迷宮ダンジョン、十五階を目指す! 3
隠し部屋から、どうやって落ちた穴を上るのか? と思っていたけど、今度は上にグアンとほり投げられた。
「ジャス! どけろ!」
ルシウスの上に着地したジャス! 大男同士って、むさ苦しいね。
迷宮ダンジョンの十三階は、とにかく広い。
バージョンアップした機械馬は、召喚獣の機械馬が鞍を装備していたからか、ついていた。不思議!
白猫の負担になる召喚獣より、魔導具の機械馬に乗って、十四階への階段前のセーフゾーンを目指す。
「なんだぁ!」とセーフゾーンを目指していた冒険者達が騒ぐけど「召喚獣だ!」と叫んで通り過ぎる。
今夜は、十三階のセーフゾーンに宿泊する予定だけど、他の冒険者達もいそう! ちょっと嫌。
セーフゾーンの近くで、機械馬をしまって、機械騎士、機械兵を出す。
バージョンアップして、少し大きくなっている。背負い籠と旗印は同じだね。
まだ召喚獣の機械騎士もサーコートを装備していない。ただ、騎馬騎士として召喚すると、剣ではなくランサーを装備しているんだよ。変なの?
セーフゾーンには先客がいた。
「これは、召喚獣だ! ここにギルドの召喚獣の証がある。攻撃したら、反撃させるぞ!」
もう、これも言い慣れた気がするよ。
「ああ、噂には聞いていたが、本当に召喚獣に荷物持ちをさせているんだな」
先客の冒険者のリーダーが立ち上がって、ルシウスと挨拶している。
十三階まで潜る冒険者は、銀級が多い。知り合いなのかな?
「なぁ、エールを売るとも聞いたけど?」
それがわざわざ挨拶した理由みたいだ。顔を見知っているだけか。
「ああ、ちょっとテントを設営してから、分けてやるよ」
セーフゾーンには、今は一組の冒険者だけだけど、追い越した冒険者達も来るだろう。
隅の良い場所を確保したい。奥の方の片隅にテントを出す。そして、機械兵達に周りを警護させる。
「兎に角、腹ごしらえとエールだな!」
昼は肉詰めパンだったから、シチューが食べたい。
温めたいから、薬草を煮出す時の釜を持って来ている。
機械騎士の籠から出す振りをして、釜とシチュー入りの小鍋を出して温める。
薪ももう少し備蓄しておいた方が良いかもね。
ジャスは、エールの小樽をドロップ品を利用して台を作り、エールをジョッキに注いでいる。
「おい、もう寝るだけだから、二杯飲んでも良いんじゃないか?」
やれやれ、そんな事を言うから、他の冒険者達が落ち着かない。
「シチューとパンだよ!」
ルシウスとジャスに渡す。白猫もシチューで良いと言うけど……大丈夫なのかな?
「猫ではない!」と怒るから、銀の皿に肉を多めによそって出す。
「エール!」と手を伸ばしてジャスから貰う。
ああ、美味しい! 仕事終わりはエールだよね!
早食いのルシウスとジャスにエールの販売は任せて、森亭のシチューとパンとエールをゆっくりと食べる。
食べ終わった頃、追い抜いた冒険者達がドタドタとセーフゾーンにやってきた。
「機械馬に乗っていた奴らがいた!」と騒いでいる。
「おお、それは俺たちだ! あそこに召喚獣の機械騎士と機械兵がいるけど、攻撃したら容赦しないからな!」
ルシウスがガツンと言い聞かせている。
エールを買ってご機嫌な冒険者達が「そうだぞ!」と援護してくれた。
「なぁ、もう一杯……」
ジャスがルシウスに強請るけど、これは決めた事だと叱られている。
それを見て、来たばかりの冒険者達もソワソワしだす。
「追い越した迷惑料に、エールを八銅貨で分けてやるぞ!」
ルシウスの言葉に、わらわらと集まる。本当に、冒険者ってエールが好きだよね! まぁ、私もだけどさ。
ちょっと皆で話をする。最初にいた冒険者達は、十五階を目指しているそうだ。星の海と一緒だね! リーダーは銀級、他のメンバーは銅級。それも似た感じだ。
後から来た冒険者達は、これ以上は無理だと引き返すみたい。こちらは、銅級ばかり。でも、もう少ししたら銀級になると自分達で言っている。本当かどうかは分からないけど、十三階まで来られたから、いずれはなれるんじゃない?
「なぁ、銀級になるには、ギルドの依頼を何個受けたら良いんだ?」
エール片手に雑談タイム!
「召喚士なら、すぐに銀級になるんじゃないのか?」
若い冒険者が羨ましそうに口にした。
「そんな訳ない! 銀級になるには、中級ダンジョンの十三階以上を潜る。それと護衛依頼を何回か受ける。後は、依頼をいっぱい受けなきゃいけないんだ」
でも、それも良い加減な判断みたいだ。私の頭の中の女神様の知識で、冒険者ギルドの昇級システムを調べる。
色々な条件が書いてあるけど、最終的にはギルド長・ギルドマスターの判断だそうだ。げー、一生、銀級に上がれる気がしないよ。まぁ、良いけどさ。
テントと機械兵達の見張りも、冒険者達は驚いている。
「セーフゾーンなのにテントが必要か? ダンジョンの外ならわかるけど」
それは無視したけど、機械兵へのちょっかいは困るから、言っておいた。
「魔法でバリアを張っておくから、手が切れても良い覚悟のある奴だけ掛かってくれば良い」
デモンストレーションで、薪をバリアで真っ二つにしておく。
マジックテントの中は、家仕様! この中でエールの二杯目を飲む!
ベッドも完備してあるから、ゆっくり休もう。あっ、勿論、魔法陣に魔石をセットしておいたよ。




