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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第5章 3年目 前編 2歳
96/250

86,狼君と知識。


 魔道具。

 魔術を封じた道具。

 便利だったり強力な攻撃手段だったり堅固な防御手段だったり、その用途はとにかく広い。

 魔術の幅がそれだけ広いことを意味しており、時計のように単一の魔道具では機能しえない魔道具なども多く存在する。

 だが7割程度は単体で動作が完結する。


 価格も簡易な魔道具ならば日常生活で扱えるほどに安価であるが、回数制限が存在するため消費量は多い。

 高価な物では天井知らずになり、以前両親と戯れた時に使った人を浮遊させるほどの魔道具となると値段が付けられないほどだ。

 まぁ壊してしまったけど。


 魔術が封じられているということ以前に魔道具の材料となる魔片と呼ばれる物は魔力を有している。

 その魔力はある方向に非常に長けていた。

 それが封じること。

 だがなんでもかんでも封じられるわけでは当然ない。


 かなり昔、おとぎ話レベルの時代に1人の英雄が魔片の方向性を見出し、それを利用する手段を確立させた。

 それが魔術を封じる手法。


 魔道具作成法である。


 すでにいくつかの手法は失われてしまい、今残っている手法は比較的簡易であり、そして洗練された最終的な技術でもある。

 そのおかげか魔術を扱える者ならば大抵は魔道具を作ることができる。

 当然知識と経験が多量に必要となるものではあるが、それでも当時の初期~中期にわたって研究された手法よりは遥かに簡単なのだそうだ。



 当然サニー先生の授業で習ったことだ。



 今現在自分の手の中には通信用の魔道具。

 正式にはチュールバサチ458型双方向通信具。

 双方向通信が可能な魔道具の中でも最高級品であり、その範囲と通信時のノイズ除去率もトップクラス。

 小型化にも成功している数少ない型式で最新式なのだそうだ。


 お婆様に聞き出した話によると、やはり同じ効果であってもピンキリがあるそうだ。

 成型された魔片に施された装飾だけではなく、その効果範囲、実効果などにも大きく開きがある。

 これは魔術を封じる時の腕によるものだ。


 封じる腕が高ければ高いほど使用する魔片は小さくなり、効果も高くなる。

 魔片が小さく済むならばある程度の大きさならば装飾を施す面を大きく確保できるということでもある。

 ただでさえ携帯性を重視した型の場合は小型化が求められる。

 その需要にも応え、見た目もよいとなると通信機型の魔道具のシェアとしては最大規模なのがチュールバサチなのだそうだ。



「リリーちゃん、他にもお話したい人はいますか? じーじが話したいと思うのですけど」


「ん~……」


「ふふ……。ゆっくり考えてもいいですけど、もうすぐじーじが来てしまいますよ?」


「ん~……」



 生返事を返しているのには理由がある。

 魔道具をここまで間近で見たのは初めてだ。そしてわかったことがいくつかある。


 どうやら魔力を見ることができる魔眼持ちな自分には、封じられている魔術が解析可能なのだ。

 それはサニー先生の授業を半年の間受け続けた成果であり、自分の理解度を示す物だ。



 それによれば……。



 この魔術は " 今の " 自分にも使えるということだ。

 もちろん既存の魔術である以上、発動具が前提となるため発動具がなければ使えない。

 だがそれすら解決できるかもしれない情報まで解析できてしまった。


 サニー先生の授業は基本的に魔術本体は詳しく教えてもらえていない。

 それはまだ早い、という先生の意思を汲んだ結果であり、膨大になった知識――今現在魔道具を見ただけで深く解析できてしまっているほどの物を有しているにも関わらず魔術が1つも使えない理由だ。


