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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第4章 2年目 後編 1歳
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59,妖精達と覚悟


「さてまずは既存の魔術を使えるようになろうか」


【あ、あれ……? 精霊力は?】



 さっきまで精霊力を扱えるようになってもらうと、色々説明されていたのに突然違うことを言い出した半眼妖精先生。

 さすがのマイペースぶりにちょっと困惑してきた。



「精霊力はねー私達にとっては普通のことだけどー……魔力を精霊力にするにはー既存の魔術をある程度使えるようになった上で、私が作った魔術を使うのが一番早いと思うんだー」


【なるほど。だから魔術を扱えるようにならないといけないんだね】



 やっと合点がいった。魔力を精霊力にするには魔術を使わなければいけないのだ。

 しかもクティが新しく創造した魔術。それを使えるようになるにはまずは既存の魔術を使えないといけない、つまりはそういうことだ。



「では、魔術とは何かから始めようか」



 サニー先生のマイペース授業は続く。

 魔術の基本概念を含む概論、魔術の発展から現在に至るまでの経緯。

 魔術に関する基礎知識といったモノを叩き込まれていった。


 先生の授業中、ずっと背後でわかりやすく図解してくれたクティがいなかったら理解できなかったかもしれない。本当にクティはすごい子だ。


 ちなみに授業は結構長くなったので、途中でエナが起きてきたり朝食を摂ったりお婆様にいたずらされたりしながら続いた。

 妖精族の2人のことをお婆様でも感知できなかったらしく、2人のことを誰も気づくことは出来なかった。

 今日の自分はお婆様のいたずらにもあまり関心を示さないのに気づいたのか、お婆様もしつこくはせずのんびりと自分を膝の上に抱いてくれていた。おかげで授業に集中することが出来た。



 お婆様が実力者だとすぐにわかった妖精族の2人は、最初は色々とお婆様の周りを回ってみていたが、すぐに授業に戻ってくれた。

 2人にとってお婆様より自分の方が関心事としては大きいらしい。


 その後も授業は続いた。

 マイペースに専門用語も交えながら話すサニー先生と、専門用語や授業内容をわかりやすく図解し続けてくれるクティ。


 魔術の基礎知識の授業は時間だけを見てみると相当な量になった。

 その全てを理解できたかどうかはちょっと難しい。

 クティがわかりやすく図解してくれたりしたが、頭に詰め込んだだけのような気もする。

 でもなんとなくはわかった。


 例の食堂で皆で夕食をゆっくり食べて、今日教えてもらった知識を反芻しながら整理していく。

 とりあえず今日の授業は終わりらしい。

 さすがに1日で全部を詰め込むというのは無理ということで、また明日授業の続きをすることになっている。


 基礎知識だけでもまだまだあるのだ。

 魔術とはすごく奥深いものだと認識することができただけでも今日は上出来だ。

 授業の合間合間で色々質問もしてみたが、その全てにサニー先生は淀みなく答えてくれた。

 さすがは研究所所長といったところだった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 夕食を食べ終えて、食堂からベビールームに戻ると少し食休みをしてからお風呂タイムだ。

 今日はお婆様がお風呂に入れてくれた。といってもベビーバスにお湯を張って入るので肩まで浸かってというわけではない。

 裸になった自分にクティがきゃー、と言って恥ずかしそうにしながら顔を覆っている指の隙間から覗いていた。



 定番過ぎるよクティ!



 サニー先生は変わらぬ半眼でじっと見つめていた。

 そんなに見られるとちょっと恥ずかしい。


 お風呂が終わると何やらちっこい2人組みがひそひそと話し合っていた。

 なんだろうと思って耳の強化を、無駄だと思ったけれど圧縮強化にすると意外なことにちょっと聞こえた。



「――全に幼女だな。特に問題もない」


「だから言ったでしょーリリーに異常なんてないんだから!」


「いや、だがしかしな、今日行った授業だけでもうちの研究所の職員見習いでも着いて来るのが厳しい内容量だぞ。それをほとんど理解できてしまっている。

 どこかに何かあってもおかしくはあるまい。

 むしろ外部記憶領域を持っている方が納得いくくらいだ」


「だーかーらー! リリーは特別なのー! 私のリリーなんだからー! 大体外部記憶領域ってなによー!」


「おまえのかどうかは別にどうでもいいが、外部記憶領域というのは――」



 どうやら自分の理解力は相当なものらしい。今日教わったこともなんとなくわかっているだけなので、今ひとつピンとこないがそういわれると、なんとなくそうなのかもしれないと感じるから不思議だ。

 生前の自分は確かにここまで理解力があったとは思えない。つまりこの体がすごいということだろう。

 実にラッキーだ。

 視力も努力次第でなんとかなるようだし、ますます希望が沸いてくる。



 お風呂の後もお婆様の膝の上でエリーの朗読を聞きながら、クティ達と魔力文字で会話をする。

 どうやら本当にクティは定期報告に行っている間中、ずっとサニー先生のところで過ごしたようだ。

 自分の故郷には全然興味がないらしい。


 サニー先生も耳にタコが出来るほど何度も何度も、やれ動作の1つ1つが可愛すぎて悶絶しただの、初めて名前を言ってくれたときの感動がどうのと聞かされたと、肩を竦めて言っていた。

