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外伝6,メイド達の談話

 本編にまだ出てきていないような、世界設定が多々でてきます。

 ほんの少しですが、性的描写に耐性のない方はブラウザバックです。

 







 クリストフ家の屋敷内メイド用第6休憩室。

 そこには今3人のメイドが忙しい仕事の合間の休憩に訪れている。

 休憩室といっても、そこはクリストフ家の屋敷。設えられている調度品は高級品だが、華美過ぎることは無く、しっかりと頑丈な実用性を重視した物ばかりだ。

 一度に5人以上が座れるソファーが、3つずつ。人が2人は余裕で通れる程度の隙間を置いて設置してある。

 机を挟んで置いてあるので計6つ置かれるソファーだが、それでもまだこの部屋には十分なスペースがある。

 それほどまでに広い部屋が他にも9つほど屋敷には設置してある。

 クリストフ家で働く使用人の数は、計10個の休憩室があるのがわかるようにかなりの人数に及んでいる。


 今第6休憩室にいる3人のメイドもクリストフ家で働くメイド達だ。

 3人は3人共、頭の上にふさふさの毛を纏った耳を持つ獣人族だ。

 ウサギの耳、キツネの耳、クマの耳。3人共種族は同じでも氏族コミュニティは違う者達だが、クリストフ家では種族や氏族コミュニティの違いなどで差別されることはない。

 氏族コミュニティというのは獣人族の特徴である獣の種類を差す総称のことだ。

 例えばウサギの耳を持つ彼女――ラクリアは、兎族という氏族コミュニティだ。

 一部例外を除いた氏族コミュニティは数が少ない――勢力が弱い氏族コミュニティは獣人族の中でも差別されることがある。

 オーベント王国では種族ごとの差別は法令で禁止されているほどだが、やはり根強く残っている風習というのはそうそう拭える物ではない。


 兎族は比較的勢力の強い氏族コミュニティではあるが、キツネ耳のメイド――ジェニーの氏族コミュニティ――狐族ほどではない。

 ましてやクマ耳のメイド――ニージャの氏族コミュニティは極少の氏族コミュニティであり、オーベント王国以外では差別されることも多かった氏族コミュニティだ。

 だが、クリストフ家では差別などは一切ない。

 法令で禁止されていることもさることながら、この屋敷では実力が全てだ。

 見た目や種族で偏見を持っていてはやっていけない。彼女達も初期研修場所であるオーベント王国の東に位置するランドリッシュ領にあるクリストフ家の別宅で、地獄の研修を無事卒業した者達だ。

