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女神様の愛し子じゃないから!  作者: 梨香
第四章 オークダンジョンを殲滅しよう!

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暗闇ダンジョン踏破!

 気持ちの悪い墓地で嬉しい気分になるなんて! 暗闇ダンジョンの弊害だね。


脳内地図(マッパエムンディ)!」で調べたら、二箇所、隠し部屋かモンスター部屋がある。毒を食えば皿までの気分だけど、墓場の奥には教会? いや大聖堂だよ!

 

「大聖堂の地下と鐘楼に隠し部屋がある。鐘楼の横に転移陣があるけど……地下も行くのか?」

 まぁ、ルシウスとジャスも二度と来たくないんじゃないかな。

 大聖堂までも、かなり大きなグールやスケルトン騎士、それにスケルトン騎馬騎士が襲撃してくる。もう、うんざりだけど、慣れてきた。


 それに白猫(レオ)の召喚獣もレベルアップしているから、そこから逃れた魔物だけを討伐しながら、大聖堂を目指して急ぐ。

「先ずは地下かぁ!」

 大聖堂、ステンドグラスも壊れているけど、いかにもホラーの舞台っぽい。

 パイプオルガン、迷宮ダンジョンでは強敵だったけど、ここのは壊れているみたい。


 地下に行く前も、グール大ネズミ、グール蜘蛛などが道を塞ぐが、そこは機械兵や機械騎士に任せる。

「嫌だなぁ!」

 納骨堂って、アレが出てきそうじゃん! 案の定、吸血鬼がお色気むんむんの女吸血鬼を両手に抱きながら出てきた。

「我の肉となれ!」

 ゲッ、最初からボス戦? 吸血鬼の目から怪しい光線が!

「バリア! 防御(デーフェンスィオ)!」を三人に掛ける。

 両脇の女吸血鬼が「ほほほ、遊んでおあげ!」と言うと、やっぱり棺桶から雑魚吸血鬼が出てくる。


「ホーリー!」でやっつけて、弱った女吸血鬼に「ホーリーランス!」を撃ち込んでおく。

 ジャスが炎の剣で、吸血鬼を燃やし、ルシウスがもう一人の女吸血鬼をピカピカの剣で真っ二つにした。


「ジャス! 基礎ダンジョンには行かないからな!」

 十一階から十五階まで、暗闇ダンジョンと同じだなんて嫌だよ!

「まぁ、今は腹いっぱいな気分だけど、十六階からの鉱山ダンジョンは一度行きたいんだ!」

 まぁ、それはちょこっとは興味があるけどさぁ。暗闇ダンジョンって、ドロップ品も、かなりしょぼい。


「美容液と魔石かぁ。おっ、ボスからは魔導書だ!」

 どうせ碌な魔導書じゃないだろうけど、一応はアイテムボックスに入れておく。

 魔石や短剣などを拾って、鐘楼を目指す。

 ここは、普通に転移陣への横だから、かなりの冒険者が攻略していそう。

 

「これは、モンスター部屋だな!」

 中には、やはり大聖堂のボスらしくグール司教がいた。

「あれは、司教ではなく、法王だな!」

 白猫(レオ)が私の思考を読んで、訂正してきたけど、どちらも同じ魔物だよ。


 雑魚の司祭や司教を「ホーリー!」で撲滅したけど、法王はしぶとい。

 それに、怪しい技を使ってくる。

「神の怒り!」

 おぃおぃ、魔物のくせに神聖魔法を使うのか? と思ったけど、神聖魔法ではなく暗黒魔法だった。

女神様の裁きディヴァーインジャジメント!」

 神を騙る法王に腹が立ち、禁断の魔法を使ったけど、髪の毛は伸びなかった。

 

「おぃ、アレク! 魔物の討伐より髪の毛が気になるのかよ!」

 手で頭を触っているのをジャスに揶揄われたけど、法王は木っ端微塵になっているからね。

「なんで、髪の毛が伸びなかったのだろう?」

 いや、伸びたくはないけど、不思議!

「アレクもやっと成長したのではないのか?」

 白猫(レオ)、それって褒めているの?


「相変わらずクソ坊主だなぁ!」

 ドロップ品、宝石ギラギラの法王冠! それに魔導書が何冊も! 司教も金鎖とか香油とか、金の匂いがする物ばかり。

 魔導書以外は、オークション行きだな!


