表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第4章 2年目 後編 1歳
67/250

61,妖精達と顔合


 耳パジャマを着たまま目が覚めるとクティが顔に張りついていた。

 昨日のクティの興奮っぷりはたぶん過去最高のはしゃぎっぷりだったんじゃないだろうか。

 クレアやお婆様やエリーのはしゃぎっぷりも酷かったけど、クティが一番酷かったと思う。



 だって……アレクと同じような目してたし。



 お祭りのような騒ぎになった昨日とは裏腹に今はとても静かだ。

 クティが顔に張り付いて取れないけれど、それも心地よいのでそのままにしておく。クティ以外だったらきっと叩いて落としただろう。


 静かなベビールームにエナの掃除の音だけが微かな音を立てる。

 毎日のエナの日課となっている掃除はすごく静かだ。手に持っている何かで部屋の中をどんどん拭いて行く。

 雑巾なのか何なのか未だに不明だけど、掃除道具はあれだけだ。

 絨毯や窓と思われる物から何やら、アレだけで掃除をしている。推測ではあるがアレは魔道具なのではないだろうか。

 魔力の流れは見えないが、きっと内部に機構として設置されているタイプと見た。

 この屋敷、いやこの世界にはたくさんの魔道具がある。

 今まで見た中で一番巨大な物だと、遠方を映し出し音声まで楽しめる銀の眼。

 小さい物だと懐中時計や普通の壁掛け時計に使われている部品も魔道具だと思う。

 あれほど小さな魔道具があるなら、雑巾に仕込める魔道具があっても不思議じゃない。

 生前の世界にも掃除機があったように、この世界にもそれに代わる魔道具がありそうだ。

 エナが使っている雑巾と思しき物もそうなのではないだろうか。いずれ解明したい。でも今はまだその時ではないだろう。


 エナが掃除をしているのは朝だ。だから今は朝なのだろう。

 鳥の声や太陽の光の暖かさなんかはこの部屋には入ってこない。完全に遮音された部屋。窓に魔道具が仕込んであるのかわからないが光の温度もほとんど感じられない。

 それでも部屋には温度を完璧にコントロールする魔道具により、常に一定の温度が保たれ湿度もちょうどよくすごく快適だ。

 屋外に出てわかったことだが、今は夏。しかもからっとした乾いた夏だ。

 この部屋にいるとそんな季節の変化はまったく感じられない。快適ではあるけれど、すこし寂しくもある。

 最近屋外に出ることが許されたから気づいた点だ。普通の幼児とは一線を画す知識を持っていても気づかされることは多い。

 知識なんて物は結局のところ経験には勝らないのだろうか……いやそんなことはないはずだ。



 だから知らないよりは知っていた方がいい。どんなことでも知らないよりは知っていた方がいいと思うんだ。

 例えば、今日白結晶騎士団の団員との初顔合わせがあるとか。

 そういう微妙なイベントは、まぁこの際だから別に知らなくてもよかったが、その後の大イベントは知らせておいて欲しかった。



 心臓に悪いから!







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ずらっと整列したフルプレートアーマーを着込み、巨大な盾を持ち剣を腰に佩いた総勢25名の騎士達。


 その中に明らかに2人ほど背の足りない、少年と少女も混ざっている。

 我らがお兄さまとお姉さまだ。


 テオもしっかりとフルプレートアーマーを着こんで完全に戦闘態勢の整った騎士様だ。腰にはいつかのお出迎えの時の細身の剣を佩いている。

 エリーはテオよりも軽い感じがするが十分にフルプレートのアーマーと言える物を着込んでいる。武器は腰に小さな短剣と背に弓を背負っている。拳の部分に何やら棘のような物がついているのはやはり近接戦闘用なのだろうか。ちょっと怖い。


 2人とも他の騎士達同様に背筋を伸ばしてしっかりと整列している。兜は全員脇に抱えて素顔を晒している。

 素顔が見れなくても鎧を着こんでいたとしても、自分の兄姉は見分けることくらい訳ないけれど。

 その姿は小さいけれど他の騎士達と遜色ない、いやそれ以上の美しさと気高さを持っている。身内の贔屓目だろうが、そう見えてしまうのだから仕方ない。


 完全武装というに相応しい格好だ。だが、あんな重そうな鎧を着たままで戦えるのだろうか。いやもしかしたら内部に魔道具が仕込んであるのかもしれない。重量を軽減したり柔軟性を増すような魔道具があったら防御力を重視した格好でも十分に実用的だ。



 もしくは、式典用か。



 整列している騎士達のほかにも、騎士達の先頭にお爺様とお婆様。

 自分を抱きかかえているクレアとその隣にアレクとエナ。その周りにスカーレットさんと知らない素敵装備(ケモノミミ)のメイドさん達がいる。

 いや、メイドさんたちの中に1人だけ知っている人がいた。もふらせてもらった時に泣かせてしまったお方だ。



 あの時は本当に申し訳ないことをした。

 ぜひもう一度もふらせてください!



