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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第三章 逃亡編

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第141話 はぐれた仲間

 俺は猛スピードで煙の出ている山頂へと向かった。方向だけを定め道など関係なく、森林地帯や川を飛び越え一直線に進んでいく。十分ほどかけて登っていくと、凄い水量の滝が見えて来た。俺はかまわずその断崖絶壁を垂直に登り、更に森林地帯を抜けていくと建築物が見えて来る。だが人の気配はなく、更に先に進むと広めの道路に出た。


「ここか」


 正面の建物が燃えている。その入り口には車が止まっており、中に人がいるようだった。そのワゴン車内を気配探知すると、一人が運転席にいてもう一人が後ろの荷台にいる。他にも車はあるが、木の壁を破り炎上する建物の中に入り込んでいた。


 俺は無造作にその車に近づいて、運転席の側へと忍び寄る。ミラーで見ると男は燃える建物を眺めており、俺に気づいていないようだった。瞬時にドアを開け、中の人間を引きずり出して口を塞ぐ。


「おい、お前はこんなところで何をしている?」


 男は驚きすぎて今の状況を把握できていないようだ。俺は日本刀をぬいて男に見せて言う。


「声をあげれば殺す。聞いた事にだけ答えろ。俺の言葉がわかったのなら、瞬きを一つしろ」


 すると男が瞬きを一つした。俺はそっと口の手を放して男に尋ねる。


「お前はここで何をしている?」


「ぶ、物資の回収だ」


「物資回収? こんな山奥にか?」


「そうだ」


「なぜ建物を燃やしている?」


「住んでいる人と争いになったらしい」


「みなで何人いる?」


「なんでそんなこと?」


 俺は日本刀を男の首に当てた。


「何人いる?」


「俺と後ろの女、あと中に八人いる」


「来い」


 俺は男を立たせ、ワゴン車の後ろに回り込んで言う。


「開けろ」


「わ、わかった」


 男がガチャっとドアを開けると、中にはほとんど服を身に着けていない女が横たえられていた。手足が縛られており、逃げられないようにしてある。扉を開けたことで、女が怯えたようにこちらを見た。


「あ…、もう…やめて。おね…がい」


 髪の毛で表情があまり見えないが、かなり弱っているようだ。乱暴を受けたのか体中があざだらけだった。俺が男に聞く。


「これはなんだ?」


 男が黙ったので、俺は日本刀を喉に突きつけながら聞いた。


「これはなんだ?」


「ひ、拾ったんだ。仲間達といて、今は女は俺達と行動してる」


「そんな事じゃない。なんでこんなことになっている?」


 すると男が怒ったように言った。


「何言ってんだ! こんな世界になったら弱肉強食だろ! 俺達の戦利品だよ!」


 どうしようもない。俺は質問を変えた。


「お前はヤクザか? それとも製薬会社の人間か?」


「な、なんだよそれ。ヤクザでもねえし、俺は元々パチンコ屋の店員だった」


 俺はそいつの延髄を叩いて失神させ、車の中に上がり込んだ。すると縛られた女が後ずさるように奥へと入って行く。だが俺はすぐさま女の手足を縛るロープを切った。


「や、やめて。もう、やめて」


「何もしない、それよりも…」


 と、俺が女の顔を見た時だった。俺は間違いなくこの女を見たことがある。


「お前は…」


「やめて…もう、無理」


「目を覚ませ!」


 パンパンと頬をはたく。死んだ目で女が俺を見た。


「あ、あ、なんで…」


 そして俺はすぐに女に回復魔法をかけた。女の痣が消え傷も癒されていく。


「来い」


 俺は女を担いでワゴンを降りた。そしてそのまま燃える屋敷の方へと向かっていく。中に入ると、男達がせっせと建物内から物資を運び出すところだった。俺が近づいている事にもまだ気が付いていない。


