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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第5章 3年目 前編 2歳
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85,狼君と魔道具。



 クティとサニー先生が定期報告に里帰りしている間当然授業はない。

 紙や筆記用具を使わない口頭のみの授業なので当然居ない間にやるべき宿題はない。

 せいぜいがレキ君と復習をするくらいだ。


 約半年に渡り毎日1日の大半をつぎ込んで勉強していたのもあり、正直暇でしょうがない。

 お婆様がいるので魔力は軽く放出してお絵かきするくらいしか運用できない。

 先日行った屋敷探検も魔力のない部屋や調度品などは見えないので意味がなかった。

 突発だったとはいえお婆様やエナといった保護者という立場の人間が伴わないことは、この2年で初めてだったので新鮮ではあった。

 だが連日行うにはちょっと微妙でもある。


 部屋を見て回るという名目で魔力を放出して訓練するというのも考えたが、次からはお婆様が付き添うそうだ。

 どうやら武器に興味津々だったのがまずかったらしい。

 特にその報告をエナが聞いたらしく、ニージャとラクリアがお説教をくらいお婆様のとりなしがなければ専属を解雇される直前までいったらしい。

 エナは相変わらず過保護すぎる。そして今回の対処法は極端すぎる。

 なのでちょっとエナに文句を言ったら涙目になってどれだけ心配したかを語られた。



 それはちょっとずるいと思うのだよ、エナ……。

 でも最終的には自分の許可なしに専属を解雇させるようなことはしないと約束してくれたのでよしとした。



 まぁそんなこともあって屋敷探検に行くわけでもなく、授業があるわけでもなく今もレキ君のふわふわのお腹を枕にしている。



【レキ君……。暇だね】



「わぅ」



 レキ君のお腹に頭を乗せているので見えにくいが右足がちょっとだけ見えた。どうやら彼も暇なようだ。逆を見れば尻尾はパタパタ動いているけど。



【勉強……する?】


「うー。わぅ」



 今度は左足が出てくる。勉強は嫌なご様子。

 正直自分もそんな気分ではないのでありがたい。


 ではどうしよう、となるのだが特に案もない。

 さっきまでレキ君用の玩具箱をひっくり返して遊んでいたのでそっち方面も十分だろう。

 テオとエリーも学校に行っている時間帯なので今レキ君ルームにいるのはお婆様とニージャ。

 隅の方に騎士団の人が4人いるけどまたエナに心配させてもいけないので近寄ることもしないようにしている。

 正確には騎士団の人の隠し持っている武器を扱おうとするのが心配させる行為なのだが、似たようなものだ。所謂連想ゲーム的な。



「リリーちゃん、おねむさんかしら?」


「んーん」


「じゃぁもうレキとも遊ばないの?」


「んーん」


「じゃぁ休憩中かしら」


「んゆ」


「レキのお腹は気持ちよさそうですものねぇ」


「んゆ」



 傍に来たお婆様が自分の頭を撫でるついでにレキ君の背中も撫でるのが振動で伝わる。

 レキ君のお腹は確かに気持ちいい。

 枕にはもってこいだ。このまま自分のベビールームに持って帰りたい。

 でもそれは出来ない。

 なぜならベビールームにはレキ君は立ち入り禁止だからだ。


 一応レキ君は自分のペットである。

 ペットではあっても獣であることには変わりない。だから部屋に入れるのはだめということだ。

 まぁ毛とか色々問題あるしね。


 もういっそレキ君ルームにベッドを持ち込んで寝ればいいんじゃないかと思うこともあるくらいレキ君のお腹は気持ちいい。

 たまにもふもふするけど、その度にレキ君は激しく消耗するので頻度は低めだ。

 でも1日1回はやる。


 レキ君もだんだんとなれてきてはいる。慣れてきたころが危ないということを彼はまだ知らないようだ。

 余裕そうな表情をするようになったら一段階攻撃力をあげてあげることにしよう。



 そんなことを柔らかい毛を堪能しつつ考えているとお婆様が通信用魔道具を取り出してどこかと連絡を取り始めた。



「わかりましたわ。ではレキの部屋で待っていますから。

 ……はい、わかりました。ではお待ちしておりますね」


「じーじ?」


「えぇ、そうですよ。もう少ししたら来るそうよ」


「しょっか」


「ふふ……。じーじが来たら遊んでもらう?」


「ん~……」


「ふふ……」



 微笑ましそうに頭を撫でて髪をさらさらと玩ぶお婆様。

 そういえばあの魔道具欲しいって強請ってなかったのを思い出した。



「ばーば。おえがいがありましゅ」


「あらあら、何かしら?」


「まどおぐがほしいです」


