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女神様の愛し子じゃないから!  作者: 梨香
第三章 防衛都市

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一仕事終わったらエール!

 荷物持ちの子ども達と別れて、冒険者ギルドに向かう。


「ロイヤルゼリーとヴリシャーカピの睾丸、それにボスの白い毛皮……依頼があると良いのだけど……」


 銅級の依頼と銀級の依頼を見て『至急! ロイヤルゼリー!』の張り紙を見た。睾丸以外は、アイテムボックスに入れておいても良いかもね。


 依頼のロイヤルゼリーは一瓶だ。これ、何かに使えるのかも? 薬師関係は、女神様(クレマンティア)の知識だ。


 立ち止まって、頭の中を探索する。


『ロイヤルゼリーと上級薬草と竜の肝で、上級回復薬ができる』


 ふむ、ふむ、これ竜の肝が無いから、当分は無理だね。準竜は、ルシウスとジャスは遭遇した事があるって言っていたから、中級回復薬を作ってみたいんだよ。


 もっと簡単な使い道はあるのかな? 


『ロイヤルゼリーは、免疫力を高める』


 これ、使えるかも? 依頼は一瓶だから、残りで試してみても良いよね。


 精算の列に並んでいると、今日も馬鹿が絡んでくる。


「綺麗なお兄ちゃん、一緒に酒でも飲まないか?」


 サーシャの顔、女神様(クレマンティア)にそっくり! つまり美人なんだよねぇ。ありがたくて、涙が出てくるよ! お陰様で、馬鹿冒険者ホイホイになっている。


 交易都市(エンボリウム)で、ジャスに初めて声を掛けられた時、指を切ったんだよなぁ。あの時は、大きな冒険者ギルドに、内心ではビビっていたから、舐められたら駄目だとイキっていたんだ。


 そんな事を回想しながら、無視していたら、ウザ絡みしている冒険者が、私の肩に手をおこうとした。


「言っておくが、俺に指一本でも触ったら、痛い目に遭わすぞ!」

 

 警告したのに、ヘラヘラ笑って「おお、怖い!」と言いつつ、肩に手を置く。


(フルメン)!」を弱めに掛けておく。


 まぁ、弱めにする調整が上手く出来なくて、青白い稲妻が直撃しちゃったけど、黒焦げになってないから良いんじゃないの? ぶっ倒れているけど、死んではいないよね?


「ううう……」と泡を吹いている。

 うん、まぁまぁ上手く調整できたね! と私的には満足していたんだけどさぁ、馬鹿には馬鹿の友だちがいるみたい。


「おい、何をしたんだ!」

「この野郎!」


 ウザいから、もう少し弱め調整の実験台になってもらおう。


(フルメン)!」 


 うん、上手くいった! 小さな稲光で、魔力の節約にもなりそう。


 床に倒れた冒険者を助ける人はいない。それは、自業自得だけど、私の周りからも人がいなくなった。


「あのう、精算をお願いします!」


 受付のお姉ちゃん達も逃げちゃったんだ。


「アレク、冒険者ギルド内での喧嘩は禁止だ!」


 二階からギルドマスターが吠えている。


「俺に触るなと警告したのに、無視したから注意しただけだ」


 床に伸びていた冒険者達、最初の馬鹿以外は、気がついて這って逃げている。


「おおぃ、その馬鹿を治療室に運んでおけ!」


 確かに、冒険者ギルドの床に寝ていられたら邪魔だよ!


「アレク、部屋に来い!」


 えっ、精算が終わったら、手入れしてもらっているナタを取りに行く予定なんだけど……私が困っていたら、地獄で女神様(クレマンティア)に会った気分!


「おぃ、相変わらず問題を起こしているな」

 ルシウスとジャスが笑いながら後ろに立っていた。


「明日から中級者用のダンジョンに潜るのだが、依頼があるなら受けて行こうと思ってな。でも、この騒ぎに遭うとは……」


 ルシウスは呆れているけど、ジャスはガハハと笑っている。


「まぁ、指や腕を切ったり、去勢するよりはマシになったなぁ!」


 それ、褒めてないけど、肩を叩こうとした手を止めたのは、学習能力があるみたいだ。


「ギルドマスター、星の海(シュテルンメーア)のメンバーがお騒がせして、すみません」


 ルシウスがいるなら、下級回復薬の件も任せておこう。


「ルシウスか……丁度、良いだろう。一緒に上がって来い!」


 ジャスも当然の顔をして、ギルドマスターの部屋に入る。ああ、二人がいるから、この前と違って、凄く心強い。


「ジャスだったかな? お前も星の海(シュテルンメーア)のメンバーなのか?」


 赤毛の大男と黒髪の大男に挟まれて、長椅子に座る。


「この前に引き続いて、今日も騒ぎを起こしたな」


 ふぅ、馬鹿が多いからね。口を開く気にもならない。


「アレクは、訳もなく騒ぎを起こす奴ではない。絡まれて、それを解決しただけだ」


 そう、そう! それに一度目は、冒険者達が勝手に騒いだだけじゃん!


