第126話 羽田空港を孤立させろ
裏路地に徘徊するゾンビは俺が全て排除していく。とにかく音をたてるわけにはいかないので、タケルたちの銃は使わないようにしていた。
タケルが言った。
「燃えてるビルは後ろだろ? このまま前に進むのか?」
「車両の音がする」
「どっちからだ?」
「左だ」
するとミオが言う。
「ちょっと待って、地図を見よう」
ミオが地面に地図を広げて懐中電灯で照らす。ゾンビがこちらに気づくも俺が速やかに始末した。そしてミオが言う。
「そっちの方だと恐らく羽田空港だわ」
「なるほど。そこから車両が出ているのか」
「どうする?」
そして俺はその地図をじっと見つめて言う。どうやら羽田空港は陸地から離れているらしい。
「みんな地図を見てくれ」
そして皆が地図を覗き込む。俺は指をさしながら言った。
「空港は海に浮かんでいる。陸地に続く橋は、こことここと…合計七カ所」
「なるほど、それでどうする?」
「橋を潰そう」
皆が黙ってうなずいた。俺達は黙々と路地裏を歩いて行く。一時間もするとミナミが言った。
「大森だって、半分くらい来たよ」
「地図を見せてくれ」
そして地面に地図を広げて、一番近い橋を確認した。
「こっちに向かう」
「わかった」
そして足早に十五分ほど進むとミオが言った。
「車の音が聞こえる」
ミナミも言う
「本当だ。車が走る音」
「急ぐぞ」
先に人間が渡る用の橋が見えて来た。すぐにそこには向かわずに、一番近くにある民家に入る。中にはゾンビがいたが俺はそれを始末して二階に上がった。
「橋の上には敵はいないようだ」
「見張られたりしてねえかな?」
「人の気配はない」
「行くの?」
「行こう」
俺達は暗闇の橋の上を走って渡る。敵はおらず俺たちは無事に対岸にたどり着いた。
「ここは昭和島だって」
「ならこの先に進む」
昭和島を横切り、更に先に行くと今度は車が走れるような橋があった。タケルが聞いて来る。
「ここを落とすのか?」
「いや。ここじゃない。もっと先、ここだ」
「もっと先か? 車の音は後ろから聞こえてくんぜ?」
「潰しておくんだよ」
「わかった」
「念のため走るぞ」
俺が先頭を走り皆が後ろをついて来る。だが誰一人息を切らさずに橋を渡る事が出来た。更にそこから先に進んで想定の場所についた。
「えっ? ヒカル! この道は橋じゃないよ」
「これは、水の中を走っているのか?」
「水中トンネルだな」
「ならば好都合だ」
「なんで?」
「水没させればいいだろう」
俺は三人に告げる。
「皆はここで待っていてくれ」
「どうすんだ?」
「中から破壊する」
「気を付けろよ」
「問題ない。すぐ終わる」
そして俺は真っすぐにそのトンネルの中に進む。中頃に到着し腰の剣に手を触れた。
「大竜深円斬」
俺を中心に縦に円を描いて切れた。しばらくするとぽたぽたと水がしたたり落ちて来る。俺は急ぎその場を離れて走り始めると、崩落した場所からドッと水が落ちてくるのだった。入り口にたどり着いて三人に言う。
「走れ」
三人がその場を離れると、トンネル内が水浸しになった。
「来た道を戻るぞ」
俺達は走って元の道を戻った。今度は水辺沿いを東へと進む。するとそこには公園があり、その奥に進むと高台になった見晴らしのいい場所があった。
「この道路も水中だな」
「みてえだな、こっからは空港が見えるけど車が動いてんな」
「そのようだ。とにかく皆はここで待っててくれ。ゾンビは周囲にはいないようだが、もし来ても息を潜めていればこの上には上がってこないだろう」
そう告げて俺は再び水中トンネルに潜った。同じように大竜深円斬でその道を水没させる。皆のもとに戻り再び地図を見た。
「次の場所は迂回しなきゃならねえみてえだ」
確かにタケルが指さす地図には川があった。
「いや。この川を越える」
「結構幅ありそうだぜ」
「問題ない」
そして俺達はその河の畔に立った。俺はまずミオとミナミを掴んで、一気にその河を飛び反対に二人を置く。周りにゾンビが居ないのを確認してタケルも連れて来た。更に先に進むと河が見えて来る。川の幅は三メートルと言ったところだ。
「これなら俺も飛べそうだ」
「私も」
「今の私ならいけそう」
俺が皆の荷物を預かると、皆はその河を次々に飛んだ。俺は皆の荷物を持って飛ぶ。更に先に進むと空港から伸びる橋が見えて来た。
タケルが聞いて来る。
「ぶっ壊すのか?」
「いや。完全に切っておく、上に車が乗れば崩落するようにな」
「なるほど。ならバレねえか」
「ああ」
そして俺は橋に向かって構えた。
「真空裂斬」
俺は橋を切った。
「これで斬れたのか?」
「ああ、斬れている。恐らくは数台とおれば崩落するだろう」
「ご愁傷様だな」
「ああ、次に行くぞ」
更に先に進んだ時だった。俺達はビルの暗がりに潜んで先を見る。
「車だ」
俺達が橋を見ていると、タケルが言った。
「あれ、普通の車じゃねえぞ」
「なんだ?」
「たぶん軍用車だ。自衛隊か米軍か、それとも全く違う国か分からんけど間違いねえ」
「ヤクザではない?」
「わからねえ」
三台ほどの車両が通り過ぎ、辺りに静けさが訪れた。そして俺はその橋が見渡せる場所まで来る。どうやらその橋の対岸にはバリケードが用意されており、ゾンビが入らないようにしてあるようだった。
「真空裂斬」
再び橋を完全に斬る。車が通れば崩落するだろう。結局地図には載っていないような橋を含め七本の橋に切り込みを入れて進んだ。
「よし、走るぞ。他の橋が崩落すれば、迂回して最後の一本から出てくるだろう。その前に沈めなきゃならない」
「わかった」
俺達は最後の橋に向かって走り出すが、その足はすぐに止まる。
「橋の向こうに人がいるぞ」
「マジか」
「しかもかなりの数だ」
「ここを基地にしてるって事じゃねえか?」
ミオが地図を広げて言う。
「まって、ここは浮島ってところで、石油やエネルギーの基地があるわ」
それを聞いてタケルが言った。
「奴らのエネルギー源ってところか?」
俺はその地図を見て三人に説明をした。
「なんとか浮島に潜入して奥にある最後のルートを破壊する。そして車を奪いこの橋を破壊すれば奴らは追って来れない」
「結構ギリギリっぽいけどな」
「やるしかない。いざとなったら俺が何とかする」
「よし、ヒカルがいうんだ、ミオ、ミナミ! 行くぞ!」
「わかった」
「怖いけど、頑張らなくちゃ」
俺は見張りが立っている場所を見据えた。
「後からついてこい」
俺は三人を置き去って、一気に対岸にいる見張りの所まで、縮地で進むのだった。




