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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第148話 様々な解析

 日光江戸村に潜伏し、俺達は午前に食べ残した肉を食う。消化が終わるころにタケルの腕に再生魔法をかけ、ユンに回復魔法をかけた。それを見ていたユリナが言う。


「それを私達が出来たらいいのにね」


 この世界の人間には魔力もスキルも無いようだが、ユリナ達には変化が起きていた。もしかしたらと思い、俺はユリナに回復魔法の説明をしてみる。


「ユリナは自分が変わった感じがしないか?」


「する。なんて言うか人の怪我とか具合を感じとれるみたいな? 正確には言えないけど」


「俺の持っている力と似ているものだとすれば、その感覚の先にあるものを捉える事が必要だ」


「…ごめん、わからない」


 まあそうだろう。この世界には魔法が無いのだから理解をするのは難しい。そもそも魔法があって当たり前の世界と、全くその力がない世界の人間では深層で理解度が違うのだ。


「人は、基本的に皆が同じ作りをしているのは分かるよな」


「わかるわ」


「根本は皆一緒だ。俺の体と皆の体もほぼ一緒だった。その人を作っている最小単位に意識を集中させることから始まる」


「最小単位?」


「そうだ。体はその集合体で出来ているからな」


「細胞ってことかしら?」


「あの大学病院で見た限りは遺伝子と呼ばれるものだ」


 ユリナは顎に手を当てて、眉を寄せてしまった。


「ヒカルが言っている事は良く分かる。だけど細胞や遺伝子なんて、電子顕微鏡みたいな機械じゃないと見れない。そこに意識を集中する?」


「そう言う事だ。怪我をするとそれらが破損するんだが、最小単位から繋ぎ合わせていく事で回復はなる」


「そんな…無理。医者でもないし」


 なるほど。やはり体が否定してしまうようだ。


「俺だって医者じゃない」


「でも異世界のヒーローだわ」


 違う方法で教えるしかないか…。


「ユリナは何故無理だと思う?」


「えっ?」


「なぜ、出来ないと思うんだ?」


「それは、出来ないのが当たり前だからよ」


「出来ないのが当たり前?」


「そうよ」


 まあこれは予測通りの反応だ。俺があの車やヘリコプターがどうやって作られているのか分からないのと一緒だ。出来ないのが当たり前なのだ。


 押し問答の様で申し訳ないが、俺はもう一度ユリナに聞いてみた。


「だが、人の怪我はわかるようになったんだよな?」


「…うん」


「なぜだ? 無理なんじゃないのか?」


「でも、わかったのよ。説明は出来ないけど」


「まずはそれが出来た事を信じろ。皆の具合や怪我がわかる、それを信じるんだ。そうすればもっと精度が上がってくるはずだ。精度が上がった時、もう一度俺の言葉を思い出してくれ。もし皆を治療したいのなら、ユリナがやるべき事は自分を信じぬく事だ」


「自分を信じる?」


「そうだ。とにかくできると信じろ」


「雲をつかむような話だけど、ヒカルが言うなら間違いないみたいね」


 納得は出来ないようだが、あとは自分で感じ取ってもらうしかない。正直な所、俺もユリナがその力を体得できるかは分からないのだから。


 ユンをユリナに任せ、俺はミナミの元へと行く。


「ミナミ」


「ん?」


「見事な剣だったな」


「いつもヒカルを見てたら、何か出来そうな感じがしちゃって」


「面白い型だったな」


「あれね、子供の頃から時代劇が好きすぎて、大学の時に舞台でやる殺陣とかを習ったの。あくまでも演劇の舞踏みたいなものだから、本当に出来るとは思わなかったけど。史学を学ぼうと思ったって言ったでしょ? 将来は映画方面か研究家を目指してたの」


「そうだったな。だが十分に出来ていたぞ」


「ほんと!」


 嬉しそうにしている。そして俺はもう一歩踏み込んでみた。


「みなみは俺のフレイムソードや水龍閃をやりたいと言っていたな?」


「うん! あれは大好きなアニメの技にとっても似てるの!」


「ミナミも出来るかもしれんぞ。約束は出来んがな」


「ほんと? でも…どうやって?」


「その前にやる事がたくさんある」


「何をすれば?」


 そして俺は、シーツの切れ端を割いてミナミに渡した。


「これで目隠しを」


「こう?」


「そうだ」


 俺はミナミを外に連れ出し、地面に落ちている小石を拾った。それをポイっとミナミの額あたりに放った。


 コツン。


「何?」


「石を投げた」


「あ、そうなんだ」


「次も投げるぞ、集中して避けろ」


「わかった」


 俺が投げる瞬間を悟られないように投げる。


 コツン。


「痛っ」


「俺は全く気を発していない、もう一度やるぞ」


「うん」


 そして俺はミナミの額にあてる意識を高出力で放った。するとミナミはそれを避けた。


「感じたか?」


「投げる! って思った」


「まあ、今は大きな気を発したからな。さっきのゾンビは食おうとして襲って来たから感じたんだろう」


「そうなんだ」


「次は木の棒で叩く」


「わかった」


 落ちていた木の枝を広い、気を発して振り下ろすとミナミは避けた。だが避ける動作が遅く、肩にバシンと当たってしまう。


「いった!」


「体のさばきが悪い」


「そっか! もう一度!」


 俺は何度も何度もミナミに木の枝を振り下ろした。すると五回に一回は完全に避けるようになる。


「どうだ?」


「楽しい! なんていうか! アニメとか映画でやる特訓みたい!」


「まずは、それを百発百中でやれるようになる必要がある」


「うへー、難しい」


「それには目をつぶって意識を集中させる訓練が必要だ。時間がある時に常にやっておけ」


「わかった! 先生!」


「せんせい?」


「そ、先生!」


 ミナミは凄く楽しそうだった。実はこの感覚がとても大事で、覚え込む楽しみが成長を促す。ユリナはいまいち信頼出来ていないが、ミナミはアニメと映画と言う理想がある。その分、覚え込むのは早いだろう。もちろんミナミにも出来る保証はないが。


