暗闇ダンジョン踏破!
気持ちの悪い墓地で嬉しい気分になるなんて! 暗闇ダンジョンの弊害だね。
「脳内地図!」で調べたら、二箇所、隠し部屋かモンスター部屋がある。毒を食えば皿までの気分だけど、墓場の奥には教会? いや大聖堂だよ!
「大聖堂の地下と鐘楼に隠し部屋がある。鐘楼の横に転移陣があるけど……地下も行くのか?」
まぁ、ルシウスとジャスも二度と来たくないんじゃないかな。
大聖堂までも、かなり大きなグールやスケルトン騎士、それにスケルトン騎馬騎士が襲撃してくる。もう、うんざりだけど、慣れてきた。
それに白猫の召喚獣もレベルアップしているから、そこから逃れた魔物だけを討伐しながら、大聖堂を目指して急ぐ。
「先ずは地下かぁ!」
大聖堂、ステンドグラスも壊れているけど、いかにもホラーの舞台っぽい。
パイプオルガン、迷宮ダンジョンでは強敵だったけど、ここのは壊れているみたい。
地下に行く前も、グール大ネズミ、グール蜘蛛などが道を塞ぐが、そこは機械兵や機械騎士に任せる。
「嫌だなぁ!」
納骨堂って、アレが出てきそうじゃん! 案の定、吸血鬼がお色気むんむんの女吸血鬼を両手に抱きながら出てきた。
「我の肉となれ!」
ゲッ、最初からボス戦? 吸血鬼の目から怪しい光線が!
「バリア! 防御!」を三人に掛ける。
両脇の女吸血鬼が「ほほほ、遊んでおあげ!」と言うと、やっぱり棺桶から雑魚吸血鬼が出てくる。
「ホーリー!」でやっつけて、弱った女吸血鬼に「ホーリーランス!」を撃ち込んでおく。
ジャスが炎の剣で、吸血鬼を燃やし、ルシウスがもう一人の女吸血鬼をピカピカの剣で真っ二つにした。
「ジャス! 基礎ダンジョンには行かないからな!」
十一階から十五階まで、暗闇ダンジョンと同じだなんて嫌だよ!
「まぁ、今は腹いっぱいな気分だけど、十六階からの鉱山ダンジョンは一度行きたいんだ!」
まぁ、それはちょこっとは興味があるけどさぁ。暗闇ダンジョンって、ドロップ品も、かなりしょぼい。
「美容液と魔石かぁ。おっ、ボスからは魔導書だ!」
どうせ碌な魔導書じゃないだろうけど、一応はアイテムボックスに入れておく。
魔石や短剣などを拾って、鐘楼を目指す。
ここは、普通に転移陣への横だから、かなりの冒険者が攻略していそう。
「これは、モンスター部屋だな!」
中には、やはり大聖堂のボスらしくグール司教がいた。
「あれは、司教ではなく、法王だな!」
白猫が私の思考を読んで、訂正してきたけど、どちらも同じ魔物だよ。
雑魚の司祭や司教を「ホーリー!」で撲滅したけど、法王はしぶとい。
それに、怪しい技を使ってくる。
「神の怒り!」
おぃおぃ、魔物のくせに神聖魔法を使うのか? と思ったけど、神聖魔法ではなく暗黒魔法だった。
「女神様の裁き!」
神を騙る法王に腹が立ち、禁断の魔法を使ったけど、髪の毛は伸びなかった。
「おぃ、アレク! 魔物の討伐より髪の毛が気になるのかよ!」
手で頭を触っているのをジャスに揶揄われたけど、法王は木っ端微塵になっているからね。
「なんで、髪の毛が伸びなかったのだろう?」
いや、伸びたくはないけど、不思議!
「アレクもやっと成長したのではないのか?」
白猫、それって褒めているの?
「相変わらずクソ坊主だなぁ!」
ドロップ品、宝石ギラギラの法王冠! それに魔導書が何冊も! 司教も金鎖とか香油とか、金の匂いがする物ばかり。
魔導書以外は、オークション行きだな!
