ? 仲間がいるのか!」


 若い男の声を聞き、更にヤマザキが慌てて声を荒げた。


「そうだ! だが、攻撃をするつもりはない! 銃を収めてくれ! くれぐれもその男に銃を撃つんじゃない!」


「それはそちらの出方次第だ」


 場がピリピリとし始める。ゆっくりとヤマザキが壁の後ろから手をあげて出て来た。俺の隣りまで来て、話を始める。


「俺は丸腰だ。この男はゾンビと戦うために日本刀を持っているだけだ。わかるだろ? 銃を持っているならそっちの方が有利な事くらい」


 ヤマザキは相手を安心させるように言葉を選んでいた。銃などは俺には何の意味もなさないのを知っているが、あえて相手が有利であることを言う。すると相手の代表者が言う。


「核弾頭と言うのは本当なのか?」


「そうだ。私も見た! 私も怪しい物じゃない! 元市役所職員だ」


 中のやつらがヤマザキをジロジロと見て言った。


「随分元気そうだが」


「鹿や猪の肉を食ったからだ」


「なんだって?」


「もちろん野生のだ」


「食って大丈夫なのか?」


「ああ、こうしてピンピンしている」


 すると相手はまたひそひそと話を始めた。そしてくるりと振り向いて俺達に言った。


「自分達で食料を調達できるなら、それでいいじゃないか? ここに助けを求めて来る必要はない」


「違うんだ。助けを求めに来たんじゃない、ここは危険かも知れないと伝えにきただけだ」


「あんたも同じことを言うのか?」


「そうだ。軍隊が日光市に居る。それがこちらに来ないとも限らない、もちろん断定は出来ない」


 相手は俺達の話に耳を傾けどうするのか話を始めた。いずれにせよ選択肢はない、安全な場所へと移動するしかないのだ。


「それ本当だったらどうするの?」

「むしろ軍隊が来たら助けてもらえばいいんじゃないか?」

「そうだよ。きっと救出しに来たのかもしれない」

「だけど、逃げろと言っているわ?」

「やっぱり爆発音だったのよ」


 答えの出ない話し合いに痺れを切らしたのか、銃を持つ若い男が声を荒げた。


「むやみに信じるなよ。ここを開けた途端押し入って来るかもしれねえ」


 それを聞いた代表の男が俺に言った。


「いずれにせよ。ここには、老人から女や子供を含む六十名からの人間が避難している。食糧もかつかつで、やっとの思いで生きているんだよ。ここから出たところで、どうやって生きていくんだ? ゾンビがいない場所でもあるってのかい?」


「ゾンビはどこにでもいる」


 俺は嘘をつかずにそのままを言った。すると銃を持った男が言う。


「あんたらは、ゾンビから逃げてここに来たんだろ? なんでそんなに余裕なんだ? それがかえって怪しい気がする」


「ゾンビはどうにか対処できるからだ」


「ゾンビが余裕なら、別にここに逃げてくる事はなかったろ?」


「だから逃げて来たんじゃない。警告に立ち寄っただけだ」


「何の警告だよ!」


「だから軍隊だと言った」


「かりに軍隊ならよ、俺達を助けるのが役目だろ? 自衛隊か? 米軍か?」


 すると代わりにヤマザキが答えた。


「どちらでもない、正体不明の私兵だ。俺達は命を狙われた」


「だとしたら、あんたらは一体何者なんだよ? 特殊部隊か? テロリストか?」


「だから! もと市役所職員だよ!」


 ヤマザキに少し焦りが出ている。こんなところで道草を食うわけにはいかないからだ。そしてヤマザキはさらに付け加えていった。


「恐らく皆は、ゾンビ因子に汚染されている可能性があるんだ!」


 すると今度は後ろの女が訝し気な顔で言う。


「そういう、うわさでしょ?」


「あんたは、それを知っているのか?」


「まだ世界が正常な時代にネットで見たわ、でもあんなの嘘っぱちだわ」


「こんなゾンビの世界になったって言うのに、それを信じていないのか?」


「これはウイルスの影響よ」


「違う。人工物なんだ! それは既に日本人や世界中の人間に組み込まれているんだ。あんたらだってその影響から逃れられない!」


「ここに暮らす人は誰も噛まれていないし、感染はしていないわ」


「感染じゃないんだよ! 意図的に仕組まれたんだ!」


「ねえ、この人達、怪しすぎるわよ」


「信じてくれ! 本当なんだ! 嘘じゃない!」


「なんか怖いわ」


「あんたの目の前でゾンビになった奴はいなかったのか?」


「も、もういいわ」


 女はヤマザキの剣幕に怯え、奥へと引っ込んで言った。そして女の言葉を聞いた代表者の男が少し沈黙してから口を開いた。


「悪いが他をあたってくれ」


 それに対しヤマザキが金網に手をかけて声を荒げた。もうなりふり構っていられなくなったのだ。


「違う! 我々は救いを求めに来たわけじゃない! あんたらを助けに来たんだ!」


 ガシャガシャと音をたてて叫ぶヤマザキの剣幕に、後ろの男が上に向けて銃を構えた。俺は咄嗟にその男に叫ぶ。


「よせ!」


 ダァン! ダァン! ァン!… 山にこだまする銃声。


 一瞬周りがシーンとするが、ヤマザキが叫んだ。


「なんてことをしたんだ!」


 すると若い男がヤマザキに銃を向けた。そこでヤマザキがハッとして金網を揺らすのを止める。俺はヤマザキに言った。


「まずい。すぐに移動しよう」


「わ、分かった。ともかく、あんたらも逃げろ! 今の銃声で奴らが来る可能性があるぞ!」


 銃を構える若い男が叫ぶ。


「とっとと消え失せろ!」


 それをリーダーが制して、落ち着いた声で言った。


「悪いが、これがうちらの総意だ。このまま立ち去ってくれないか」


「くっ」


 俺とヤマザキは手をあげて、その金網の入り口から立ち去った。若い男はまだ銃を構えてはいるが、俺達を撃つ気はなさそうだ。


 俺が皆の元に戻って言う。


「銃声が大きく鳴り響いてしまった」


「まずいわね」


「すぐに動くぞ」


「ええ」


 俺達はすぐにその場所を離れ、北へ向かって進み始める。ヤマザキの悔しそうな表情になんと声をかけていいか分からない、だがこのままここに居れば仲間達が死ぬかもしれない。俺達は再び森林地帯に足を踏み入れて北へと進み始めるのだった。

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