表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女と騎士団長様の濡れ衣逃避行~婚約破棄と指名手配から始まる愛の癒やし旅  作者: 武野あんず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/47

第45話 裏切者の正体が判明!

「み、皆、来てくれ! グールだ! 朝からグールが出たぞおお!」


 外で自警(じけい)団の若者たちが声を上げている。


 たくさんの住人がグール()している!


 その数――約四十数名!


「ひ、ひいい! こ、この公民館の中にいれば安全なのか? た、助けてくれぇ!」


 ゴランボス氏はいかつい顔をゆがめて、私たちに(うった)えた。


「いや、ここにいるのは危険だ」


 ウォルターが首を横に振って言った。


「グール()した人間が入り口を(こわ)して入ってくる。建物内に逃げ場は少なく、僕らは追い詰められるだろう」


 ウォルターが言うと、ジャッカルもうなずいた。


「街の入り口付近なら逃げ場があっていいぜ。公民館内の人々を集めて、村の入り口付近に走ろう!」

「そうね――。皆さん、思い切って外に出てください! ここにいると危険です。街の入り口付近に移動してください!」


 私はパメラと一緒(いっしょ)に、公民館内にいる人々に声をかけてまわった。


 公民館内の人々――四十三名が集まったところで、外に出ることにした。


 朝の青空の光が私たちを包む。


「う、うわあああ」


 パメラが声を上げた。


 街中にグールがたくさんいる!


 とんでもない(さわ)ぎになっていた。


 外周(がいしゅう)地域も内周(ないしゅう)地域も関係なかった。


 グールたちは民家の壁、商店街の看板を(こわ)して回っている。


「あいつら!」


 ジャッカルは自分の武器の八角棒(はっかくぼう)を手に取った。


「ダメ!」


 私は叫んだ。


「彼らは人間です! 一時的にグール化しただけです」

「……そうだ。彼らを傷つけることはできない。元は人間だからな」


 ウォルターは真剣をしまい、そのまま白魔法医師たちとともにグールに立ち向かおうとしていた。


「ウォルター!」

「アンナ、大丈夫だ。見ていてくれ」


 ウォルターは私にそう言ってグールに向かっていった。


 グラモネ老人は叫んだ。


「よし、強制睡眠(すいみん)魔法を使おう!」


 グラモネ老人とルバイヤ村の若い白魔法医師たちは強制睡眠(すいみん)魔法を(とな)え、次々とグールを眠らせていった。


 そしてウォルターも強制睡眠(すいみん)魔法を使っている!


 ウォルターは白魔法が使えるようになっていた。


 驚いた――彼は本当に聖騎士(パラディン)になっていたのだ。


 睡眠(すいみん)魔法によってグールは眠り、倒れていく。


「な、何とかなったみたい。これでグールは全員眠らせたか?」


 パメラが言った。


「しかし……誰が住人に注射を打ったんだろう」

「おや? 橋のところに誰かがいるぞ!」


 ジャッカルが橋の方を指差して声を上げた。


 外周(がいしゅう)地域と内周(ないしゅう)地域を(つな)ぐ開閉式の橋の中央に、女性が一人、立っているのが見えた。


 まだグールがいるかもしれない!


 彼女を助けなくては。


 おや? 女性は後ろを向いているが見覚えがある……。


 だけど遠くにいるので誰だか確信(かくしん)がもてない。


「さあ、一緒(いっしょ)に街の入り口まで避難(ひなん)しましょう!」


 私は後ろを向いている女性に向かって叫んだ。


 あれ?


 この女性――。


「近づかないで!」


 聞き覚えのあるかわいらしい女性の声が聞こえた。


「アンナさんたちはこっちに来てはいけません!」


 女性は私たちのほうを向いた。


 ポレッタだった。


 まさか、ポレッタが魔族の薬剤(デモン・メディカ)を人々に打っていた張本人(ちょうほんにん)


 いや――。


 今度は外周(がいしゅう)地域の建物の(かげ)から、ポレットが立っている橋に誰かが歩いていくのが見えた。


 男性だ――。

 

 その男はすぐに誰だか分かった。


「ラーバス……!」


 私は思わず声を上げた。


 あの白魔法医師のラーバス・アンテルムが……ポレッタと橋の上で対峙(たいじ)している。


 ラーバスは注射器を持っていた。


 私は声を上げた。


「ラーバス! 早くこっちに来て。グール()した患者(かんじゃ)診察(しんさつ)を始めてください!」

「そうですよ、ラーバス先生! アンナさんの言う通りです。そんなところに()っ立ってないで……」

 

 ポレッタの言葉を聞いたラーバスはニヤリと笑い、自分の左手の平に注射した。


「手の平に注射すると、まんべんなくいきわたるんです。悪魔のささやきが。魔族の薬剤(デモン・メディカ)が!」


 ラーバスは注射し()え、注射器を捨ててそう叫んだ。


 すると……!


 彼の体が(ふく)れあがった。


 顔色は幽鬼(ゆうき)のように真っ白になり、身長――約二メートル三十センチほどの着物を着た巨人に変身した。


 巨大グールだ!


「ラーバス……! てめぇ、裏切者だったんだな!」

 

 ジャッカルが叫んだ。


「やるしかねえ。こいつは本物の魔族だ!」


 ジャッカルが橋に近づき八角棒(はっかくぼう)を構えて声を上げた。


 橋の周囲には白魔法医師たちも集まり、強制睡眠(すいみん)魔法を(とな)えだした。


「そんなものは効かぬ!」


 ラーバスが右手を横に振った。


 するとポレッタやジャッカル、白魔法医師が風圧で吹っ飛んだ!


「何という力だ」


 ウォルターが真剣を引き()きつつ、橋に近づいて声を上げた。


「しかし、今度は僕が相手だ。ラーバス、残念だよ。君を信頼していたのに」

「ほほう、白色(はくしょく)の王子か。よかろう、相手になろう」


 白色(はくしょく)の王子? どういう意味だろう?


 するとラーバスは思い切り右腕を振り上げて、ウォルターを手で横に(たた)(はら)おうとした。


 あ、あんな力技を体に受けたら、ウォルターだって骨折じゃ()まない!

 

 しかしウォルターはそれを後ろに()んで()けた。


 よ、よかった。


「ここだっ!」


 ウォルターは真剣を振り下ろした。


 何かが蒸発(じょうはつ)する音がした。


 ウォルターの剣がラーバスの右腕の一部を()()いていたのだ。


「う、ぐぐっ……。こ、この男……」


 ラーバスがうめいた。


 彼の大きな腕の一部が蒸発(じょうはつ)して()けだしている。


「あれは聖騎士(パラディン)白の剣術ヴァイス・グラディウス!」


 グラモネ老人が声を上げた。


「ウォルターよ、見事! 才能だけで聖騎士(せいきし)の技を習得してしまったか!」

「う、うぐぐぐ……」


 グール()したラーバスは蒸発(じょうはつ)しかかっている腕を()さえながら声を上げた。


「ゆ、許さん!」


 ゾートマルクでの最後の戦いが、今、始まろうとしていた。

☆作者 武志の新作小説 2024年7/14(日)12:10頃 連載開始!


『卑弥呼の転生者~令和の時代に、卑弥呼の私が生まれた。私が鬼道の術で日本を救います!』


https://book1.adouzi.eu.org/n3385jd/


「夢と現実が交錯する、卑弥呼が転生した少女の物語」ぜひ読んでください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