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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第4章 2年目 後編 1歳
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68,妖精達と再戦


 10の月に入った。

 クレアとテオの誕生日があったということは当然ながら次はエリーの番だ。

 テオの誕生日同様にその日はエリーが自分を独占する権利を主張し獲得した。

 このままではテオの時同様にまたクティの機嫌がマイナスになってしまう。あれは1日中顔に張り付かれてちょっと大変だった。

 なんとか回避しなければいけないと思っていたのだが……エリーだと問題ないらしい。



【ねぇ、クティさん。どうしてエリーだとよくてテオだとだめなのかな?】


「えーだってー……。テオだとなんかこう……いやなの。

 エリーだとそんなの全然ないんだけどねー? あ、あとアレクでも大丈夫だったなぁ」


【えぇ……。っていうことは別に男だからだめってわけじゃないんだ。なんでだろうねぇ……】


「なんでだろうねぇー」



 空中でくるくるとアクロバティックな動きをしながら首を捻るジェラシー妖精さんのジェラシーは今日は皆無だ。



「ふむ。単純に好意の違いだろう」


【コウイの違い……ですか?】


「うむ。好意の違いだ。好きという感情には色々あるからな。

 察するに君の兄君の好意は家族として以上の物なのではないか?

 それにクティが嫉妬したのだろう。実にわかりやすいと思うが」


【好意ですか……いやいやいや、そんなわけないじゃないですか!

 私達は兄妹ですよ? ないですよそんなの】


「えーそうなのかなー? うーん、まぁでも私のリリーに寄ってくる虫は私が叩き潰してあげるよ!

 次からはテオでも容赦しない!」


【いやいやいや、容赦して! お願いだから! テオが死んじゃうよ!】


「むぅ……リリーがそういうなら仕方ないなぁ……」


「うむ。おまえが手加減なしでやると本当に跡形も残らんからな。気をつけろ」


【怖いですよ先生ぇ~……クティ本当にだめだからね?】


「わかったよ~任せて~!」



 いつものドヤ顔で胸を張るお妖精さまに一抹の不安を覚えながらもテオが無事でありますように、と祈る以外なかった。



「しかし君は慌てても表情が本当に動かないな。今のは確かに本音の感情だったはずなのだがなぁ。

 これでもだめか。君は一体どうやったら喜び以外で表情が動くのかね?」


【先生……謀りましたね?】


「ははは、何を言ってるのかわからないな!

 さぁ授業の続きをしようじゃないか。今日はどこからだったかな」


「プークスクス。サニーが逃げたープークスクス」


「黙れこの駄妖精が!」


「ニ゛ャー!」



 口がアヒルになり、目は厭らしい魔力の流れとなった駄妖精さまにサニー先生の特大チョップが突き刺さる。

 チョップには当然ながらモザイク状に隠蔽魔術がかかっている。最近は先生の性格も大分掴めて来てどういう状況になれば反射的に突っ込むのかもわかっている。最早当然といった具合で反射で突っ込みに使う魔術にも必ず隠蔽魔術がかかっているのがすごい。

 きっと無意識の領域で行われているんだろう。先生は本当にすごい。


 飾り用のリボンと紙の花を作りながら先生の難しい授業は今日も進む。



 エリーの誕生日会は結果としてクティのジェラシーが発動した。

 エリーの自分に対するこの日の可愛がりは半端じゃなく、ずっと抱きしめて離さなかったしお風呂もトイレも寝る時までも一緒だった。

 まるでテオに負けてなるものかと、とにかくものすごく可愛がられた。


 結果としてジェラシー妖精さんのメーターが振り切れて、次の日は前回とは反対側の頬に可愛い飾りが一個できました。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 11の月に入り、専属メイド最後の1人のミラがやっと部屋入りすることになった。

 ニージャ、ラクリア、ジェニーと続きやっとである。


 ちなみにジェニーはキツネ耳のお方で、おっとりした間延びした話し方をする人だったのだが、この人も尋常じゃなく隙がなかった。

 ニージャとラクリア同様に基本的にはエナのお手伝いが仕事だったのだが、隙があると自分に近寄ってくるのがジェニーが他のメンバーと違うところだった。しかも微妙に魔術も使っているようだ。近寄るジェニーの一部が少しぼやけていたりモザイクがかかったりしていた。

 サニー先生が使った物と比べると遥かに格下の物だったが、これは明らかに自身を隠す類の魔術だ。

 当然自分には魔術を使っていても見えているのであまり意味がない。それにすぐにクティが接近に気づいて教えてくれるので至近距離になる前に彼女を発見するのだが、発見されると彼女はすぐに自分から離れる。

 一体何がしたいのかが微妙にわからなかったが、特に害があるわけでもない。お婆様もエナも特に何も言わないし彼女はこういう人なんだろうと納得した。


 結局最後まで彼女が自分の至近距離に到達することはなかったが、到達していたら何が起こっていたのかはちょっと気になるところだ。

 わざと気づかないで接近されればよかったかなとも思うが、なぜだかそれは実行に移されることはなかった。何かが警告している。それだけはだめだと。

 主にいつもはドヤ顔で可愛らしいお妖精さまがものすごい怖い顔をして声を特大にして、だけど。



 心の声は特に何もいってませんでした。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 やっと部屋入りした自分こと――リリアンヌ・ラ・クリストフの専属メイドさんのミラは犬耳ではなく、狼の耳と尻尾を持つ獣族の人だ。

