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女神様の愛し子じゃないから!  作者: 梨香
第ニ章 防衛都市《カストラ》へ!

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アルシア町で一息つこう

 ヴリシャーカピの集団ほどでは無いけど、次の日も魔物の襲撃が多かった。


「オークの集団も湧いていたし、何処か未発見のダンジョンがあるのだろう」


 ルシウスとジャスは当たり前って顔をして、討伐したビッグボアを荷馬車に乗せる。


「えっ、ダンジョンって増えるのか?」

 少なくとも北の大陸にはダンジョンは無かった。今は女神様(クレマンティア)にクソ、クズ呼ばわりされているけど、初代聖皇と初代聖王が制覇したからだ。


「ああ、新しいダンジョンが出来たのか、それとも未発見なだけかは、本当の事はわからないがな。ダンジョンは増えるって皆は感じている」


「だから、防衛都市(カストラ)があるんじゃないか!」


 ルシウスの説明は、素直になるほど! と聞けるけど、ジャスに言われると、何故か腹が立つ。


「でも、北の大陸ではダンジョンは湧かないぞ」


 二人に笑われた。

「そりゃ、聖皇国や聖王国があり、女神様(クレマンティア)の加護があるからだろう」


「そう、そう! アレクが柔なのは、北の大陸育ちだからさ!」

 

 でも、その女神様(クレマンティア)は、クソ聖皇国とクズ聖王国を見放している。


「もしかして、女神様(クレマンティア)の加護がなくなったら、北の大陸でもダンジョンは湧くのか?」


 北の大陸の騎士や兵士の実力がどのくらいかは知らない。田舎の冒険者は、こちらの初心者レベルだ。


 魔法を使える者は多いけど、魔物自体が少ないから、戦闘回数があまりにも少ない。


「もし、北の大陸でダンジョンが湧いたら……」

 考えただけで、ゾッとする。あのクズ聖王(パーベェル)が民の為に騎士や兵士を派遣するとは考えられない。


 ケチで傲慢な修道院長が魔物に食われようと、へとも思わないが、子ども達は? 誰か守ってくれるのだろうか? サーシャの記憶が私を苛む。


「まだダンジョンが湧いても無いのに、心配しても無駄だ。それに、アレクは北の大陸から逃げて来たのだろう?」


 うっ、そうなんだ! 今、北の大陸に帰ったら、好色王(アマース)の第四夫人になっちゃう! それは嫌だ!


「何で逃げて来たのだ?」

 ジャス、そんなの聞くなよ!


「冒険者って過去は問わないのがマナーじゃないのか?」

 嫌味を言っても堪える相手では無い。


「アレクは、どう見ても愛し子だし、あちらでも優遇されていたのでは無いのか?」

 ルシウスにも聞かれた。


「俺は、愛し子ではない! それに親がいなかったから、幼いうちから農作業や家事、それに薬草採取などでこき使われていた」


 愛し子ではない! は、二人に笑われた。ただ、サーシャが苦労して育ったのは、少しだけ理解してくれたかも。


「こちらに逃げて来たのは確かだ。隣の好色な領主に売り飛ばされそうになったから」


 ガハハハ! とジャスに爆笑された。殴りたい!


「まぁ、アレクも色々あったんだな。それにしても、昨日、あれだけ魔法を使っても髪の毛は伸びなかったな!」


「そう! 大きな魔法は使っていないからね。ただ、これから魔法の訓練をして、大きな魔法を使えるようにしないとな!」


 だってボス戦の時、魔法はあまり効かなかったからさぁ。ショック!


「元々、アレクは神聖魔法使いだから、補助系や回復系の上達を目指した方が良いのではないか? 昨日も、回復魔法や強化魔法で助かった」


 ううん、どうだろう? ずっとパーティを組んでいるなら、その通りなんだけど。


「ルシウスが金にガメツイのは、金級になったらクランを作りたいからさ! 家を借りて、本拠地を作り、ダンジョンを制覇するのが夢なんだ」


 へぇ、それは凄い夢だね! 頑張って欲しい。


「ジャスもクラン幹部になって欲しいから、少しは節約して金を貯めておけよ! アレクにもクラン幹部になって欲しいと考えている」


 えっ、知らなかったよ! パーティは組んだけど、そんな先の事までは考えていなかった。


「まぁ、その前に俺とジャスは金級にならないといけないし、アレクも銀級にならないとな!」


 金級がどれほど強いのか、想像もできないよ。女神様(クレマンティア)が憑いている時なら、銀級を超えていると思うけどね。それじゃあ、駄目なのはわかっているつもりだ。


 そんな事を話しながらも、ルシウスとジャスは警戒している。

『草原の風』のメンバーが斥候してくれているけど、何だか魔物が多いんじゃない? 


 まぁ、私は交易都市(エンボリウム)防衛都市(カストラ)の間の護衛任務は、初めてだから、よくわからないけどさ。


 昼休憩の時にグレアムさんが「大街道から離れるが、アルシア町に向かう」と発表した。


 全員がホッと息を吐く。昨日のヴリシャーカピの集団に襲われてから、ずっと魔物と出くわすので、疲れていたのだ。


「なぁ、防衛都市(カストラ)に着くのが遅くなるんじゃないの?」


 全く知らないから聞いてみる。


「ああ、大街道を真っ直ぐ行った方が防衛都市(カストラ)に着くのは早い。だが、こうやって町に泊まるのは、休憩になるから嬉しいのさ」


 ふうん、宿屋とかに泊まるのだろうか? なんて考えていたら、ジャスに笑われた。


「言っておくが、アルシア町でも俺達は護衛任務中だぞ! 町の中で魔物に襲われる可能性は低いが、荷物を盗もうとする馬鹿がいるからな」


 つまり、グレアムやハモンド、御者達は宿屋に泊まるけど、護衛は荷馬車を見張っていないといけないんだね。


「でも、皆、ホッとしてたじゃん!」

 夜中の見張り当番も一緒なのに、変だろ? カインズ商会の人たちは宿屋に泊まれるから、ホッとするのもわかるけどさ。


「アレクは、本当に何も知らないな! 護衛する対象者が安全な場所にいるなら、荷物を見張るだけで良いじゃねーか」


 それに、アルシア町にいる人達は、そこまでの悪人はいないそうだ。まぁ、見張っていないと、荷馬車から少しくすねる奴がいるかもしれないそうだけど。


 皆もヴリシャーカピの襲撃で肉体的にも精神的にも疲れていたので、休憩したいと思っていたから、グレアムの決定を喜んだのだ。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] せっかく宿場町に来ても荷馬車で警戒しつつ夜を過ごすのは大変そうですね。魔物の襲来の恐れがないのはありがたいでしょうが。
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