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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京

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第107話 浄水器と水浴び

 赤坂見附のビッ〇カ〇ラでツバサが見つけた腕時計を皆に配り、時間を合わせて皆がそれを付けた。皆の腕を並べた時に、タケルが言った「生き抜くぞ!」の言葉に、皆がオーと声を合わせたのだった。


 そして俺は今、一人で高層ビルの屋上におり、寝っ転がりながら腕時計をかざして眺めていた。青い空に自分の腕を立てて、皆がつけているのと同じ腕時計を見つめている。もしかしたら俺はにやけているかもしれなかった。皆で同じ腕時計をしているのが、なんだかうれしい。いつも一緒に居るような気分になって来る。


 だが、その気分をぶち壊しにする音が聞こえて来る。


 来たか…


 昼間は偵察もかねて赤阪の高層ビルに登り、屋上から全方位を見張る事にしていた。時おりヘリコプターが東京上空に現れて、その周囲を捜索しているからだ。そして俺は紙とペンを手に、屋上でヘリコプターが来た時間を記録していたのだった。


 ヘリコプターの音がする方角と距離を確認する。更に腕時計を見て紙に時間を記した。


「今日は多いな」


 朝から見張り続け、午後までに三回目のヘリコプターが飛来した。しかし赤阪付近は敵の想定外なのかこちらに来ることはない。恐らくは俺がヘリコプターを撃墜した方面の調査をしているのだろう。


 そして敵は、どうやら調査を諦める事は無さそうだ。まあ相手にとっても死活問題であろうから当然の事だが、あの方面の調査は諦めて欲しいところだ。その方角には温泉があるのだが、ヘリコプターの巡回のおかげで行く事が出来ない。結局温泉にはあの一回しか行けなかったのだ。


 また、地下鉄が地上に出る場所があるのだが、ヘリコプターの飛翔時間を避けてそこを通るようにしていた。だが今の所ヘリコプターの飛翔時間は定時ではなく、そう考えるとやはり夜間の行動が適切という事になる。


 行ったか…


 ヘリコプターは過ぎ去ってしまった。恐らく夕方までには行った奴が戻ってくるだろう。そして俺は考えていた。皆の場所を特定されないようにするためには、俺が単独で撃墜した場所に出向いて再びヘリコプターを撃墜する事。そうする事で、完全にあの周辺を重点的に疑う事になる。


 だが…皆はそれを反対した。前回の撃墜が上手く行っただけで、次に違う武器を持ってくる可能性もあるからだ。どうやら銃より危険な武器があるらしく、もしそれを使われたら心配だというのだ。


 俺は腕時計を見る。午後一時半、俺はおもむろに自分のリュックからツバサが用意してくれた弁当を取り出した。もちろん一日食わなくても動きは取れるが、ツバサは俺の体を考慮して用意してくれたのだ。


 弁当には密封したビニール袋に詰められたパンと、乾燥した果物を煮詰めたパックが入っている。俺はそのパンをビニールから取り出し煮詰めた果物を乗せてぱくついた。甘い。正直、飯というには物足りないが、それでもツバサが考えてくれたものだと思えば美味く感じて来る。


 結局夕方ちかくになって、行ったヘリコプターが戻って東に飛んで行ってしまった。


戻るか。


 ヘリコプターは暗くなると飛ばない。ヤマザキが言うには、暗闇では空から地上を見たところで何も見つけられないからと言う事だった。


 俺が屋上の入り口からビルに入り、下の階に降りていくとポロポロとゾンビがいるので目に見えた奴は消去して行く。地上に降りたら身体強化を施して、一気に国立図書館に戻るのだった。


 地下八階に戻ると丁度マナが、新聞を選んでいたところだ。地下八階には新聞がいっぱいあり、皆は暇つぶしにそれを読むようにしている。


「おかえりなさいヒカル! どうだった?」


「今日は三回だ。敵はまだ諦めていない」


「そうか…。とにかく疲れたでしょ! 皆の所に!」


「ああ」


 俺が皆の所に戻ると、ヤマザキが俺に言った。


「ヒカル! 戻ったか! どうだった?」


「あいかわらずだ。ヘリコプターは往復して飛んでいる。重点的に俺が撃墜した場所を調べているように思う」


「ヒカルの証言からすると、和光か朝霞あたりだよな…」


 するとユミが言う。


「じゃあやっぱり温泉には行けないね」


「そうだな。他を探すしかないだろう」


 それを聞いた皆は残念そうにしている。ペットボトルの水は貴重で、最近はあまり体を洗えていない。俺が近寄ると、皆が避けるように遠くに行く事もあった。タケルが言うには、女が自分の匂いを俺に嗅がれたくないのだと言う。俺は全く気にしないし、生きているのだから匂いくらいは当たり前にする。それにきっと行動している俺の方がずっと臭い。