 その地獄の研修は4年に及び行われる。

 まさに軍隊のような地獄のしごきに加え、メイドとしてのイロハからプロ以上の技量まで全てを叩き込まれる。

 もちろんその中には戦闘訓練も含まれている。

 この研修を開始するにはまず最初に遺書を書かされる。それは詰まるところ研修中に死亡した場合のためだ。


 実際に死亡する者もいるほどの過酷にして苛烈を極める研修なのだ。

 死亡する者がいるほど酷い研修がなぜ公然と許可されているか。それはランドリッシュ領を治める領主の存在に他ならない。

 ランドリッシュ領を治める人物は過去、オーベント王国で最強と謂わしめた人物であり、その人物が残した数々の業績は伝説に残るとさえ言われるほどのものであった。


 そんな研修を経てクリストフ家本家に就職することが出来た使用人達はその全てが戦闘要員であり、任される全ての仕事に置いてプロ以上の腕を発揮する人材だ。


 そんなプロの彼女達でも、いつでも気を張っているわけでは当然ない。

 今は休憩時間中。休憩室に常備してある紅茶と少しのお菓子で、憩いのひと時と洒落込んでいる。



「ねぇ聞いた? リリアンヌお嬢様の話」


「聞いた聞いたぁ~。でも本当なのかしらぁ~?」


「……事実」



 一口紅茶を口に含み一息吐いたラクリアが話を振ると、ジェニーが即座に反応したが、訝しげな様子だ。

 寡黙を地で行く半眼少女のニージャはいつもの如く一言だけだ。



「それが本当らしいのよ! あの場にいた奴に直接聞いてきたんだから、まず間違いないわ!」


「だってさ~……アレだよぅ~? ほらぁ~……これに顔埋められた程度でそんなになるぅ~?」


「……無理」


「いやいや、ニージャの尻尾は短すぎるから!」



 自らの長いふさふさの小麦色の尻尾を撫でつけながら、興奮している同僚にニージャばりの半眼をぶつける語尾が間延びしているのが特徴的なジェニー。

 半眼の本人は自らのスカートの中に隠れた丸い尻尾を手で押さえて一言いうが、突っ込まれても特に表情の変化はない。話の中心人物であるお嬢様ばりの無表情ぶりだが、彼女はそれでも自分を無表情なキャラだとは思っていない天然さんだ。



「でもさぁ~実際尻尾触られたりした程度でぇ~そんな気持ちよくなんてぇ~ならないでしょ~。

 獣人族でそんな弱点持ってる人なんてぇ~聞いたことないよぅ~?」


「まぁそうなんだけどさぁ……ほら、当人のミラの氏族コミュニティって狼族でしょ?

 狼族って少数氏族コミュニティの割には勢力すごいじゃない? だからきっと何かあるのよ!」


「……同意」


「でしょでしょ! 狼族の中にはきっと尻尾が弱点の娘もいるのよ!

 ……ふふふ……そ・こ・で! 捕まえてきました!」



 勢いよくソファーから立ち上がったラクリアが、休憩室の奥にある物置になっている小部屋を開けると、簀巻きにされ猿轡を噛まされた半泣きの少女がいた。



「ンーッ! ンーッ!」


「……あんた何やってんのよぉ……でもぉ~よくやったぁ~!」


「……いい仕事」


「でしょでしょ! ふふふ。さぁ吐いてもらおうか! 狼族のとっておきの秘密というやつを!」



 簀巻きの半泣き少女――狼族のミラは目じりに溜めた涙の量を増やしながら、何かを言っているが如何せん猿轡の効果で意味がわからない。

 だが、そんな彼女のことなど一切心配する様子のない首謀者兼実行犯以外の2人。咎めるような事を言うだけ言っただけで、それ以上に話の肴が増えたことに対する賛辞の方が天秤を揺らしているようだ。



「ほらほらー悪いようにはしないからー吐いちゃいなよーどうなのよー」


「ンーッ! ンンーッ!」



 にやにやとした厭らしい笑みで笑いながら、手をわきわきとしながら近づくラクリアに恐怖のあまりに、真っ青になったミラが首を左右に振って涙を振りまきながら訴える。



「ていうかぁ~……猿轡外してあげなきゃ喋れないでしょ~」


「……意味不明」


「おっとーわっすれてたーあはははー」



 ラクリアの様子に別段突っ込みもなく、猿轡の方に突っ込みを入れる2人は変態な同僚のことはよく知っている。だから突っ込んでも無駄なので突っ込まないのだ。



「ぷはっ……酷いですよ! ラクリア先輩! 私に何の恨みがあるんですか!?」


「えー別に恨みなんてないわよー。むしろ可愛がってる方だと思うよー?」


「そ、それは確かによくしてはもらっているとは思いますけど! でもいきなり仕事中に拉致とかしないでください!

 一緒にいたリンダを手刀一発で気絶させるのも、やりすぎですよ!」


「あんたリンダにあとで謝っときなさいよぅ……」


「……首落とされなかっただけマシ」


「えー……ニージャの言う通りだと思うけどなー?」


「あのねぇ……ここは獄舎じゃないのよぅ? クリストフ家のメイドとしてぇ~奇襲されることには慣れておかないとぉ~いけないとはいえ~……仕事中に訓練でもないのに巻き込まないのぉ!