 そのお方を凝視していると見られていることに気づいていたようで、ちょっと魔力の流れがおかしい。

 照れているのだろうか。俯いてしまった。ういやつめ。



「では、これより白結晶騎士団の結成式を行う!」



 騎士達の先頭にいる、一際立派な甲冑姿のお爺様が大音量と言って差し支えない大声を張り上げる。

 ちょっとびくっとしてしまったくらいのでかさだ。あの拡声器のような魔道具を使っているのだろうか。

 クレアがびっくりした自分を心配して体を揺すって、大丈夫よと言ってくれる。その柔らかい安心する声音で驚くほどに心が静かになる。

 母親の言葉というのは不思議だ。聞くだけで安心する、不思議な心地よさと安心感がある。


 クレアの言葉が終わるか終わらないかのタイミングで周りからたくさんの拍手の音が聞こえてくる。


 お爺様から今度は普通の音量で何やら長い台詞が聞こえてくる。

 騎士にとってうんたらとか、その命尽き果てるまでうんたらとか、なんとも騎士っぽい誓いの言葉的なやつだ。

 なぜ断片的なのかというと、専門用語が多いからだ。

 誓いの言葉っていうのは基本的に普段使われないような難しい言葉や古代の言葉なんかを使うらしい。

 クティに聞いたら彼女が小さな人差し指を立ててドヤ顔をした時点で、サニー先生にそう答えられた。

 その後に騎士に纏わる話をいくつかし始めたので同時進行で聞いていく。

 サニー先生は魔術以外にも知識が豊富だ。その量は普通に先生として授業を受け持てるだろうレベルだ。さすがすぎる。

 自分が答えようとしたところを先に言われてしまったので、クティは少し膨れていたがすぐに気を取り直してサニー先生の背後にいつもの魔力で作った黒板を作ってコミカルな図解の解説を始める。


 馬に乗った2頭身の騎士達が両端に大量に集まり、端から1人ずつ出てきて何やら口上を始める。

 そして戻っていくと全体で突撃する。この繰り返し。

 騎士の戦争とは一種の劇である、とサニー先生がそう締めくくる。生前の世界での騎士も似たような戦争をしていたような気がする。

 騎士道を重んじ、格式と定められたルールの下……戦争をする。

 なんでもありの戦争ではなく、一定の決まりがある中で行われる競技のような戦争だ。


 そんな戦争はお遊びで劇と変わらない、とサニー先生は言う。



 戦争なんて実際目の当たりにしたことがないのでイメージでしかないけれど、それでもなんでもありよりはルールの下に行われる方が制御しやすくていいんじゃないかとも思う。

 まぁ戦争しないのが一番だけど。


 色んな人がいれば色んな思想がある。分かり合えることもあればその逆も然り。

 争いが大きくなれば戦争になる。この大陸は大きな戦争は800年前にしたきりだという話だ。でも戦争がなければ平和というわけではない。

 実際自分を狙う組織に対抗するために作られたのが、今目の前で剣を天高く掲げた集団だ。



「「「我ら皆、命尽き果てるまで! 我らが主、リリアンヌ・ラ・クリストフを守護することを誓う!」」」



 一糸乱れぬ大音量の声が最後の誓いの言葉を紡ぐ。

 背を向けていたお爺様がこちらを振り向き、1歩2歩と厳かに近づいて来る。

 3歩ほどの距離を置いて腰に佩いた長大な剣をゆっくりと抜き放ち、両手で掲げこちらに捧げるように跪く。



「我ら白結晶騎士団総勢26名。この命尽き果てるまで戦い守り抜くことを誓う」



 ザッという音と共に剣を掲げていた騎士達が全員跪く。

 その光景は1枚の絵画のような美しさだ。

 サニー先生もほぅ、と一言だけ口にし、クティはやっぱりドヤ顔だ。

 魔力で自分の後ろに2頭身のお人形騎士達を跪かせている。クティ騎士団の誕生の瞬間だ。



 跪き、剣を捧げるお爺様に普通はその剣を手にとって肩にぽんぽんと剣の腹を当てて、何か言うんだろうけれど……自分にはそんなことは出来ないので代わりにクレアがやってくれた。



「リリアンヌ・ラ・クリストフに代わり、クレアティル・ラ・クリストフが代行し、誓いを受け入れます。

 さぁ立ちなさい! 白結晶騎士団!」


「「「おぉー!!!」」」



 クレアの凛とした声音と共に騎士団が立ち上がりその剣を天に向かって突き上げる。

 大歓声が響き渡り、今いるエントランスホールよりも巨大な室内を揺らしている。

 天井にいくつかあるシャンデリアの魔力が微かに揺れているほどだ。


 あまりにうるさかったので、耳に手を当ててしまった。

 そんな姿がおかしかったのか、お爺様の長大な剣を持ち主に返すと自分を抱いているクレアが楽しそうに微笑んで優しく包み込んでくれる。


 大歓声はすぐに治まり、剣を鞘に戻した騎士達は最初の整然とした隊列に戻るとその雄雄しき姿のまま直立不動になった。

 お爺様もクレアから受け取った剣を鞘に戻し、騎士達の前に戻るとこちらを振り向き直立不動の体勢になる。


 最初はお爺様の横に控えていたはずのお婆様がいつの間にかエナの隣にいて、音もなく前に進み出る。



「では、次はリリーちゃんの専属となるメイドを紹介します」



 お婆様の口から発せられた言葉で瞬時に控えていた素敵装備(ケモノミミ)のメイドさん達の顔が思い浮かぶ。



 もしかしなくても彼女達が!

 まじですか!? まじですか! まじですってよ!



 ついに自分の好きに出来る素敵装備(ケモノミミ)のメイドさん達が手に入ってしまうようだ。

 専属っていうのはそういうことでしょう!?



 お婆様の言葉に続き、自分を抱いているクレアの前に4人の素敵装備(ケモノミミ)を煌びやかに輝かせた至高の存在達が進み出てきた。





騎士団との顔合わせでした。

結構人数います。でも1人1人紹介するようなことはないんだろうなぁ。

出番あるのかな白結晶騎士団。


そんなことより次回はついに専属さんの登場です。

好き勝手あれやこれやできちゃうメイドさんですよ!

夢が広がりますね。



ま、現実というのは……。



気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


4/23 誤字修正

1/9 誤字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