「さぁ、転移陣へ行こう!」

 司教達のドロップ品も拾わせて、転移陣に向かったけど、何か気になる。

脳内地図(マッパエムンディ)!」

 ゲッ、調べなきゃ良かったよ。

「あのう、隠し部屋があるけど……どうする?」

 流石にルシウスも、一瞬考えたみたい。

「こうなったら行こうぜ!」

 ジャスがガハハハと笑いながら言う。

「そうだな!」

「まぁ、そうだよね」

 全員で中級回復薬を飲んで、ボーナスステージっぽい隠し部屋に挑む。


「本当に、ここに隠し部屋があるのか?」

 鐘楼の鐘が寂しく揺れている裏側、そこによく見ると木の小さな扉がある。

「狭いなぁ!」

 大男のジャスには小さな扉だけど、私はすんなりと入れた。


「ゲッ、嘘だろう!」

 女神様(クレマンティア)、本当に勘弁して下さい。竜の肝が欲しいと言いましたし、皮も欲しかったけど、これは無いよ!


「暗闇ダンジョンなのに、普通のドラゴンに見えるが……」

 ルシウスが唖然としている。ジャスは、顔をつねっている。

 これ、全滅コースなんじゃない? 


「馬鹿者! あれはドラゴンとしては幼体だ。愛し子を殺すなんて女神様(クレマンティア)はしない」

 幼体? 小さくないよ! でも、落ち着いて見たら、スケルトンドラゴンよりかなり小さい。

 小さいけど、生き生きしているし、空に向かって火を吐いている。


「レッドドラゴンの幼体なら、機械ハチドリのレベルアップに良いな!」

 えっ、あの小屋程のレッドドラゴンに機械ハチドリ? 前世の、ハチドリが森林火災を消そうと頑張る童話を思い出しちゃったよ。

「ファイト一発! 防御(デーフェンスィオ)! バリア!」

 あの炎を身体に浴びたらヤバそうだからね。

「俺は、防御するから、ルシウスとアレクで攻撃しろ!」

 スケルトンドラゴンの盾で、攻撃を防御してくれるなら「ホーリーランス!」を連発だ。

 ルシウスは、レッドドラゴンに近づいて、大地の盾と大地の剣で戦っている。


 レッドドラゴン、強い! でも、やらなきゃ、こちらが全滅だ。

 機械ハチドリの氷攻撃、そんなにダメージじゃなさそうなのに、レッドドラゴンは嫌みたいだ。

 機械ハチドリに火を吐いたり、羽で撃ち落とそうとしている。

 ここら辺が、幼体なのだろうけど、ホーリーランスでは、皮に傷を付けるだけだ。

「アレク! 女神様の裁きディヴァーインジャジメントだ!」

 やはり、それしか無いのか! できれば使いたくない。さっきは、髪の毛ザッパンにならなかったけど、今度はヤバそうなんだ。


 魔力がかなりある状態で使ったから、髪の毛が伸びなかったんだと思っている。今は、ホーリーランスでかなり使ったからね。

 でも、そんな事を考えている場合ではない。

女神様の裁きディヴァーインジャジメント!」

 残りの魔力を全部使い切る覚悟で、掛ける。

 天から稲妻が何個もレッドドラゴンの身体を貫く。それを見ている場合ではない。アイテムボックスから、中級回復薬を出して飲む。


遮断(ディスコンティ)!」

 稲妻に撃たれて、無防備に立っているレッドドラゴンの首を狙って掛ける。

「しまった! 浅い!」

 角度が悪かったのか、首に当たったけど、落ちなかった。

「死ね!」

 ルシウスが、飛び上がってレッドドラゴンの首に剣を突き立てて、体重を掛けて切り落とす。

 ゴトンと首が地面に落ちて、レッドドラゴンは消えた。


「はぁはぁ、やったなぁ!」

 ジャスとルシウスに飛びついて喜ぶ。

「ルシウス! やったな!」

「凄い! ドラゴンスレーヤーだ」

 三人で飛び上がって喜びたいけど、ぐだぐだに地面に倒れ込んだ。特に、ジャスとルシウスの疲労が激しいみたい。

 中級回復薬を飲ませると、少しシャンとした。


「ああ、そうだ! ドロップ品は?」

 レッドドラゴンの幼体がいた場所には、ドラゴンの皮、肉、骨、それに肝と魔石が落ちていた。


「ああ、肝!」

 嬉しくて飛び上がりたい気分だけど、体力の限界だ。それは、満身創痍のジャスもルシウスも一緒だ。

治療(クーラーティオ)!」を掛けると、二人は立ち上がった。

 私より、基礎体力があるからね! 


「結局、髪の毛は伸びちゃったな」

 ジャスに今回も切って貰いながら、体力の回復に努める。

 ルシウスは、地面に大の字になって休憩中。ドラゴンスレーヤーになった喜びを噛み締めているのかな? 違った!


「こんなんじゃあ、金級にはなれない! もっと強くならなきゃ駄目だ!」

 えええ、ルシウスで駄目なら無理なんじゃない?

「そうだな! レッドドラゴンの幼体なんか一撃で倒さなきゃ、オークダンジョンの制覇なんかできない!」

 ジャスもやる気に満ちているけど、私はお風呂に入りたいだけだよ。

 

 

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