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女神様の愛し子じゃないから!  作者: 梨香
第ニ章 防衛都市《カストラ》へ!

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オークジェネラルとの戦い

 ヴリシャーカピのボスもデカかったが、オークジェネラルは異様だった。

 

 人間の倍以上の身体に、これまで殺した冒険者達が着ていた鎧を着込んでいる


「あんな大きなサイズの鎧があるのか? 継ぎ足しているみたいだな」

 ルシウスがボス戦前なのに、お前は呑気だなと笑う。


「作戦は?」とルシウスに聞くけど「オークを殲滅する! それだけだ」だってさ。

 ヴリシャーカピは二十頭ほど逃してしまったけど、オークは逃がさないぞ!


 オークジェネラルの前に邪魔なオークをやっつける。

 ほとんどは、バリアで首を切ったけど、何頭かは強化が効いていてバリアでは無理だった。

(フルメン)!」なら倒せる。肉が無駄になるから、ジャスに叱られるかな? でも、今はそんな事を考えていられない。


 いつもは、ルシウスとジャスのコンビだけど、今回はオルフェとだ。オークジェネラルと戦っている。


 私は、他のオークが二人の邪魔をしないように「(フルメン)!」を連発している。


「危ない!」

 オルフェも体格が良いけど、基本的にスレイプニルに乗っての戦闘だから。

 ルシウスの片手剣とオルフェの槍とでは、オークジェネラルを討伐できない。


 オークジェネラルに押されている。

(フルメン)!」をオークジェネラルに当てる。少しだけ嫌がっているから、効果はあるのか? いや、ブン! と怒りも顕に、大剣を振り回している。


 ルシウスとオルフェに「元気回復(レフェクティオ)!」を掛ける。それと同時に「防御(デーフェンスィオ)!」も。


 あんな大剣に当たったら、大怪我しちゃうよ。

 周りのオークをほとんど討伐したので、私もオークジェネラル戦に加わる。


 魔法は「(フルメン)!」が少しだけ効くみたいだ。それに、嫌がって手で避けようとするから、ルシウスとオルフェがその隙に攻撃できる。


 でも、オークジェネラルの体力は無限じゃないのかと思うほどだ。


元気回復(レフェクティオ)!」を何回もルシウスとオルフェに掛ける。

 私の魔力も底をつきかけているのか、掛かりが悪い。


 町長の家に掛けているバリアを解こうか? 一瞬、その考えが浮かぶが、私たちがいない横の防衛壁が無事なのかもわからない。

 オークに女の人を拐わせるわけにはいかない! それは絶対だ。


 髪の毛が伸びようと、愛し子だとバレようが、強い魔法を使うしかない。ただ、それを発動できる魔力が残っているのか不安だ。


 初めて使う魔法だ。上手くいくかもわからない。

遮断(ディスコンティ)!」


 うっ、オークジェネラルに腕でカバーされた。首を狙ったのだけど……。


 でも、大剣を持った腕は切り落とした。そのチャンスを見逃すルシウスとオルフェじゃない。


 オルフェが槍で鎧ごとオークジェネラルの腹を貫き、ルシウスが首を刎ねた。


 慌てて髪の毛が伸びているか、チェックする。なんとか大丈夫だった。ホッとしたけど、魔力切れだ。


 なんとか町長の家のバリアだけは、キープしているけど、もう戦力外だ。

 弓を引こうとしても、身体強化が使えない。身体強化抜きの私の弓の腕では、味方に当てかねない。


「おぃ、戦えないのなら、町の中にいろ!」


 オークジェネラルを倒したら、オーク達は森へと逃げ出した。


「クレイジーホースを中心にオークを殲滅するぞ!」

 負傷でかなり血を失ったクレアが指揮をして、逃げ出したオークを追う。


「破られた防衛壁を修理しなくては! 門も半壊状態だ!」

 町長は、緊急に防衛壁を補修するつもりだ。


「怪我人が多いです!」

 油を煮立てていた鍋に石が飛んでいったから、火傷も多い。それに、戦闘に参加した人も切り傷や亡くなった人もいる。


「ああ、そうだ! カインズ商会は、回復薬を持っていないか? 買取ります!」


 町長は、壁の修理よりも怪我人の治療を優先する。


「下級回復薬を持っています。これは、とても効果がある特別な物です」


 あっ、あれは私がカインズ商会に売った物だ。


「アレク、作れないか?」

 ハモンドさんが側に来て、小さな声で尋ねる。


「下級薬草があれば……でも、作れるのを知られたくない」

 

 どう見ても、カインズ商会が持っている下級回復薬では足りないのは明らかだ。


 怪我の酷い人から、カインズ商会の回復薬を飲ませている。でも、重症者は多い。


 アリシア町の兵舎からも下級回復薬が持って来られたけど、濁っていて、あまり効かない。無いよりはマシって感じだ。


「アレク、宿の台所で下級回復薬を作って欲しい。下級薬草は、町長から出させるから」


 くたくただけど、下級回復薬を大鍋いっぱい作る。薬瓶なんかないから、小鍋に移して、スプーンで飲ませていく方式だな。


 町長の家に掛けていたバリアを解いて、少し休憩だ。


「もう出ても良いよ!」と声を掛けたら、恐る恐る中から女の人や子ども達が出てきた。


 広場には、怪我人が集められている。非常事態に女の人は強い。

「子どもは家に行きなさい!」

 女の人は、下級回復薬を怪我人に飲ませたり、包帯を巻いたりしている。


 私は、魔力も体力も使い果たして、町長の家の玄関の階段に座り込んでしまった。

 

 回復薬を飲んで歩けるようになった怪我人は、後片付けに参加しているが、重症だった者は兵舎に運ばれている。


 怪我人の治療が終わった町の男の人達は、オークを広場に集めている。私は手伝う力が残っていない。


「クレイジーホースはどうしているかな?」

 クレアに治療(クーラーティオ)は掛けたけど、かなり出血していたから、安静にしていた方が良いのだけど……。


脳内地図(マッパエムンディ)!」

 なんとか残っている魔力を振り絞って、逃げたオークを調べる。


「ああ、かなり残っているな……」

 でも、赤い点々が次々と消えていく。

『クレイジーホース』がオークの先回りして逃がさない。


『草原の風』とルシウスとジャスが仕留めているのだろう。


 もっと魔法の使い方を考えないといけない。それと、威力もつけたい。反省点はいっぱいあるけど、今は寝たいな。


「アレク、魔力切れなのか? 宿の部屋で寝なさい」

 グレアムさん、とても親切だ。下級回復薬を大鍋にいっぱい作ったからかも? でも、眠れるのは大歓迎だ。

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― 新着の感想 ―
「アレク、宿の台所で下級回復薬を作って欲しい。下級薬草は、町長から出させるから」 ちゃんとタダ働きにならないように、対価を請求もしくは、黙っていても町長、対価を支払えよと思う。
[一言] これは、はじめに見破ったとしても、一溜まりもない
[良い点] お疲れさまですね。しかし、かなりあれこれバレていそうな。危ない。
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