 その尻尾のもふもふ加減は一言で言うなら至宝。世界の宝だ。

 部屋入りした彼女はさすがに今はガチガチの緊張状態というわけではなかった。

 顔合わせをしたときからもう大分時間も経っている。部屋入りしないでも部屋の外で自分に関する仕事をしていたはずだし覚悟を決める時間はたっぷりとあったはずだ。



「さぁリリーちゃん。あなたのお気に入りの子よ。他の子との兼ね合いもあって一番最後になっちゃったけど、覚えているかしら?」


「あい、よおしくね~みあ~」


「は、はい! よろしくお願いします、お嬢様」



 深々と頭を下げるミラは緊張していないのかと思ったら、残念ながら緊張していたようだ。声がものすごい堅い。噛まなかっただけ前回よりは進歩したと見るべきか……。

 魔力の流れでは緊張度合いはまだ正確にはうまく測れない。ミラからたくさんの情報を仕入れられそうだ。


 専属の仕事は基本的にお手伝い。

 ミラもご多分に漏れず他の3人と同じことをしている。お着替えの手伝い、掃除、汚物の片付け、お風呂の用意などなど。


 他の3人と違うのは彼女は割りと隙だらけだということだろうか。まぁ3人と比べてだが。

 テオやエリーと比べればその実力差は明らかだが、これならばなんとかなるのではないだろうかと淡い期待も生まれてくるというものだ。


 サニー先生の授業を受けつつもミラの動きを観察する。

 彼女の動作の1つ1つや癖に至るまで細かく観察し、どうしたら至宝をもふれるかを考える。

 先生の授業と平行しているのでなかなか作業は進まなかったが、それでも幾度もプランを立て正規ミッションへと昇華させようとしては破棄される作業が続く。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 決行前日、その日の授業は中止して先生とクティも交えてミッションの最終確認を行う。



「いやだが、この場合はこうした方がいいのではないか?」


「えーでもこうきたらこっちだよー」


【そうじゃなくてこっちがこうきたらこうで】



 3人で練り直した作戦は完璧な物に仕上がったと自負できる。

 例えサニー先生が完全に面白半分であったとしても、クティが的外れなことを言い続けていたとしても、だ!


 翌日作戦は決行された。


 作戦は至って簡単だ。

 シンプルな方がアクシデントに対応しやすいのだ。予測不能な事態が起こるだろうことは予想に難くない。

 前回だってまさか泣かせるとは思わなかったのだ。だが今回はそんなへまはしない。


 前回の失敗を踏まえたミッションプランなのだから!



 現在の自分の位置はベビーベッドの上。

 いつもの耳パジャマを着込みいつでも行動できる体勢だ。

 ミラは壁際に待機している。彼女の定位置だ。専属はあそこに待機しなければいけない決まりでもあるかのように4人全員があそこを定位置にしている。

 そして仕込みもすでに完了している。

 彼女は自分が呼べばすぐに近づいてきてくれる。最初はエナやお婆様に許可を求めたりとなかなか近づいてくれなかったのだ。

 何度も何度も繰り返したおかげか、今は割とすんなり近づいてくれるようになった。

 エナもお婆様もそれを咎めたりはしない。なんせ自分が自分の専属を呼んでいるんだから。



「みあ~みあ~」


「はい、お嬢様。なんでしょうか?」



 仕込みも万全だったので、すぐさまミラがベビーベッドに近寄ってくる。

 近寄りはするけれど残念ながら、手が届く位置にまでは来てくれない。そこまでは仕込めなかった。

 なのでここからはアドリブが必要だ。とはいっても何通りものパターンを用意しているので万全だ。



「みあ~こっち~」


「ぇ、あ、はい。これでいいですか?」


「しゃあんえー」


「え、えっと……」


「しゃあむのー」


「あ、しゃがむんですね、はい。これでいいですか?」



 よし、パターンAでここまでは完了だ。ちょろいぜミラ!



 ベビーベッドのすぐ横まで近づいてしゃがんでくれたミラに心の中でガッツポーズを取り、次の作戦に移る。



 コードネームは前回の失敗に気をつけろ ~ 失敗は成功の母 ~、だ!



 そう、前回は尻尾を全力でもふってしまったのが失敗の原因だ。

 したがって今回は尻尾をもふるのは残念ながら却下だ。

 だが、一流のもふりストとは尻尾だけをもふる者ではないのだ。

 もふリストにもふれない箇所はない、という名言があるほどにもふリストの称号を持つ者にとってもふるという行為は無限の可能性を秘めている。


 まだ自分は一流のもふリストを名乗るには修行不足なのは否めない。だが、もっふぃーの端くれとして現実にもふもふさんがいる世界に生まれたことを最大限に生かさない手はない。

 故に躊躇などは存在しない。

 例え彼女の瞳が疑うことを知らないあどけない少女のような純粋な流れを持っていたとしても。

 そんな純粋な彼女を汚す行為を行うと自覚があろうとも。



 何者も自分を止めることはできないのだ!



作戦開始です。


チョロインのミラさんへの仕込みも万全ではないですが、リリーが我慢できる範囲で頑張りました。

これ以上はリリーが暴走してしまうので我慢できません。


いざゆかん!


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


5/9 修正

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