 10歳で受ける適性検査は適性を調べるのみであり、10歳以下で魔術が使えないというわけではない。

 深い知識を理解していれば歳は関係ないのだ。




 何が言いたいかというと……。




【レキ君……。私……魔術が使えるかもしれません】


「わぅ?」


【この携帯……チュールバサチを見て分かったのですけど……。

 封じられている魔術はかなり簡単です。発動に際して使われているのは認証するための複合式。

 発動具の代わり……というよりは封じられたことにより発動具を介す必要がなくなったことにより、発動するための術式自体が違うものです。

 これを使えば発動具がなくても魔術が扱えることになります】


「わぅぅ?」


【……あぁ。わかりました。これは魔片に封じるという特殊な加工の際に変質させること自体がトリガーなんですね。

 つまり暗号化されているんですよこれ。

 結構巧妙ですね。でも誰もわからなかったというのは……】


「ぅぅぅ……」



 眉を潜めて小さくお手上げの声をあげているレキ君には悪いけど、もう少し考える。

 誰にも解析されていないわけがない。

 だが解析するには魔力が見えないといけない。

 魔眼持ちでも強力だという自分の魔眼。

 サニー先生曰く、歴史上でも類を見ないほどの強力な魔眼らしい。



 正確には " 成長した " 魔眼だ。



 自分は魔力を操れる。

 それが目が見えない代わりに魔眼を頼りにした結果、魔力の操作と共に必要に迫られ魔眼が成長した。



 異常に。



 理由は自分の桁違いな魔力総量によるところが大きいそうだ。

 まだ森に戻らないと大規模な研究が出来ないから仮説の段階らしいけれど、膨大な魔力が影響しているのは間違いないらしい。



 そんな理由で魔眼を持っていても解析が出来るほどの者がいなかったというのは納得がいく。



 純魔力生命体である妖精族を除けば。



 思い返してみれば常にクティとサニー先生は何も持たずに魔術を使用していた。

 最初は妖精族だから人とは違うのか、と思っていた。

 知識が深まるにつれ、それは違うことがわかった。

 ならば服の下にアクセサリーとして発動具を身に着けているのでは、と考えた。

 発動具自体は加工が可能で希少な材料を使用すれば小型化も可能だ。

 常に使う武器につけたり、アクセサリーにしたりしている人も多い。

 発動具を偽装することにより破壊対象を絞りづらくする意図もある。まぁほとんどが見栄え重視だけど。


 だが2人はアクセサリーをつけてすらいなかった。

 実際に何もつけていない状態を目撃している上にその状態で魔術を使用していたからだ。



 お風呂に一緒に入るぅ~事件の副産物だ。

 あまり思い出したくないので割愛しよう。



 そんなわけで発動具をなしに魔術を使用する2人。

 結局精霊力という純魔力生命体である種族特性ということで1人勝手に納得したのだが、それすら外れていたようだ。


 解析されていたのだ。

 発動具なしで魔術を扱う方法をすでに妖精族は持っている。

 いや常識なのかもしれない。なんせクティとサニー先生がいるんだ。

 直感で全て解決できるクティと恐ろしいほどに深い知識を持つ先生。この2人がいるのだからありえない話ではない。


 先生の弟子ともいえる自分。

 そしてすでに解析できてしまった知識量。


 これはつまり……実践の段階に来ているのではないだろうか。



【レキ君……。私は魔術を使ってみたいです】


「わぅ」


【右足が前……。レキ君もそう思いますよね】


「わん!」


【……でもだめです。今使ったらお婆様にばれてしまいます】


「わぅぅ……」


【なのでばれないようにしようと思います】


「わぅ?」


【ふふ……。実は解析対象があるんですよ。私の近くに】


「わぅ」


【そう……。レキ君には見えているのかな? 先生ですら気づいていなかった。

 クティも私が気づいていないと思っていたアレです】


「わぅ?」


【今なら出来ますよ……。だからやります。私は魔術を使ってみたい。

 この半年の成果を……試してみたい!】


「わぅ!」



 レキ君の激しく振られる尻尾に勇気付けられながら彼の背中を優しく撫でてあげる。

 細められ、気持ちよさそうにしている彼を少し眺めて心を落ち着ける。



 焦ってはだめだ。常に冷静に……冷静に。



 そして……自分の常に斜め後ろに位置している解析対象に視線を向けた。





レキ君のプライドを粉にした事件の時に出てきたアレです。

さぁいよいよ近づいてきましたあの瞬間に。


ファンタジーな異世界なのに主人公がこの手のことをするのに90話近く使ったというのもある意味珍しいんじゃ……。



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