第136話 さらに北へ
俺達がたどり着いた建物はクラブハウスと言うところだった。館内を探索したところ、皆が休める場所も確保できそうだ。また服や雑貨などが並んでいるところを見つける。
それらを見てユリナが言った。
「ウインドブレーカーとかある」
「少しは寒さがしのげそう」
売り場を探したマナも袋に入った服を持ってくる。
「もう少しあるみたい」
「人数分は無いね…」
確かに全員分は無いが、ある程度着こんでいる者はいらないだろう。そして俺達は椅子のある場所に集まった。
「どうする?」
ヤマザキが俺に聞いて来る。だが俺は衛星という物を良く知らない。俺はミナミを見る。
「ミナミが言っていた衛星は、どうやって俺達を追跡している?」
「写真だと思うけど、夜になれば見えなくなるんじゃないかな? わからないけど」
「であれば夜の間に進むしかあるまい」
「徒歩よね?」
「車があれば良いが、皆は夜の道を明かり無しで走れるか?」
それを聞いたタケルが首を振る。
「漫画じゃあるまいし、真っ暗な峠道を走るなんて自殺行為だ。それにブレーキランプで、空から見つかる可能性もあるんじゃないか?」
「やはり山中を徒歩で行こう」
それには皆が難色を示した。ユリナが俺に進言してくる。
「ヒカル。住宅地に戻って進んだ方が良いと思う。このまま山越えするのはきついわ」
ミオが地図の冊子を広げて所定の頁を開いた。そして今の場所を確認する。
「この道を辿って徒歩で二時間下りれば住宅があるよ」
「わかった。それなら一時間ほどここで休憩してから出発しよう」
俺が言うと皆が頷いた。そして皆は休みながらも話をし始める。
「狙撃者ってファーマー社のやつかな? それとも一般人?」
ミナミが言った。それは俺にも分からなかったが、相手の攻撃から推測してもプロの仕業だ。
「ファーマー社かどうかは分からんが一般人などではない、一キロ先から、かなりの精度で攻撃して来た」
「そうか。じゃあ、このあたりに住んでる猟師じゃねえって事だ」
タケルがつまらなそうに頬杖をついて言った。
「俺が敵の攻撃を防いで思ったんだが、敵は一人だったように思う」
「一人? 一人で襲って来た?」
「そうじゃないかと思うんだ。それに追跡者が来たとは考えにくい」
「確かにな。そんなにすぐに見つかるわけが無いよな」
「ただし、ミナミが言うように油断も出来ない。万が一、衛星とやらで追跡しているのだとすればすぐに見つかるだろう」
それにはミナミが頷いて答えた。
「もちろん衛星じゃないかもしれない。飛行機も偵察のために飛んで来ただけかもしれないしね」
「しかしなあ…この世界の夜には光が無いからな。車のライトはかなり目立つよな?」
「そうね」
だが悠長にもしていられまい。ミナミが言うような有害物質が、空から降って来る可能性があるとすれば急いだほうが良い。
「ミナミのいう放射線はどうなると思う?」
「雨が降らなければ大丈夫そう。降ったからといっても、風向きがこっちに向いていなければ問題ないだろうしすぐに危険だとは言えない。だけど安全とは言えないと思う。」
「なら、市街地に降りて夜のうちにバスを見つけよう。俺の目なら暗闇でも運転は問題はない。ブレーキランプを潰せば明かりは発しないだろう?」
皆が同意した。それから俺達は身支度をしゴルフ場を出て街道に出た。山間部を走るその道は暗くて、時おり動物のような声が聞こえて来る。
「野生動物がいるね」
皆はその声を恐れるかのように、身を寄せ合って歩き始める。
「落ち着け。何かが近づけば気配で分かる。必要以上に恐れるな」
皆を落ち着かせつつ二時間ほど街道を下っていくと、住宅が見えてくるのだった。ゾンビもウロウロし始める。
「ゾンビがいる。俺が処理する」
そして俺が周囲のゾンビを斬りながら先を進んだ。そして道の側に大きな建物が見えて来る。
「学校だ」
「前に学校に潜んだことあったよね」
「あったね」
「休みたいけど急がなきゃね」
「うん、がんばろう」
「そうだね」
女達が弱気になってきている。学校を過ぎて民家のある場所に差し掛かると、庭に車が止めてあるのが見えた。だがどれも小さく全員が乗れるようなものでは無かった。
「バスなんて簡単にはみつからんな」
ヤマザキがポツリと言った。
「トラックでもいい。とにかく一台で動けるようにしたい」
光を発さずに進む事が必須だ。ブレーキを壊せば止まる時に後ろの車が追突してしまうし、真っ暗闇をついてくる事は出来ない。更に先に進むと、トラックが並んでいる場所があった。
「運送屋だ」
ヤマザキが声をあげた。
「よし! 運送屋はこれまでの経験上カギがすぐ見つかる。ここに入ろう」
「わかった」
畑の真ん中にある運送屋に入り、事務所の鍵を破壊する。内部に入ると想定通り、すぐにカギを見つける事が出来た。
「日本は凄いな」
俺は素直な感想を述べる。
「なんでだ?」
「こんな田舎の会社でも、きちんとしている」
「普通だと思うがな。この会社はトラックもそろっているし、個人経営だとしてもそこそこの企業だ」
「前世でこんなに簡単に馬車を見つける事など出来ないぞ」
「そうなんだな?」
「ああ」
俺とヤマザキが話しているとタケルが言う。
「とにかく急ごうぜ。葵ちゃんも良かったな」
「うん。もう足が痛い」
俺がアオイの側に行って足を見ると、踵が擦り剝けていた。俺がすぐに回復魔法をかけて足の筋肉痛ごと取り去る。
「どうだ?」
「軽くなった!」
ぴょんぴょん跳ねるアオイを見て癒される。俺達は急いでトラックに鍵をさしていき、一番燃料の多いやつを選んだ。そして俺はそのトラックの後ろに周り、ブレーキランプを破壊する。そして皆に伝えた。
「じゃあ俺が運転する」
俺が言うとタケルが呆れたような表情で言った。
「まあこの場合しかたねえけどよ。皆、覚悟しておいた方が良いぜ」
「なるべく丁寧にするつもりだ」
「よろしく頼む」
皆が荷台に乗って、俺の隣りにはタケルとミオが座った。そして俺は運転を指示されながら、光の無い漆黒の街道を進み始めた。
「たぶん真っすぐで日光方面だわ、大きな幹線道路からは逸れているから安全だと思う」
土地の名前を言われても良く分からんが、俺は言われるままにトラックを運転するのだった。




