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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第149話 鬼怒川

 ゾンビ因子を取り除いたユンはみるみるうちに回復したが、彼女も身体強化状態になってしまった。ゾンビ因子を受け付けない体にするには仕方がなく、俺の施術はどうしても必要だ。今のところは、他の皆に問題が無いようなので俺は様子を見る事にする。


 次の夜、皆が寝静まっている時だった。俺はある異変を感じ、すぐにヤマザキを起こした。


「ヤマザキ。皆を起こそう」


「ど、どうしたんだ?」


「すぐに動いた方がいい」


「わかった」


 俺達は寝ている皆を起こしていく。俺は皆に身支度をするように伝え、すぐに警戒して外を眺めていた。準備が出来た者から俺の所に来て一緒に外を見る。


 その時だった。


 ドスン! と爆音が鳴り響いた。


「なに?」


 皆が俺の所に集まって来ると、爆発音が次々に鳴り響いた。


 俺が指さして言う。


「あれを見ろ」


 俺達が潜伏していた日光市の空が赤く色づいている。


「爆撃じゃねえか?」


 タケルがそう言うとミオが皆に告げた。


「すぐに逃げましょう!」


「こちらに気が付いている気配はないが、早い方が良いだろう」


 すぐにミオが地図を広げる。


「どっちに逃げる?」


 俺は地図を見る。このまま北上すれば道は二手に分かれており、俺はその先を指さした。


「これは、湖か?」


「そうみたい」


「ここを目指そう」


「わかった」


 そしてミオが皆に場所を説明をする。俺達はすぐに日光江戸村を出発して、道に沿いながら山中を歩きだす。俺はユンを背負い、眠い目をこするアオイをタケルが背負った。一時間に満たない距離を歩くと、また不思議な場所に出る。


「何だここは?」


 懐中電灯で照らしたマナが言った。


「東部ワールドスクエアだって、世界中の風景が楽しめるらしいわ」


 俺達はその中を通過する事にした。


「中を通って行こう」


「わかった」


 するとタケルがアオイに言った。


「ここも楽しいだろうな。だが先をいそがなきゃならねえ」


「大丈夫だよ。武兄ちゃん分かってるよ」


 東京にあった塔が見えて来ると、ユミが言った。


「東京タワーのミニチュアだ。もうなくなっちゃったのかな? 本物」


 ミナミがそれに答えた。


「かもね。あの爆発じゃ、東京は燃え尽くされたんじゃないかな」


「なぜ敵はそこまでしたんだろう?」


「どうしても消さなきゃいけない何かがあった?」


「それなら、なんでしつこく追いかけて来るのかな? もう用は済んだんじゃない?」


「確かに」


 二人の話を聞いていて俺もそう思う。東京を破壊したことで、俺達を追う理由は無くなったように思う。


 それを聞いてツバサが言う。


「追われてるんじゃないんじゃない?」


「どういうこと?」


「もしかしたら、生き残りを根絶やしにしているとか?」


「根絶やし?」


「もしくは何かを探しているか」


「何かって何だろう?」


「わからない」


 それを聞いていたユリナが言った。


「このゾンビ化なんだけど…もしかしたら意図して起こされた?」


「意図して? そんな…事故じゃなくて?」


「人体実験された感じがしない?」


 それに対して俺が答える。


「ゾンビ因子は間違いなく自然のものではない。何かの意図があって作られたものだ」


「意図ってなに?」


「わからん」


「でも、ウイルスじゃないって事だ…」


「そうだ」


「意図して人間を壊滅させた…」


「俺が思うに、どこかに生き残っている人間がいるんだろう。ファーマー社の軍隊だって、何らかの理由があって存在しているのだろうからな」


「確かにね」


 するとヤマザキが言う。


「ヤクザが生き残っていたのはむしろ誤算だった?」


 ユリナが怒りに満ちた声で言う。


「いずれにせよ。何らかの目的のために大勢の人間を殺したと言う事ね」


「そうなるな」


 東部ワールドスクエアを通り過ぎて、俺達は再び森林地帯に足を入れる。それからまた三十分ほど歩くと、市街地が見えて来る。


 ヤマザキが看板を見て言った。


「鬼怒川温泉だ」


 なるほど、あちこちに湯気が上がっている。俺が手をあげて皆に言う。


「徘徊するゾンビを駆除していったん休もう」


「わかった」


 俺がゾンビを斬りながら更に先に進んでいくと、高い鉄の壁に囲われた建物が見えてきた。それを見てヤマザキが言った。


「これは、廃館になったホテルだな」


 俺がその建物の気配感知をする。すると内部にゾンビはおらず、人間が集団でいるのがわかった。


「まて、人がいる」


「なに?」


 俺達はその廃屋の視界から外れるように隠れた。そして、その建物を伺いみる。


「結構な数がいる」


「生き残りか?」


「恐らくはそうだ」


「どうする?」


「変に刺激して騒がれると、日光に来た敵に気が付かれる可能性がある」


 タケルが言った。


「だからって放っていくのか?」


「しかし敵をおびき寄せるかもしれん」


「いずれにせよ敵が来ちまったら彼らは殺されるぜ」


 確かにタケルの言うとおりだった。万が一、ファーマー社のやつらがこちらに来れば彼らが死ぬ。


 するとミオが言った。


「接触を試みてみましょう。説得してみる価値はあるわ」


 皆で話し合った結果、俺達は生存者と接触してみることにした。少し先の建物の陰で俺は皆に言う。


「皆は一旦ここで待っていてくれ」


「わかった」


 そして俺はヒタヒタと、その人がいる廃屋へと近づいて言った。念のため認識阻害の魔法を用いているので、俺を認識する事は出来ないだろう。その鉄の壁をぐるりと回り込んでいくと、金網になっている場所があった。建物の二階からこちらを見張っている人間がいるが、もちろん俺を認識する事は出来ない。


 シュッと金網を飛び越え敷地内に侵入する。よく見ると数個の部屋から、ぼんやりと明かりを漏らしていた。恐らく中で蝋燭を焚いているか、電灯をつけているのだろう。


 その建物の二階に侵入し、俺は人の居る場所へと向かった。部屋の側に立って中に聞き耳を立ててみる。


「音がしたよね?」

「そうか?」

「爆発したみたいな音」

「俺は気が付かなかったがな」

「私も聞こえたよ」


 どうやら日光市の爆撃の音がここまで届いていたらしい。他の部屋にも人はいるようで、ヤクザやファーマー社の人間ではないのは確かだ。俺はすぐさま建物を抜け出して皆の元へと戻った。


「どうだった?」


「生き残った市民だった」


「接触してみようか?」


 ヤマザキが言った。


「ファーマー社が迫っているんだ。行くしかないだろう」


「わかった」


 そして俺達は入り口の金網の所に立った。人がいる部屋に向けて、懐中電灯を照らしてやると中から人が出て来る。そして俺は、そいつらの状態を皆に告げる。


「銃を持っているぞ」


「なに?」


「ひとまず隠れろ」


「わかった」


 俺は皆に鉄の壁に張り付くように指示をした。俺が一人単身で、両手をあげて生存者が来るのを待つのだった。

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