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外伝3,白銀の滅鬼

 本編にまだ出てきていないような、世界設定が多々でてきます。

 残酷な表現も多く、人を人とも思わない表現が多く出てきます。

 ネタバレになるような設定がいくつか登場します。

 そういうのが苦手な方はブラウザバックをお奨めします。


 オレTUEEEEE苦手な人もブラウザバックです。





 漆黒の闇の中、動く影がいくつもあった。

 だが、闇を縫うように動く影達を捉えることは難しい。

 影達が包囲した一つの屋敷。

 その屋敷は数ヶ月ほど前に、ある貴族により買い上げられた屋敷だった。


 豪勢な装飾が施された正面門。警備も2人だけ。

 武装こそ貴族の屋敷の正面門を警備する一般的な物だったが、それを着る者たちは兵士であっても一般的な訓練を受けた兵士とは一線を画す者達だった。


 佇まいに隙はなく、夜目が利くのか――月の光が差さない暗闇の中でもしっかりと辺りを警戒し警備を行っている。

 そんな彼らにゆっくりと静かに歩み寄る影が2つ。

 しかし、その2つの影に警備は気づくことは無かった。


 首筋を切断され大量の血液を噴出させる中、正面門を警備していた2人は一言も発することなく、その人生に幕を下ろした。

 一部の隙すらないように思われた警備の2人を事も無げに殺害した2つの影は、そのまま物言わぬ死体と化した2つの――影達にとって――ゴミを所持していた魔道具で処分する。


 音も光もなく、漆黒の闇に喰われる2つのゴミ。

 地面に夥しい量が流れ出た血液さえも、その漆黒の闇に全てを食い尽くされる。


 処理が終わったことを一瞥した影は正面門に掛けられている鍵型の魔道具を、専用の開錠用魔道具で一瞬で開くと音もなく進入を開始する。


 豪奢な門と大きな屋敷の割には、手入れのされていない前庭。

 庭に放たれている警備犬に自身の匂いを嗅ぎ付けられるようなミスを、影達は犯さない。

 正面門に入った瞬間に投擲された20を超える鉄片。

 そのほとんどが、寸分違わず警備犬を絶命させていた。


 警備犬の他にも警備の兵が何人か巡回していたが、正面門から確認できた全ての警備は一瞬で犬共々物言わぬゴミと化した。


 正面門の他に反対方向に存在している門でも、同様のことが起こり屋敷の庭に存在した警備達は瞬く間に駆逐された。音も無く、ただただ静かに。



 屋敷の窓から漏れる光は少ない。

 事前の調査及び、探索型魔道具による反応によれば、屋敷内部に存在する数は70程度。

 屋敷を包囲している多くの影達だが、門から進入した影達の数は4。


 圧倒的な戦力差ではあったが、影達に戸惑いの様子はない。むしろ粛々と行動を続ける。

 彼らにはわかっている。相手の数が自分たちの20倍近い数でも、そんなものは意味がないということを。



 今日、自分達の合図を待っている人物がただ一人居れば、それが例え1000倍の数が相手だろうが意味をなさないということを……。



 彼らは知っている。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 開け放たれた重厚な装飾が施された、豪奢という言葉がぴったりと合う扉。

