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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第5章 3年目 前編 2歳
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74,勉強する狼君。


 毎日レキ君のお部屋まで遊びに行くのが日課に加わった。

 レキ君のお部屋は兄姉が訓練を行っている鍛錬室の近くにあるらしく、2人の頑張りを見た後に行くことが多い。

 とはいってもやはり時間的な問題などもあり毎日2人の訓練を見れるわけではない。

 特にテオの方は最近とても忙しそうにしている。



「リリー、ボクはやっぱり騎士科に進もうと思うんだ。

 家でも訓練してるけど、ちゃんとした学園を出た方がいいのは確かだからね!」


「そうね。白結晶騎士団に入団しているとはいえ、私兵であることには変わりないからきちんと学園で学ぶことも大事よ」


「私はどうしようかなぁ~……騎士科に行くつもりはないけど、でも他の科に興味があるわけでもないしなぁ~……あぁーなんでリリー科がないのかなー」


「リリー科! いいね、エリー! それすごくいいよ!

 今からでも学園に掛け合ってみようよ!」


「そうね! クリストフ家の力を使う時よ!」


「ふふ……2人とも張り切っちゃってるわねぇ~」


「……アンネーラ様……止めてください……」



 テオは来年、今通っている初等部を卒業するそうだ。

 初等部の次は中等部となり、そこでは専門的に学べる科でそれぞれに授業を受講する形になるそうだ。



 ちょっとした大学みたいなものだろうか。テオはまだ10歳だけどもう中等部なんだな……。

 生前の世界ではあと2年か3年は経たないとだめだったんだからこの世界はずいぶん早いと思う。

 でも異世界の定番として子供も労働力っていう発想の元に考えると学校自体があるのが珍しいのだ。



 その学校についてだが、サニー先生の授業にも出てきている。

 なんとこの世界の学校は5歳から入学することができる。

 オーベントは学園都市と呼ばれるほど学校運営に力を入れている。

 王都オーベントだけでもかなりの数の学校があり、テオはその中でも最大規模の学校に通っている。

 正確にはオーベント王国第3王立学園だ。

 学校ではなく学園なので色々と違うのだろう。

 驚くことに基本授業料がかなり安い上に学業支援もある。初等部にはオーベントの国民ならほとんどの者が通うほど普及しており、識字率が70%を超えるらしい。

 70%とはいうもののやはりそこは異世界なのか、簡単な計算と読み書きが出来れば十分なレベルらしい。

 初等部で習うことはその辺であり、以前テオが四苦八苦して解いていた計算問題はこの世界で考えるとテオの年齢では難しいレベルの計算になることもわかっている。

 中等部からはたくさんの科に分かれて授業を受ける。

 テオはその中の1つ騎士科を受講する予定だ。騎士科はそのまんまの騎士とはなんぞやという授業らしい。

 騎士の立ち振る舞いから話し方、戦闘訓練も当然あるらしい。

 ただ中等部といっても10歳の子供だ。中等部在学中の半分程度は初等部の延長となる授業がメインとなり、科自体の専門的な分野の比重は少ない。

 これは高等部で学ぶことの下地を作るということで行われている側面も大きい。


 中等部では専門分野を学ぶことにもなり、多少授業料も上がるため初等部卒業と共に中等部に進学しないでそのまま就職する子も多いそうだ。ただ中等部に通う子は大概は高等部まで卒業する。下地となる授業を中等部で行うのだから当然といえば当然だ。

