暗闇ダンジョン十五階まで
十二階になっても不気味なまま。それに、スケルトン騎士がスケルトン馬に乗って襲撃してくる。
こちらも機械騎馬騎士を白猫が召喚して対戦させる。
相変わらず、地面からはスケルトンが這い出てくるので、他の冒険者パーティはいないから「ホーリー!」で撲滅しておく。
その煽りでスケルトン騎馬騎士も消滅しちゃったんだけど、良いよね?
「機械騎士のレベルアップをしたいのだ!」
白猫に叱られたけど、さっさと攻略して暗闇ダンジョンとは縁を切りたい。
不気味だし、ドロップ品は魅力ないし、潰しても良いんじゃない?
「まぁ、俺たちにはアレクがいるからドロップ品は不要だが、回復薬や聖水は買うと高いからなぁ」
騎馬騎士のドロップ品は、中級回復薬(並)で、防衛都市の薬師が作る(劣)よりはマシだ。
ルシウスは売るのかな? と顔を見たが、マジックバッグにしまっている。
売るやつは、荷物持ちの機械兵の籠に入れるから、取っておくのだろう。
「アレクのは上等だけど、ちょっとした怪我ならこれで十分さ」
「うん? ちょっとした怪我なら治療で治せるよ」
ルシウスは、やはりクランを作った後の事を考えているのかもね。
「でも、金級にならないといけないんだろう?」
金級への昇級は、誰もが憧れるだけあって、強さが必要だ。曖昧な基準だけど、ジャスが嫌うバッカスもそれなりに強いみたい。
「先ずは、暗闇ダンジョンを制覇しよう!」
一歩ずつ前進するしかないよね。十二階は、モンスター部屋も宝箱もなかったから、十三階へと急ぐ。グールが少なかったのは良かったよ。
十三階は、大きな屋敷が建っていた。この前の教会みたいに裏庭に井戸とかないか脳内地図でチェックする。
「何も無いけど……屋敷は隠し部屋が多いな」
人気のないダンジョンなので、下層階はあまり攻略されていないみたい。
「おっ、お宝ゲットだぜ!」
ジャスが喜んでいるけど、この屋敷、嫌な予感がする。
前世のハロウィンパーティ会場みたいなゴシック建築の中に入ると、やはり予感的中! 吸血蝙蝠が飛んでくる。
ジャスが炎の剣で吸血蝙蝠をかなり討伐し、私もホーリーアローで討伐した。
ルシウスは、ピカピカの剣で床を走り回るグールネズミを討伐している。
「なぁ、隠し部屋って奴がいるのか?」
ジャスは、迷宮ダンジョンの吸血鬼を思い出して、顔を顰めている。
「アレク、何個あるのだ?」
ルシウスは、隠し部屋は全て攻略するつもりみたい。
「一階、二階、三階……三階に十四階への階段があるけど……屋根裏部屋にも隠し部屋があるよ」
嫌だけど、嘘はつきたくないから教える。
「もう二度と来たくないから、全部回ろう!」
ヤケだよ! その代わり、ホーリー全開でとっとと攻略するつもり。
一階は、雑魚の吸血鬼がわんさかいたけど、ホーリーで弱らせて、ルシウスとジャスがピカピカ無双した。
ボスは、お色気吸血鬼だったけど、ジャスも好みじゃないのか、一撃だったね。
「おっ、美容液は高く売れるぞ!」
お色気吸血鬼のドロップ品は、美容液! 相変わらずしょぼい。雑魚のは、魔石と中級回復薬、それと変な本?
「魔導書か?」
ルシウスとジャスが期待するけど、エロ本みたい。これは売却だな! と私は思ったけど、二人は読みたいみたい。投げて渡す。
「読んだら売ろう!」とルシウスが言うけど、読む必要があるのか?
二階は、巨大なグールネズミがわんさか! 白猫が機械兵をレベルアップさせたいと言うので任せる。
ボスは、不気味な笛吹きグール! 白猫! これって前世の童話のパクリだろう!
笛吹きグール! 笛を吹くとグールネズミが召喚されるので、白猫が倒すな! と言う。
「機械騎士もレベルアップさせたいのだ」
笛吹きグールを討伐しないで、延々とグールネズミを機械兵と機械騎士に討伐させている。
「そろそろ良いんじゃない!」
浄化を私達だけに掛けているけど、部屋の臭いが限界だ。
「ああ、ちょうどレベルアップしたからな。機械馬が出せなくて残念だ」
機械騎兵に笛吹きグールを討伐させて、終了! 笛吹きグールのドロップ品、魔物寄せ笛! いらんわ!