 いや、開け放たれたというのはおかしい表現かもしれない。


 扉は中央部から真っ二つに折れ、蝶番を一瞬で破壊され、広い玄関ホールの端に激突して止まった。

 控えめな表現でも開け放たれたとは言えない。まさに破り飛ばされたという表現がぴったりだった。


 轟音を立てて壁に激突した元扉を一瞥もせず、正面門から屋敷に進入した2つの影と扉を元扉にした微笑を絶やすことの無い女性が、ゆっくりと玄関ホールを進む。


 広い玄関ホールの半分にも届かないところまで進んだ頃には、慌しい足音を立てながら屋敷のあちこちから、影達の標的である――ゴミ共が顔を出していた。

 その手には大小様々な獲物。体には完全武装の鎧やローブ。

 剣士や槍師や弓師、はては魔術師まで様々な職業と見て取れる者たちだ。


 だが、3人に戸惑いは無い。むしろ情報通りすぎて拍子抜けしているくらいだ。



 ゴミ共が怒鳴り声を上げながら何かを喚いている。

 2つの影により張られた遮音系魔道具により、大声量にも達する声は囀る様な音ですら聞こえることは無かった。


 2つの影と女性はゴミ共の声を聞く必要はないと最初から思っていた。故の遮音系魔道具だ。

 そのことに気づいた階上に居た1人のゴミが、背丈ほどの大きな弓を引き絞り放って来る。

 だが、放たれた矢は影達に届くことは無かった。

 高速で飛来する矢は影の放った1つの鉄片により、その存在をもう1つのゴミへと変じさせられたからだ。

 ついでに放ったもう1つの鉄片により、矢を放ったゴミも完全なゴミと化して階下――玄関ホールに落下した。


 頭から落ち、首の骨がおかしな方向へ向いているが、投擲された鉄片により床に激突する前に絶命していたゴミには関係ない話だった。



 その光景により、一瞬だけ静まった玄関ホールに怒号が響き渡る。

 相変わらず効果を発揮している遮音系魔道具により、2つの影と女性にはその怒号は届かない。


 ゴミ達が一斉に彼らに向かって押し寄せるように集まってくる。


 先制は魔術師による、攻撃魔術。


 炎の矢、氷の矢、風の矢。


 色とりどりの矢が我先にと3人に向かって放たれるが、その全てが2つの影により阻まれ、発射した魔術師も全て絶命し、ゴミが増える。

 通常、物理攻撃で攻撃魔術を防ぐのは難しい。

 余程の技量差があり、且つ相手を圧倒的に上回る精密さを持ってしなければ成し得ないはずのことを、2つの影は事も無げに行い、放った張本人達をも絶命せしめた。


 だが、彼ら2人にとってそんなことは朝飯前。

 故に押し寄せる近接戦闘をメインとする者達への迎撃を開始する。

 影の手に2本の真紅の刃が握られる。真紅の刃は計4本。

 鮮血を連想させるその真紅の刃を手にした瞬間、影の姿はその見た目に相応しいように闇へと溶けた。


 女性の周りで始まった惨劇は、4本の真紅の刃により引き起こされた斬劇。

 噴出す血液と悲鳴と怒号で染まる玄関ホール。


 そんな中、女性はまるで1枚の絵画のような光景を醸し出していた。


 照らされる闇の多い玄関ホールと赤い床と屍と化したゴミ達。

 その中央に立つのは1人の女性。


 あどけなさの残るような容貌。

 肩の上で切り揃えられた白銀の髪は、揺らめく光と赤い床に照らされて赤味掛かり、妖艶さを滲み出している。

 女性の湛える微笑には周囲の惨劇など、目に入ってすらいないかのようだ。



「大奥様。第一陣処理完了致しました」


「そう、ご苦労様。逃げた者達は周囲の者が殲滅したでしょうから、残りを消しにいきましょうか」



 4本の刃により、10秒程度で静かになった玄関ホールで影の1人が女性に対して片膝を突きながら静かに告げる。

 女性は微笑を絶やさず、淡々と予定通りの進行を告げると階上へ続く緩い螺旋状の階段を上り始めた。


 影は闇に溶けるように、頭を垂らしたまま消えていった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 屋敷の2階最奥。そこに続く廊下には夥しい量の血とゴミ。

 すでに事切れた死体には1本だけの斬り筋以外には、外傷は存在しない。

 全てが喉を切り裂かれ、頭部を切り離され絶命している。


 最奥の部屋の扉を女性が静かに押すと、まったく力など入っていないように見えた動作からは信じられない衝撃と轟音が響き渡り、扉は掛けられた結界魔術諸共部屋の中へ凄まじい勢いで吹き飛ばされていった。