 学園に通うことは義務ではない。あくまでも個人個人で選択する必要がある。


 それでもオーベントはずいぶんマシな方だという話だ。

 他の3国では学校自体がほとんどなく、識字率もオーベントに比べるまでもない程度だ。

 まさに中世異世界って感じがする体制らしい。オーベントはずいぶんと近代的な考え方のようだ。


 ちなみに10歳になると魔術の適性検査がある。

 これは正確には10歳になったら行われるのではなく、初等部の最高学年の後期に行われる。

 学業支援の一環でもあるらしい。

 適性検査自体が結構大掛かりなものなので個人でやるのは難しいからだ。

 何らかの事情で学園に通えない者でもこの時期は検査を受けに来ることができる。

 検査で陽性反応が出た場合、国から魔術師のためのたくさんの支援が受けられる。

 魔術師となるには深い知識が必要となるため、学園に通えないもしくは中等部への進学を諦めなければいけないような子でも道を閉ざさない為に設けられたそうだ。

 陽性を示す者はそれほど多くは無い。

 ただでさえ少ない適性者を貧困などという理由で逃すのは国益を損なうとオーベント国王が施行した政策の1つだ。

 この政策は確かな効果を挙げ魔術師の卵の発掘に多大な成果をあげている。


 魔術師は希少職であり国からの多大な支援を受けられる他、例え級が低い魔術しか扱えなくても魔道具を作ることが出来るようになれば一般職よりははるかに高給取りになれる。

 なので魔術師とは誰もが憧れる職業なのだ。



 ちなみに我らがお兄様のテオの適性は……陰性。

 両親共に魔術適性があったが適性は遺伝しないという特性を持っているため特に嘆くようなこともなかった。

 現在の王国に仕える騎士達の多くも魔術を使えない者だ。

 魔術は発動具さえあれば魔力が続く限り強力な攻撃手段になるが、基本的には詠唱が必要となる。

 級が低い低威力魔術では詠唱も短くなるが、それでも前線で戦いながら使用するには条件が厳しい。

 それに比べ魔道具を用いれば詠唱なしで同じことが出来る。

 その分回数制限や魔道具の所持、高額な費用などの制限もあるが、それを差し引いても魔道具を使う方が遥かに有用だ。

 実際に宮廷魔術師をしているクレアですら、一部の魔術は魔道具を使う。

 というよりは魔道具を予め用意しておくのは戦術的にも常識なのだ。


 級の低い魔術しか扱えない魔術師は基本的に魔道具師になったり、そのまま冒険者や傭兵、騎士になったりする。

 級のある程度高い魔術を扱える場合、国に召し抱えられる場合が多くそのまま魔術師としての人生を歩む。


 ただやはりある程度級が高い魔術は威力が大規模になり、戦術クラスの魔術を使用できる者は固定砲台となり魔道具では代わりにならない。

 クレアの白焔などがそれにあたり、戦術クラスの魔術としては小規模効果ではあるがその威力は折り紙付きで、魔道具として作成される場合コストもかかりすぎる上にかなりの大きさになってしまう。

 魔道具として封じられる魔術は基本的に低級魔術が基本だ。

 それでも効果は十分に高いため非常に有用なのだ。



「では問題だ。ここ800年ほど人間間での戦争がないリズヴァルト大陸においてこれほど戦力を保有しなければいけない理由を述べよ」


【大陸に多数ある迷宮から湧き出すモンスターを討伐しなければいけないからです。

 人間間での戦争ばかりが戦争ではありませんから】


「うむ、正解だ。

 補足するならば実際に湧き出すほどモンスターが溢れた場合は戦争と呼ぶに相応しい規模の量となる。

 だがほとんどの場合迷宮は発見され次第駆除が行われる。定期的にも冒険者や傭兵、騎士などが探索をするから溢れる前に対処されている」


【うちのお父様が行っている掃除というのがそれのことですね】


「その通りだ。彼は第2騎士団というモンスター駆除を専門とした騎士団に所属している。

 彼らの働きがあってこそ、この大陸の平和は保たれていると考えてよいだろう」


「さすが、リリーのお父様だね!

 リリーがすごいからお父様もすごいんだよ!」


【クティ……それは逆じゃないかなぁ~】


「そんなことないよ! リリー成分を補給してるから戦えるんだよ!」


【そ、そうなの……?】


「もちろん!」



 いつものドヤ顔と薄い胸をえびぞりにした体勢のちっこい様だ。

 でもクティがそういうならそうなんだろう。クティが言うことは大体正しい。

 たまに的外れなことも言うけれど大体は正しい。……大体は。



「というわけだ。わかったな、レキ?」


「わぅ」



 スッと右前足を出すレキ君。

 すでに理解していることを話していたのはレキ君に教えるためと自分の復習のためだ。

 この数日でわかったことだが、レキ君は非常に頭がいい。

 大体のことには右前足を出す。



 まぁ……大体のことには出してくるので本当に理解しているのかはわからないが、それでも興味深そうな好奇心旺盛な魔力の流れを瞳に宿して話を聞いている。



 お婆様はすぐに駆けつけられる位置に常にいて、現在の部屋入り専属――ニージャはお婆様よりは少し離れたところにいる。

 でもニージャなら自分に何かある前に駆けつけられる位置だろう。

 もちろんレキ君がそんなことするわけないけれど。


 ちなみにレキ君だが、君付けしているのは彼が男の子だからだ。

 直接確認したわけではないけれど男の子だということはお婆様から教わっている。

 特に去勢とかするわけではないらしい。



 でも……2歳児にそういう話をするのはどうなんでしょうね、お婆様。



 毎日レキ君のお部屋で一緒にお勉強をする。

 自分の勉強は難しすぎるようでレキ君も最初は聞いていたが、あくびをして寝てしまった。

 なのでレキ君にはレキ君用の簡単な勉強を復習がてら行っている。

 おかげで少し先生の授業が遅くなったが、復習も大事だ。問題ない。


 その他にも魔力文字の扱い方をクティと2人で教えてみたのだが、やはり難しいようだ。

 基本的に感覚的な操作の為、2人の操作感覚を教えてみたのだがうまくいかない。

 まだ練習をし始めて数日なので諦めるのには気が早い。じっくり行こう。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 12の月がもうすぐ終わる。

 この世界の1年は13の月から成り立っているので年の瀬は13の月になる。

 兄姉の学園も13の月は1の月までお休みになるそうだ。

 夏休みも1月あるし、冬休みも1月ある。休みの多い学園だ。


 休みに入ったらいっぱい遊ぼうね、と2人にしっかり約束させられているのでまた授業の時間が減りそうだ。

 今はレキ君もいるから彼を交えての戯れになるのだろうか。


 レキ君はミラに負けないくらいの毛並みを持っているけれど、触らせてくれない。

 触ろうとするとじっと見つめてくるのだ。

 円らな瞳で見つめられると触っちゃいけないような罪悪感が沸いてくるから不思議だ。

 この瞳に勝てるようにならないと触れない。

 なかなかの強敵だ。



 でも負ける気もない。



 近いうちに必ず君に天国をみせてあげよう……レキ君!




支援絵記念3日目です。

早いものです。もう3日ですよ。

では明日から通常投稿に戻ります。

明日は『幼女と執事が異世界で』の方を投稿となります。


レキ君はなかなかのお目目の持ち主です。


円らな瞳に見つめられたら、はわーってなっちゃいます。

打ち勝てる日はいつの日か……。


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


5/24 誤字修正

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