「レベリングする時に便利だな!」
えっ、いるの? 白猫の発言に驚く。
ルシウスとジャスは、レベルシステムがない世界で生きているから、首を傾げている。
「魔物と多く戦うと、強くなるが……レベルかぁ?」
この世界では、弱い冒険者を連れてダンジョンに潜ってレベリングとかは出来ないみたいだね。
「まぁ、良いドロップ品の魔物を呼ぶのは嬉しいけどさ」
ジャス! 食物ダンジョンの蒸留酒をドロップする魔物を永遠に呼び寄せたい欲望が見えているよ。まぁ、私もだけどさ!
グールネズミのドロップ品は魔石と何故か短剣と聖水だった。
三階は、やはり吸血鬼! 地下にいるんじゃないの! と文句を言いたいけど、迷宮ダンジョンの吸血鬼程は強くなくて瞬殺!
ドロップ品は、魔石と変な石!
「鑑定! ……これは命の石?」
神様の知識を調べると、上級回復薬の上、エリクサーの材料の一つみたい。
「白猫、エリクサーってあったんだね」
白猫は、当たり前だ! って顔だけど、ルシウスもジャスも驚愕している。
「エリクサー! 本当にあるんだ!」
「なぁ、何と何が必要なんだ!」
神様の知識によると……
「命の石、蘇り草、竜の肝、それと聖者の血」
これって、私の血でも良いのかな? 聖者でも聖女でもないから駄目なんじゃない?
「まぁ、蘇り草が無いと無理だって事だな!」
白猫は、蘇り草の生えている場所を知っていそうだけど、聞かないよ。エリクサーだなんて、作って良いものか分からないもの。
十四階に進むか、屋根裏部屋の隠し部屋か? このメンバーは、隠し部屋一択!
隠し部屋は、物置きだった。箪笥や壊れた家具が攻撃してくる。これは、付喪神? ホーリーも効き難いから、ジャスのピカピカ斧が大活躍! ルシウスもピカピカ剣で、ぶっ壊していく。
「ほら、ホーリーランスだ!」
槍って、初心者レベルだから、ホーリーランスもそれなり。でも、何本も出せるのは良いな。
「ええっ、あれがボス?」
奥に鎮座していたのは、茶釜! それに手足が出てきて、顔と尻尾からタヌキっぽい。白猫! 絶対にパクリだよね。
「なんだぁ! あれは!」
ルシウスとジャスは困惑している。ぶんぶく茶釜なんて、こちらの世界の童話にはないからね。
「これって討伐し難いけど、ホーリーランス!」
前世のタヌキは、愛嬌があったけど、目の前の茶釜タヌキは牙を剥き出して唸っている。それに、茶釜から熱湯が噴き出て、ジャスとルシウスは火傷しちゃったよ。
「おお、ホーリーランスもマシになってきたな!」
パクリ疑惑の白猫に褒められたけど、ドロップ品は茶釜だよ。
「ルシウス、ジャス! 治療!」
軽い火傷を治して、茶釜に鑑定を掛ける。
「へぇ、お湯が常に沸く! 便利かも!」
防衛都市は暑いし、今は雨季になって蒸し蒸しするけど、お湯が常に出るのって、北の大陸出身だから凄く嬉しい。
それに、いつかは自由都市群に行くかもしれないからね。あちらは、北の大陸とは反対の気候で、冬には雪も降るそうだもの。
「じゃぁ、それは取っておこう!」
ルシウスも自由都市群の冬には便利だと思ったみたい。
他の箪笥、櫃、椅子、火鉢などのドロップ品を調べる。
「へぇ、この小箪笥、優れ物だ! 見た目よりも多くの物がしまえる」
マジックバッグほどの容量は無いけど、マジックポーチぐらいかな? 商人なら欲しがりそう。
「オークション行きだな!」
櫃や他の家具のドロップ品は、木材だった。鑑定しても木材!
十四階からは、敵が急に強くなってきた気がする。
スケルトン騎馬騎士も、団体で攻撃してくるし、グールもデカい。より臭くなっている。
「ホーリー!」で弱らせて、白猫の騎馬騎士が蹂躙していく。
「なぁ、隠し部屋とかモンスター部屋はないのか?」
暇なルシウスとジャスが文句を言うけど、十四階にはない。
「十五階に期待しようぜ! 鍵があるんだから、宝物庫かもな!」
割と楽に暗闇ダンジョンの攻略は進んでいるなんて、考えていたんだけど、やはり十五階のボスには苦労させられたよ!




