7,生後8ヶ月目
生後8ヶ月が過ぎた。
あれからエナが読んでくれる本の中に " 世界の観葉樹全集 " と " オーベント王国における草花の育て方Vol,1 " などのかなりマイナーっぽい本が増えた。
オーベント王国というのがこの国の名称らしい。
初めての魔力(仮)の放出に成功したあと、エナと兄と姉が大量にそんな感じの本をもってきたのだ。
特に兄のテオは嬉しくて堪らないといった感じで、大量にもってきてくれた本の中の、特に木に関する本を毎日読み聞かせてくれる。
姉のエリーはそんな兄をみて呆れたように。
「テオは本当に樹木マニアよね。リリーは木なんかよりお花の方が好きなんだからこの " 今日からあなたも花壇マスター創刊 " を読んであげるべきよ」
と、どっちもどっちな感じだ。
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エナから本を読んであげていたら、声を上げて喜んだという話を聞いてからの二人は、その時読んでいた本が
" 世界の植木鉢全集 "
だということ知ったその時から、こうして花や木に関する本ばかり読み聞かせるようになった。
どうにも本人達も花や木がかなり好きなようだ。
兄のテオは特に樹木に関する本を針葉樹から始まり広葉樹、落葉樹や常緑樹などの種類に関わらず、生息気候帯にすら拘らず全ての樹木を愛しているようだ。
その中には観賞用の部屋に置くような観葉樹も含まれるようで、何冊も月単位で発刊されているようなマイナー雑誌まで読み聞かせてくれる。
具体的には
" 今日から始める盆栽Vol,1 "
とか。
" 庭は緑の園 ~剪定編~ "
とか。
盆栽あるなんて和風だなぁとか思ったりした。
姉のエリーはというと、やはり女の子なのか庭にある花壇で花を育てているらしい。
そのせいか読んでくれる本は " 草花 " に偏っている。
そう……花だけじゃなくて、草も範囲対象なのだ。
昨日読んでくれた本のタイトルは
" 煮て焼いて揚げてよし野草全集 "
だったし、その前に読んでくれた本は
" 一本でも草 "
という長編小説だった。
ちなみに前後編の2冊仕様で、かなり分厚い感じの本だった気がする。
触った感じ厚さが並じゃなかった……。
内容は……正直読み終わるのに2冊で3週間かかり、訓練の方に意識が傾いていたのであまり覚えていない。
確か草原に生える一本の草が二本の足で立つところから始まるという、最初から超展開な部分だけは、はっきり覚えていた。
兄が樹木愛好家なら姉は草花愛好家とでも言うべきなのか。
イケメン&超可愛いお嬢様なのになんとも残念な趣味というか。
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兄と姉のいる時間のほとんどが樹木&草花読み聞かせに変わってからも、魔力(仮)の訓練は続いている。
魔力(仮)の放出に成功したあの日以来、放出訓練は放出後の制御訓練に切り替わり、最初こそ苦戦したものの今ではかなりの範囲で自由自在とまではいかないが、制御できるようになった。
放出した状態での制御は繋がっている時とは少し違い、ラジコンを動かすような慣れを多分に必要とするものだった。
繋がっている時は感覚の延長のように制御できていたので、違いに戸惑ったが慣れてしまえばあとは努力次第だとわかった。
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放出した魔力(仮)は放出した時の量が限界量となる。
繋がっている状態なら、制御可能範囲内なら自由に何度でも制御できたのだが、放出した状態では限界があり、その量に応じて制御できる回数が異なる。
魔力(仮)を多く放出すると回数が増え、少なく放出すると減る。
制御回数が1回未満の量を放出することは出来ず、放出しようとすると失敗して消滅する。
魔力(仮)を放出できたことが嬉しくて調子に乗って放出しまくった結果
" 意識が飛んだ "
意識が飛んだ時は兄のテオの膝の上で朗読してもらっていた時だったのだけど、多分寝てしまったのだと思ったのか。
意識が戻った時にはベビーベッドの上だった。
要検証だと思い、さっそく慎重に検証してみた。
結果として魔力(仮)は放出すると減少することがわかった。
減少しても時間経過で回復する。
限界まで放出して減少させてくたくたになっところで、寝て回復させたあと同じ量を放出した結果、余裕があったことから魔力(仮)の総量が上昇していることが判明。
放出を一回だけ行いとにかく制御で意識が飛ぶぎりぎりまで訓練した結果、魔力(仮)の総量は変化がなかった……たぶん。
数値化したわけではないので、実際には放出一回分増えているのかもしれない。
制御での上昇量が微量すぎて、変化していないように感じたのかもしれない。
とにかく、検証数が少なすぎてこの辺の答えはまだ出せないとわかった。
大事なことは魔力(仮)を放出しまくれば魔力(仮)の総量が増え、放出できる量が増えるということだ。
放出させられる量を増やすのはいいことだ。
回数を増やせるということは実験もしやすいということだから。
一人で実験も検証も考察もやっているんだから、とにかく数をこなさなければならない。
魔力(仮)の放出に成功してわかったことはたくさんあった。
1、制御に独特の感覚が必要で、放出した量に応じた制御回数の制限が付く。
2、放出された魔力(仮)は体に繋がった状態の制御と比べ扱いが段違いに難しい。
3、魔力(仮)を放出すると魔力(仮)が減少する(最大値ではなく残量が減る感じ?)
4、減少した魔力(仮)は時間経過で回復する(放出によって減った分、総量が増える?)
5、魔力(仮)を限界まで減少させると、体力が限界まで減少した時と同じように意識が飛ぶ。
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放出させることには成功した。
母のような放出した魔力(仮)に触れると心から感動するようなことはなかったが、それでもそれに近い感動と達成感があった。
でもまだ終わりじゃない。
放出した魔力(仮)には可能性がまだまだ詰まっている。
魔力(仮)の総量や制御に関する可能性も残っている。
転生して8ヶ月目、目が見えないというハンデはもうどうでもよくなっていた。
視覚障害という不安を消し飛ばして、あまりあるくらいに夢中になれるモノを見つけたんだから。
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