マジックバッグを探す筈が
長い昼休みになったけど、白猫が迷宮ダンジョンにマジックバッグがあると言い出したので、俄然、やる気になった。
「元々、二階まで行く予定だったんだ!」
ルシウスは、マジックバッグを探そうと、張り切っている。
相変わらず白猫は、私の頭の上に座っている。ちょっと嫌だけど、午前中の戦闘でレベル3になった。どんどんレベルアップさせたいから我慢!
とはいえ、大広間のシャンデリアが攻撃体勢になるまでは、巨大ねずみや巨大猫を討伐するけどね。
「やっと攻撃してきた! やったね!」
矢で討伐して、二階への攻略ルートを進む。小部屋はスルーして、廊下の蝋燭だけを討伐する。
「ここがセーフゾーンなのか……」
多分、大食堂だった広い場所に、二組の冒険者パーティがそれぞれ固まって休憩しているけど、私たちは脚を止めないで二階へと急ぐ。
こんな時、私だけだったら絡まれたりするかもしれないが、大男二人に絡む馬鹿はいない。
「脳内地図!」を掛けて、ギルドで買った地図と見比べる。
「二階は、ここだけみたい」
一箇所、ギルドの地図に載っていない箇所があった。
「ほぼ三階に近いな! どんどん進もうぜ!」
ジャスとルシウスは十階まで踏破しているのだ。できたら、今日中に五階まで行けたら良いな。
「アレク、ドロップ品をいっぱい集めたいから、ゆっくりと進んだ方が良いのさ!」
ルシウスは、魔導灯や冷蔵庫や機械兵や機械騎士が高価買取されそうだから、そう言ってくれているのかも?
「ははは、マジックバッグがあるかもな!」
ジャス! そんなに簡単に見つかるとは思えないけど……まぁ、神様は、一階の隠し部屋でずっと見つからずにいたんだから可能性はあるかもね。
二階も巨大ねずみ、巨大猫、蜘蛛、シャンデリア、蝋燭は同じだけど、蝙蝠が加わった。
白猫は、雑魚は相手にしないって態度で魔力を温存している。まだレベルが低いからもあるけど、魔法使いの正しい戦い方なのかも。
二階は、一階よりも大きな部屋が多い。つまり、シャンデリアが各部屋にあるから多いんだ。
「魔導灯、かなり作れそうだな!」
ルシウスは、嬉しそうだけど、私は蝙蝠が少し苦手だ。
バタバタ飛んでこられると、反射的に魔法で「バリア!」と一掃しちゃう。
「魔法の無駄だ!」と白猫に馬鹿にされるけど、顔にベタって張り付きそうな恐怖を感じちゃうんだ。
二階の隠し部屋への扉も壁クルリンだった。ただ、通路の先には空中庭園があったんだ。
「ゲッ! びっしりの機械花!」
食物ダンジョンにいたお化け花の機械バージョン!
「雷!」で全体攻撃して、固まっている機械花を、ルシウスとジャスが叩き壊す。
「おっ、ドロップ品は宝石じゃないか!」
色とりどりの宝石がドロップして、ルシウスは喜んでいるけど、白猫が「気をつけろ!」と警告する。
機械花の後ろのガゼボから、機械ハチドリが集団で飛んできて、氷の魔法で攻撃してきた。
「召喚」
機械兵が何十体も召喚され、青い機械ハチドリを槍で突いていく。
「前より強くなっていないか?」
ジャス、鋭い! 鑑定したら、機械兵もレベル3になっていた。機械ハチドリは、綺麗な青い部品、そして魔石をドロップする。何になるのかな?
「ぼんやりするな!」
空中庭園の機械庭師は、大きなハサミを投げてくる。
基本的に、機械系は「雷!」で動きを一瞬止めたら、ルシウスとジャスが無双してくれる。
「ハサミは分かるけど、薬草は何故なんだ?」
ジャスは首を傾げているけど、私は嬉しい!
「これ、上級薬草も混じっている!」
荷物持ちは、戦闘の前線にはいないので、アイテムボックスに薬草は入れちゃおう!
でも、その奥から機械トレントがドシン、ドシンと隊列を組んでやってくる。
「気をつけろ!」とルシウスが警告する。枝を振って、木の実を投げてくる。
金属の木の実は、ほぼ手投弾と同じだ。当たると爆発する。
「バリア!」で防ぐけど、爆発が激しくて、全く前進できないし、攻撃し難い。
「召喚!」
白猫の召喚した機械騎士が爆発をものともせずに、瘤を攻撃してくれたので、数が少なくなった。
「これならいける!」ジャスとルシウスが、機械トレントを討伐していく。
この時、私は空中庭園に飛来する魔物の影に気づき、上を見上げて呆れた。
「これってパクリだろう!」
白猫に文句を言ったけど、素知らぬ顔だ。絶対に、前世の怪獣映画を観たんだ!
巨大な機械の蛾! バタバタと羽ばたく度に、炎の鱗粉をばら撒いている。
「ここで魔法攻撃だ!」
偉そうに指図されるのは、腹が立つけど、確かにその通りだ!
「遮断!」
巨大機械蛾は真っ二つに割れて、消えた。
ドスン! と大きな白い箱が落ちてきた。
「何だ? これは?」
「当たったら、怪我をしそうだ!」
これってもしかして! 鑑定すると、温風冷風機だった。
「やったね!」と喜んでスイッチを入れたら熱風が!
「ちょっと! 南の大陸で暖房はないだろう!」
期待を裏切られて、ブチギレしそうになった。
「ちゃんと見ろ!」
白猫が可愛い手でポフとした箇所に暖房と冷房の切り替えスイッチがあった。
「「「おお、涼しい!」」」
ルシウス、ジャス、私が顔を見合わせる。
「「「俺が貰う!」」」
三人ともこのところの暑さに寝苦しさを感じていたのだ。
「何回もアタックしようぜ!」
ジャスが吠える。
「売れば……クランを作る家の資金になるかも……でも、欲しい!」
ルシウスは、理性と欲望の間で葛藤している。
「作れば良い」
白猫が簡単そうに言うけど、できるの?
「できる!」
思わず嬉しくなって、白猫を抱きしめちゃった。
でも、白いもふもふの手で指された機械トレントのドロップ品を鑑定したら、冷風機の部品だったんだ。
白猫が作ってくれるんだと勘違いしていたよ。
「|マジックバッグは良いのか《ニャニャニャニャン》?」
ああ、本来の目的を忘れていた。反省!




