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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第5章 3年目 前編 2歳
99/250

89,狼君といつもの。



 レキ君の目の前でクティ謹製の隠蔽魔術を立方体で展開して見せたが、魔力を見ることができる魔眼持ちの彼でも見ることはできなかった。

 魔眼にも強弱があり、レキ君の魔眼は自分ほど強くないということだろう。

 サニー先生も見ることができていなかったようだし。


 その魔眼なのだが……。

 魔術を始めて発動させた翌日からまた強くなった。しかも強くなる前と今では違いがはっきりとわかるほどの違いが出ている。

 魔力と魔術の違いが高精度ではっきりとわかる。

 今までは活性化した魔力程度にしか判別できなかった。解析するにもじっくり見て時間をかけないとできなかったくらいに似たような感覚でしか見れていなかったのだ。

 それが今現在は違いがひと目で分かる。


 魔道具の中にある魔力はほとんど全て魔術の微細な術式であり、発動させた隠蔽魔術も同様に術式群の集合体だと " 見えている " のだ。


 これは進化と言えるほどの違いだ。


 じっくりよく見ないと解析できなかったものが見ただけで解析可能となっているのだ。

 1つや2つどころじゃない工程数をすっ飛ばしているようなものだ。

 これほどの急激な強化を進化と言わずしてなんというのか。



 精霊力の製造に成功したのは半ば眠っている時だったし、そのままの勢いで魔術を成功させて満足と共に眠ってしまったので、魔眼が進化したのがいつなのかはわからない。

 もしかしたら時間を置いてゆっくり変化し、違いが出たのが今なのかもしれないが魔術の成功という大きな節目がトリガーとなりそうでもある。結局のところ真相はわからないのでサニー先生が帰ってきたら聞いてみようと思う。


 とにかく今の状態は昨日とは明らかに世界が違って見えるのだ。慣れるまでは少ししんどいかもしれない。



【レキ君。君は……足に常に身体強化魔術がかかってるんだねぇ……。無駄じゃない?】


「わぅん」


【そう? でも今みたいに寝そべってる時にはあんまり必要ないんじゃ……。

 あ、いつでも動けるように?】


「わぅ」


【右足……。イエスなんだ。腐っても狼なんだねぇ。かっこいい】


「わぅわぅ」


【わわ……顔舐めないで~。もークティがいないと君は結構遠慮がないよね】


「わふん」



 そうなのだ。

 クティ達が定期報告で留守にしている間、どうにもレキ君はスキンシップが多くなっている。

 自分の寂しいという思いを敏感に感じて慰めていてくれるのかもしれない。

 最初はそう思ってたのだが、それがどんどん遠慮がなくなってきている。

 最初は遠慮がちにチロチロ、と頬を舐める程度だったのが、今は大きくベロン、とやられた。



 犬汁ならぬ狼汁がつくからもうちょっと遠慮してほしい。

 すぐに今日の専属のジェニーが拭いてくれるからいいけど。

 それに……。暖かくてざらざらしたレキ君の舌が触れるたびにちょこっと魔力が流れてくるのがわかる。それは暖かい感情で決して悪戯にやっているわけではない証拠だとわかっている。



 だからだろうか。嫌がってる振りはしても決して拒絶はしない。

 むしろ元気をくれるのでそのままじゃれつくのが定番になりつつある。


 レキ君はとても優しいいい子なのだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 魔術が使えるようになったといっても自由に使えるのは隠蔽魔術1つだけ。

 解析が可能になったといってもそれは魔道具に封じられた状態だったりして変質してしまっていて、実際にそのまま使うには問題がたくさんあることがわかっている。

 最初はそのまま使えるとばかり思っていた。

 やはり百聞は一見に如かずということだろうか。知識と実践は大きく違うのだ。


 では誰かが使う魔術を解析すれば、と思うだろうが自分の前で魔術を使うことなんて滅多に……いやまったくないと言える。

 せいぜい機密性の高い話のときに音声遮断魔術を使用した程度だろうか。その頻度もほとんどと言っていいほどない。

 以前使ったのも大分前にお婆様達が来た時にエナが使った時くらいだろうか。


 魔道具が魔術の代わりを簡易に果たしてくれるというのが大きいのだろう。

 ほぼ魔術が必要な物は魔道具で行われているのが現状だ。

 詠唱が必要なく、回数制限があるといってもそこはクリストフ家。資金なんぞなんぼでもあるということだ。


 だが魔術を見れたとしても果たしてそれは解析可能なのだろうか。

 魔術には詠唱が必要だからそこで解析できると思うのだが発動した魔術は待機状態にでもなっていない限り効果はほぼ一瞬だ。

 例えば防御系の魔術でも待機しているように見えるが実際は微弱に変動し続けていたりする。

 攻撃系の魔術なんてほとんど一瞬なので論外といえる。

 いくらひと目で解析可能になったといっても一瞬で解析できるわけではないのだから。


 ちなみに隠蔽魔術の中に隠されていたオートの防御魔術に関しては進化してしまった魔眼の弊害なのか隠蔽魔術の術式に重なって見えてしまってわけがわからない。

 隠蔽魔術の術式はわかっているのでそれを取り除いてみようかと思うのだがこれが相当大変な作業になりそうなのだ。例えるならば……小さな文字で隅々まで書かれたノートに大きな判子を何度も押した感じだろうか……。

