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女神様の愛し子じゃないから!  作者: 梨香
第ニ章 防衛都市《カストラ》へ!

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ヴリシャーカピ、ボス戦!

 ヴリシャーカピの集団に押されている。魔法の石攻撃は、なんとかバリアで防いでいるが、圧倒的に数が違う。


 こうなったら、魔法攻撃を連発するしかない。髪の毛が伸びようと死ぬよりはマシだ。


「バリア! バリア! バリア!」


 次々とヴリシャーカピの首を切っていく。


「グォォォ!」

 一際、巨大な白いヴリシャーカピが雄叫びをあげる。


「まずい!」とジャスが叫ぶ。

 ヴリシャーカピの身体が一回り大きくなった。それに、より敏捷になり、石もドンドン投げてくる。


 バリアで石を防ぐけど、ヴリシャーカピとの乱闘になっているので、やり難い。

 

 クレアとオルフェの槍攻撃で一頭ずつ倒していく。ルシウスとジャスも連携しながらヴリシャーカピを討伐する。


 倒しても、倒しても、森の奥からヴリシャーカピが湧いて出る。いつまで戦闘が続くのだろう。

「バリア!」と首を切っていくけど、終わりが見えない気がしてきた。


 七十、いや八十はいたのかも? それに、ヴリシャーカピのボス、また雄叫びをあげて強化されたら堪らない! 

 何回も「バリア!」をボスに向かって飛ばすけど、弾かれている。


 こうなったら、仲間を強化した方が良いのかも? 泥縄式だけど、強化魔法を調べる。ヴリシャーカピのボスが使った雄叫びみたいな効果がある魔法がないかな?


 焦って女神様(クレマンティア)の知識を調べるけど、焦ると見つからないものだよね!

「兎に角、皆も疲れているから元気回復(レフェクティオ)!」


 金色の光に包まれた、仲間達が回復したんだと思う。私も疲労感が無くなったからね。


「アレクが回復させてくれたのか? なぁ! ベィビィに石攻撃から護る魔法を掛けてくれないか?」


 クレアの無茶振りだ。クレアもアルフェも槍を使ってヴリシャーカピを倒しているけど、スレイプニルに乗って戦う方が効率的みたい。


「クレア、アルフェ、スレイプニルに乗って!」

 素早くスレイプニルに乗った二人に、スレイプニルごと防御(デーフェンスィオ)を掛ける。


「上手くいったかどうかわからない。初めて使う魔法だから!」


 バリアは壁を作る感じで、防御にも攻撃にも使えるけど、壁を作ってはスレイプニルの機動性が活かせない。


「おお、これは良いな! 石が当たっても痺れ(スリブル)にはならない」


 スレイプニルは、痺れ(スリブル)が掛かりやすく苦手だから、降りて戦っていたクレアとアルフェ、やはり水を得た魚の如く、ヴリシャーカピの集団の中に駆け入る。


「ルシウスとジャスにも防御(デーフェンスィオ)!」


 細かい傷は、元気回復(レフェクティオ)で塞がっていたが、かなり石攻撃とヴリシャーカピの鋭い爪でやられているからね。


 私も頑張って「バリア!」で一頭ずつ倒していく。


「ボスが出てくるぞ!」

 これまで、灰色のヴリシャーカピに護られるように後方にいた白い巨大なヴリシャーカピが前に出て来た。


 灰色のヴリシャーカピが十頭以下になったからかも? ここまでで、私達はかなり消耗している。へとへとだ!


元気回復(レフェクティオ)!」をもう一度、全員に掛けておく。


 効かないと思うけど「バリア! バリア!」をボスに向かって投げつける。


 近くだから、全然効かない状態ではないみたい。だって、嫌がって手で弾いているから。


「よぉし! いくぞ!」


 後方から『草原の風』が灰色のヴリシャーカピを矢で撃ち抜いていく。後、八頭!