 ただし、ここに居る皆に可能性がある。今まではひたすら俺が守って来たが、力を覚醒されられたなら俺がいなくなっても生きていける。やってみる価値は十分にあった。


 皆の居る場所に戻ると、タケルが喜んで俺のところに来て言う。


「おい! ヒカル! とうとう手のひらの一部が出て来たぞ!」


 タケルが手をひらひらとさせた。


「もうすぐだな」


「ヒカルは恩人だぜ」


「大したことじゃない」


「それによ、何か変なんだ」


「変?」


「意識を集中させるとよ、なんか変なんだよ」


「詳しく言ってくれ」


「ああ。昔、レースに出てた時みたいに集中すると、周りが止まって見えるんだよ」


 思考加速だ。タケルは思考加速を身につけ始めている。


「集中してみてくれ」


「ああ」


 俺はそこそこの速度で、さっきミナミに振るっていた木の棒でタケルを叩く。


 パシッ!


「なんだ?」


「今どう思った?」


「突然枝を振り下ろして来た」


「見えたのか?」


「まあまあ早かったけどな。見えた」


「普通なら見えない」


「マジか?」


「ああ」


 間違いない。タケルは思考加速を身につけ始めている。


 俺が皆の変化を確かめていくと、どうやら個人差があるようだ。その差はハッキリしており、恐らくは思い込みの深さが関係しているようだ。出来るかも、と思うのと無理と思うのでは全く違う。


 俺がユンの所に戻るとゆっくりと食事をしていた。ユリナが肉を細かく切って、それを与えているが普通に咀嚼して飲み込んでいる。俺はユンが食べ終わるのを待ってユリナに言った。


「もう一度、回復魔法をかける」


「ええ」


「まずはユリナがユンに手を当てろ」


「えっ?」


「背中にそっとな」


「こう?」


「そうだ」


 そして俺はその隣に手を当てて、ユンに語り掛ける。


「治してやるぞ」


「うん」


「ユリナがな」


「えっ?」


 俺はユリナの背中にも手を当てる。回復魔法をユリナの体を通じて、ユンの体に注いでいく。ユンの体は少しずつ回復し、頬のコケも大分消えて来た。


 俺はユリナに聞く。


「どうだ?」


「なにかが流れた感じがする」


「その感覚を忘れない事だ。次もやる」


「わかった」


 そしてユンがだいぶ回復したので、俺はユリナに告げた。


「あとユンのゾンビ因子を取り除く」


「やるのね」


「そうだ。早い方が良いと分かったからな」


「わかったわ」


 ユリナが皆に部屋を出るように指示をしていく。そして戸を全て閉め俺に目配せをした。


「ユン、ユリナの言う事を聞いてくれ」


「わかった」


「ちょっと服を全部脱ぐわよ」


「う、うん」


 ユンはちらちらと俺を見る。するとユリナが言った。


「恥ずかしくないわ。今から話をすることを冷静に聞いてね」


「うん」


「あなたの体にはゾンビになるかもしれない物が入り込んでいるの」


「えっ? うそ! 感染なんてしてないよ!」


「違うの。既に日本人のほとんどはそうなっているのよ」


「…うそ…」


「だけど安心して。ヒカルが私達のそれを取り除いてくれたのよ。だから信じて、私もここにいるから怖がらないで」


 ユンはこれまで、良からぬ男達の慰み者になって来た。そのせいで、男の前で服を脱ぐ事にい拒絶反応を示しているのだ。


「生き延びたいでしょう?」


「わかった…」


 そしてユンは一枚一枚服を脱ぎ、全裸になって横たわった。


「すまない。体に触れるぞ」


「うん…」


 俺が触れるとユンの体は震えていた。だが俺はかまわずに足元からゾンビ因子を取り除いていく。腰回りの奥がやはり溜まりやすいようだ。俺が体をまさぐるたびに、ユンは体を強張らせるがかまわずに続けた。さらに上に登り胸の周囲を取り除いていく。心臓付近には特に集中していた。さらに上に行くと脳の付近に大量にこびりついていた。


「終わった」


 他の人間と同じく、ユンも真っ白になっている。


「じゃあ体を拭くね」


「うん、なにこれ。真っ白なんだけど」


 白くなったユンをユリナがふいている横で、俺はこのゾンビ因子について分析していた。そして間違いなく気が付いた事がある。このゾンビ因子は自然のものではない。合成された何かがそれを構成している。


 それに、なぜヤクザ達はゾンビ感染していない事がわかったのか? 感染していない女子供を集める事が出来たのか? それを、どうにかして判別する事が出来るからだ。その方法までは分からないが、見分ける方法があるのだ。感染していない者は殺されていない。


 ゾンビ因子は、間違いなく何かを意図して作られたものだ。そしてそれは自然の栄養の吸収を妨げ、いずれは死に至りゾンビになるように設計されている。なぜそんなものを作り出してばら撒いたのかは分からないが、また一つ謎に近づいたような気がするのだった。

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