 やるならぁ~ミラ1人の時を狙ってやりなさい~!」


「はーい」


「……ミラ逃げるな」


「ひぃっ!?」



 獄舎とはクリストフ家別宅の通称だ。地獄のような宿舎の略である。

 ラクリアがジェニーに説教されている間に、こっそりと気配を絶って逃げようとしていたミラの首根っこを掴んだニージャは、すぐさま羽交い絞めにして動きを封じる。

 自分の頭1つ分以上高い身長のミラを完全に押さえつけて動きを封じるニージャの手際は、さすがはクリストフ家のメイドと言った手並みだ。

 長毛族のような低身長の彼女だが、拘束術においてはクリストフ家のメイドの中でも随一の腕を持っている。それは詰まるところ、オーベント王国における屈指の使い手を意味している。

 そんなニージャの拘束術から逃れる術はミラにはなく、がっくりと項垂れるしかなかった。



「うぅぅぅ……私が何をしたっていうんですかぁぁ……」


「あらあらぁ~泣いても何も解決しないんだから、嘘泣きなんてやめなさいねぇ~」


「そうだよー私達の質問に答えてくれればすぐに解放してあげるからさー」


「……へたくそ」


「うっ……はぁ……わかりました……それで質問って何なんですか? さっきちょっと聞こえてましたけど、私の氏族コミュニティに秘密なんてないですよ?」


「そんなわけないじゃなーい。だってあなたお嬢様に尻尾を愛撫されて喘いでたっていう話じゃない?」


「あ、喘いでなんていません!」



 ニージャの羽交い絞めからも解放され、ソファーではなく絨毯の敷かれた床に正座するミラ。彼女はこの休憩室の3人のメイド達に比べると格下なのだが、別段そんなことをしなくてもいいのになんだが、そうしてしまう。

 嘘泣きをあっさりと見破られてすっかり観念したミラだったが、色恋の話にとんと経験がない彼女は顔を真っ赤にして即座に否定する。



「でもさーちゃんと、その場にいた娘達に確認取ったんだよ?」


「喘いでなんていません! そ、その……すごく気持ちよかったですけど……」


「へぇーやっぱり気持ちよかったんだぁー。具体的にどんな風に?」


「ぐ、具体的にって言われても……私その……そういうのはちょっと経験がなくて……」


「……おぼこ」


「な、何てこと言うんですか! ニージャ先輩だって経験ないくせに!」


「……問題ない」


「ぐぬぅぅ」


「そういうのいいから、とっとと吐きなさいよ」


「そうよぉ~早くしないとぉ~休憩時間終わっちゃうじゃない~」


「で、でもですね……その……お嬢様のテクニックがすごかったってしか言いようが……」


「ふーん……やっぱりそれなんだねぇ」


「まぁ……狼族の尻尾が性感帯なんて聞いたことないし、やっぱりそれなのかしらねぇ~」


「……エロ犬」


「い、言うに事欠いてなんてこと言うんですか! 私はエロくありません!

 私は悪くありません! お嬢様だって謝ってくれましたもん!」


「はいはい、わかったわかった。ニージャも煽らないの」


「……エセ犬?」


「ぬぐぐぐ……もう行っていいですよね!?」


「あーはいはい、ごめんごめん。もう行っていいよ」


「ふんだっ」



 憤慨したミラが肩を怒らせて休憩室を出て行くと、相変わらずの無表情で紅茶を一口飲むニージャにジェニーの仕方のない子という瞳が向く。



「もぅちょっとぉー優しく助けてあげればいいのにぃ~」


「……あれくらいがちょうどいい」


「ちぇーやっぱり、無理やり逃がすために怒らせたのかー」


「……ラクリアはやりすぎ」


「ぶーぶー」


「でもぉ~お嬢様のテクニックかぁ~気になるわねぇ~」


「……超同意」


「だよねーだよねー! 私達にもやってくれないかなー……無理かなー」


「無理ねぇ~」


「……無理」



 休憩時間が終わるまで姦しい3人の談笑は続くのであった。





ニージャ可愛いよ、ニージャ。


次回更新から4章開始です。

外伝のストックがきれました。


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