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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京

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第106話 バイクで皆と物資回収

 俺とタケルは、ミオとミナミとツバサの三人を連れて地下鉄に来ていた。俺とタケルでバイクを回収してきており、国会議事堂駅のホームにはずらりとバイクが並んでいる。しかも今回は片腕のタケルでも操作できるバイクを見つけた。そのためかタケルがやたら元気がいい。


「回転数合わせれば、いくらでもギアチェンはできんだけどよ、止まった時がな。もちろん平和な世界ならそれでも乗れたかもしんねえけど、流石にゾンビが大量に居ちゃ無理だ。片腕じゃ押しがけもままならねえし」


「いずれにせよタケルが乗れるのがあったのは大きい」


「ああ。それにギアチェン要らないバイクなら女達も乗れるだろう?」


「だな」


 ミオとミナミとツバサは緊張気味な表情でバイクの側に立っている。


「ただでさえ、路上でも乗った事無いのに大丈夫かな?」


「まあ、スピードは出さねえよ。メットも肘あても膝あてもつけてっから大怪我はしねえと思うけど、絶対ではないから十分注意するようにな」


「「「はい! 先生」」」


「なんか…くすぐってえ」

 

 俺が言う。


「だってタケルは先生だろ」


「ま、いいか。とりあえずバイクにまたがろう」


「「「はい」」」


 女達がバイクにまたがり、次の指導を待つ。


「一応こりゃクラッチがついてねえ奴だからよ。まあ見ての通りスクーターってやつだな。でも150CCくらいあるからそこそこスピードは出る。スクーターの操作はだいたい自転車と似たようなもんだ。ただブレーキをかける時はいきなり握らない事と、前と後ろを一緒にかける。じゃねえと転ぶ。まずはエンジンをかけてみるぞ」


 キュルルル! ブーン! 皆はタケルに指示されたとおりにエンジンをかけた。


「よし、じゃあスタンドを外そう。足でければ外れる」


 皆がバイクにまたがりながらタケルの言う事を聞いていた。


「じゃあヒカル! 先導してくれ」


「わかった」


「みんな! 右手のグリップを少し回してみろ」


 グーンと音をたてながらバイクがゆっくりと走り出す。俺が先行してその後ろを女達が走り出した。タケルが最後尾を走って皆を見守っていく。

 

 タケルが大きな声で皆に指示を飛ばす。


「あとは大体、自転車と同じような感覚だ! ハンドルで曲げようとしないで体を軽く倒して曲がる感じだな。だが地下鉄はほぼほぼ真っすぐだから、とにかく脇のコンクリに気を付けて真っすぐ進むんだ」


 ビーッと音をさせてバイクの集団が進んでいく。俺が地下鉄と駅のゾンビをしらみつぶしにしたので、地下鉄にはゾンビはいなかった。


 何か…楽しかった。みんなでバイクに乗って隣の駅までの回収。こんな事が何故にこんなに楽しいのか分からない。


 そしてすぐに赤坂見附の駅に着いた。


 タケルが言う。


「後と前を同時にな」


 スーッと皆がスピードを落として線路上に止まった。


「そしたら、スタンドをたてて降りるだけだ」


 皆がバイクを降りて、ホッとため息をついた。バイクのライトに照らされた皆の顔はどことなく満足気だった。心なしか俺もいつもより満足感がある。


「どうだい?」


 タケルが女達に聞くとミオが答えた。


「面白かった!」


 ミナミも興奮気味に言う。


「わたしも! 気持ちよかった!」


 ツバサも笑って言う。


「最初はすっごく怖がってたのが馬鹿みたい」


「だろ! バイクつーのは気持ちのいいもんなんだよ!」


「武の気持ちが分かった」


「そうかいそうかい!」


 とにかく上手く行った事に皆が喜んでいた。俺はこんな時間がずっと続けばいいと思っていた。だがゾンビもヤクザも待っていてはくれないだろう。俺は皆に伝える。


「この上にいろんなものが置いてある店があるんだ。リュックがパンパンになるまで詰めていこう」


「「「はーい」」」


 そして俺達はホームに上がり、階段を上へ上へと上がって行った。あらかた片付けたつもりだが、ポツリポツリとゾンビがいる。恐らくは地上から彷徨い入ってきたやつだ。俺がそれを片付けつつ進むと、ビッ〇カ〇ラの入り口が見えて来る。


