第135話 避難場所を探す
俺は既におおよそ狙撃者の位置を掴んでいた。その敵の方角を警戒しながらも、逃げる算段をたてている。ここはひとまず逃げるしかない。俺は敵に体の前面を向けながら、先頭の車のツバサの所に行って言う。
「俺があの道を塞いでいるトラックを動かす。そしたら一気に加速して抜けるんだ」
「わかった」
そして後ろの車とその後ろの車にも、先頭の車について行くように言う。そして俺は敵の方向を向きながら狙撃者の次の攻撃を待つ。
ギイン! 俺が日本刀で弾丸を斬った。どうやら敵は車のタイヤを狙ってきているようだ。俺はサッと道を封鎖しているトラックの所に走り剣を振った。
「推撃!」
ドゴン! とトラックが吹き飛び道が開いた。するとツバサの車が俺の側を走り抜け、次々に開いた道を走り出していく。
バシュ! 次の弾丸は地面を弾いた。どうやら狙いが甘くなり、弾は車を捉えられなかったようだ。俺が想像した通り、狙撃をするには集中が必要らしい。連射が利かない事も分かっている。
とにかく、みんなをそのままにしておくわけにはいかない。敵が一人だけとは限らないからだ。俺は攻撃して来た位置をぎろりと睨みつけ、踵を返し皆を追って走り出すのだった。
皆は俺の言う事を聞いて車を走らせ続けているようだ。俺は更に加速し車を追いかける。
「いた」
ようやく車列を捉えると、車の速度が落ちて来て止まった。鏡で俺を確認したようだ。俺は先頭の車に飛び乗りすぐに言う。
「出せ!」
「はい!」
ツバサがアクセルを踏み、車列は再び走り出した。俺がツバサに言う。
「どこかで国道を降りよう」
「わかった!」
俺達は左に道を逸れて進んでいく。
「なるべく民家がある所に入るんだ」
「わかった」
住宅地へと進んだので、俺はジグザグに走っていくように指示をだした。しばらく走り続け俺は車を止めるようにツバサに言う。
「停めよう」
車は住宅地で止まり、俺は車を降りて最後尾のヤマザキの所に行く。
「ヤマザキ、どうするか? 敵の情報が少なすぎる、不用意に動けない」
「隠れるにしても、どうするかだな」
「民家では防衛が厳しい。あの東京を焼いた爆弾が飛んでこないとも言い切れん」
「くそ! 一体どうしたらいいんだ!」
珍しくヤマザキが冷静さを欠いていた。そこに皆が集まって来る。俺達が次の行先を迷い答えを出せないでいると、ミナミが言った。
「でも、とにかく都心から離れないと。放射線が降るかもしれないわ」
それを聞いたヤマザキも大きくうなだれて言った。
「だな。敵が来るかもしれんが、とにかく先に進むしかあるまい」
ミオが地図を持って来て広げた。
「高速道路じゃなくても北上できるわ。時間はかかるかもしれないけど、主要な幹線道路を通るより安全だと思う」
そして俺が言った。
「それで行こう。ミオ、道案内を頼む。先頭を走ってくれ」
「わかった。じゃあ南。運転をよろしく」
「ええ」
俺達は民家を縫うように走り、少し幅の広い道路に出る。俺は最後尾の車に乗り、周囲を警戒しつつ進んだ。流石にこんな道路を通れば敵には気づかれまい。だが、それから三十分程した時だった。
「ツバサ! 止まるように合図を」
俺が言うと、運転しているツバサがクラクションを鳴らした。
ププ! すると先頭の車が止まり、三台の車が距離を詰めて止まった。
「エンジンを切れ」
「わかった」
シューッ! 何か音が聞こえて来る。それを聞いたツバサが言った。
「飛行機だわ…」
「ヒコウキ?」
「ヘリコプターみたいに飛ぶ奴」
「飛行機か! まずいな」
俺はすぐさま車を降りて空を見上げた。音がするがまだ飛行機は見えてこない。するとそこに車を降りて来たミナミが言った。
「もしかしたら…衛星で探しているのかも。だからこっちに飛行機を飛ばしてきた?」
「エイセイ? なんだそれは?」
「宇宙。地球の周りを回る機械なんだけど、それが私達を追っているのかもしれないってこと」
「なに?」
皆も降りて来て飛行機の音を聞いた。街道の周りは森に囲まれており、近くに民家は無かった。俺達が隠れる場所は…
「みんな! 車を捨てよう。食糧だけを持ってくれ!」
タケルが荷物を背負いながらも俺に聞いて来た。
「どうするつもりだ?」
「この森林地帯を行く」
「そうか」
ミオが地図を見ながら言った。
「ここから先は山だよ」
「好都合だ。車は隠して行こう」
俺達は車を木の下に置いた。皆がリュックを背負うのを確認し俺が号令をかける。
「無理はするな! とにかく固まって歩くんだ! ゾンビは気にしなくていい! 俺が全て斬る! 皆は無心に歩くんだ!」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
俺達は車を捨てて森林地帯に足を踏み入れるのだった。森の中にはゾンビはおらず、気配探知にかかって来るのは野生動物ばかり。
ツバサが俺に言う。
「ヒカル! 登山をするのにこれでは、かなり軽装だわ」
「しかし今は装備を整える事が出来ない」
「夜になれば冷え込む。日が暮れる前に何処かに留まらないと」
それを聞いたユリナも賛同した。
「確かにそうね。低体温になると命の危険もあるわ」
なるほど。皆にはこの環境は厳しいらしい。確かに都心に居た時より気温は低かった。ミオが手をあげて座る。
「どうした?」
「えっと、地図で見るとね。近くにゴルフ場があるみたい」
「なんだそれは?」
それを聞いたヤマザキが言う。
「スポーツだ。まあ大人の遊場みたいなもんだ」
「そこになにかあるのか?」
「クラブハウスってところがある。そこに一時避難するのはありだと思うがな」
「わかった。ならばそこを目指そう」
再び森林地帯を歩き始める。既に飛行機の音は聞こえなくなり、静かな森の中をひたすら進む。皆が木の枝を踏む音や、葉がかすれる音だけが鳴る。次第に日が暮れて来て、辺りが薄暗くなってきてしまった。
「あとどのくらいだろう?」
「わからない」
ミオも頭を振った。気温はどんどん低下してきており、皆にも疲労の表情が出て来た。その時だった。
「開けた場所があるぜ!」
タケルが言った。そこに行って見ると、草木の少ない開けた場所が見えて来る。それを見てヤマザキが言う。
「ゴルフコースだ。これを辿って行けばクラブハウスにたどり着けるぞ!」
それを聞いて皆がホッとする。俺達はゴルフ場のコースとやらをひたすら歩いて、ようやくクラブハウスを見つけたのだった。