 そしてユリナが言った。


「さすがに感染症とかの恐れもあるし、綺麗にはしたいところだけどね」


 この世界の医療は俺の居た世界より発達しているようで、ユリナは医者ではないが前世の医者を上回る知識を持っていた。


 そして俺が言う。


「ヘリコプターの時間を考慮すれば夜間になら動ける。あの黒いリムジンなら見つかりづらいんじゃないか?」


 タケルが言った。


「なら新宿まで取りに行かねえとな」


 するとヤマザキが言った。


「だが…いちいち命がけで温泉に入りに行くというのもな…」


 マナも頷く。


「そうね。一日だけ入ったらいいってものでもないし」


「業務用の浄水器があればな」


 ヤマザキが言うので俺はそれが何かを訊ねた。


「どういうものだ?」


「汚れた水をきれいにする装置だ」


「どこにある?」


「ホームセンターにならあると思う。ビッ〇カ〇ラには無かったか?」


「みてない」


「なら探しに行って見るか」


「よし」


 その日。俺とヤマザキがビッ〇カ〇ラに入って探した結果。


 あった。


 この機械にポンプで水を入れると出口の方から綺麗な水が出てくるらしい。今までペットボトルの水が入手し易すぎてそれを使っていたが、手に入れなかった事の方が不思議に思えるほどだ。


 ヤマザキが言った。


「いままではヒカルに頼りすぎていたからな。ペットボトルの水が簡単に手に入るから全く意識していなかった」


「仕方がない。とにかく水をどこで手に入れる?」


「拠点から近いところで言えば、皇居か赤阪御所に池がある。周りのお堀にもあるしな」


「あの汚れた水でもか?」


「もちろんやりようはある。どうする? タンクをたくさん持って行って補給すればいい」


「そうしよう」


「店に台車があるからな。それに乗せていこう」


「ああ」


 そして俺とヤマザキはそのまま、ポリタンクと浄水器を店にあった台車に乗せてアカサカゴショに向かう。あたりにはちらほらゾンビはいるがやはり数は少なく問題は無かった。するとヤマザキの言うとおりに敷地内には池があった。


 ヤマザキが言う。


「よし、まずはこのポリタンクを沈めて水をいれるんだ」


 俺とヤマザキはポリタンクを池に沈めて水を汲んだ。そしてそれを二つそこに並べた。


「で、少し待とう。汚れが沈殿するからな」


「ああ」


 夜の池のほとりで二人は待った。しばらくするとヤマザキが言う。


「そろそろ沈殿しただろう。そしたらこのポンプで浄水器の片方の穴に水を入れる」


「こうか」


 俺がポンプで水を組み上げ浄水器に入れた。すると反対側に取り付けた管から新しいポリタンクに水が出てくる。


「よし! 出て来たぞ」


 時間はかかるもののポリタンク一個がいっぱいになったので、また新たに水を汲んで同じ作業を繰り返した。すると二個のポリタンクが一杯になる。ヤマザキがポリタンクを台車に乗せている間に、俺は次のポリタンクに水を入れていくのだった。


 作業を繰り返し五個のポリタンクがいっぱいになる。


 ヤマザキが言った。


「こんなに上手く行くとは思わんかった」


「よかった」


「あとは一旦、拠点に戻ってタライに移そう」


「よし!」


 そしてヤマザキが台車を押し、俺がゾンビからの護衛をして国立図書館に戻った。エレベーターの入り口からせっせと運び込み、水のポリタンクを五個重ねて俺が持った。そして吹き抜けの階段を降りて地下八階に到着する。


「水! うまくいったの?」


 ユリナが言うとヤマザキがそれに答えた。


「ああ。飲料に適しているかどうか分からんが、恐らく体を洗うのは問題ないぞ」


「そう!」


 そして皆に言うと、女達がタオルやもろもろをもってやってきた。タライを三つ並べてそれぞれに水を入れていく。すると皆から歓声が上がった。相当待ち遠しかったのだろう。


「おおー!」

「やっと洗える!」

「冷たいけど十分だわ」

「葵ちゃんもおいで!」

「はーい」


 そして俺とタケルとヤマザキはその場所から離れた。女達が喜んでいる顔が見れて良かった。またいつか皆で温泉に入れるようになるまでは、これでしのぐしかないだろう。ひとまず人間らしい暮らしに戻すまでは、苦労を惜しむことは出来ない。


「だが…」


 俺が前を歩くヤマザキに言う。


「なんだ?」


「いつまでもは続けられない。脅威を退けて環境を整える必要がある」


「…ああ。そうだな、でも敵は強大だがそれでもここまで生き延びて来た。いつかその日が来ることを信じて頑張るさ」


 それを聞いたタケルが言う。


「ヒカル。俺達の力見せつけてやろうぜ」


「ああ」


 遠く後ろからは女達の楽しそうな水浴びの声が聞こえて来る。彼女らは健気にこの環境でも我慢してくれているのだ。


「敵の全容を掴んで、根絶やしにしてやるさ」


「頼りにしてるぜ」


 俺とタケルは腕を合わせてにやりと笑うのだった。

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