「さぁ、転移陣へ行こう!」
司教達のドロップ品も拾わせて、転移陣に向かったけど、何か気になる。
「脳内地図!」
ゲッ、調べなきゃ良かったよ。
「あのう、隠し部屋があるけど……どうする?」
流石にルシウスも、一瞬考えたみたい。
「こうなったら行こうぜ!」
ジャスがガハハハと笑いながら言う。
「そうだな!」
「まぁ、そうだよね」
全員で中級回復薬を飲んで、ボーナスステージっぽい隠し部屋に挑む。
「本当に、ここに隠し部屋があるのか?」
鐘楼の鐘が寂しく揺れている裏側、そこによく見ると木の小さな扉がある。
「狭いなぁ!」
大男のジャスには小さな扉だけど、私はすんなりと入れた。
「ゲッ、嘘だろう!」
女神様、本当に勘弁して下さい。竜の肝が欲しいと言いましたし、皮も欲しかったけど、これは無いよ!
「暗闇ダンジョンなのに、普通のドラゴンに見えるが……」
ルシウスが唖然としている。ジャスは、顔をつねっている。
これ、全滅コースなんじゃない?
「馬鹿者! あれはドラゴンとしては幼体だ。愛し子を殺すなんて女神様はしない」
幼体? 小さくないよ! でも、落ち着いて見たら、スケルトンドラゴンよりかなり小さい。
小さいけど、生き生きしているし、空に向かって火を吐いている。
「レッドドラゴンの幼体なら、機械ハチドリのレベルアップに良いな!」
えっ、あの小屋程のレッドドラゴンに機械ハチドリ? 前世の、ハチドリが森林火災を消そうと頑張る童話を思い出しちゃったよ。
「ファイト一発! 防御! バリア!」
あの炎を身体に浴びたらヤバそうだからね。
「俺は、防御するから、ルシウスとアレクで攻撃しろ!」
スケルトンドラゴンの盾で、攻撃を防御してくれるなら「ホーリーランス!」を連発だ。
ルシウスは、レッドドラゴンに近づいて、大地の盾と大地の剣で戦っている。
レッドドラゴン、強い! でも、やらなきゃ、こちらが全滅だ。
機械ハチドリの氷攻撃、そんなにダメージじゃなさそうなのに、レッドドラゴンは嫌みたいだ。
機械ハチドリに火を吐いたり、羽で撃ち落とそうとしている。
ここら辺が、幼体なのだろうけど、ホーリーランスでは、皮に傷を付けるだけだ。
「アレク! 女神様の裁きだ!」
やはり、それしか無いのか! できれば使いたくない。さっきは、髪の毛ザッパンにならなかったけど、今度はヤバそうなんだ。
魔力がかなりある状態で使ったから、髪の毛が伸びなかったんだと思っている。今は、ホーリーランスでかなり使ったからね。
でも、そんな事を考えている場合ではない。
「女神様の裁き!」
残りの魔力を全部使い切る覚悟で、掛ける。
天から稲妻が何個もレッドドラゴンの身体を貫く。それを見ている場合ではない。アイテムボックスから、中級回復薬を出して飲む。
「遮断!」
稲妻に撃たれて、無防備に立っているレッドドラゴンの首を狙って掛ける。
「しまった! 浅い!」
角度が悪かったのか、首に当たったけど、落ちなかった。
「死ね!」
ルシウスが、飛び上がってレッドドラゴンの首に剣を突き立てて、体重を掛けて切り落とす。
ゴトンと首が地面に落ちて、レッドドラゴンは消えた。
「はぁはぁ、やったなぁ!」
ジャスとルシウスに飛びついて喜ぶ。
「ルシウス! やったな!」
「凄い! ドラゴンスレーヤーだ」
三人で飛び上がって喜びたいけど、ぐだぐだに地面に倒れ込んだ。特に、ジャスとルシウスの疲労が激しいみたい。
中級回復薬を飲ませると、少しシャンとした。
「ああ、そうだ! ドロップ品は?」
レッドドラゴンの幼体がいた場所には、ドラゴンの皮、肉、骨、それに肝と魔石が落ちていた。
「ああ、肝!」
嬉しくて飛び上がりたい気分だけど、体力の限界だ。それは、満身創痍のジャスもルシウスも一緒だ。
「治療!」を掛けると、二人は立ち上がった。
私より、基礎体力があるからね!
「結局、髪の毛は伸びちゃったな」
ジャスに今回も切って貰いながら、体力の回復に努める。
ルシウスは、地面に大の字になって休憩中。ドラゴンスレーヤーになった喜びを噛み締めているのかな? 違った!
「こんなんじゃあ、金級にはなれない! もっと強くならなきゃ駄目だ!」
えええ、ルシウスで駄目なら無理なんじゃない?
「そうだな! レッドドラゴンの幼体なんか一撃で倒さなきゃ、オークダンジョンの制覇なんかできない!」
ジャスもやる気に満ちているけど、私はお風呂に入りたいだけだよ。