 とにかくひと目見ただけでやる気が削がれるレベルなのだ。


 なので目下のやれることは……。



【クティ式隠蔽魔術はっつどー!】


「……わふぅ」


【はい、そこー。見えないからって欠伸しなーい】


「……あふん」


【やる気ないなー。まぁいいよ、別にー。私は私で魔力総量アップトレーニングに勤しみますから~】



 隠蔽魔術が使えるようになったということは、つまりはお婆様に気づかれずにトレーニングが可能になったということなのだ。

 実際に試したところお婆様の目と鼻の先数cmに隠蔽魔術を展開してトレーニングしてもまったく気づかれなかった。

 とぼけているのかな、と膨大な量を放出しても特に変化がなかったことから感知できていないのは確定のようだ。



【うす~くのばして~……。圧縮して~またうす~く~。あら不思議~。精霊力の出来上がり~】


「わふ」


【隠蔽魔術内に隠蔽魔術を再展開~。継続時間は0.01~極小展開時間~。それそれそーれ!】


「わふわふん」



 トレーニングのやり方も今はもう大分変わっている。


 精霊力を生産し、それで魔術を発動させる。


 このやり方が今のところ1番消費効率がいい。

 クティ謹製の隠蔽魔術の魔力消費というか精霊力消費が異常なせいだろう。


 まぁ自分の総量から考えて微々たるものなので展開時間を短くして何重にも一瞬だけ発動させるのを繰り返している。

 おかげで立方体をした隠蔽魔術の中にほんの少しの隙間を空けて隠蔽魔術が発動して、瞬時に消える様は中心点に向かって突き進むようにみえる。いや実際そうなのだけどね。



 ちなみにこの隠蔽魔術。

 範囲や展開時間、位置を自由に設定できる。

 例えば自分を包み込むように体にぴったり合わせて展開することも出来る。でもそんなことしたら一瞬で消えるので大騒ぎになってしまうだろう。


 なんせ妖精族であるサニー先生ですら感知できない驚異的な隠蔽魔術だ。

 ちょっとやってみたい衝動に駆られるけどお婆様達を心配させるのは忍びない。

 もっぱら魔力トレーニングの為にだけ使われていたりする。実に贅沢だ。





 そろそろ定期報告に出かけたクティ達が帰ってきてもおかしくないくらい日数が経過しているけど、まだ帰ってきていない。

 毎日レキ君ルームでお勉強したり、トレーニングしたり、レキ君に乗って遊んだりしている。

 実は自分がレキ君に乗って遊ぶのが増えてからレキ君用の鞍を作るという話が持ち上がり実際に作られた。

 でも凄まじい速さで成長しているレキ君の体には最初に作られた鞍は出来上がった頃には合わなくなっていたりした。

 その成長速度はお婆様達ですら舌を巻くほど。



 レキ君最近ちょっと大きくなりすぎです。

 乗るのが自分1人じゃ厳しいくらいに大きくなってしまって、最近では人の手を借りないといけない。

 もうすでに成体のライオンくらいの大きさで、立派な体格になってしまった。

 でも中身はちっとも変わってない。

 優しくてお茶目な狼君だ。


 急成長する体に対して首輪がきついのではないかと思ったけど、どうやらこの首輪伊達にクリストフ家で使われているものではないらしく、伸縮自在だ。でも取れない。


 お婆様に取ってほしいと頼んだのも1度や2度ではないが、その全てをやんわりと拒否されている。

 レキ君と意思疎通できるのは自分だけなので仕方ないけれど、レキ君が優しい良い子なのは何度となく伝えている。

 普通の首輪になる日も近いのではないだろうか。



【それでね~。レキ君首輪が外れても傍にいてくれますか~?】


「わぅ」



 すっと素早く出てくる右足。

 迷いなく当然といった感じがすごく嬉しい。



【レキ君のことだから……。ここから逃げ出したら美味しいご飯が食べられなくなるからでしょ~?】


「わぅ」



 これまた素早く出てくる右足。

 さっきより迷いがないのが悲しい。



【む~。レキ君は私の為にはいてくれないんですねー。ちょっと悲しいなー。悲しいなー?】


「……わふん」



 首をすぼめて目線を逸らして左足をパンパン。

 魔力の流れも照れているのを如実に現している。レキ君は男の子なのでご多分に漏れずこういう話は苦手のご様子。



【ふっふー。素直じゃないなー。私の傍に居たいなら居たいって素直になればいいのにー】


「わふ……。わぅ」


【何いってんだかー。まったくーこのこのー】



 尻尾でぱたぱたと顔を軽くはたかれて、左足でポンポン、と床を叩く。

 左右の前足だけじゃなく尻尾まで使った意思表示は最近の定番だ。



【ひゃー。くすぐったいよー。この~】


「わふぅん」



 もふもふのお腹に飛びつくとそのままゴロン、と寝そべってお腹を見せてくれる。

 ちょっと大きくなりすぎてじっと寝そべっていると威厳みたいなものが出てきたレキ君だけど、こういう格好をするとすごく可愛い。

 わしゃわしゃと圧縮魔力は纏わずにもふもふする。

 毎日丹念に梳かれている毛並みはそのまま眠ってしまいたいくらいに気持ちいい。

 匂いも獣臭いということもなく、むしろ清々しいくらいに爽やかだ。

 狼なので香水とか使っているわけではないのにこの体臭。

 レキ君は本当に素晴らしい。



【むふふふ~。もふもふしていい~?】


「わふ……。わぎゃぎゃぎゃぎゃ」



 断りを入れても結局答えは聞かない。

 ビクンビクン、と小さく痙攣しながら左足が何度も空を掻くけれど、君も気持ちいいのは知っている。

 顔がにやけてしまっている変顔狼君を天国に連れて行きながら自分も天国へまっしぐら。


 今日もレキ君と仲良くしながら時間はゆっくりと流れていった。




レキ君も段々スキンシップが激しくなってきました。

そしてなんだかんだで毎日ビクンビクンさせられてます。


リリーの成長は止まりません。

最早進化と呼ぶに相応しい成長っぷりです。



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