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女神様の愛し子じゃないから!  作者: 梨香
第三章 防衛都市

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迷路ダンジョン 2

 その後も三階は、遭遇するアルミラージと火食い鳥(カセウェアリー)を討伐しながら進んでいたけど、草原よりは避け難いからドロップ品も多くなった。


「俺たちも拾います!」


「サミー、サッサと拾うんだよ!」


 キラービー組みの荷物持ちの子どももアピールしてくるから、ジルとサミーは必死で拾う。


 広場で、ちょっと休憩する。


「ハチミツの瓶が重い……」

 サミーが背負い籠を下ろして、ホッとしている。


「巣には女王蜂がいたのかもな? おっ、これはハチミツじゃないぞ!」


 鑑定! したら、ロイヤルゼリーだった。これは高価買取が期待できる。


「サミー、それは私が持つよ!」


 そう言うジルの背負い籠も、半分以上になっている。


「後からの子の背負い籠は……かなり多いな」


 ジルが「巣を討伐したから」と口を尖らせる。


「今日は十階まで行くつまりだから……ええぃ、全員を雇うよ!」


 ゾロゾロと六人も子どもを連れて、迷路ダンジョンを探索する。子守になった気分だ。



 四階は、冒険者の白い点が少ないから、魔物を避けながら進んだ。

 それでも、迷路ダンジョンだと、草原みたいに避けるのは難しいから、かなりドロップ品が増えた。


「五階は人が多そうだから、ここで休憩しよう」


 下に降りる階段の前の広場で、一旦、休憩する。

 ここまでで、ちんけなスライム魔石狙い、キラービーのいちゃもん馬鹿、二組に邪魔された。


「少し早いけど、昼飯にしよう」


 ジルとサミー、固そうなパンを齧っている。

 私は……子どもの羨ましそうな視線を無視して、パンを食べる勇気がない。


「お前たち、食べ物は持って来ていないのか?」


 スライム組は「いつも一階で帰るから」と小さな声で言う。

 キラービー組は「五階までだから、出てから焼き串を買うつもりだった」と悲しそうだ。


「えっ、お兄ちゃん! 分けるなら、私も欲しい!」

 固いパンを齧っていたジルも騒ぎだす。


「仕方ないなぁ」

 金熊亭の大きな肉詰めパンを六つに切って渡す。

 バッグの中から出す風にして、アイテムボックスの中から、お城から貰ってきたパンとオレンジを出して食べる。


「オレンジ……」とジルが羨ましそうな顔をするけど、南の大陸では屋台で時々売っているから無視!


 ダンジョンに潜るなら、食糧をもっと備蓄しておいた方が良いな。


「水筒ぐらい持ってこいよ!」

 スライム組、本当に荷物持ちとしても駄目だな。

 ジルは、偉そうだけど、根は悪い子じゃないから、水筒を貸してやっている。


「全部、飲むなよ!」と怒っているので「浄水!」と掛けてやる。


 ズッシリと重くなった水筒から、一口飲んでジルが騒いでいる。


「美味しい水だ! お兄ちゃん、凄いよぉ! 私は、ずっと兄ちゃんについて行く!」


「えっ、困る! それに、明日からは中級者用のダンジョンに潜るから……」


 そんなことを言ったの、大失敗だ! 荷物持ちの子ども達、目をキラキラさせている。


「いや、子どもを中級者用のダンジョンに連れて行かないぞ!」


 ピシッと言ったけど、ジルを追い払えるか不安。押しに弱いからなぁ。


「中級者用のダンジョンの何処に潜るの?」なんて聞いてくるんだ。絶対に、何処に潜るのかは内緒!


 五階は、転移陣があるから冒険者の白い点が多い。


「サッサと六階に行くぞ!」


 ただ、五階からビッグボアとかも出てくる。


「ビッグボアだぁ」

 スライム組の子どもは、ビビっている。あの冒険者達、あれで食べていけるとは思わない。山賊ルートに落ちなきゃ良いけど……。


 六階、七階と順調だった。冒険者を避けながら、ビッグボア、火食い鳥(カセウェアリー)、アルミラージを討伐して進む。



 八階に降りて「脳内地図(マッパエムンディ)!」を掛ける。


「ううん? 何だろう? 兎に角、行ってみよう!」


 ジルが「宝箱なの?」と横ではしゃいでいる。


「宝箱というより、隠し部屋かな?」


 サミーが「モンスター部屋では?」と恐る恐る言う。


「モンスター部屋なんか、初心者用のダンジョンに無いさ!」

 ジルが笑い飛ばしているけど、私は神様(ガウデアムス)の知識を探索中!