 ミオが言う。


「地上に出なくても店に入れるんだね!」 


「そうだ。ここから直接入る事が出来る」


「なら地上に出てヤクザに見つかる心配がないね」


「そう言う事だ」


 そして俺達は店に入って行く。するとミオが振り向いて笑う。何かとても楽しそうな雰囲気に、俺の意識も上がる。


「アオイちゃんと約束してるの。ゲーム持ってくるって」


「そうか」


「そしたらヒカルもやろ!」


「わかった」


 そして店に入ると女達が喜び始める。ツバサが大喜びしていった。


「わ! 化粧品がそのままある! 高級な洗顔とかシャンプーとか手つかずだよ!」


 俺は笑いながら言う。


「好きなだけ持っていけ」


「「「わーい」」」


 地下鉄を通してよかった。彼女らは久々に訪れた店に嬉しそうだった。皆がそれぞれにリュックに物資を詰め込んでいる。


「薬は友理奈さんに見てもらった方がいいね」


「そうだねー」


「ほっ。でも助かったよね。女としてはさ」


「うん」


 どうやら女達はいろいろと困っていたらしい。物資が切れつつあったので次々に詰め込んでいく。するとミオが俺に聞いて来る。


「ヒカルは欲しい物はないの?」


「ある」


「なになに?」


「一階にある酒だ」


「お酒かあ!」


「そうだ」


「じゃあいっぱいもっていこ!」


「わかった」


 地下での収集が終わり、一階に登っていくと俺は真っすぐに酒の置き場に行った。この世界の酒は美味い、雑味が無いしなんとも言えない味わいなのだ。


 するとタケルが言った。


「ならよ! ヒカル! 高いヤツもってこうぜ」


「どれが高いんだ?」


「この数字がいっぱい並んでるのが高けえやつだ」


「よし!」


 そして俺は箱入りの酒を取り箱から取り出してリュックに入れる。箱をちぎってビンをくるみ、もうひと箱開けてリュックにしまう。そしてまた箱をちぎって瓶をくるんだ。


「意外に細けえな」


「割れないようにしないとな」


「なるほどね」


 そして俺がめぼしい酒をリュックに入れてさらに上に向かう。すると五階に来た時にミナミが言った。


「ああ! 助かる! 眼鏡とコンタクトがある!」


「どう言う事だ?」


「もうコンタクト無くなってうすぼんやりとしてたんだ。眼鏡も壊れ気味だしとにかく見えないのは大変で」


 どうやら相当困っていたらしい。タケルが言う。


「ならバイクは大変だったろ?」


「でも標識見なくていいし、ただついてくだけだったから」


「なるほどな」


 ミナミが店内を物色し、コーナーの奥に入って物を回収する。ミナミの用が済んだので、更に最上階に行くと、今度はミオが嬉しそうに言った。


「カードゲームとかボードゲーム持ってくんだ」


 いろいろと探していたミオが、大きめの箱を持って言った。


「これ…入らない」


「問題ない」


 俺はその箱を自分のリュックにヒモで括り付けた。


「これで大丈夫だ」


「ありがと!」


 そして今度はツバサが言って来た。


「ねえねえ! ソーラー電池の腕時計があるよ!」


「ほんとだ」


「皆のぶん持って行こうよ。時間をそろえておくと何かと便利じゃない」


 俺がツバサに質問する。


「それはなんだ?」


「時間を表すものよ。ここに短い針が来ると一時、二時。ここに長い針が来ると三十分」


「それは便利だ。むしろ必要なものだな」


 これがあれば別行動をした時に皆の行動を合わせやすい。そしてタケルが言った。


「じゃあ箱から出して人数分詰め込もうぜ」


 俺達は腕時計をリュックに詰め込んでいく。


 なんだか楽しくなってきた俺がみんなに言う。今までは生きる為だけの事を最低限やって来たが、みんなで自由に物を選ぶのがこんなに楽しいと思わなかった。


「もっと奥に行って見よう」


 皆のヘルメットについたライトであたりを照らし、他の場所を照らしていく。


 するとミオが言った。


「あ! あれ持って行っちゃだめかな?」


 それを見たツバサが言う。


「ウクレレ?」


「うん」


「弾けるの?」


「実は学校のクラブでやってたの」


 ミオとツバサとミナミが俺をじっと見る。もちろん俺に異論はなかった。


「入れ物があるんじゃないか?」


 俺が言うと三人がごそごそと探し始める。そしてツバサが言った。


「あった!」


「よし」


 するとタケルが言う。


「せっかくだから一番高けえやつもってこうぜ」


「うん」


 ミオがウクレレを手に取ってツバサの持っていた袋に入れる。俺がミオに言った。


「俺が責任をもって運ぼう」


「ありがとう」


 俺達のリュックがいっぱいいっぱいになったので俺が皆に言う。


「よし。それじゃあ、またバイクで戻るぞ」


 ミオが言った。


「今日は食料はいいの?」


 俺とタケルが目を合わせる。これ以上先の駅は安全が確保できない可能性があるからだ。


「食糧なら俺がいくらでも回収できる」


「なんかヒカルばっかりに任せて悪いなあって…」


「いや。むしろ俺一人の方が安全だ。ここから先の安全はまだ確保できていないんだ」


「…わかった。じゃあ、またいつか!」


「ああ」


 どうやらミオも随分楽しそうにしている。


 そして俺達は再び地下まで降り、地下鉄のバイクの所に向かうのだった。


 今回の事で地下鉄が有効に使える事は分かった。時間はかかるがゾンビの対策も出来そうではあるし、ヤクザをどうにかした後も移動手段として使えるだろう。そうすれば彼らだけでも、ある程度の食糧調達などが出来るようになる。


 そして何より。皆で東京を行動する事が楽しいと分かった。


 ヤクザがいる限りこの時間は長くは続かないかもしれない。だがこの楽しい時間を守るために何ができるかを、皆と一緒に考えて作り上げていく必要があると思うのだった。

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