後片付けも大変だ!
ヴリシャーカピの集団に襲われたけど、なんとか討伐できた。
全員が、座り込んでいる。ルシウスは水筒から水をグビグビ飲む。
「アレク、また忘れたのか?」
ジャスに馬鹿にされたけど、荷物は荷馬車の中だったからさぁ。
ルシウスの空になった水筒を渡して貰い、それに浄水を入れて飲んでいると、クレアにベィビィにもと頼まれた。
「でも、桶は無いけど?」と戸惑っていると、鞍から皮袋を下ろして渡された。
「浄水!」といっぱいにしたら、ベィビィは喜んで飲んでいる。
「アレク! 皆が来る前に、落とし穴を塞いだ方が良い。中のヴリシャーカピを取り出すぞ!」
これ、アイテムボックスを使えば、簡単なんだけど、まだルシウスやジャスにも内緒にしたままなんだよね。
打ち明けたいと思うけど、まだ心の底からは信用していないのかも? 特にジャス! 良い奴だと思う時もあるんだけど、女好きな駄目男だからさ。
全員でヴリシャーカピを十頭、落とし穴から引き上げた。重いから、疲れたよ!
「埋めろ!」で落とし穴を埋めた。後は、ヴリシャーカピの解体だけど、皆、座り込んじゃった。
「解体は、カインズ商会の連中とダークとプルーに任せようぜ!」
ジャスがぶつぶつ言っている。流石のジャスも戦闘の後、呼びに行ったアルフェは除外する。
そう言ったものの、のろのろと立ち上がって解体を始める。
『草原の風』のメンバー、ルシアはまだ休憩させているけど、解体が上手だ。ナイフ使いが凄いんだ。
ジャスとルシウスは、解体が下手だ。クレアに怒鳴られている。
「ジャス! 相変わらず下手クソだな!」
クレアは上手なのに、習わなかったのかな?
私は、ナタで解体する。
「ジャス? どのヴリシャーカピの肉が美味いんだ? 若いの? それとも魔力が多いボス?」
ジャスは、少し考えて答えてくれた。
「ボスは、毛皮も高く売れるから、一番解体が上手いアレクがしてくれ! 肉も美味いと思う」
ルシウスは、少し違う意見だ。
「若い方が肉は柔らかいぞ! ボス以外の肉なら、若いカピの方が良いんじゃないか?」
クレアが豪快に笑う。
「ボス以外の解体は、商隊が戻って来てからにしようぜ! 腹が減ったから、肉を焼いて食べよう!」
そりゃ、言われたら全員がお腹を押さえたよ。ぐーぐー鳴っているからね。
ただ、目の前の死体を見て、即、食べたくなるか? ちょっと微妙なんだよね。
それに、血の匂い! これって拙くない?
「他の魔物が寄って来ないかな?」
ポソッと呟くと、全員に笑われた。
「一頭や二頭の魔物の血なら、他の魔物もやってくるだろうが、ここまでの討伐をする相手に近寄ったりしないさ」
ルシウスがそう言うなら、そうなんだろう。こんなに信頼しているのに、アイテムボックスについて言えないのは何故なのだろう。
愛し子だと、ほぼバレている。一応は、否定しているけど、交易都市では色々とやらかしたからね。
ただ、私は本当の意味で愛し子なのか? そこのところは微妙なんだよ。サーシャは正真正銘の愛し子で、聖女になる子だったけど、私はそんなに清らかな性格ではない。
オーク討伐の時は、女神様の神命が下ったけど、本来は子どもを産んだら、他は自由にして良いって約束だったからね。
つまり、私の子孫に聖女か聖人か聖王が出るかもしれないってだけ。サーシャの愛し子の能力と、交渉して得た加護があるけど、私って愛し子じゃないよね?
女神様と関わりがあるだけだと思いたい。
だって、あのクズ聖王家から逃げ出したんだもん。自由に生きたいよ!
そんな事を考えていたら、商隊が戻って来た。
「皆、ご苦労だった!」
あっ、全員を浄化しないで良かったのかも?
返り血を思いっきり浴びた状態なのを見て、グレアムが感激して「褒賞を出そう!」と言っている。ラッキー!
それに、ヴリシャーカピの毛皮や魔石や肉も買い取ってくれるそうだ。これは、普通の事みたいだね。
「オルフェ、ジーナ、治療! 浄化!」を掛けておこう!
商隊が合流したので、解体の指揮はハモンドが取る。
「ボスは解体済みなのか? 手早いな! 毛皮と魔石は、全て欲しいが、肉は魔法を使える個体のを優先してくれ。若いのは食べよう!」
商隊も逃げたり、戻ったりで疲れている。でも、全員で解体とキャンプ設営を頑張る。
「この血の匂い、やはり嫌だな! 浄化!」
かなりマシになった気がする。鼻が血の匂いに慣れたからかも? それと、若いカピの肉をジュージュー焼いている匂いがしてきたから、血の匂いなんか気にしていられないからかもね!
猿型の肉、少し抵抗があるかな? と思ったけど、人型魔物のオーク肉も知らない間に食べていた。
それに、食べた後でジャスに「オーク肉だぞ!」と言われたけど、確かに高級豚肉みたいに美味しかったんだよね。
ヴリシャーカピの焼肉、腹ペコだったから、むしゃむしゃ食べちゃった。
「若いカピの方が柔らかいな!」
ジャス! 口に肉が入ったまま喋らないでよ。
「捨てるのは勿体無いから、いっぱい食べようぜ!」
ルシウスも山盛りの肉を食べている。私は、もう限界だよ!
それに、眠い! ホッとして、食べたら、眠くて堪らない。
「おい、アレク! 寝るなら、テントで寝ろ! 朝の当番にしてやるから」
ルシウス、優しいのか、厳しいのか? 兎に角、寝よう!
まだ、解体は残っているみたいだけど、もう限界だよ。