 ちょっと恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しかった。


 サニー先生に世界の隣の森の話を聞いてみたが、彼女はどうやら研究所に引き篭って研究ばかりしていたらしくあまり面白い話は聞けなかった。

 ほとんどが研究に関する話になってしまって、専門用語ばかり出てくるのでちょっとわからなかった。

 クティに解説を期待したのだが、彼女も早々にその役目を放棄してエリーの朗読に耳を傾けていた。

 仕方ないので、マイペースに魔術の級付けに関する考察を始めた先生を放置してエリーの朗読に比重を多くするのであった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 お婆様がお風呂に入りに行ったのを見計らって魔力の訓練を行う。

 それを真剣な顔で興味深げに見つめるサニー先生。そんなに見られるとちょっと緊張してしまう。

 それでも時間は限られているので、急いで魔力を圧縮して放出し高速で使い切る。その繰り返しだ。

 時間がないのは事前に説明してあるので、どんどん訓練を繰り返していく。



「ふむ。これで魔力の量が増えるのか……? クティどうなんだ?」


「んー……私は増えないから、リリーだけだと思う」


「だろうな。魔力を使えば使うだけ増えるのでは、魔力の量が膨大な者が大勢できあがる。

 やはり才能か何かなのか……いやだがしかし――」



 妖精2人が何やら話し合っているけど、自分でもなぜ総量が増えるのかはわからない。

 とにかく、総量が多いことはいいことだと言われているのでガンガン訓練を続けていった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 翌日も、サニー先生の授業は続く。

 お外用の動きやすいワンピースに着替えさせられて、テオとエリーの訓練を見ながらも先生は授業を続ける。

 どこだろうと関係なく授業は続き、クティがそれを図解してわかりやすくしてくれる。

 きちんと理解しているかどうかは合間合間に問題を出してきて確認してくる。

 この時ばかりはクティもヒントはくれない。

 詰め込むだけの知識ではだめだと言う事だろう。だったら授業はベビールームにいるときにするべきだと思うが、訓練を見に来ているのも強制だから仕方ない。それに抗う権利は自分にはない。

 それに自分も早く次へと進みたい。


 授業は進むが、まだ基礎部分のようだ。概論と経緯を詳しくした物を教わっている。

 それによると、世界に満ちる魔力を一定のプロセスで導くことにより方向性を確立した物が魔術の祖となるものであるらしい。

 数多くの魔術師が創意工夫を持って魔術を創造した時代があり、その時代は大昔の大戦で滅んだ。

 結果として創造された多くの魔術は大戦と共に滅びたが、生き残った文献や魔道書などから既存の魔術と呼ばれる魔術群が後世まで伝わったそうだ。

 長い時の流れにより魔術の創造は失われ、発動具を使った比較的使いやすい現在の主流となっている方式へとシフトしていった。

 そして現在の魔術は発動具を扱える才能を有した者だけが、既存の魔術を行使するといった形に落ち着いている。

 既存の魔術も生き残った文献や魔道書を元に数多くが復活しているが、それを扱える者は限られた者に限定されてしまっているのが現状だ。扱うにも才能や努力が必要不可欠なのだ。


 初めは簡単に聞き流す程度でいいと言っていたサニー先生も、今ではかなり細かく詳しく教えてくれている。

 どうやら、昨日教わった内容をしっかり理解できたことで彼女の何かを刺激してしまったらしい。


 クティがげんなりした顔でこうなったら止まらないから覚悟して、と言っていた。

 理解できるなら出来るだけ教わりたい。努力次第とは言われたが、並大抵の努力では視力の代わりになるものを得ることはできないと思う。

 万全を期すためにも全てを吸収するくらいの気概でやるつもりだ。



 ちなみに、テオとエリーの訓練は少しだけ厳しくなっている。

 体力が思ったよりついているらしく、その分厳しくしていっているようだ。

 授業に集中しているため、あまりそちらに意識を向けることはできないが、マルチタスク能力は高くなっていると自負している。ある程度は把握できるのだ。


 お外での訓練見学を終えて、ベビールームに戻る間も授業は続く。

 1リン《分》1ゴウ《秒》も無駄にできないといったくらいの勢いだ。確かにこれは覚悟をきちんとした方がいいかもしれない。

 最早彼女を止めることは誰にもできなさそうだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 授業は続く。

 基礎から少しの応用へ。詳しく深く少しずつ進んでいく授業はどんどん難解さを増していく。

 増えていく知識とそれを完全に理解するための分析。

 クティの助けも存分に借りて、乾いたスポンジが水を吸収するかの如く、その全てを吸収していく。


 授業開始から5日目。

 応用もだいぶ進んだ。

 毎日起きているほとんどの時間で授業をしてもらっている。

 最初は夕食の後から朝まではお休みとなっていたのだが、頼んで続けてもらっている。サニー先生も、その意気やよし! と張り切って教えてくれている。

 クティも図解でわかりやすく教えるのが楽しいようで、嬉しそうに付き合ってくれている。

 相当量の知識を理解したが、実践のじの字も未だ出ていない。

 教えられてわかったことだが、多少知識を理解した程度では魔術を使うことは難しい。

 魔術とは膨大な知識を前提とした高度な技術なのだ。

 しかも自分がやろうとしているのは、既存の魔術の先を行く行為だ。


 既存の魔術を扱うのにすら膨大な知識が必要なのに、その先を行くにはまだまだ足りない。足りなさ過ぎる。

 時間がこれほど惜しいと思ったことはないかもしれない。

 ヒアリングや文字を習得していたときとは違う感覚。

 はっきりと目的を見据えた学習。




 全ては視力の代わりを得るために。

リリーの戦いはまだ始まったばかり。


リリアンヌ先生の次回作にご期待ください。




もうちっとだけ続くんじゃ。


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