パンサーは信頼できるのか?
やっと部屋に行って、風呂に入る。白猫もお風呂に入れたいけど、寝ちゃっているからね。
冷風機の前で、湯上がりの身体を冷やす。
「これをいちいち、ジャスとルシウスの部屋に出すのが面倒なんだよね」
それと、ベッドマットをいちいち変えるのも面倒臭い。
「金熊亭を星の海、草原の風、クレージーホースの常宿にすれば良いんだけど……それって、クランになるんだろうか?」
まだ、ルシウスもジャスも金級じゃないから、クランは作れない。
それに、オークダンジョンの殲滅には、時間がかかりそう。その間も、部屋を借り切っておくのは、無理だよね?
明日は、回復薬を作るか、マジックバッグ中を作るか? これは、ルシウスとジャス次第なんだよね。
オークションに掛けるゴールデンフラワーの香料、これを顔役に持って行ったら、帰ってこないかも。ちょっと苛立つ!
男って、どうしようもない生き物だよ!
ジャスは帰って来ないだろうな! ルミエラちゃんに、チョコとかロイヤルゼリーとかお土産にするみたいだし……なんだか、境遇を聞いて、ちょっと応援したくなったんだ。
ルミエラちゃんの村も自由都市群からの借金が返せなくなって、奴隷落ちしたみたいなんだよね。
自由都市群が素晴らしい農機具を開拓村に売って、それで収穫が倍増する筈だったのに……魔物に襲われて、収穫は激減!
これって、詐欺の手口に似ていない? でも、ジャスの村だけじゃなく、ルミエラちゃんの村もやられたんだ。
年寄りは金にならないから、若い子が借金奴隷になったみたい。
ジャスの村は、ヘレナが金をかき集めて、自由都市群と交渉。
ヘレナは、借金奴隷になったけど、他の人は何とか大丈夫だったみたい。
「それにしても、ジャス! 若すぎだろう!」
流石に十五歳ではなくて、ホッとしたよ。同じ年とは思えないからね。
でも、二十歳以下だとは思わなかった!
「うん? ヘレナがいなくなった頃は、十ニ歳ごろ? 寝しょんべんはマズイだろう!」
クレアの苦労が偲ばれる。ジャスがクレアに頭が上がらないのも理解できたね!
「ジャスは、絶対に帰って来ないだろうな」
そうなったら、上級回復薬を作るか、エリクサー(劣)を作ってみても良い。
ルシウスが帰って来ても、裁縫スキルが無いから、マジックバッグの手伝いは魔石を粉にする程度なんだもの。
「ねぇ、白猫? 起きているんでしょ?」
部屋に戻った時は寝ていたけど、お風呂から出た時は起きていたよね? 今もバスケットの中で寝たふりしているけど。
「エリクサー(劣)でも片腕ぐらいなら治るぞ」
うっ、余計に迷うじゃん!
「でも、パンサーさんが信頼できるか、分からないんだよね」
「女神様の神命を果たすには、必要な人材だろう。恩を売って、縛りつければ良い。借金奴隷にしても良いのだぞ」
白猫って、やはり神様なんだ。
神命の為なら、何をしても良いって態度! 腹立つ!
「それに、あの義手は自由都市群に縛り付ける鎖になっている。定期的にメンテナンスをしないといけないみたいだ。いわば、アイツは自由都市群の奴隷みたいなものさ。それを解放してやると考えたら良い」
やっぱりね! なんか嫌な予感がしたんだ。
それなら、有りなのか? ルシウスとジャスと相談して決めよう。
まぁ、パンサーがこちらの申し出を受けるかどうかは、分からないんだけどさ。
「それにしても、自由都市群って、何がしたいの? 海賊とかも庇っているみたいだし……意味不明だよ」
「交易都市を乗っ取り、いずれは北の大陸も支配下におきたいのだろう。野心家共の考えることなど、一緒だ。愚かな人間の欲望に限りはない」
ふぅ、白猫に言われると腹立つ! でも、北の大陸にも野心家の好色王がいるんだよね。
クズ聖王国、クソ聖皇国、どちらにも同情する気は微塵も無いけど、そこに暮らしている庶民には罪はない。
戦争で酷い目に遭うのは、常に力のない庶民なんだよね。
「先ずは、オークダンジョンを殲滅してからの話だ。自由都市群も一つに纏まっているわけじゃないだろう。攻略はできるさ」
そのオークダンジョンを殲滅が今の星の海では難しいんだよ!
クレイジーホース、草原の風を加えても無理じゃないかな?
『金の剣』がどれほどの強さかは、分からないけど、一つのクランだけでは殲滅は無理だろう。
星の海が上部を叩くだけでも手助けになると、ヨハンセンギルドマスターは言っていたけど……パンサーがどの程度、強いのかも分からない。
ああ、考えていたら眠たくなった! 寝よう!
パンサーの件は、エリクサー(劣)を作ってから、二人に相談しようと決めた。