「何をしている?」


 俺が声をかけると、男達がこちらに注目した。


「なんだおまえ? どっからきた? 宿泊者か?」


「答えろ。何をしている?」


 するとそこにいる男三人が顔を合わせて笑った。


「うるせえよ! 何って、決まってんだろ。物資の回収だ」


 男達は運ぶ物資を降ろして、中にいる奴にも声をかけた。


「おい! 変な奴がいるぞ!」


 その声を聞いた奴らが、中からぞろぞろと出て来た。俺はそのうちの一人にも見覚えがあった。


「あ!」


 そいつは俺を見るなり大声をあげる。まとめ役のような男がそいつに聞いた。


「なんだ? オタク君の知ってるやつか?」


「ま、まずいでやす! あ、あの…逆らわない方が身の為かなーと思いますです。はい」


「なんでだ?」


 男達は警戒するように、その辺に置いておいた鉄パイプや鉄のバットのような物を手に取る。弓矢のような物を持っている奴もいた。


「いや。この人、このお方は人間じゃない強さをしているでやすよ!」


 そして男達は俺を睨むようにして身構える。だが俺が見覚えのある男は、俺の肩に乗った女を見て言う。


「こ、こら! ゆんぴは吾輩のお、おんなであるぞ! か、勝手に触れるな! 触れて良いのはここに居る仲間だけであるぞ!」


 おかしな日本語で語り掛けてきたそいつは。最初に東京で出会った奴の一人だった。そして俺が肩に担いでいる女もその一人。俺はその男に聞いた。


「トクラとタカコ、ヤマトはどうした?」


「あ、あいつらは使えないやつらでして、この方達の邪魔になると」


「トクラ達は、どうしたんだと聞いている!」


 すると他の男が怒声をあげた。


「おい! 俺達を無視してんじゃねえ! オタク! こいつは何なんだよ!」


「え、あの、昔の仲間と言うか…。いや仲間でしたと言うか…」


 歯切れ悪く言うと、オタクと呼ばれた男は突然俺の方に走って来た。そして傍らまでくると、跪いて俺に縋りつこうとする。俺は日本刀を前に出して、それ以上近づかないようにさせた。


「あ、吾輩は彼らに、彼らに脅されて利用されたのでござる!」


 突然の事に男達はあっけに取られていた。そしてオタクが続ける。


「仕方なくなのですよ! だから、どうか見逃してください!」


 だが俺の肩にいる女がオタクを見て言う。


「ち、ちかよるな…もう、やめて」


「何を言っているのでござる? 吾輩はゆんぴを思って…」


「いやだ…」


 相当嫌な事をされたのだろう。ゆんぴと呼ばれた女の体が小刻みに震えている。

 

 だが、まとめ役のような男がオタクを見て言った。


「おいおい! お前がその女が欲しいっていったんだろ! 俺達にも使わせてくれるっても言ったよな?」


「な、なな! なんと? ち、違うでやんす!」


「あとの奴らを殺してしまおうっつったのも、お前じゃねえか!」


「それは、足手まといになるからと」


「まあいい。お前も殺すしかねえな」


「え、あんたらこの状況わかってねえの?」


「なんだいきなりその口調は?」


 グダグダとこいつらは何をやっているんだ? こんなに黒煙が上がったらどうなるか分かっているのか?


「ごたくはいい。この女はもらっていく」


 まとめ役の男が言う。


「は、ああ。くれてやるよ! もう飽きた!」


「ここに住んでいた人らはどうした?」


「あんたにゃ関係ねえだろ」


 そう言うと、オタクが俺に言って来た。


「殺したんです。アイツらが」


 それを言われて、他の男が怒鳴った。


「お前! 殺す前に、ここに居た女とヤッたじゃねえか!」


「それは、なんというか。成り行きと申しますか…」


 それを聞いた俺が言う。


「その物資は、ここに住んでた人達の物だ。全部置いていけ」


「はあ?」


「聞こえなかったのか? 全部置いていけ」


「何言ってんだおまえ! こっちの人数が見えてねえのか?」


「俺は置いて行けと言った」


「黙れ。物資は俺達のだ。死んじまった奴らに物資なんか必要ねえだろ!」


 すると弓矢のような物を持っている奴が引鉄を引いた。一直線に俺に弓矢が飛ぶが、俺はそれを日本刀で斬る。恐らく何が起きたのかは分かるまい。


「あれ? 撃ったのに?」


 すると、まとめ役のような男が言った。


「殺せ」


「だな」


 男達が獲物を持って一斉に飛びかかって来た。七人の男を殺すのは一瞬で事足りるが、俺はそいつらの膝から下を飛空円斬で斬った。


 ドサドサドサドサ!


「うっぎゃぁぁぁぁぁ!」

「足が! 足ガァァァァ!」

「痛てえよお!」

「血が血が!」

「な、なんなんだよこれ!」

「し、死ぬ!」


 それを見たオタクが、自慢気な顔でそいつらに言った。


「ほらね。だから抵抗しない方が良いって言っただろ? 馬鹿な奴らだ」


「ぐうう! お、おまえ! なんだその態度!」


「知らんね! 俺はこのお方に忠誠を誓う事にしたんだ!」


「お、オタク! この!」


「バーカ」


 クズどもがそんなやり取りをしているが、俺の耳には既に他の音が届いていた。


「お前達。逃げた方が良いぞ」


「あ、足が」

「無理だろ!」

「あんた! 助けてくれよ!」

「頼む!」

「俺だけでも!」

「お前!」

「酷すぎるだろ!」


 男達が勝手な事を言っている。だが俺はそいつらを残し、入口の方へ振り返って歩きだすのだった。するとオタクが俺に言ってっくる。


「あ、あの! ついて行きます! 助けてください」


 すると俺の肩のゆんぴが言う。


「こ、来ないで。いやだ」


「嫌だと言っている」


「役に立ちますからぁ!」


「無理だ。だが、お前は片方だけにしてやる」


「えっ?」


 オタクは、自分の左足の足首が斬られている事に気が付いていないようだった。歩き出そうとしてようやく気が付いたらしい。


「う、うぎゃぁぁぁぁ」


 その叫び声を聞いてから俺は走り出す。すぐに森林を下るように走っていくと、山の向かい側の空からヘリコプターが二機すれ違うように飛んで行った。俺はかまわず先を急ぐと、さっきの燃える建物あたりで凄まじい爆発音が聞こえて来る。


 振り向けば煙は更に大きくなっており、ヘリコプターはその周辺をゆっくりと回っているのだった。

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