「冒険者同士の喧嘩は、自己責任だろう! ここでは違うのか?」


 ジャスが吠えたら、ギルドマスターが睨み返した。


「私の冒険者ギルド内では、喧嘩は禁止だ!」


 まぁ、ギルドマスターなんだから、規則は自分の考え通りでも良いけどさ。


「それなら、ちょっかいを出されたら、ギルドの外でやっつけたら良いんだな!」


 ジャス、そうなのか? いや、ギルドマスターが苦虫を噛み殺したような顔をしている。


「アレクは、自分からは揉め事を起こす気はない。文句をつけてくる馬鹿を取りしまるのもギルドマスターの仕事ではないのか?」


 ルシウス! 手を叩きたいよ。


「そうだな……冒険者達を行儀良くさせられる組織を作らないといけない」


 ジャスはゲーッて顔をしたけど、これから冒険者になる子ども達の為には良いと思う。


「ああ、それと下級回復薬だが……」

 ルシウスは、私が昨日渡した下級回復薬(優)をギルドマスターに渡す。


「ふむ、普通の下級回復薬とは色が違うな。これをギルドの鑑定士に見せたい。そして、なるべく多く納入して欲しい」


 その交渉はルシウスに任せる。本当に、ガメツイから頼りになるよ。


「最低でもカインズ商会に納めている金額は譲れません。それと、アレクにはギルドの昇級ポイントを有利にして貰いたいです。下級回復薬を作る為に、ダンジョンに潜ったり、依頼を受けられなくなるのですから」


 ほぅ! やはりルシウスは交渉上手だね。


「それは考慮する」と言ったけど、どの程度かはわからない。


「さて、精算しなきゃ!」

 ギルドマスター部屋なんか、長居する場所じゃないよね。


 階段を降りながら、ジャスが「初心者用のダンジョンなのに?」と小馬鹿にするから、隠し部屋で見つけたピカピカの剣を見せる。


「げぇ! こんなのドロップするのか?」


「ルシウスが使う? 俺は、ナタが良いから」


 ルシウスは手に取って考えている。


「何か効果があるのかな? 兎も角、鑑定士に見てもらおう」


 そうか、鑑定! したら良いんだ。


「鑑定! ふむ、ふむ、聖なる効果がある剣だと出たけど……役に立つのかな?」


 サーシャは、女神様(クレマンティア)の愛し子だったから、神聖魔法関係は使えるんだよね。


「なんだって! それなら闇ダンジョンを攻略できるぞ!」


「俺が貰った!」


 ルシウスとジャスがピカピカの剣を奪い合っている。


「この剣は、ルシウスが使えば良いと思う。だって、ジャスは大剣だろ?」


 ルシウスは「ちゃんと金は払う!」と喜んで、ピカピカの剣をベルトに刺した。


「なぁ、初心者用のダンジョンで、そんなドロップ品なんて聞いたことがないぞ」

 

 ジャスは諦めきれないのか、愚図愚図言っている。


「隠し部屋がモンスター部屋になっていたのさ」

 

 コソッと教えたら「明日、モンスター部屋に行こう!」と耳元で騒ぐ。


「嫌だよぉ! モンスター部屋にはヴリシャーカピのボスもいたんだ。それに、ドロップ品が復活しているかわからないじゃん!」


 ジャスとルシウスは、何日かしたら復活するんじゃないかと話している。


 私は、ロイヤルゼリーと睾丸を精算して貰った。なんと、十五金貨(ゴルディ)


「一仕事終わったら、エールだよな!」


 今日は、ルシウスとジャスが一緒なので、馬鹿な冒険者も絡んでこない。二杯飲んじゃおう!

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― 新着の感想 ―
『ロイヤルゼリーと上級薬草と竜の肝で、上級回復薬ができる』 上級回復薬(秀)は、3点セット? ロイヤルゼリーと上級薬草だけだと、(優)になるの?
[一言] ギルマスよ、貴重な人材に逃げられたらどうする気なんだ… この人、逃亡中ですから、どこにでもいきますよ? 金額は引き上げないと、断るよ? ギルドに預けた貯金は、念の為引き出そう
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