「さすがは、噂に違わぬ白銀の滅鬼。3級結界では障壁にすらならんか」


「こんばんは、あなたがラフレシアの首領さんかしら?」


「如何にも。私がラフレシアの首領――ゴブレ・イオ・オードルだ」



 部屋の中には10数名の武装したゴミと、他のゴミとは一線を画す装備を纏った多少マシそうなゴミがいた。


 多少マシそうなゴミは苦々しく吹き飛ばされた扉を睨みつけると、問われた答えに自身の名を口にする。

 それを合図に武装したゴミ達が2つの影と女性に襲い掛かるが、その全てを影が事も無げに迎撃を開始する。


 4本の刃にて1本ずつ付けられた斬撃。


 頭を切り離された多くのゴミは、司令塔を失い1歩2歩とよろめき崩れ落ちる。

 切断までに至らなかった傷からは、流れる血液の半分以上を流出させて絶命した。


 生者が4つになったが、影は多少マシそうなゴミを攻めあぐねていた。

 これまで圧倒的な戦闘力を見せ付けてきた彼らが、初めて攻撃を躊躇する。


 多少マシそうなゴミ――ゴブレから発せられる尋常ならざる気迫によるせいだ。



「あなたたちは下がっていなさい。アレの相手はあなたたちでは荷が重いでしょう」


「はっ!」



 ゴブレの発する凶悪な殺気のような気迫にも、変わらぬ声音のまま女性は影達に下がるように命ずる。


 1歩、2歩とゆっくりと進む女性。

 女性が近づいてきたのを契機として、ゴブレは腰に下げている剣を引き抜く。


 影達はその刀身を見て驚愕と共に戦慄を覚えた。

 ゴブレの持つ剣は、魔武具と呼ばれる通常の武器とは性能が段違いに上昇している物だった。

 魔武具による斬撃は岩をバターのように切り裂く。

 その他にも様々な特殊な魔術効果を得ることができる、魔道具と化した武器だ。


 だが、女性の歩みは変わらない。

 彼女は知っている。あの程度の魔武具では自分を傷つけることなど夢だ、と。


 ゆっくりと近づく女性に、勝機を確信したかのような笑みを浮かべるゴブレ。

 彼の射程範囲に入った女性に振られた一閃は有に10m以上はあったが、それでもまだ魔武具の射程範囲としては中位の位置にある。


 放たれた剣閃。魔武具――閃剣トーライトが持つ特殊攻撃は女性に触れる前に甲高い音を立てて消滅した。


 女性に触れる前に消滅した剣閃以外は部屋の壁を両断し、1本の筋を確かに刻んでいる。



「ばかな! 剣閃を防いだというのか!?」


「この程度の児戯で何を仰っているのですか?」


「くっ!」



 ゴブレの驚愕はもっともである。これまで彼の放った剣閃を防いだ者など、かなり高位な結界魔道具を駆使した者だけだったのだ。

 それ以外の全ての者は彼の剣閃を見た瞬間、物言わぬ屍と化した。


 続けざまに放たれた幾筋もの剣閃の全てを動作一つなく、全て触れる前に消滅させる女性。

 戦慄と驚愕で震える足を押しとどめ、尚も剣閃を放つゴブレだったが女性の小さな溜め息と共にその生涯に幕を下ろした。


 剣閃を放つ一瞬の隙間に身を進入させた女性は、溜め息と共に親指で彼の額を一度だけ突くと振り返り、全ては終わったと去っていく。

 額を小突かれたゴブレの動きは完全に止まり、嵐のような剣閃も止んでいた。

 動きを止めたゴブレの体が内側から何かが蠢く様に膨張し、身に着けていた鎧が弾け飛ぶ。

 すでにゴブレの目の焦点は合っておらず、それどころか両の目は別々に違う方向を向いてさえいる。蠢く何かは彼の皮膚を突き破るが、破れた皮膚から大量の血液が噴出すはずがまったく出ていない。

 すでに体中の至る所から蠢く何かが突き出ていたが、ゴブレはまだ生きていた。



「ば、ばけものがっ……」



 それがゴブレの残した最後の言葉だった。

 一際大きく膨張した頭部を最後に、蠢く何かがゴブレの上半身を吹き飛ばした。



 女性と2つの影が部屋を出たあと、2階最奥の部屋には上半身が破裂して下半身しかなくなった多少ましなゴミであった物と、粉々に砕かれた閃剣トーライトが散乱していた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「首尾は?」


「損害は皆無。全て順調に終了してございます」


「そう」



 屋敷を出る直前に女性が何気なく聞いた一言に、付き従う4つの影の内の1つが予め用意していたかのように答える。


 その答えを聞いた女性は興味もなさそうに、一言だけ言うと屋敷を後にした。


 その日、5つの組織が壊滅した。





 数日後、オーベント王国首都オーベントの結界に包まれた屋敷に到着した女性は、初めて会う3人目の孫に絶やさぬ笑みをより一層深めたのだった。





敢えて誰とは明記しませんでしたが、丸わかりですね!



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