「魔道具を?」


「あい」



 魔道具の部分で真剣にゆっくりと滑舌を少しでもよくするように言うとこちらの真剣さが伝わったのかお婆様のいつもののほほん笑顔に少しだけ真剣味が追加される。



「魔道具は……。リリーちゃんなら理解しているのよね?」


「あい。しゃっきのおはなししてあにょもまおおぐ……うー。ま・ど・お・ぐでしゅ」


「はい、よくできました。そうよ、これも魔道具です。

 この屋敷くらいの広さくらいしかお話できないけれど、離れたところに居る人とお話することができるものよ」


「あい。しょえがいい」


「そうねぇ……。これがあればリリーちゃんと離れていてもお話できるものねぇ」


「あい!」



 お婆様も乗り気のご様子なのでここぞとばかりに大きく返事をして期待の眼差しを向ける。



「でもだめです」


「ぅ……。にゃじぇ?」



 だがお婆様から返って来た言葉は予想外の却下だった。

 自分に甘く常に味方になってくれるお婆様なら強請ったらすぐに与えてくれると思っていただけに予想外すぎた。



「魔道具というのは扱いを間違えると危険な物です。

 日常生活で使用される魔道具ならそうではないものが多いですが。これは日常で使う物ではありません。

 扱いを少し間違えるだけでリリーちゃんを傷つけてしまうかもしれないから、駄目なの」


「しょっか……」


「でも、ばーばと一緒に使うなら大丈夫ですからね。誰とお話したい?」



 さすがに生前の携帯と同じレベルで普及しているものではないらしい。

 使用範囲も屋敷内だけということだが、この屋敷がとんでもなく広いのはわかっているのでそれだけでも十分使えるものではないのだろうか。

 もしかしたら値段的な問題だろうか。中距離程度とはいえ離れたところと会話できるのは非常に有用だ。

 それが普及していないということは値段か数の問題……か。または宗教的な問題などだろうか。例えば顔の見えない相手と会話するのが忌避されるとか。まぁあくまで今思いついた予想でしかないけれど。



「にーにとねーねはむいだおね?」


「学園は距離がありすぎて無理ね。今大丈夫なのはじーじとラクリアとジェニーとミラかしら?

 あ、ニージャも大丈夫よ。そこにいるけれど」


「……じゃん」



 話を振られたニージャの手にはすでに同じ魔力の流れを有する魔道具がある。

 でも思いっきり会話できる距離で使う物ではないので却下だ。



「じゃ~みりゃ!」


「はい、わかりました」



 了解したお婆様が素早く魔道具を起動させる。

 魔道具を起動させるには起動用パーツに触れてイメージを行う必要がある。

 その際に認証が必要となる物は魔力を若干量吸われそれで認証を行う。認証に失敗すると魔道具は当然起動しない。

 日常生活で使うような魔道具にはこの設定は必要ないが、高価な魔道具――主に戦闘用などの魔道具には必ず認証がある。


 起動した魔道具は主にイメージで操作され使用目的にあわせて非常に簡単な動作を行う。

 通信機の場合は通信可能圏内にいる人が持っている通信機を選択するだけだ。

 起動と同時に選択できる通信機がイメージとして現れるそうだ。なので操作は非常に簡単だ。

 逆に通信が入った場合はイメージに受けるか拒否するかが出てくるらしい。こちらも非常に簡単だ。



「ミラ、今大丈夫かしら? ……そう、ではリリーちゃんに代わるからお話してくれるかしら? ……えぇ、よろしくね。

 はい、リリーちゃん」


「あい。みりゃ?」


『は、はい! なんでございますか、お嬢様?』



 通信機の魔道具は意外に重いのでお婆様に耳に当ててもらいながら使用する。

 生前の携帯電話と同じように魔道具から声が聞こえ、そして自分の声が相手側に伝わる。

 慣れ親しんだ感覚になんだか嬉しくなってしまう。



「こにちあ。ごきえんいかがでしゅか?」


『はい! とってもいいです! お嬢様はいかがですか?』


「あい。いいでしゅ。みりゃはいまどこにいましゅか?」


『私は今お嬢様のお部屋の掃除をしています。もうすぐで綺麗なお部屋になります!』


「ごくりょおさまでしゅ」


『そ、そんな勿体ないです! これは私の当然の務めですのでお気になさらないでください!』


「ふふ……」



 お婆様の穏やかな微笑みに見守られながらしばしミラと他愛無い会話を続けた。




ちょっとした日常の一コマって感じですね。


でもクリスト家で使われている通信魔道具は一般普及するような類のものではないです。

ほとんど軍事機密レベルのものだったりします。


なのでリリーがこの軍事機密レベルのものではなく、もう数段落ちるものでもいいと言えば貰えたのでした。

考えが回りすぎて失敗したけど、リリーは当然気づいていません。



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