『モンスター部屋……ダンジョンの中に設置された、ボーナスステージ。モンスター部屋に入ったら、中のモンスターを討伐するまで外に出られない。レアアイテムがドロップする場合もある』


 私だけならチャレンジだけど、ぞろぞろと子どもを引き連れている状態だからなぁ。


「そうか! 子ども達は、モンスター部屋の外で待っていたら良いんだ!」


 バリアで囲っていたら、魔物が来ても大丈夫だよね?


 赤く光っている部屋の前に着いたけど、見た目は行き止まりだ。


「ここで、待っていて!」と言ったけど、全員に首を横に振られた。


「置きざりにしないで!」

 

「いや、ジル、ちゃんとバリアを掛けて行くから、魔物が出てきても大丈夫だよ」


 そう、言い聞かしても、腕にしがみつくので、困った。


「なら、中に入ったら、壁沿いにジッとしているんだぞ。バリアを掛けてあげるから」


 中の方が怖くないだなんて、不思議だね。


 壁にある扉を開くと全員で中に入る。


「バリア!」と子ども達に掛けたけど、中に入ったのを後悔しそう。


「げぇ、ヴリシャーカピじゃん!」

 猿はもうごめんだよ! それに十頭もいる。

 灰色だから、魔法攻撃もしてきそう。先制攻撃しよう! 

「バリア! バリア! バリア!」

 うん、バリアで首をチョッパーしていこう。


 後、一頭になったけど、白い巨大なボス! ああ、トラウマになっている。


(フルメン)!」で一撃だ。


 ドロップ品は、ヴリシャーカピの毛皮、肉、魔石、それに睾丸! これがレアアイテム? いらないけど! とガッカリしていたら、ジルが私の服を引っ張る。


「お兄ちゃん、あそこ!」


 ボスのヴリシャーカピがいた後ろに、台座がある。


「ひょぇ!!」と子ども達は興奮している。


「剣かぁ……使わないんだけどなぁ」


 ピカピカ輝いている剣、ルシウスにあげようかな?


「良いなぁ! 良いなぁ!」と羨ましそうな子ども達だけど、私の剣の腕前は酷いんだよね。


 ◇


 九階でキラービーの巣を見つけたので、討伐しておく。ロイヤルゼリーとハチミツ、嬉しい!


 十階は……嫌な予感通り、ヴリシャーカピが出た。黒い毛だから、若くて魔法は使わない。遠くから、矢で討伐した。


「これって、ボス戦もヴリシャーカピなのかな? 苦手なんだよ」


「ええっ! 簡単に倒しているじゃん!」


 このダンジョンは二度と潜らないぞ! ヴリシャーカピとオークは食傷気味なんだ。


 転移陣に向かう手前に、予想通り、ヴリシャーカピが八頭! モンスター部屋の方がキツかったよね?


 面倒だから「(フルメン)!」で一気に倒した。


「お兄ちゃん、凄すぎ!」

 ジルは褒めてくれたけど、他の子はドン引きだ。


 ドロップ品を拾って、転移陣に行く。おっと、キラービーの馬鹿達を解放しておこう。

 他の冒険者に見つかると、また変な二つ名を付けられるかもしれないから。


 ピカピカ光っている剣、ロイヤルゼリー、ハチミツの瓶を何個か、触るのも嫌だけどヴリシャーカピの睾丸、ボスの毛皮以外をダンジョンの外の商人に売る。


「ほら、ジル! サミーと二人で三銀貨(クラン)! 他の奴らは、一銀貨(クラン)だ」


 スライム組、キラービー組が飛び上がって喜んでいる。ジャスが言う相場よりも高いのかもね。


 それと、取っておいたハチミツの小さな瓶をジルにやる。


「えええっ、良いの?」


 信じられないって顔だ。


「ああ、パンにつけて食べろ! じゃあな!」


 この二日間、世話になったお礼だ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 中級か上級ダイション3人で潜ったら、日数かかって、女性ってばれそうだよね [一言] 迷宮ダイションの荷物持ち、明日からどうするんだろ? 1〜5階層までで、半貨〜銅貨+αくらいが、実質…
[一言] ルシウスがクラン作成すると雑用やら下級の薬草取りとかで仕事が出来そうだから雇えたりするのかなあと先の展開が気になるところです。
[一言] 寄生虫にならないことをねがう…
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