 だが、ボスは強かった。スレイプニルに蹴られそうになると、身軽に飛んで逃げる。

 でも、その瞬間をクレアは待っていた。鋭い槍がボスの片目を貫く。


「ガァァァァ!」怒り狂ったヴリシャーカピのボスの岩攻撃だ。


「バリア!」で砕くけど、ルシウスは盾で防御する。


「ジャス!」かなり大きな塊がジャスに当たった。でも、ジャスは物ともせず、ボスに大剣を振り下ろした。


「やった!」首が落ちては、ボスも生きていないだろう。


「アレク! まだヴリシャーカピは残っている!」


 ルシウスは、残った八頭に向かっていく。私も「バリア!」と飛ばす。


 後ろからの『草原の風』の矢攻撃、前からスレイプニルのキックと槍! それとルシウスとジャス、本当に強いんだね。


 ヴリシャーカピの集団を討伐した。ぜぃぜぃ。

 私は思わず、へたり込んでしまった。


「アレク、ヴリシャーカピは他にいないか?」

 えっ、まだいたら困るよ! 全員、ぼろぼろのくたくただ。


脳内地図(マッパエムンディ)!」を使う。今見える範囲にはいない。もっと、もっと広げよう。


「かなり遠くに二十頭ぐらいの集団がいるが、逃げていくみたいだ」


「クソッ!」「ハァ!」と別な声があがった。


「クソッ」はわかる。多分、雌と子どもは逃げたのだ。またヴリシャーカピの大集団になる可能性がある。厄介だよ!


「ハァ」は安堵かな? 私もこっち! 明日の危険より、今、生き延びられてホッとしている。


「オルフェ、商隊を呼んで来てくれ!」


 あっ、忘れていた! 商隊の護衛は『クレージーホース』の二人だけだったんだ。合流しないとね!


「私たちが走って合流した方が良いんじゃない。ここは、血生臭いし!」


 ガハハハとジャスに爆笑された。


「ヴリシャーカピの毛皮は高く売れる。ボスの白いのは特にな! 肉は……全部は持っていけないが、美味しい部位だけでも塩漬けにするだろう」

  

 あっ、と言う事は、今日はここで解体するんだ! どっと疲れた気がする。


「アレク! 悪いがルシアを診てくれ。回復薬を掛けたのだが、あまり効かなかった」

 

『草原の風』のリーダーがルシアを担いでやって来た。ああ、ボスが投げた岩を砕いたけど、塊が頭に当たったのだ。

 布を頭に巻いているけど、かなりの出血だ。交易都市(エンボリウム)の回復薬は劣だからな。


「そこに寝かせて!」

 先ずは「浄化(ピュリフィケーション)!」で綺麗にする。

 ルシアの頭に手を当てて、光を入れていく。全身が金色に光る。

 頭だけでなく、あちこちに傷があったみたい。


「布を取るね!」

 布を取ると、額の傷は塞がっていた。

「ルシア、良かった!」

 シャムスが喜んでいる。

「このままじゃあ、傷が残るかも? 治療(クーラーティオ)!」

 傷も綺麗になくなった。ルシアが目を開けて、立ちあがろうとする。


「血をたくさん失っているから、休んでいた方が良い」

 シャムスがルシアを抱き上げて、木の幹に寄り掛からせる。


「他に治療が必要な奴はいないか?」

 ほぼ全員が傷を負っている。

「アルフェとジーナは、後で治療してくれ!」

 先ず、クレアはベィビィを! と騒ぐから、「治療(クーラーティオ)!」と「浄化(ピュリフィケーション)」を掛けておく。

 だって、ヴリシャーカピを蹴りまくっていたから、返り血が酷かったんだ。


 これは全員コースだね! と思ったが、ジャスに笑われた。

「これから解体だぞ! 浄化(ピュリフィケーション)は後で良いさ!」


 そうだよね! 「治療(クーラーティオ)!」だけ掛けておこう。

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― 新着の感想 ―
[一言] こっちの主人公は戦闘に慣れて精神的には苦労が少ないね。
[良い点] また解体中に返り血浴びるから、きれいにするのは後回しなのはわかるけれど、血まみれの集団が何十頭もの魔物の解体をしている姿は恐ろしくて見ていられないかもw
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